「(幼馴染を恋愛的に見るのは)いやーきついでしょ」と言ったオリ主が幼馴染達に娶られるまで後…   作:ネマ

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ハーフアニバで志歩の限定くるとかマジ?
という事で志歩編です。R-18はもう少し待ってね…頑張るから

たった一人に情緒が完全に乱されているその姿。実に素晴らしいですよね

いつも通り、設定崩壊・過去改変・キャラ崩壊・独自設定注意です。





相変わらず周囲に満更でもない様子を見せてしまう幼馴染を見てしまった忠犬系(自称)クールツンデレの脳破壊度を求めよ。

 

 

「ん?……あれこれ志歩のノート?」

 

「…………届けるべきかな?」

 

願は一人、朝のリビングで一つのノートを片手に考え込む。

宮女も神高も大きな定期テストがあると言う事でいつものように幼馴染全員揃って願の家で勉強していた昨日の事。夜遅くまで家にいたお陰か色々と宅配したゴミが散らばったままだが、その中から一つのノートが見つかった。

 

裏表紙に書かれている“日野森志歩”の文字。志歩のノートと分かっているならふむ。

 

「確か………うん。俺の方が早いな」

 

いつの間にか冷蔵庫に貼られている宮女の予定表。どうやら一月回しで全員が持って来ているらしいが俺は見ないと言うのに置いておくあたり自分家のはあるのか心配になる。まあたまにこうして役に立つ事があるが。

 

「持っていく………か」

 

志歩の所属は1-Aだったはず。所属が分かるなら最悪先生か業務員を呼んで呼び出してもらう事だって出来る。なんなら先にメールでも打ち込んでおいた方が良いだろうか。

 

願『ノート忘れ。放課後持って行こうか?』

 

志歩『いや。大丈夫今日は要らない』

 

朝早いと言うのに志歩からは爆速で返事が返って来た。

志歩が要らないと言うなら置いていこうと机に置き直そうとした瞬間だった。

 

志歩『いや。嘘』

志歩『今日いる』

志歩『悪いけど持ってきてもらっていい?』

 

三連続で打ち込まれるメッセージ。

どうやら要るらしい。なら仕方ない忘れん坊の志歩に持っていてあげようと願は鞄の中に志歩のノートを入れて家を出たのだった。

 

 

 

「きりーつ。気をつけ。礼」

 

ありがとうございましたーとなんとも締まりのない返事の後に教室は騒がしくなる。今日の授業は全部終わり、ここからテストのために残って勉強する者。そんなの関係ねぇとばかりに颯爽と教室を出て行く者。大まかには2パターンに分かれる。

 

「おーい。願、残らねぇの?」

 

「ん?彰人。今日はビビバスで集まって勉強するんだろ?」

 

いつものように幾つかのノートを鞄に仕舞い願は帰ると言わんばかりに席を立つ。

その横から彰人が声を掛ける。帰ろうとする願の姿が意外に見えたのかその表情には少し驚愕の感情が見え隠れしていた。

 

「ああ。こはね…校外のメンバーも来るからな。一緒にどうかと思うんだが」

 

「うーん…参加したいのは山々なんだが…」

 

というより彰人にとって願には是非参加して欲しかった。何故ならば願がいる事で冬弥の監視の目が緩むことをよく知っているからだ。ちなみに逃げ出せたとしても道連れにしたい杏がチクって結局は逃げきれないが。

 

「今日は生憎と用事があってな」

 

「了解…じゃあまたな」

 

だが生憎と今日、願は宮女の方へ行って忘れん坊に忘れ物を届けにいくという大事な使命がある。それが終わればバイトが入っている。どちらにしろ今日はそこまで勉強会に参加できなかったというのもあるが。

 

そうして願は後ろ手を振り、学校を出ようと校門に着いた時だった。

 

「……………っ!?」

 

「………わぁ!!」

 

校門の右角から黒い影が蠢くのが見える。すわ亡霊か幽霊かそれともお迎えかと不謹慎ながらもワクワクと近付くとそこに居るのは宮女の制服を着たピンク目ピンク髪の少女が隠れながら中を覗くようにキョロキョロと首を伸ばしていた。

 

こちらに気がついたのかとても驚くようなアクションをされたのは甚だ遺憾ではあるがどうにかこの少女、願にとって聞き覚えがあるような気がするのは何故だろうか?

