「(幼馴染を恋愛的に見るのは)いやーきついでしょ」と言ったオリ主が幼馴染達に娶られるまで後…   作:ネマ

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メリクリ(数日遅れ)
プレゼントの代わりにレオニ大勝利ルートを用意しました!やったね!

いつも通り、設定崩壊・過去改変・キャラ崩壊・独自設定・脳大爆破要素注意です。

ちなみに全員ナチュラルに狂気状態です。悪しからず。





if・夜は未だ輝くことなく。

 

 

『はじめまして!』

 

『貴方達は……誰?』

 

『そんなのどうでも良いじゃん!行こ!』

 

『それは…どういう……』

 

『みんな…願を待ってたんだから』

 

『貴方を知ってる…貴方の今を知ってるんだよ。』

 

『……………君たちは……一体……?』

 

『私は一歌』『アタシは咲希!』『わたしは志歩』『私は…穂波って言うの』

 

『『『『これからずーっとよろしくね?』』』』

 

夢を見てた。夢を見た。古い古い、始まりの夢を。

ただ無為に日々を費やす事にしか興味がなかった俺に意味を与えてくれた人達。

虚無だった中身に意味を与えてくれた。無色だった世界に色彩をくれた。

ああ。だからどうか─────────────どこにもいかないで──────────おいていかないで

 

 

 

「……おはよう」

 

朝、目を覚ます。横には人肌ほどの温かさに何処か安堵しながら、布団の上から揺する。まだ朝早く日が出てから一時間も経ってないうちに願は動き始める。

勿論、そんな早く起きるのは単に朝食や昼のお弁当作りの為である。あまり過度にバイトを入れられない願はこうやって家計のやりくりのためにお弁当を作ったりしている。

 

「起きて………“一歌”」

 

別に願にとって家事仕事は一人でも出来る作業だ。でも願は起きた時点で幼馴染でありながら“何よりも誰よりも大切な愛する人”を起こさないと、後で凄い不機嫌になる。それは願が身をもって知っている。

 

「おはよう……願」

 

「おはよう一歌……ん。」

 

「…………ん…………」

 

深い、深い口付けを交わす。どちらがどちらと主導を握るのではなくまるで毎日、やり慣れたかのように舌と舌を混ぜ込む。

数秒…数分かはたまた数時間か。時間では表しきれないほど、少年少女は愛と愛を心と心を互いに溶かし合う。それが当たり前と言わんばかりに。

 

「………忘れてないみたいだね。」

 

「だって……」

 

一歌とのディープキスの終わりは、舌と舌の過激な混ぜ合いだ。

互いの舌を貪りあって、ようやく一歌は名残惜しそうに願の口を離す。

彼らは…恋人なのだろうか??

 

「“幼馴染との朝の挨拶はディープキスで”。そう教えてくれたのは、一歌でしょ?」

 

「…………うん。正解」

 

おかしな世界ではない。ここは至って普通の現代。…だというのに願は側から聞けば非常識極まりない常識を、至極当たり前のように受け入れていた。

 

「今日1日も…忘れちゃダメだよ?」

 

「……………うん。」

 

そう。これは捻れに捻れ切った後日談。

恋から愛まで、愛から狂気まで。狂気から…狂愛まで。

少年少女は箱庭で踊り狂う。そんな常動曲Perpetuum mobile

 

 

 

「おはよう。外夜。」

 

「……おはよう。東雲」

 

朝。願は学校に行くまでは基本、一人である。

愛する人たちで、誰よりも敬愛している一歌達…ここは便乗上、Leo/need達は願の通う神山高校…神高より少し離れた女子校、宮益坂女子学園に通っている。

今までを見て、それほど相思相愛なら共学である神高に一緒に通っていておかしくないはずだが何故だが願だけ神高に所属している。

 

勿論、神高で願はぼっちかと言われればそうではない。

友と呼べる存在はいるしその中で一際仲の良いのが願の後ろから肩を叩いてきたオレンジ髪……東雲彰人であった。

 

「………………また聴いてるのか?」

 

「うん。ひとりの時間は基本ね」

 

これが無いと落ち着かないんよな〜と願はまるで当たり前のように耳にイヤホンを入れて音楽を聴いていた。彼のその落ち着かないは比喩ではない事。それは彼の異常性を知るものだけが事実だと知っている。勿論、その曲は……

 

「Leo/needの歌……で外夜の幼馴染か」

 

それは彰人にも覚えがあった。

Leo/need。突然現れたバンド界の新星。圧倒的な歌唱力と、バンドに興味がない人間でも引き込むダイナミックと繊細…そして可憐さを兼ね揃えた音楽。“すぐにプロ入りするだろう”と。天才という言葉では生ぬるい程の音楽の天才達が集まったバンド。それがLeo/needである。

……ただ。まあその実を知っている人から見れば色々と怪しすぎるが。

 

「そうだよ」

 

「また、何か言われてるのか?」

 

実は、彰人は願と初めて会った時から“何故か”不思議な感覚に陥っていた。

昔から仲の良かったような、相棒だったような、冬弥と彰人と願。その三人で“BAD DOGS”だったような謎のデジャヴのような既視感を感じ続けるのだ。

それは願と関わりを深めれば深めるほど強く、キツくなっていく。まるでこうして仲良くしているのが“当たり前”だったような。

 

「前から特には…?」

 

「……………そうかよ」

 

朝。そういえば先輩に呼ばれてんだわ。と彰人は片手を上げて先に学校へ小走りになって去っていく。その姿に願は特に疑問を抱くこともなくさっきと同じように音楽の再生を開始する。………その音楽とは、音楽とも言い難い女性の声の────

 

(やっぱり洗脳されているんじゃねぇか?!)

 

彰人は1人小走りになりながら、願から離れる。一つの確信を得ながら。

願と彰人の関係には“幼馴染”ほどの時間は経っていない。だけど、それでも色々と願には見て見ぬ振りが出来ないほどの異常さが際立っている。

 

(それだけじゃねぇ。今まで見てたらわかる!)

 

アイツの持ち物全てにLeo/needに関係のあるものしか持ってない。

まずは分かりやすくイヤホン。これには星の模様が入っている。

筆箱には、月のチャームが付いた物が殆ど。付いていない物でも月や星に関係のあるものしか無い。……鞄に付けてるのは、とあるマスコット“フェニーくん”だ。しかもわかりやすく五つ。…そういえば幼馴染が好きだとも願は言っていた。ここまでわかりやすいのは牽制、だとかそういうレベルでは無いことぐらい彰人でも察している。

 

(待てよ…まさかアイツ………っ!!)

