「(幼馴染を恋愛的に見るのは)いやーきついでしょ」と言ったオリ主が幼馴染達に娶られるまで後…   作:ネマ

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今まで奪われるはずがないと余裕の笑みを浮かべていた少女がいざ奪われそうになると尊厳投げ捨てて泣きじゃくり怒り狂うその姿実に私の性癖に合っています。

R18はもう少し……喘ぎ声難しいね……
エイプリルフール楽しみましたか?…これで一本書けそうと思った作者なのであった。

いつも通り、設定崩壊・過去改変・キャラ崩壊・独自設定注意です。




今までずっと付き合いたくて策を練って来ていた恋してやまない幼馴染が目の前でアイドルと抱き合っているのを見て発狂してしまう理由を求めよ

 

 

「おはようございます。ご主人様」

 

「…………すみません。間違えました」

 

 

願はいつものように目を覚ます。本日は完全にオフの日。

バイトも無ければ買い込むような物は無い。久しぶりにダラけ切った1日を過ごそうと目を覚ました………

 

仰向けで寝ていた願に馬乗りになって顔を覗き込んでいる穂波がいた。

しかも穂波の服装はミニスカタイプのメイド服。明らかにコスプレ用だと分かる服に身を包んだ穂波がそこにいた。

 

「…………………」

 

「………もしかして……似合ってない?」

 

「いや。めちゃくちゃタイプ。」

 

無言で見つめる願に穂波は気に入らないのかと少し顔色を確かめるように声色を硬く低くする。だが、そんな穂波の心配なんて関係ないかのように食い気味に反応する。その反応にはサムズアップ付きというぐらいなのだからどれだけ願の心が揺れているかわかりやすい物だ。

 

ここで弁解を一応しておくとメイド服というのは男のロマンである。

それは願だって例外では無い。その人一人に忠誠を誓う装いであるメイド服はこうグッとくる物であるのは願も例外では無かった。

 

「…………ならいいんだけど………」

 

少し恥じらうように生脚を隠すような仕草はさらに願のツボを付いてくる。

一応、願だって(肉体的には)高校生だ。その豊かな母性の象徴である穂波の胸は白エプロンで余計に強調されているのが目を引く。流石に悪いとは思うが何度もチラ見してしまったのはバレているかもしれないと願は顔を背ける。

 

「あっ!そうだ。朝ご飯出来てるよ」

 

食べよう。それともお着替え手伝いましょうか?と穂波はあくまでメイドであると言う体を崩さない辺り本気らしいと願は頭を抱えながら、異性の着替えはダメだろと穂波の頭に軽いチョップを素振らせる。

 

「流石にそれはダメ」

 

「…………はーい」

 

一言、願が静止を掛けると穂波は少し沈黙の後に渋々部屋から下に降りていく。

一体どうしてそんなメイド服なんて着てこの家にいるのか。願は色々と聞かなくてはならないのかと頭が痛そうに手を当ててゆっくりと着替え始めるのだった。

 

 

 

「……待ってたよ?ご主人様」

 

「うん……って豪華な朝食……」

 

いつもの普段着より更にゆったりとした服装で降りてきた願の目の前で立ってるメイド姿の穂波。夢でも見ていたのかと思ったがここまで来ると現実だ。

食卓上に並べてある朝食も十分高級フレンチに出せそうなレベルの朝食だ。

一体これを作るのにどれほどの時間と労力を掛けたのか。願は本格的に頭を抱えそうになっていた。

 

「………まあ。穂波も食べてないでしょ?一緒に食べよ?」

 

「ですがご主人様。メイドと……」

 

これは難敵だぞと頭を抱えたくなる。あくまでポーズである事もお遊びだと言う事も分かっているがここまで全力ではっちゃける穂波も珍しい。……仕方がない。と願は覚悟を決める。

 

「……命令だ。………一緒にご飯食べよう?」

 

「仰せのままに……ご主人様」

 

出来るだけ。ほんっと出来るだけ命令を口にする瞬間だけ低く、強い声を出す。

その瞬間だけでそこからはいつもの口調に戻すがやはり慣れない物は慣れない。

勘弁してくれ…と願は穂波の顔をチラッと見ると満足だと言わんばかりに満面の笑みで顔を縦に振る。

 

「あはは……付き合わせちゃってごめんね?」

 

「穂波ぃ…これっきりだぞ……」

 

「そうやって、いつも付き合ってくれるの。」

 

相変わらず願君は優しいね。と笑みのまま穂波は席に座る。

そうなのだ。たまにこうやって穂波は変なことをする。キスと言いいつかの風呂への乱入と言い、穂波は皆に優しいだとか幼馴染の間ではママだとか冗談混じりで言われるが、願から見た穂波は意地っ張りな可愛い少女だ。......いや。意外とこうやって願と馬鹿をやっている時がなんて邪推する事もある。

 

「あっ…でも今日は一日メイドとして扱ってくれていいからね?」

 

「おい。穂波さん??」

 

はい。ご主人様。あーんと木匙を手に願の口に持ってくる穂波を前に願の顔は酷く困惑した様になる。……確かに願と穂波は似ているし同じようにレオニに手を引かれた2人であるが、相変わらず穂波の願への距離が変わる事はなかったらしい。

 

あ。ちなみに勿論そのあーんは有難く貰った。

メイド服にそれは男なら逆らえない故に。ちなみにそれをしてもらった願はなんか色々と複雑そうに…だが朝食の美味しさには逆らえなかったのだ。

 

 

 

 

「今日は本当にする事無いんだけど……」

 

「?」

 

「いや?じゃなくて」

 