 

「あの!司くん…じゃ無かった。天馬くんって何処に居ますか!?」

 

「司先輩?2年生の?」

 

どうやらその少女は司先輩を探しているようだと願は知る。

確かによく見てみれば司先輩の話の中に出てくる“鳳えむ”という少女にとてもよく似ていると考える。一応のため、2年生の司先輩かと聞くとその少女は凄い勢いで首を縦に振る。……なら教えて大丈夫かと校内を指差す。

 

 

『2年生!神代ォ!天馬ァ!至急職員室まで来る事!!』

 

「ま…そういう事だね」

 

「あはははは………」

 

その直後。何かが破裂するような嫌な音と共に、校内放送が流れる。

騒がしくなる校内と、なにかを叫んでいる明らかに司先輩。いつものように変人ワンツーの面目躍如という事だ。一連の流れで大体察したのかその少女も苦笑することしか出来ない。

 

「……えむ!」

 

「あっ!寧々ちゃーん!」

 

その直後。薄緑色の髪の同級生だろうか?少女が走ってくる。

どうやら心配そうに走ってくるのと、少女…えむが抱きつきに行くあたり仲の良さは天井突破という所だろうか。実に微笑ましいと願は表に出す事もなく横に逸れる。

 

「ねーね。寧々ちゃん。さっきのって?」

 

「どうせいつもの類のやらかしだと思う。先に図書館行ってよ?」

 

どうやら本当に(疑っては無かったが)司先輩の仲間だったらしい。

なら心配ないなとその二人に背を向けて宮女の方向にと歩いていこうとしたその矢先だった。

 

「あっ……あの!!」

 

「……………俺?」

 

先ほどのピンク髪の少女。“えむ”らしい少女が願に向かって声を上げる。

後ろからの声に願は一瞬戸惑ったようにして自分を指差す。そんな困惑した願の様子にえむは大きく一度頷いた。

 

「ワンダーランズショウタイムってグループでフェニックスワンダーランドって所でショーやってます!是非見にきてほしーなって!」

 

「…………………どうもご丁寧に。」

 

そう返す他無かった。ワンダーランズショウタイムというのはよく知っている。司先輩のショーの名前。そしてこの少女たちはショーキャストだろうか。

願は一度頭を下げ、立ち去っていく。まるで輝く光を避けるように。

 

 

 

 

 

「……ねえ。えむ。どうしたの?突然あんな事言って」

 

「うーん?……似てる人をよく知ってるからかな〜?」

 

寧々は驚きの表情を隠せぬままえむに問う。寧々にとって願の存在は顔だけ知っているという関係だった。たまにクラスに来て特定の人と話しているだけだ。えむにとっては初対面だというのに何故そんなことを言うのか不思議で仕方なかった。

 

けどえむにとって願のその雰囲気は酷く見覚えがあるものだ。

“笑っているのに笑っていない”。泣きたいのに泣くことを忘れたような、まるで雁字搦めになって何処にも、何にもなれなくなって笑っているような、笑顔とは全然違う笑みが酷くえむにとって琴線に触れるものであった。

 

「あの人にもわんだほーい!ってなって欲しいって!」

 

「………もう。……まあそんな所がえむの凄い所だけど」

 

某朝比奈さんほどでは無さそうだけど、放っておけば簡単に堕ちてしまいそうなほど先ほどの少年は不味かったからヨシ!とえむは肯定する。

そんなえむの様子に寧々はこれこそえむの凄い所だと認めるばかりであった。

 

 

 

 

 

「すみません。」

 

「はーい。あれ?その制服は神高の?」

 