 

彰人は小走りの足を止める。ただでさえ冷や汗を流している彰人に、喉の奥から酸っぱい物が込み上げる。……もしもしこの考えが正しいのならば彰人は今までとんでもない勘違いと、間違いを犯し続けてきた事になる。

すると突然、彰人のポケットが唸り始めた。電話だろうか。…こんな時に誰だとスマホを画面を見る。

 

「なんだ、っ!?」

 

そこに書いてあるのは“非通知着信”。まるで彰人の悪い予感に導かれたかのように何故かその五文字が彰人は恐ろしくなった。それでも、彰人はその着信を無視する事が出来なかった。

 

「…………もし、もし」

 

『パンパカパーン。オメデトウ』

 

「!?」

 

一拍置いて彰人は電話口に言葉を交わす。

するとそこから聞こえたのは女の声。祝福するかのような言葉とそれに相反するほどの声の冷たさ。まるで、彰人が目の前にいたら害しているのではないかと思われるほどの冷たい憤怒。

 

『まだ願とトモダチでいたいなら……』

 

忘れることだ

 

ツーツーツー。一方的に投げられた言葉。

彰人は勉強という側面だけではおバカ!と言いたくなるかもしれないが決して暗愚でも愚図でもない。どちらかといえばそういう事に関して目敏い方である。

そしてその上で先ほどの“非通知着信”からの言いたいこと。願と友人でいたいのならば忘れろ。とつまり彰人が気がついてしまった“真相”を忘れろとピンポイントで言ってきたのだ。

 

「くそがっ……!!」

 

スマホを持った右手で壁を激しく打ち付ける。やり場のない怒りとはきっとこう言うのを言うのだろうと彰人は憤怒にも似た激情とは裏腹に恐ろしいほどに冷え切った脳内がぼんやりと伝える。

 

「監視…いや。全部聞かれてるのか…!!」

 

先ほどの電話が誰だったのか推理するまでもない。“Leo/need”のうちの誰か。

そして真相に…“あれ”を真相と認めるのは非常に悍ましいが、電話での忠告と言うことはそれが真相なんだろう。なら何故、Leo/needは彰人が真相に気がついたと断定したのだろうか?

答えは簡単“聞いていたのだろう”。盗聴器…願の持ち物は全てあのレオニ達が触れていると聞いている…それはつまり幾らでも仕掛けようがあると言うこと。多分、一個や二個じゃ足りない筈。

 

「どうにか……手段がっ!!」

 

彰人はその時、過去の追憶が脳裏に過ぎる。

アイツとの…外夜願との付き合いはそう長くはない。何故ならばこのクラスに、この学校での出会いが初対面だからだ。

 

『はじめまして。外夜 願です。』

 

その声は耳に残った。

不思議と誰も彼もが彼の言葉に注目していなかった。…まるで意識と意識の狭間。無意識の最中に言われたように。顔は思い出せる。名前も分かるだけど何を言っていた?言っていたのに思い出せない不自然なまでの自然。

 

そしてそれ以上に感じる違和感。

まるで陽気だった人が“人が変わったかのよう”にある日を境に無口に陰気になった様なそんな感じ。話せば話すほど強く感じる違和感。

 

『……うん。そうだね。(ああ。そうだな)』

 

たまに二重に重なるのも不思議だった。まるで“オレの知っている願”はこう言っていると言わんばかりに表情ひとつ取ってもそうだ。知っている願は素で笑っていると思えるのに、今の願は何処か無表情で凍り付いているような気がしたのだ。

オレのデジャヴにしておきたかった。オレのただの妄想にしておきたかった。

 

『…………志歩。』

 

『?外夜、お前の……って』

 

ある日の話。学校が終わったといつも通りにクラスから素通りして帰る願の姿を捕まえて、一緒に帰ろうと話し込んでいたその時だった。

目の前。校門には銀色の髪を棚引かせた宮女の制服を着た女が立っていた。どうやら願の知り合いらしい。……そして酷くオレは睨まれている事に気がついた。

 

『……願。誰?』

 

『東雲彰人……友達かな。』

 

『………そう』

 

その瞬間。まるで殺意という物が溢れかえった気がした。

その女とは距離が離れている筈なのに首を掴まれ締められるそんな錯覚さえ抱いた。初めて会ったというのに、なぜか自分でも考えられない様な“敵対心”が芽生えた。

 

この女だけは相容れる事、無い

 

『“はじめまして”…日野森志歩です。』

 

『はじめまして。東雲彰人です。』

 

この女も、オレも笑っている様で笑っていない。

心の中では敵対心旺盛だ。もはやどうこの女を出し抜こうかそれを考えているレベルだと言うのに。………はて?どうして“出し抜かない”といけないのか。

 

『志歩?…………っ!?』

 

『帰ろうか。願?』

 

睨み合っている途端その女…日野森は外夜に近づき、首筋を撫で上げる。どう言う意味があるのか分からないが、願の瞳に明確な“恐れ”が宿ったことだけは分かった。

 

『……おい!外夜!』

 

『また、明日……』

 

その次の日。アイツは学校に遅れてやってきた。

何か違和感があったかと言われれば首を傾げたくなるが、その日からやけにオレを避ける事が増えてきた様な、そんな気がしたのだ。

 

『…おい!外夜。大丈夫か?最近変だが……』

 

『東雲……ううん。なんでもない。』

 

なんでもない。なんでもない。なんでもない……なんでもない……

まるでうわ言のように“なんでもない”と呟き続ける外夜。その姿にオレは───

 

『………ぁ……一歌っ!』

 

『おいっ!願?!』

 

すると突然錯乱し始めていた願は自分のスマホを取り出したと思ったら電話に出始めた。…よく聞こえなかったが願はそれを聞いて落ち着いてきたと言うことなのだろう。その時点でおかしい…何故。願はその電話を聞いて落ち着いたのか?

 

そうその全ては……“その事実”に繋がってしまう。

 

「今更…か。」

 

気がついた所で、どうなる?……どれほど悍ましいと言えどもう折れ切っている外夜はその事実を受け入れてしまったと言うこと。

そうだ。もうあの日の願ではない。同じように肩を並べた誓いも、覚悟もその全てはこの世界の願が持つ物ではないのだから

 

「………なんだかなぁ……」

 

やりきれない思いと、途切れることのないデジャヴに彰人は一息ため息をついたのだった。

 

 

 

「あれ。久しぶり外夜。」

 

授業は瞬く間に過ぎていった。願にとって授業というのは基本的に無でいれば終わるようなそんな時間だ。“なぜか初めてのことでも卒となく熟せる用量の良さという”地頭の良さ&幼馴染の教育(意味深も含め)のお陰で基本、授業中というのは復習以上の意味を持たない。あとはノートをどれだけわかり易く取る事ができるだとか。そんな風に時間を潰すのが願の授業中である。

 

そして放課後。特に学校に残る用事のない願は見つからないように靴を履き替え、意識の合間を抜け出すかのように誰にも話しかけられることなく外に出る事が出来た。……そこまでは願にとって完璧だったのだ。願にとっては、だが。