宮女に着くと神高に負けず劣らずの人気がある。それもそのはず進学校である宮女は確か遅くまで授業のあるコースがあると言う話も聞いている。

確か、志歩達のコースには関係なかったはずだがテストのために遅くまで残る人の方が多い辺りこの人気も納得のものだ。

 

そう考えながら近くを歩いていた用務員か教師に声を掛けると、自分が神高だと分かっていたらしい。勿論それで頷き、ノートを手に取る。

 

「1年A組。日野森志歩さんのノートを届けに来ました」

 

関係は幼馴染です。と自分の生徒手帳片手にノートを見せる。

これで自分の所属と関係が露わになりそして志歩のノートという物的証拠がある時点で十分証明になったのではないかと、後は志歩を呼んでくれるだけで良いのだがと突っ立っていた所だった。

 

「願!」

 

「…志歩」

 

少し待つか待たないかというところで後ろから志歩が飛び込んできた。足で器用に滑るように音を立てながら来るその姿はまさに焦っているようにも見える。

 

「あらあら…………」

 

息を荒げている志歩の背中を願は息が整うまで摩り続ける。その熟練したまでの自然な2人の姿は教員は何か考えるように手を頬に当て考える。

 

「日野森さん」

 

「はい」

 

その女性は教員だろうか。志歩の苗字を知っている辺り以外と志歩の教室の授業とか見てたりしてるのかもと願は考える。

 

「いいでしょう。今回ばかりですよ」

 

「えっ」

 

志歩の困惑した声と、願の微かに見開く眼差しを受けて教員は静かに微笑んだ。

 

「確か神高も考査が近かったはず…一緒に勉強してはどうですか?」

 

「…………良いんですか?」

 

特例ですよ。とその教員は笑っていた。何が教員の琴線に触れたと言うのか。

 

「ありがとうございます。“教頭先生”」

 

「………あ…え?」

 

願の右腕の裾を掴んで、志歩はその教員…教頭先生に頭を下げる。

すると未だに困惑している願の首に“許可証”と書かれたネームカードを下げられる。

これで本当に宮女に入るということになってしまった。

 

「…………ああ。そうそう」

 

未だに困惑している願の腕を引き颯爽と校舎内に入っていく志歩の背に教頭の声が掛かる。

 

「不純異性行動は、控えるようにね」

 

「……………失礼しますっ!!!」

 

さもありなん。

 

 

 

「……確か志歩の教室って少し遠かったけ?」

 

「うん。一番上の階。」

 

学校…というより進学の関係上3年を職員室に近くしておいた方が何かと都合がいいということで一年は一番学校の奥の方から詰められる事が多い。勿論、その分先生の目が行き届きにくいと言う利点もあるが。

 

「……本当に良かったの?」

 

「別にいい。」

 

そんな風に志歩に裾を持たれリードみたく願は志歩の後を追う。

そんな願は居心地悪そうに周囲をキョロキョロと見渡す。もちろん色々と視線が願に突き刺さるが、そんな風に見られるのが嫌な志歩は願の手を引きひたすらに早歩きで教室まで移動する。

 

「…………あれ?願?」

 

「穂波か」

 

そんな調子で着いた1-Aの近くを通った時横の教室。1-Bから願もよく知る顔が覗き込んでいた。顔を出していたのは穂波。願達の幼馴染の一人。

女子高である宮女に願が居るのが大層珍しいとその目を見開いて聞く。

 

「どうしたのこんな所に。」

 

「いや。志歩に…いや教頭先生?か?」

 

どう説明しようかと雑談混じりで穂波と向き合っていたその時。

志歩は、願と穂波の間に立ち鋭い眼差しで穂波を睨む。

 

「今日は私。」

 

「…………ふぅん?」

 

志歩はその眼差しに邪魔をするなと威を込めてそれを穂波は理解したのか酷く意味深な微笑みで志歩を見返す。

 

「そう言う事は……」

 

「穂波の時。露払いしてあげる」

 

「……………へぇ……」

 