 

「草薙さん……」

 

そこに居たのは、ライムグリーン色の髪と紫色の眼差しが特徴的な願の知り合い。

…知り合いと言っても、顔と名前を知っているだけのような物だ。

ただ、何が琴線に触れたのか知らないが草薙さんとその幼馴染、神代くんに目を付けられただけの話。

 

「…今日も使いっぱしり?」

 

「…………訂正してください。これは“望んでいる事です”」

 

「………………」

 

片目と片目の間で火花が散る。自らが譲れないモノが貶されるというのならば後はぶつかり合うしか他ないであろう。それが互いにそうならば尚更だ。

願にとって幼馴染と一緒にいるということは何よりも優先するべき事象。そこには一切の他人の意思も、意見も必要ないものである。

 

「そ。…そのあり方。どう見ても犬ね。」

 

「なんとでも。」

 

一瞬の邂逅。たった数分にも満たないその出会い。

だけどその数分もそれが毎日積み重ねれば膨大な時間となる…そしてその膨大な時間は願に“知らず知らず”の内に影響を及ぼす。

 

(…本当に自分は“これ”で良いのか?)

 

願は知っている。願は分かっている。

どれだけ目を背けても、どれだけ真実から逃げようとも逃げられることはない。出来ないのだ。必ず何処かでツケを払わなくては無ならない。…そうだった。俺は、始め

 

「げーん?」

 

「っ!…………咲希?」

 

深く、深く思考の海に流れ出した願を呼び覚ましたのは目の前で願のほっぺをいじくり回している咲希。天馬咲希だった。彼の幼馴染の一人でもある。

 

「行くよ?」

 

「…………うん」

 

笑みと共に差し出された手を握り、願はまた同じように考えることを止める。

またしても、願は自分から目を背けるのであった。それがどれほど愚かなことと知らずに。

 

 

 

「………ちっ」

 

「おや。寧々……ああなるほど」

 

先程の願と咲希の側から見れば無邪気なイチャつきを寧々は舌打ちで見る。

だが、その表情は“リア充爆発しろ!”等と言う妬みや僻みではなく、何処か忌々しいモノを見たと言わんばかりの表情だった。

その直後、寧々に声を掛ける人物が現れる……そう。寧々の幼馴染“神代類”だ。

寧々の視線の先の願と咲希を見て、類は大体を察する。

 

「類…アンタのジャミング多分効かなかったんだけど」

 

「……おや。ジャミングが効かない…のではなく効いている上では無いのかい?」

 

それもそうか。と寧々は自分の片手を顎に持っていき、思案の方向に向かった。

本日もそうだ。“似たような記憶のある人達”の手を使って願とLeo/needを分断していたというのに簡単に破られた。…それはつまり……

 

「…向こう3人では4人全員抑え切るのは難しい、か」

 

「どうしても穴が出来てしまうだろうね」

 

策を練るしか他ない。そう類も考え込む。

一般的に“洗脳状態”にある人は、自分から“覚醒”するのが最も効果的である。

だがその覚醒を促すのを妨げる存在がいる。それがLeo/need。

この回帰とも取れるデジャヴの鍵を握る人物。そして“大切な仲間であった願”を洗脳している悪き奴等である。

 

「………ちなみに“リベラシア”の方は?」

 

「それも中々、みたいだね」

 

何処もかしこも手詰まりに近い。そう空を見上げる。

“リベラシア”それは“解放”を意味する言葉で、寧々達の中では“とあるナイトコード”の部屋を意味する。勿論、そこには寧々達と同じようなデジャヴを持っているとある四人が協力しているがそれでも中々上手くいかないらしい。

 

「それにしても…デジャヴを抱える条件は何?」

 

「おおよそ……“願に対する感情の大きさ”が有力だが……」

 

そう。このデジャヴは“同じデジャヴを抱えるのは多くて4人”。

そしてそのデジャヴは全て“外夜 願”という存在が中核を担っているだろうと当たりを付けている。だからこそ、デジャヴによる改変は起こっているのだが…

 

「ビビバスがおよそ1人。ワンダショが僕達2人。モアジャンが3人。そしてニーゴが4人。」

 

「そしてレオニが4人…と。」

 

純粋な戦力差は10対4だ。本来ならもう勝ってもおかしくないと言うのに、全く事態は好転しない。多分、記憶が戻ったと同時の行動力のアドバンテージが効いているのだろう。

 

「多分、レオニが抱える記憶は“願がいなかった自分”」

 

「……それは辛いだろうね」

 

最悪を考えればそれが四個。単純計算であの少女達は四回の人生を繰り返している。そしてそのどれも全てにおいて“愛する人”と付き合う事が出来なかった。

目の前で他の人に奪われて、全ての関心を失われた。その絶望は言葉に出来ないほどだろうと一瞬だけ類は憐れむ。

 

「だが……」「だけどね……」

 

「「勝つのは我らワンダーランズ×ショウタイムだ。」」

 

 

 

わたしは生まれた時から既視感…というものがあった。

何もかもが分かる。わからない事がない…いや。わからない事がわからなかった。

でもそんなつまらない現実の中、わたしの夢の中だけは綺麗に輝いていた。

声が大きいけどいつも陽気な団長◼️。引っ込み思案のわたしの手をいつも引いてくれる笑顔が素敵な◼️◼️。わたしの幼馴染で、ショーを盛り上げてくれる演出家◼️。……そして縁の下の力持ちで、たまに見せる綻ぶ様な優しい笑みの◼️。

まるでそのショーをしているわたしの夢はまるでキラキラと輝くたった一つの星で、わたしでは届かないんだろうなと思っていた。

 

『………寧々?』

 

『…………類?』

 

でも違った。わたしと同じ記憶を類も持っていた。

類は前と同じように“いずれ会える仲間”のためにいつか見た発明品を前倒しに、そしてさらに発展させようと発明にのめり込んでいた。

………わたしは?わたしは夢で終わらせて、良いの?

 

『うん。劇団には入らないよ』

 

『本当に良いのかい?』

 

『うん……他の手段を取る事に、する』

 

◼️のしていた事を一人で、してみようと思う。

もし私の歌ってみたが私を“ショーの歌姫”だと分かったのならば、きっと同じだ。

 

『……そういうことかっ!』

 

『…る、類?』

 

中学生のある日。わたしの歌い手活動もノリに乗っている最中、類はまるで気が付いてはいけない事に気がついたように頭を抱え、私の部屋に駆け込んだ。

 

『……願だ。願の取り巻く環境が、違う。』

 

『ウソでしょ…!?』

 

同じだと思っていた。事実、わたしが分かる範囲だと同じだった。

ASRUNの桐谷遥。バラエティアイドルの桃井愛莉…Cheerful*Daysの日野森雫。

現時点での知っている有名人は変わっていない。

同じ仲間の、司もえむもおおよそ本人から聞いた過去をなぞっている。はずだった。でも忘れてはならない。私が劇団に入っていないと言うことは過去は簡単に変えられると言うのに。

 

『願が倒れなかった。』

 

『………ありえない』

 

ただでさえゲームをする手を止めていたのに、そこに聞かされたのは確実に“過去が変わった”願の現状だった。本来ならもう願は倒れ、それを司の手で救われる筈だったのだ。そして…もしそこで願が倒れなかったのならば、嬉しいことであるがワンダショと知り合う未来が消える、という事が起きる。起きてしまったのだ。

 

『“幼馴染”……』

 

『寧々…?』

 

そしてわたしは考える。もし、ここで願が倒れなかったのならば得するのは誰だ?