ちなみに願はこの間見ていないし聞いていないし何なら思考を彼方に飛ばしている。知りすぎると言う事は良いことばかりではないと身に染みているのだから。

まあ願は察しが悪い方ではない。だからこそ何も知らないフリをするのだが。

 

「じゃあその条件でね。……邪魔して悪かったね」

 

「うん。じゃあ」

 

行こ。願。と袖を引く志歩に合わせるように願は足をすすめる。

そして教室を開けた瞬間そこには数名の生徒が座っていた。

 

「おかえり志歩ちゃ………えっ!?」

 

「志歩ちゃんが男連れてきた─────!!」

 

突然大騒ぎになる教室、それは十分に理解できると願は苦笑する。

もし自分が逆なら十分に大騒ぎする。男女の仲になるなら尚更、出歯亀みたく聞きながらも祝福は出来るだろうなと願はふと頭の中に幼馴染達の顔と共に思い浮かぶ。

 

しかし現実が願の思い通りになるわけがなく、逆に願“が”襲われるまで秒読みというところまで来ているのだが。というよりそんな内心が知られた時点でエンドだが。

 

「………願。勉強教えて」

 

「えー?」

 

そんな騒ぎの中志歩は願に勉強について言う。

そんな志歩に願は難しそうに微笑む。というのも、神高と宮女の授業進捗は明らかに宮女の方が速い。そして多分宮女の方が範囲が膨大である筈だ。むしろ本来なら……

 

「逆に俺が教えを乞うべきなんだけど」

 

「そういうわけでもなくない?」

 

願としてはそうなのだ。だがここで志歩側の主張を聞いてみよう。

元々レオニでの成績順は穂波が飛び抜けてて後はトントンぐらい。願だけ高校が違うからあくまで志歩の想像を出ないがこの中で願は特に異質だと思っている。なんというか手の抜きようが上手い?だろうか。中学の時からだったけど願は山場を張るのが上手くてそして絶対に赤点にだけはならないように最低限勉強している。

 

なんて志歩が考えてているうちに願が離れていっていることに気がついているだろうか。志歩が現状を把握したときには、もうとある二人と仲良くなっている願の姿がそこにはあった。

 

 

そして志歩の脳は盛大に破壊された

 

 

 

「えー!?願くんって遥ちゃん知らないの?!」

 

「名前しか知らないんだよね。…ASEAN?を辞めたのは知ってるけど」

 

「微妙に似てる所突くね……」

 

「もー!じゃあ願くんのためにも説明してあげましょう!」

 

何が3人を突き動かしたのか知らないがみのりとこはね。そして願は意外と簡単に仲良くなった。その仲の良さは会って数分も経っていないだろうにもう名前呼びを許しているレベルだ。後ろで志歩がすごい顔で願達を二度見したのに気がつかない。

 

「そういえば願くんって勉強できるの?」

 

「そりゃ多少は?…そういえば彰人と同じチームなんだっけ。」

 

「うん。Vivid BAD SQUAD。……また誘うね?」

 

「楽しみにしてる」

 

みのりの脳裏に一瞬だけ浮かんだ誰かのスーツ姿。こはねの脳裏に一瞬だけ浮かんだカジュアルな服に身を包ませた誰か。…そして何故だか分からないが願もこの二人にえも言われぬ哀愁が、放っておけない相棒だったような、大切な、誰かだったような……放っておけない“何か”に惹かれるような。

 

「……………ねぇ?どういう事」

 

そんな願達とは裏腹に志歩の表情は怒りを堪えるようにだけど何処か泣きそうに目尻に涙が溜まり始めているその姿にみのりとこはねはやらかしたと言わんばかりに表情を歪ませる。

 

「志歩ちゃ…志歩さん?……そのそんな意図は無くてですね?」

 

「そうそう!私たちは志歩ちゃんを応援してるし……」

 

慌てて弁解するその姿が何よりも疑わしい事に気がついているだろうか。

願の後ろで怒気を充満させている志歩に慌ててこはねもみのりも気がつかない。願は未来を悟ったかのように菩薩の笑みでその怒気を背中で受ける。

 

「まあまあ志歩。勉強するんでしょ?」

 

「…………………………………ん」

 

最悪喧嘩になると3人全員が覚悟したその時、まるでタイミングを見合わせたかのように願は手を叩き自分に意識を向けさせる。その目論見は見事成功してどうにか志歩も怒気を収める事が出来た。勿論、願の背中にひっつき虫になる事にはなったが。

 

「それで何処が聞きたいの?」

 

「………こことか。」

 

多分確実に100%穂波だとかに聞いた方が速い気がするんだけどな…という願のうちなる声を噛み砕き願はさしあたりの無い程度に説明する。願の説明が合っているとは限らないし、ここの教えと少し離れている可能性があるからだ。

 

 

 

そんなこんなで次第に遠慮していたこはねやみのりを巻き込み勉強会は進んでいく。願がこはねに聞きこはねがそれを教え。みのりが願に語彙の覚え方を聞き、志歩が願の隣で必死にペンを動かす。そんな勉強時間が過ぎていった。

尚ちなみに同時刻、神高では“鬼教師”冬弥が絶対零度の眼差しで杏と彰人の勉強を見ており、その横では頭を抱える司。そして謎に頭に残る雑学を教えながら披露する類。……少し離れた所で寧々とえむが肩を並べながら勉強しているなんともカオスな空間が広がっていた。

 

 

 

「そろそろ時間だ」

 

ふと外の暗さと教室に掛かっている時計を見て願は小さく呟く。

今まで楽しんで勉強会としていたがどうやらここで願は時間切れらしい。まあそれでもいつも以上に勉強が捗ったから助かったといえば助かった。

いつの間にか外から聞こえていた声も静かな静寂に包まれて、ライトが付く教室だけが人の有無を伝えていた。

 

「あれ?願くん今から何かあるの?」

 

「バイトだよ」

 

願の呟きに真っ先に反応したのはみのりだった。みのりもこはねも時間が許すまで願はここに居るものだと思っていたから願の帰ろうとするその行動に驚きを隠せない。

 

「そっか……遅くから大変だね」

 

「まあお金が出る分頑張らないとね」

 

と願はこはねのしみじみとした声に軽口のように返す。

実のところ願の所に毎月振り子まれるお金をキチンと運営して懐に収めている願にはお金の心配をする事はほぼほぼ無いが、やはり自分で稼げるうちに稼ごうと言う意志があるのか昔と比べて無茶をしににくなったがそれでも過密なスケジュールで動いているのには間違いないのだろう。

 

「願。校門まで送る」

 

「志歩いいの?」

 

「うん……無茶言って引き止めたの。私だから。」

 

鞄に全部仕舞い教室を後に去ろうとする願の背に志歩が立ち上がる。

それはありがたいと願も頷く。大分暗くなっている今迷わないと言う自信は皆無に等しいのだから。

 

「じゃあばいばーい!」

 

「それではね〜」

 

そんな願と志歩を見送るように片手を振るこはねとみのりに片手を上げ廊下の闇夜に消えていく。そして、願は知る由もなかったが彼女達はそのあと……

 

「……あれ多分エッチな事になるよね」

 

「やめよう。みのりちゃん」

 

「志歩ちゃんが押し倒すのかな?それとも校門で堂々ディープキスとか?」

 

「マジでやめといた方がいいと思うよ」

 

なんて会話があった事は二人の胸の中で封じ込められる事になった。

邪推を声にするみのりも、その意見に賛成していたこはねもある意味ではそれを超える“何か”があったとは想像にもなかった。

 

 

 

「今日はありがと」

 

「こっちも勉強できたから……まだ残るの?」

 

「うん」

 