そう。たった一つ思いつく。もし“私たちと条件が同じなら”ありえない話では、ない

 

『レオニは?』

 

『……!…調べる』

 

寧々の言いたい事が伝わったのか、類はすごい速さで自分の部屋に帰っていく。

駆け込んだ時は、キチンとドアから来たのに帰る時は二階の窓からとかどういう事だ。……まあ出来なくは無いだろうけどああ見えて一度は世界を圧巻したショーのメンバーだ。2階から飛び降りる肝の太さは持っている。…命綱無しは少し考えるが。

 

『………寧々。正解だ』

 

『ああ。……これは酷い』

 

類が何処から手に入れたのか(おおよそ人には言えない手段だろうが)、その四人の調査を終わらせて来た。……答えは“黒”。もはや真っ黒と言えるだろう。

“幼い頃から聡明で願を含めた幼馴染4人を第一に考え、音楽に明るい少女達”

 

『願の記憶の有無は分からないけど…こっちは確実に“ある”だろうね』

 

『殆ど確定でしょう』

 

Leo/need。それはあの幼馴染が立てたバンド。その名前が出てくるのは高校生からだと言うのに、中学生からもうそれを自称する。確定だろう。

 

『真っ先に願を確保した…そう見るべきだろうね』

 

『やられた……』

 

確かに。“手に入らなかったモノ”をもう一度手に入れる機会が現れるのならば、真っ先にそれを手に入れるのは分かりきった話だ。

 

『……こっちも、同じを探す…か?』

 

『……どういう』

 

類が言うにはこうだ。“記憶”を持っているのは私たち二人とレオニだけ…本当に?

 

『もしかしたら、まだ居るのかもしれない』

 

そこから先は言わないことだ。…実は記憶を持っていたのが見つかったり。

実は意外と早くに結成となったグループが有ったりと、そしてそのどれもが願と一緒だったと言う並行世界…“もしも”の可能性があった世界。

そしてそれ以上に分かっていく、願を取り巻く現状。“悍ましい”現実。

 

『願を解放する。まずはそこからだ』

 

グループで願との記憶が違うにしても、それでも現状を許せるほどわたし達は非道じゃない。まずは手を組み、願が正気であってからもう一度願の手で何処に行くのか決めてもらおう。勿論、恨みっこなしで。

 

「頼んだわよ…“遥”」

 

 

 

「おや?願くんじゃない」

 

「…………桃、井さん」

 

咲希の手に引かれ、幼馴染と再開した後いつものように時間が済むまで一緒にいた。いつも居る場所は異なるが、今日はファミレスだった。いつものように一歌達が課題を終わらせるのを横目に、自分もやるべき事をし終え、解散した直後…だった。

 

願は晩御飯の用意をするために、スーパーに向かったのだ。

何が安いのか…主婦に混ざりながら願は一人歩いているところだった。

変装はしているが、特徴的な桃色の髪の毛が見え隠れしている願もよく知る人が居たのだった。

その名前は“桃井愛莉”…芸能界のアクション系アイドルとして名を馳せていたのにある日突然事務所を電撃引退の後、同じように電撃引退をした国民的アイドルの“桐谷遥”、ミステリアス系のアイドルとして名を挙げてい“日野森雫”そして全く無名だったのにこの3人と結成してから開花したと言われる“花里みのり”。

その四人の無所属アイドル…にして最もトップアイドルに近いと言われるグループが“MOREMOREJUMP!”である。

しかし、ここでもそうだが。願の何処に琴線が触れたのか。プライベートでの付き合いは長い方である事に間違いはない。

 

「買い物?」

 

「あっ。桐谷さんも」

 

願の後ろから声が掛かる。首筋に掛かる息の生ぬるさに少しくすぐったさを感じながら振り返ると、そこには先程から噂している“桐谷遥”が立っていた。

 

「遥、でいいのに」「愛莉で良いわよ」

 

「……………」

 

何故だか知らないけど願はよくこの二人、そしてMOREMOREJUMP!…モアジャンにいい意味で目をつけられる事は多い。事実通話アプリ、SNS上ではよく話し込む事が多いし、まだ未公開のmvを見せられて何処が悪いか?等と聞かれる事が多い。ネット上での付き合いが長い“もう一つのグループ”と言い、何故自分にそこまで聞いてくるのか。願は不思議で仕方なかった。

 

「あっ。そうそう…あの話決めてくれた?」

 

「“アシスタント”の件ですね」

 

それに加えて願はモアジャンのアシスタント…ひいてはプロデューサーにならないか?と前々から勧誘を受けている。本当に何故……?となるが向こうは本気も本気らしい。事実今“やる事を許可されているどのアルバイト”よりも条件が良く、そして“何故か”そのアシスタントというのは非常に自分に向いている気がしてならないのだ。……だけど問題は……

 

「勝手に勧誘しないでくれます?」

 

「最後に決めるのは願よ。貴方達の出番じゃない。」

 

「………穂波………」

 

願と遥、愛莉が話し込んでいる横から堂々とした足取りで願の横に穂波が立つ。

“望月 穂波”。願の幼馴染の一人。そして遥達にとって“最も警戒している少女”。

 

「へぇ。“わたしたちの願”を無理やり奪おうとしてるように見えますけど」

 

「あなた達の執着と同じように言わないでくれる?」

 

愛莉は親愛や友愛、ありとあらゆる好意を込めて願を見ていた眼差しは、今や瞳孔が開きかけている飢えた獣のように、怒りと憎悪を込めて穂波を睨む。…穂波も同じように愛莉を睨んでいる辺り、二人の仲の悪さは筋金入りなのだろう。

 

「執着しているのはそちらでしょう?」

 

「あなた達の願の束縛に比べたらマシよ」

 

「願ー?向こう見に行かない?」

 

「……これ放置して良いんですか?」

 

「良いよ。行こ」

 

尚その間、愛莉と穂波が本格的にぶつかり始めようとする頃には、遥は一人抜け駆けと言わんばかりに願の手を引いて、違うところを見に行った。

だが、そんな事も知らんとばかりに少女達の言い争いは…静かにされど激化する事になる。

 

「そういえばそうね……」

 

だって一度、いえ?“四回”かしら?負けているものね。

そう愛莉は言う。願は必ず、Leo/needの手を離れる。そういう運命を絶対に辿るから、そして今回も必ず喪うだろうと、愛莉は確信を込めて言う。

 

「………言うじゃないですか」

 

穂波に仄暗い炎が宿る。…幼馴染、わたし達は“異なる未来”を歩んでいた。

そしてそのどれもが願を奪われ、歯噛みすることしか出来なかった未来。

それだけなら、良かった。それだけなら。今世では諦めてしまえばいいから。でも無理だった。貴方の温もりを、忘れられない。貴方の温もりは記憶を失った貴方も一緒だったから。

 

「……これ以上は願を苦しめるだけよ」

 

愛莉はそう捨て言葉を吐き捨て、その場を去っていく。穂波の俯いたその顔を見ることなく。

 

「………………そんなこと」

 

でも止まることなんて。出来ない。

穂波は分かっている。穂波は知っている。

でも、だからこそ止める資格なんて無い。“宿願を叶えられた私”とは違う。から。

 

 

 

「願ー。今日晩御飯一緒に食べない?」

 

「えっ……それは」

 

視点は変わり、抜け駆けと言わんばかりに願の手を引いた遥に移る。遥にとって、自分に美貌がどんなものか。そしてどのように利用するかとか慣れたモノだ。事実、記憶の中ではベットに押し倒した願を赤面させた事がある。

 

「じゃあ代わりに……モアジャン。来てよ」

 

「……………」

 

まあ頷かないだろうなと遥は思っている。

あまりにも交渉になっていない。…でも今はそれで良い。願の心に残るのならば。

 

「……分かってて言うんですね」

 

「?卑怯とは言わないでしょ?」

 

願は曖昧に笑う。触れてしまえば簡単に壊れそうなほど薄い笑みを。

 

「私としては……」

 

遥は願の耳元に近付く。顔と顔の距離は殆ど無い。後少しどちらかが顔を近付ければ唇と唇がくっつくだろうと言える距離感で遥は自分の武器で願を骨抜きにする。

 

「……モアジャンに。私のモノになって欲しいなって」

 

遥としては今、願が体制を崩して倒れ込んでくれたら舌まで入れた過激なキスで骨抜きすることなんて容易い。事実、記憶の中にある願は私のディープキスで骨抜きになった後、みんなで搾り尽くした。

 

「……分かっているんでしょう?」

 

「何が??」

 

「…………酷い人だ。本当に。」

 

笑みを殺し願は苦しそうに、まるで水の中に溺れているかのような苦悶と、嘆きに満ちた顔をして私を見ている。目頭に宿る水滴を撫で取り、願を抱き締める。

 

「大丈夫。願は出来るよ。」

 

「……………うん………」

 

どいつもコイツも見当違いの想像して…気色が悪い。そう遥は心の奥底で吐き捨てる。何が“洗脳されている”だ。そんな事、あの願に出来るわけが無いだろうに。

そもそもレオニだってそうだ。所詮洗脳と言っても刷り込みの様なモノ。それは長くは続かないし、持たない。何故ならば人は“繋がる”生き物だ。多くの意見、思想、そして想いに触れて多くの事を知る。……だからこそ、願をレオニから離そうと多くの人が願に触れたせいで、変な形で願という存在にヒビが入っている。

 

「少しずつ…少しずつ、飲み込んでいけばいいから」

 

「あはは……恥ずかしいな…」

 

私たちといた時の願を孵化した鳳凰だとするならば、今の願はまだ殻の中という状態だ。しかも殻の中で一人っきりで泣いている状態。

泣いて、泣いて、泣き疲れて願はようやく私たちを受け入れる。だって前もそうだったから。今、必要なのは“逃げ場所”だ。貴方を受け入れると分からせてしまえばいい。

 

「…また、二人だけで会おうね?」

 

「はい……桐谷さんが良ければ」

 

 

 

嘗て、生まれた時からそうだった。“アイドルにならなくては”

手段は知っていた。自分を“どう上手く魅せられるか”なんて考えるよりも先に身体が覚えていた。…別に特段不気味だとか、気持ちが悪いとかは無かった。

だって、夢の中の大人になった自分は綺麗だったから。アイドルとして頂点に立ちながら、背中どころか体全体を預けられる3人の仲間と共に、そして恋心を抱いている彼を相棒に、笑顔の絶えない日常を“アイドル”として生きていたのだ。

 

『………私の、前世』

 

それが何を意味するのか?…意外と簡単に答えが出た。私の前世にして私がここから歩む道。決まった未来。不思議と納得できたし、未来への失望というより…期待が高まった。……ただ一つ。不満があるならばこの空いて埋まらない、胎だろうか

齢五つが何を言ってるのかと自分でも不思議だが身体が、心が願を欲して止まないのだ。

 

『そうだ……会いに、行こう』

 

そして幼い自分は突拍子のない事をする。それは、願の家に一人で訪ねるということ。別に不可能ではなかった。事実高校生の時は朝のランニングついでに願の家までよく行ってたし。

 

『……………はぁ……はぁ…はぁはぁ……』

 

なんでこんなに遠いの?!と当時は驚愕したが、少し考えればわかる話だろう。

“高校生のランニング”と“五歳児の歩く歩幅”が同じなわけが無いのだから、当時の私はそんな簡単な事も分からずに半ベソをかきながら願の家まで歩いていた。

 

『…………!?◼️!?』

 

声、が、聞こえた。私を呼ぶ声、が。抱きしめられる。温もりが伝わる。

わたしは…“私”は知っている。私はずっと、ずっと待っていた。

……私はね。願が覚えてなくても、良いの。いえ…別にそちらの方が私はとても辛い。でも、それで願が笑ってくれるのなら。願の苦しみが芽生えないのなら。それだけは後は十分。…でもたまには私のライブを見て、私の存在を脳裏にでも焼き付けてくれたらきっと、私の二回目に意味はあるから。

だからこそ…許さない。許してなるものか。

願の想いは歪められた。願の想いは芽吹く前に無惨に踏み荒らされた。踏み躙られた。

 

『Leo/need………ね。』

 

別に私の力で潰してしまうのは簡単だ。だって、願から学んだ人心術は私が一番受け継いでるから。今の私は、前世の願が持っていた様な人脈をそのまま持っているに等しい………でもそれを使って、潰した所で願はきっと私を拒絶するだけ。

 

『最後に選ばれるのは、私たち…よ。』

 

実は、みのりと愛莉も同じだった。…まあ言われれば確かにそうだろう。

愛莉はバラエティだけじゃなくアクション、スポーツ…今の愛莉に出来ないことの方が少ないと言う完璧具合だ。一体何処に向かってるんだろう?