階段を下る。横並びに歩いているとは言え本当に暗くなり、唯一赤く光る防災照明がまた人間に純粋な恐怖を思い浮かべそうになる。互いの表情が見えなくなると言うのは不便だなと願は瞳を伏せる。……だが見えなくて正確なのだろう。志歩の眼差しは一歩、また一歩と進めるほどに獲物を前にした獣のような眼差しで願をチラチラと見ているのだから。

 

「ギリギリぐらいまで、残ると思う」

 

「………そっか。頑張って」

 

「そっちこそ」

 

根に詰め過ぎもどうかと言いたいけど。志歩ならその辺りの調整に間違う事はない筈。と願は激励だけ残す。勿論ヤバそうになったら何かしらの手段を取る事には違いないが。

 

「……………………?志歩?」

 

「……ぅー……ふー……?なんでも無いけど…?」

 

「そう?」

 

なんとなく見覚えのある廊下に出た時。志歩の歩く速度が一瞬だけ遅くなる。

その直後まるで獣のうめき声のような音が志歩の声になり、その後なんでも無いと言う声が聞こえる。一歩、また一歩次第に歩く速度に差が出てきて少し経った瞬間にはもう志歩と願には前後の差が出来上がってしまった。

 

「………あのさ。志歩」

 

「…………何?」

 

「なんで後ろに下がっているの?」

 

願は足を止め背中にいる志歩に声をかける。振り向きたいようなむず痒さが背筋を走るがそれを理性で抑えて志歩に問う。その気持ちはまるでお婆さんの家に着いた赤ずきんだ。

 

「………気のせいだよ」

 

「そっか……じゃあもう一つ聞いていい?」

 

「………………何?」

 

そして願は自らの手で引き金を引く。もう願は自分がどうなるかよく分かっている。そして願自体それを受け入れるべきだと思っているからこそ。

 

「こう見えて…俺は志歩の事をよく知っているよ。」

 

「………どう見えようとも、願が私たちを愛してるぐらい知ってる」

 

そしてそれと同じぐらい私たちが願を愛していることも。

志歩のその言葉は非常に感動的である事に違いない。今、このシチュエーションでないのならば。という前置が付くが。

 

「じゃあそんなしぃちゃんが他に目移りしていたあの時。それを見過ごすとは思えなんだよね。」

 

「…………………その答えは」

 

まるで探偵が真実を告げるように。まるであらかじめ合っていると知っている回答を解説するかのように願はとても軽い口調と片手に上げた一本指を志歩に見えるようにして真実を問う。

 

「願が一番知ってるんじゃない?」

 

「………………まあね」

 

その瞬間。願は志歩に腕を捕まれ空き教室の内側のドアに、まるで磔のように志歩に押さえつけられる。もう薄暗くて見えない筈なのに志歩の爛々と獣性に輝く薄緑色の瞳は願を貫いて止まない。

 

「…………お手柔らかに」

 

「それは、願次第」

 

その瞬間、願の首元に志歩は貪り付く。リップノイズを何度も何度も響かせ特徴的な硬さが願のハリがある皮膚に刺さる。痛みというよりこそばゆさが願の背中を走り、それでも願は志歩の髪の先を磨ぐように指を動かす事を止めない。

 

「ふー……ふー………」

 

鼻息が当たっているのかどうか知らないが空気が通る音と共に、願の身体に密着して離れない志歩。まるで擦り付けているようにも見えるその動きは酷く淫靡でそしてそれでいて尚、独占欲を隠そうとしないその姿に願は一つ言葉をこぼしてしまう。

 

「………………………………かわいい」

 

「……………………………ほんと…………」

 

遠目にシルエットだけ見ればヤっている様にも見えるが当の二人にそんな事は気がつくはずもない。

そしてそんな中でも願は願であった。どう考えても襲われている今に似つかわない言葉と共に撫でるその姿は確かに何処か“イカれている”と言えるだろう。

 

「………こういう時怖がるはずなんだけど。」

 

「…別に志歩達ならいいよ?」

 