みのりもそう。みのりはネット上での活動という視点から“踊り手”、“歌い手”の活動をしてたらしい。…どうやらそこ繋がりでニーゴや草薙さんとも“似たような記憶”の持ち主ということでそこからの話は比較的早かったが。

雫は正直、分からない。あるように見えて無いと言わんばかりの行動をする事が多いし、東雲くんみたいに微かにある感じだとも言うかも。それがデジャヴか夢かどうかで差が出てきているけど。

 

『これが…今の願、くん?』

 

『そう。みのり。やられたのよ。』

 

悔しそうに愛莉は歯噛みする。まあ勿論、こんな所でつまづく様な私たちじゃないけど、まだ手は足りない。もっと多くの手が必要だ。

だからこそ、似たような人を探した。願と私たちの幸せのためにその身を費やせ。

 

「………後は、任せたよ?絵名。まふゆ」

 

 

 

 

夜。深夜。久々の一人の夜という事で、願は夜ふかしをしようとココアを用意してパソコンのデスクトップに向かった。二重、三重にも及ぶパスワードを入力した後、用心深く開くそのアプリは“ナイトコード”。ここでもログイン続きではなく毎回毎回入力している。……だってそうした方が良いって言うから。

 

「……こんばんは。皆さん」

 

『あっ。来たね!wish!』

 

基本的に、ナイトコードの利用は“これ”だけだ。

中学生の頃。少しだけ自分が“何”なのか分からなくなった。前世の記憶というアドバンテージも天才がそのまま形取った様な幼馴染には敵わない。何をしても敵わない。……もはやその心意気でさえ俺は十何年しか生きていない小娘に負けているのだ。

丁度その時だった。何もかもが嫌になって、誰にもバレずにサボることだけが上手くなっていったあの日。俺は学校の屋上で出会うのだ。

 

『……願?』

 

「いえ……それで今日は何をするんですか?」

 

出会ったのは一人じゃ無い。そこの繋がりがネット上での俺の心の拠り所になった。…今でもそうだ。幼馴染が、一歌達が“輝く星”ならば、ここは…“ニーゴ”は篝火だ。決してこれは綺麗な感情では、無い。でも何をしているよりも幼馴染やそれ以外と居るよりも安らぎを得られるのは不思議と認めている事だった。

 

『今日は…特に無いかな。』『久々にアンタの話、聞いてあげない事もないけど』

 

わー。えななんツンデレー!とAmiaの笑い声とそんなんじゃ無いわよ!とAmiaを叱るえななんの声。……そこに止めるように声を掛ける雪とK。

………ああ。安らいでしまう。ここを居場所だと思ってしまう。

 

『ダメだよ?願』

 

「…………!?」

 

『……wish…?』

 

脳裏に刻み込まれた言葉が耳の奥で再生される。

自分の全能感が、転生者という自分の心を支えていた支柱はあの日、完全に破壊され尽くした。何をどうやっても、幼馴染には敵わないんだって分からされた。

 

「ううん。なんでもないよ」

 

その日の言葉が体を疼かせる。…本当にこれは許される行いなのか?一歌達に黙って…こんな事して良いのか?そんな恐怖が沸々と湧き上がる。…まるで行けないことをしているかの様な、そんなスリルを楽しめる程俺の心は強くあれなかった。

 

『…………願、“落ち着いて”』『…ちょっ。まふゆリアルは……』

 

「………大丈夫、ですよ。お騒がせしました」

 

雪の…まふゆの一声が願の揺れに揺れていた精神が落ち着く。

その声は何処か覇気があって、願の暗い考えを吹き飛ばす。

 

『……そ。ならいいけど』『でもやっぱりおかしいよ』

 

絵名の安堵する声と、そこに待ったを掛ける奏の声が掛かる。

だからこそここで動くのは、まふゆだった。

 

『だから……直接聞くね。』『……え゛……まふゆもしかし──』

 

「─────────来て」「……ミク」

 

まふゆの呟くような一言と共に願はデスクトップから伸びる半透明な腕に掴まれ、極光が部屋を満たす。願はこの現象を知っている。セカイを見守る者…バーチャルシンガーのミクの手だ。……その手はまふゆに似たのか人並みの安らぐ暖かい手をしている。

 

「おかえり」

 

「………もう、ミク……」

 

次、目を開けた時にはもうそこは“一風変わった大自然の中”だった。

日は優しく光を降り注ぎ、遠くには山脈が見え白い雪が降っているみたいでまた違う方向には川だったり、大きな大樹が生えていたりする。……そしてその中でここだけは違う。大理石にも似た白いタイルが敷き詰められていて緑色の蕾みたいな形状の中にソファーや椅子、机が置かれてある。

ここを、まふゆ達はこう言った……“エンテレケイアのセカイ”と。

 

「大丈夫。私が、願の全てを抱きしめる」

 

セカイにはどうやらミク…バーチャルシンガーが存在するらしい。

けどどうやら聞く話によるとミクはセカイによって異なる姿をしているらしく、ここのミクは白い髪にオッドアイ。そしてその服装は何処か白い花が咲いたかのような白髪によく映えるワンピースを着ている。

 

「……ミク……」

 

なぜか知らないが、いつも願がこのセカイに来たら必ずと言っていいほどソファーでミクの膝の上…つまり膝枕の体勢で出てくる事しか無かったのだ。

そして大体、願はミクの撫でる手とまるで子守唄と言わんばかりの歌声に逆らう事なんて出来ず、意識が遠のいていく。

 

 

「ミク。どう?」

 

「眠ったよ。」

 

願が意識の遠のいた後の話だ。その数分も経たぬ内に、まふゆがセカイに入ってくる。セカイを統べる主人は、“朝比奈まふゆ”その人であることは間違いない。

だけどそのセカイは基本、“ニーゴ”のみで解放している。実は結構昔から。

だからこそ、セカイという概念に関しては不思議な力を使う事が出来るようになっている。…例えば人一人、自分のセカイに“untitled”を介さずに呼び込む…とか

 

「……ならいいや」

 

乱雑に置かれてある椅子をまふゆは無造作に引き寄せ、願が寝ているソファーの近くで腰を下ろす。ミクのように撫で続けるのではなく一撫でした後、持ってきた本を読みながらミクの歌声に耳を傾ける。

 

「あー!まふゆ抜け駆けしてるー!」

 

「あんたはまえからそう……」

 

「まあまあ絵名も落ち着いて…」

 

その数分後。まふゆのセカイに3人が飛び込んでくる。

基本的に願を除く四人はこの緑の蕾…絵名はここを中世なら薔薇園の中にあるティーパーティー会場と言うが、そこに現れる。……尚いつか、瑞希が遠くまで行って痛い目を見たのは昔の話だ。

 

「……寝てるの??」

 

「うん……最近、色々と“忙しかった”みたいだから」

 

「ウチの彰人も迷惑、かけたみたいだからね」

 

「愛莉にも注意しとくよ〜」

 

……この会話に本来ならば違和感というものは存在しない。

そう“今ここに居る者全てが願の日中に関わりが無い事”以外に少女達の話に矛盾点は存在しない。ミクが願の最近についても、絵名が弟である彰人と願の交流も、瑞希が愛莉と願の雑談も、その全て願は声に出したことも、口にしたことも無い。

 

「……でも、よく考えたよね。」

 

“願のスマホにミクを入れておくの”

奏は呟く。そうまるで“盗聴”したかと言わんばかりに願の現状をニーゴがよく知る理由は一つ。全ては“偶然”ミクが願のスマホに迷い込んでしまい、“偶然”ミクが願の日常に興味を持って、“偶然”願の発する言葉と、周囲の言っている事をミクが覚えているだけ。……そう全ては偶然であり、ニーゴが想像もしていなかった事象。

 

「……だってもう一回、願と遊びたい」

 

ミクが小さく呟く。

本来、バーチャルシンガーという存在はセカイで本当の音を見つけるためのアドバイザー。セカイを作り上げた存在以外に興味も交流もしない。だけどここのミクは少し違う。……それはミクの中に宿る小さな光。何時か、何処かで“誰もいないセカイ”のミクとしてまふゆ達を導いた。記憶。

 

「はー……可愛いねぇ!ミクは!」

 

「む。可愛いは余計。立派なレディだから」

 

そんな健気で可憐しいミクの姿を見て、瑞希がミクの髪を撫でる。

今の慈愛と、恋慕が入り混じった微笑みは決してバーチャルシンガーという枠組みでなく一人の男を愛する女そのものだ。それをニーゴは認めているからこそ、願の今をミクに任せていられる。

勿論。そんな可愛いなんて言われる自分じゃないと、胸を張って否定する。

こう見えて一番“覚えている”のはミクである自身だと思っている。“前の世界”でいついつにまふゆと願が結ばれたか覚えているし、褥の睦言も赤面しながら盗み見た事も覚えている。……一番ニーゴの未来を覚えているのはワタシだとミクは自負している。

まあそんなミクの姿にニーゴ全員が可愛い娘と言わんばかりに可愛がられているのだけど。

 

「………………◼️◼️……」

 

「苦しそうね…」

 

願の呻くような寝言を発する。“前の世界”では変な形で願の抱える闇がニーゴに露出し、これまた変な形でそれは解決された。だけど、今はそうはいかない。あの世界では願はニーゴだけだったが、今はLeo/needにそしてその他の多くに縛られている。

 

「もう少し…だからね。」

 

まふゆが願の首筋に一つキスを落とす。

それを他の四人は羨ましそうに眺めるが、これは残念ながら願がセカイで安らぐ時一人一回だけがこれを許すという取り決め。ミク、奏、まふゆ、絵名、瑞希の順番で回り回っている。

 

 

そう。ここは揺らぐ事なき大聖処

 

揺籃の檻にて眠るは、ひとりの廻りモノ

 

五つ星は、殻が破れるその日を───

 

 

 

 

『……私は……』

 

産まれる前の記憶があった。前世が不幸だったかと言われればそうでもない。

確かに、幼少期やニーゴのみんなと会うまでは少しどうかなと思わないところもないけど総評するなら“幸せ”で有っただろう。…信頼できて本音を余す事なく言い合える仲間に出会って、一生を添い遂げたいと思う人が出来て、そして“未来”まで出来た。

 

(ああ。なりたい……私は“朝比奈まふゆ”になりたい)

 

産まれたその日から私は未来の幸福を知っていた。だからこそ私は何よりも早く“羨望”という感情を覚えてしまった。今となっては笑い話にしかならないが、あの時の私は本気で“朝比奈まふゆ”になりたいと思っていた。言動も、おしゃれも、癖も何もかも“朝比奈まふゆ”を模倣した。……ああ。だからこそ、あまり前世とは大差が無い幼少期を過ごした、気がする。

 

(会いに行ってみる…?)

 

中学生の頃。だろうかふと私は“他も同じような人が居ないか”気になり始めた。

もし。居るのならきっと楽しい筈…そしてそれ以上に自分が“朝比奈まふゆ”なのか聞いてみたい気持ちがあった。

 

「貴方が暁山瑞希さん?」

 

「んー?どうしたの?“朝比奈さん”」

 

瑞希を、Amiaを選んだ理由は消去法だ。

奏は、Kは多分引きこもりで低確率のランダムエンカウントになるだろうし、絵名…えななんはもし記憶が無かったら無駄な言い合いになりかねない。何より、瑞希の噂は早い頃から耳に入っていた。授業も受けないけどいつもテストは順位一桁常連…性別不明のサボり魔。として

 

そしてそんな瑞希は以外と早く見つかった。

屋上で1人何かが楽しげに肩を揺らす瑞希、私の姿に気が付いたのか、顔を上げて眼差しが交差した瞬間だった。

 

安心した。安堵した。

 

「初めまして。」

 

「うん。初めまして」

 

心に張った虚勢が崩れ去る。描き続けた“朝比奈まふゆ”が溶けていく。そうだ。私こそ“朝比奈まふゆ”で“雪”で“ニーゴ所属”だ。

 

「随分と遅かったね。“雪”」

 

どう口を開こうか悩んでいる最中、瑞希が先に口を開く。そこから呼ぶ私の名前は“現時点では無いはずのHN”。つまりは“同類”だ

 

「仕方ないじゃん。確証が無かったんだから“Amia”」

 

わざわざ“わかる人にしか分からない名前”を使って呼んできたのだ。自分もそう呼ぶべきだろう。…すると瑞希は人が変わったかの様な小悪魔じみたニンマリとした笑みで近づいて来る。

 

「それで“優等生様”は授業に受けなくて良いの?」

 

「……冗談」

 

丁度、授業開始のチャイムがなる。

本来なら私は教室の席に座って授業を受けないといけないはずだ。そう“それ以上に大事な事が無いのであるのならば”

 

「今以上に、それは必要な事?」

 

「…………とんだ優等生だ」

 

口では皮肉ってる瑞希でも表情を見れば喜んでいる事が丸わかりだ。事実、瑞希は持ってきていたのかベビーカステラが入った袋を差し出して来る

 

“優等生の朝比奈まふゆ”ならきっと注意して受け取らないし、そもそも校則的にもお菓子はあまり宜しくない……久々に食べたけど甘くて美味しい。今度自分でも買いに行こ

 

「これで私も何も言えなくなっちゃったわけだ」

 

「ほんとに雪、なんだね」

 

手についた砂糖の滓を軽く舌を出して舐めとる。そんな明確に瑞希の肩を持つ私を見て唖然としてる様な呆れている様な…何故?