志歩の何処か不満げな表情とは対称的に願は何処までも愛おしげに志歩の髪を撫で続ける。襲われて独占欲みたいな傷をつけられているのに願は笑みを崩さない。“イカれている”……まさしくそれは愛に勝る呪いは存在しないのだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私たちは籠の中の小鳥だ。でもその籠の扉は空いているのに四匹の小鳥は飼い主に愛を囀る事しかしない。普通ならあり得ないだろう。果てまで続く大空、自由を運ぶ風、時には身体を震わすような雨もきっと“灯る場所”に羽ばたけるのだろう。

 

だけどそうはならなかった。そう、私たちは“空”に飛べなかった。

夢を叶える筈の“羽”は生えている筈なのに私たちは飛ぶ事を止めてしまった。

 

……いや。最初から飛ぶ気なんてさらさら無かったのだろう。

飼い主は…“あの人”は…願はずっと私たちが飛べるようにと教えてくれたのに。

何処までも空高く飛び立って、世界を駆け巡る音を奏でる事を願はずっと想っていたのに。

 

けど仕方ないじゃないか。何よりも、誰よりも、何処よりも貴方の隣の居心地が良すぎて。貴方から向けられる感情その全てが私たちを魅了して止まなくて。貴方がほんの少し微笑むその姿が欲しくて、貴方が平等に振る舞うその愛が“私だけ”に向いてくれたら良いななんて、貴方には似つかわない“泥”を胸に隠して今日もまた────

 

 

「……願から?」

 

朝。いつものように準備をしていたらスマホから通知が入る音がする。

スマホの通知は基本的に邪魔になるからレオニと願の個チャしか音で知らせないようにしている。…そしてそれを踏まえて通知が入る音がするということはつまりレオニか願しかない。

 

『ノート忘れ。放課後持って行こうか?』

 

あー…やらかしたかもと志歩は頭を抱える。確かに昨日は集まって願の家で考査の勉強をしていた。次第にそれはお菓子を開け…宅配で色々頼み最終的にはパーティ跡になってしまったが。

 

『いや。大丈夫今日は要らない』

 

志歩は慣れた手つきで文字を打ち込み早々に送信する。

だがその瞬間、志歩の脳裏に電流が走る。逆に持ってきてくれるという事は…つまり合法的に学校で願と肩を並べられるという事だ。教室までは入って来れないだろうが別に校門で抱き着いたらいい。それだけで大きな牽制になる。

 

そう考えた志歩は決断を下すより先にもうメールを打ち込んでいた。

 

 

 

 

「きりーつ。気をつけ。礼」「ありがとうございましたー」

 

学校は意外にも早く過ぎ去っていった。志歩は片付けながらそう感じた。

まあその理由は明白で考えるまでもない事であるが、それは今日の志歩の雰囲気にも出ている事は志歩だけが知らない事であった。

 

(志歩ちゃん…今日嬉しそう…?)(ね。なんか良い事あったのかな?)

 

丸わかりで有るのだった。

 

(もしかしたら…もう来てるのかも……!!)

 

そんな周囲には目もくれず志歩は怒られない程度の早歩きで校門まで向かっていく。神高はもう既に授業が終わって結構時間が経っている。もう願来ているのかも……と内心ウキウキで歩いていく。

 

(!!!願…………………!)

 

校門前で特徴的な黒髪の神高の制服を着ている男の子が立っている。願だと一目見て分かった。勿論、見る前から居るような気がしてならなかったが。

 

「願っ!」

 

早る心を抑えられないと言わんばかりに疾走する。

もちろん突然そんな事をしたら咽せるのは当たり前だけど、そこで願が心配そうに背中を摩ってくれるのは何かこう胸に迫り上がるあまり宜しくない感情が浮かぶ上がってくる。

 

「不純異性行動は、控えるようにね」

 

「……………失礼しますっ!!!」

 

許されたのは意外だった。けど流石に学校ではそんな事しない。(フラグ)