 

「普段の噂に聞く優等生は何処に行ったのさ」

 

「そんなモノ最初から存在しないに決まってるじゃん」

 

優等生であるのはその方が普段動きやすいから

優等生であるのはその方が“有象無象”にウケが良いから

優等生であるのはその方が将来、ニーゴに使えるから

それだけだ。全部はニーゴのためでしか無い。

 

「それに瑞希も人の事言えないでしょ」

 

「ナンノコトヤラ」

 

撒き餌にしては“やりすぎ”だ。授業を受けていないのにテストではいつも順位一桁。性別不明な気まま屋。そんな噂になるように行動する。そう瑞希が動いた理由は?

 

「誰釣るつもりだったの?」

 

「………願がねー」

 

唯一分かんないの。そう瑞希が溢す。

曰く、絵名は簡単に見つかった。SNSで絵を上げてるところに接触。そこから奏が接触し(結局お父さんは変わらなかったらしい、才能がバレないようにしていたのにお父さんは自分の才能のなさに絶望して亡くなったらしい)、後は私だけだった。

後は唯一現状が分からない願だけ。

“ある”のか“無い”のか。それさえも不明。正直に言うと簡単に見つかるのかなと考えていたけど。

 

「まあ取り巻く環境がめんどくさいというかー」

 

一応、顔見知り程度には仲を深めてあるらしい。逆に瑞希でさえもその程度で止まってしまっている。その理由は一つ。

 

「Leo/needって覚えてる?」

 

「……星乃さんとかの?」

 

そうそう。…願の幼馴染だった人たちが作り上げた高校生バンド。

だけどその名前が“中学生”から出てる。どう言うことか。

 

「………つまり同類で、敵?」

 

「ま。そうなるだろね」

 

上手いことこっち側に誘導してるから少し待ってよ。

そう瑞希は締めにかかる。……そうそれこそ、これから長きに渡るLeo/needと願を解放したいリベラシアの戦いの幕開けに過ぎなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私たちは……生まれた時から“欠乏”していた。

足りない。足りない。足りない。足りない足りない足りない足りないタリナイ

満ち足りてる筈なのに。何も、“不足”している事なんて無い筈なのに。

 

『一歌…』『穂波…』『咲希…』『志歩……』

 

顔を見合わせたあの日。私たちは“全て”思い出した。

とは言っても、全員が同じ記憶を取り戻したわけじゃない。一歌はビビバスに願を奪われた人生を。咲希はワンダショに願を奪われた人生を。志歩はモアジャンに願を奪われた人生を。穂波はニーゴに願を奪われた人生をそれぞれ思い出した。

……勿論その代償は、私たちの“発狂”というどうしようもないモノで支払う事になったが。

 

三日三晩。狂い哭き叫び、自らの身体を破壊しかねない怨嗟と絶望の声。そして恐ろしいまでの知識と叡智。自分が塗り潰されて、消え去ってしまうそんな後に私たちの脳内のリミッターは簡単にぶっ壊れてしまった。

 

『……願が』『げんくんが…』『願が……』『願くんを…』

 

『『『『ホシイ』』』』

 

願との再会は至って容易だった。産まれながらにして親の愛から滑り落ちた願。

そんな願はたった一人、あの冷たい家の中だけが世界全てだった。

だからこそ、私たちの呼ぶ声には何の不信感も無く手に取ってくれる。

 

『『『『これからずーっとよろしくね?』』』』

 

呪いを植え付けた。呪詛とも言える執着をまだ無垢で何も知らない願に侵食していくのが謎の幸福感と達成感を私たちに教えた。正直興奮しなかったかと言われれば嘘になる。

願は違和感を覚えながらも私たちの言葉には逆らえなくなってしまった。

まあそうだろう。やることなす事全てが私たちに敵わない。となれば如何に強かった願であったとしてもまだ何も知らないのだ。手中に置くのは難しくない。

 

『願は本当に何もできないね。』

 

『ぜーんぶ。身体に弱いアタシにも負ける』

 

『大丈夫だよ?願くん。全部わたしたちがして上げるから』

 

『もう。身を任せて。弱い願が私たちに任せるのは間違ってないから』

 

少しずつ、少しずつ願の芯を削っていく。少しずつ、少しずつ願が私たちに“依存”していくのが分かった。………ああ。もう潮時だ。そろそろ始まってしまう。願が離れていってしまう。だから私たちは最後の一手を掛けることになる。

 

『願……可愛いね。願。』

 

『うんうん!……どう?押し倒されて?』

 

『力の弱いはずの私に負けるなんて……どう?』

 

『大丈夫…優しくして上げるからね?』

 

中学生になるあの日。私たちは──────────。

ああ。でもベットの上で乱れ狂う願のその姿はとても扇状的だったし、途中から私たちが下になっていた気もする。そんな夜…気がつけば一日経っていたっけ。

 

 

まあ。そんなんだ。願は“色々とおいた”を最近は繰り返しているみたいだけど。

それもそれで可愛い。最終的に願は私たちに帰る他無いのだから。

可哀想な願。でも安心して私たちに囚われて……ね?

 

 

 






外夜 願

被害者と言われれば被害者だし加害者だと言われれば加害者。
ちなみに前世の記憶は据え置きですが、if・本編両方の記憶はありませんので悪しからず。
転生して今度こそ幸せになりたいと思っているところ、突然知り合い?らしい幼女に連れられ、お前も幼馴染だパンチを食らって幼馴染になった経緯を持つ。
ちなみにその幼馴染とんだ天才で転生したアドバンテージを全部破壊されて、無意識・無自覚に頼りきりになっていた転生者としての精神性を失った。それ故に、非常に不安定な存在になってしまった。

中学の時に幼馴染に美味しく頂かれて(意味深)以来、なんか社会的に立場のある同年代と関わることが増えた……何故?(すっとぼけ)
ちなみにどいつもこいつも(勉学的に)天才で、アイドルだったり作曲グループだったりとこれまた無自覚に願の芯が破壊されてる。



Leo/need

やべぇ奴ら。その狂気は止まることを知らず。



リベラシア

かっこよく言ってるが対レオニ集団。“洗脳されている願”を助け出すために集まっている奇跡のチーム。何かと策を練っているが人数的に優っているのに未だ進展がないあたりまあお察しで。
ちなみにニーゴのセカイの名前とミクの抱きしめる発言でピンと来たのならきっと作者と同志。

ちなみにもし解放できたとしてもそこから泥沼になる。

次回何書きましょう(最終的に全部書きます)

  • 異聞:魔法少女パロ
  • 異聞:夜の娘続き
  • もしも冬弥と兄弟だったら…
  • もしも奏と双子だったら…
  • もしもまふゆと双子だったら…
  • TS願
  • 配信者願
  • 幕間1 続きリメイク
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