けど正直言うとここからが頭を悩ませる所だ。特に……そう。穂波とか。

そんな想像通りの穂波をどうにか退け(痛み分けに近いけど)教室に着いたらそこには親友のみのりとこはねが残っていた。そこまではよかった。そこまではよかったのだ。けどそこで私の想像を超える自体が起きた。それはつまり……

 

 

私の脳と情緒は完全に破壊された

 

 

おい待って。なんでそんなに早く仲良くなっているの。なんでそんな早く名前呼びで親しそうなんだ。あっ。ついにメアドまで交換し始めた。しかも願までみのりとこはねを名前で呼び始めてる。

 

志歩はその時初めて寝取られるという行為が言葉を知るより先に魂で、志歩の全てで味わった。心の全てがグチャグチャにかき混ざってその泥よりも深い黒い濁りの底から怒りが、憎悪が、愛が、愛執が、愛憎が浮かんでは消えて、浮かんでは消えて。無限に続くようなそんな中、事実に耐えきれなくなった“私”は考える事を止めて実力行使に出る事にした。醜い嫉妬と言ってくれて良いだろう。何もせずに奪われるよりマシなのだから。いっそ、全力で開き直ってやる。

 

使えるものは全部使え。私の利点はなんだ?私は願になんて思われている?

ああ。そうかそう言うことか。“それ以外”なんてどうでもいいんだ。穂波や一歌もかな?そう思えるからこそ、恋愛戦で一足リードしてる。そう言う事だったんだ。

 

 

そして時間は過ぎ去っていく。願の隣、さらに言うなら絶対に譲らなかった願との一歩半以上の距離は取らないと言う密かな(※隠し切れてません)独占欲は流石に願にも気がつかないものでは無かったらしい。

 

 

 

「じゃあそんなしぃちゃんが他に目移りしていたあの時。それを見過ごすとは思えないんだよね。」

 

 

 

その口調に含まれる、ある種見下すような物言い。

挑発的に私を片目で見る願の眼差しは酷く楽しげで玩具を見るようなその明らかに見下して居るであろう。例え願にそう言う意図が無かったとしても、認めたくはない私の願への服従欲が、恭順欲がそう見えて仕方ないのだ。

願の足下で跪いて、犬が完全に服従するかのようにお腹を見せて撫でて欲しいと今まで積み上げてきたクール系の雰囲気を全部グチャグチャにしたいと子宮から言っているのだ。

 

キューン…キューン…と情けない子犬のような声を喉の奥で噛み殺して願に縋り付く。せめて、せめて襲ってるという体を作らないとと、どうにか願に擦りついて歯を突き立てる。もはやこれはマーキングとなんら変わらない。犬畜生と大差ないのだと考えるとまた私の芯が燻られていく。

 

それでも願は微笑んで、私を撫でるだけ。

分かっている。分かっているとも。願が“私の想像するコト”はしないだろうと知っている。でも夢に見るぐらいは良いじゃないか。それとも…なんだ。穂波ぐらい無いと“そう”見てくれないのかクソッタレ。

 

仕方がない。じゃあ私はいつものようにこう言おう。声高らかに誇らしげにこう言うのだ。

 

今日も、愛に縋って堕ちていくんだって

 

 

 

 






外夜 願

はやく幼馴染全員を受け入れろー!どうなっても知らんぞ!
まあ襲うか襲われるかぐらいの違いしか無いが

ちなみにみのりとこはねとのifルートにはなりません。一言で言うなら因果が足りない。


日野森 志歩

また懲りもせず愛を求めつづける。あの日と同じように。
あいも変わらず脳破壊される頻度が高い子。
もはや狼というより……子犬。しかも飼い主(願)にゾッコンという。
それでも志歩は自分を狼だと思っているんです。可愛いですよね(l)


感想などよろしくお願いします


次回何書きましょう(最終的に全部書きます)

  • 異聞:魔法少女パロ
  • 異聞:夜の娘続き
  • もしも冬弥と兄弟だったら…
  • もしも奏と双子だったら…
  • もしもまふゆと双子だったら…
  • TS願
  • 配信者願
  • 幕間1 続きリメイク
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