朝食が終わった後2人で肩を並べながら食器を洗い終え、ココアを入れて一息着いた所で願から話を切り出す。…曰く、本当に本日はすることが無いのだ。バイトも無ければ家事も終わらせている。買い物だって昨日してきた。本当にする事が無くなってしまったのが今日である。

 

「………そもそもなんでメイド服なのさ」

 

「それは……ご主人様にご奉仕するため…?」

 

「穂波がそれを言うとマジでそう聞こえるんよな…。」

 

冗談には聞こえない。そう願は頭を掻きながら考える。

穂波のバイトは家事代行のバイトである。そう考えるとメイド服というのは願の知る中で一番似合うだろうなとも考えている。しかし穂波のご奉仕は些かインモラルな所までしそうなのが願の頭を悩ませる原因になってしまっていた。

 

「……それでも最近願くん、疲れてそうだったからね?」

 

「………ありがと。」

 

はい膝枕。と穂波が期待した様な顔で待っているのを前にこれを無視したら泣かれるだろうな(3敗)と言う過去の裏付けに願は逆らう事が出来なかった。

確かに。最近はまあ色々とあったのは違いない。咲希と言い、一歌と言い、志歩と言いあの一件以降確かに直接的なアプローチが増えてきているとも言える。

 

「それでもやっぱり惜しいなぁ……」

 

「?何が?」

 

そんな願を見越してか膝枕をしている穂波が呟く。

願はそんな穂波を見上げて問う。その瞬間、願は得体も知れぬ悪寒が一瞬背中に走ることになる。見上げた穂波の表情は髪が逆立っているのかどうか知らないが見えないし、なんか穂波の全身から黒いモヤみたいなのが立ち上がっている。

 

「だって願くんの苦しみを理解できているのは一番わたしだったんだよ?」

 

「……………………それは」

 

確かに、それには間違いない。願と穂波には通ずるモノが多すぎる。

表面上は人畜無害みたいにしているがその裏では幼馴染が第一だし、その根底は独りだった。それらは今となっては祓われ根底の孤独は癒える様になっていった。

 

「一蓮托生だって言ってくれたのに…」

 

「………………」

 

確かにその謗りは免れない。どうであれその言葉を覆したのは自分だ。

反論は出来ない、する気もなく願は穂波の顔を見続ける。……穂波の表情は何処か泣いている様にも喜んでいる様にも酷く複雑そうな顔で願を見返している。

 

「………ごめんね。ごめんね。本当はこんなこと言いたくない……のにっ……」

 

「大丈夫…落ち着いて。穂波」

 

遂には涙さえ零し始めた穂波に横になっていた願も起き上がり、抱きつく様な形で穂波の背中を摩る。願には“これ”がどういう感情なのかなんとなく察せるモノがある。置いていかれた者の涙だ。誰にも怒る事が出来ずそれでも込み上げてくる呪いの様な狂おしいほどの涙だ。それを願は嫌ほど知っているからこそ、穂波の熱い涙で濡れる肩も気にせず背中を摩り続けることしか出来ない。

 

 

 

「うー……お騒がせしました……」

 

数分後。穂波はようやく落ち着いたのか鼻を啜りながら願に一度頭を下げる。

そんな穂波に願はティッシュを渡し穂波が話せるように落ち着くまで待っている。

 

「落ち着いた……?なら良かった」

 

「………えー……っと……その……」

 

願の言葉に反応するのか穂波は一度頷いた後、とても歯切れが悪そうに口籠らせる。一体どうしたと言うのか。穂波は自らの身体を少し捩りながら小さく呟いた。

 

「……………けい……べつ………した?」

 

「……………特に?」

 

穂波の言いたい事はよく分かる。あまりにも自分勝手でエゴに満ちた穂波の涙は側から見ればなんと悍ましい事かと吐き捨てるかもしれない。けど残念ながらここに居るのは我らがスパダリだ。人生経験が豊富(知識上)な願にとってそれぐらいの穂波の涙は可愛い独占欲程度にしか見えていないらしい。間違いではないかも知れないが相も変わらずクソボケであった。

 

 

そんなこんなでいつの間にか昼になっていたので、願と穂波(普段着に着替え直した)はお昼ご飯を食べようと外に出る事にした。勿論、空気転換の意味もある。

 

「お昼何にしようか」

 

「うーん……どうしよっか?」

 

願も穂波も基本は合わせる側の人間だ。単に自己主張しないだけとも言うかもしれないがそれが2人集まるとお昼ご飯にも迷う様になってしまう。……まあその彷徨いながらというのも楽しげではあるが。

 

次第に2人はいつもは通らない様な大通りより一つ挟んだ飲食店街を歩いていた。

何処でも良かったが、どうせなら来たことがない店で美味しい所を探そうとなったのだ。それでまあまあだったら笑い話になるし美味しかったらまた全員で来れば良いから。

 

「あれ?……穂波ちゃん?願くん?」

 

そうして歩いていると横道から、願と穂波を呼ぶ声が聞こえた。

しかし願にも穂波にもその声には十分覚えがあった。そうその人とは……

 

「「雫さん?」」

 

特徴的な水色のロングヘアーとたなびかせ、そこに立っていたのは“日野森雫”。

願たちの幼馴染の志歩の姉である。勿論、2人ともよく知っている相手であった。

ちなみにだがすっぴん美人で抜け目がない完璧美人に見えて実は悪癖がある。こんな願たちでさえ初めて来た様な場所の更に裏路地から出てきたとはそう言う事なんだろう。

 

「……迷ったんですか?」

 

「ええ!…どうもみんなと逸れちゃったみたいで……」

 

そう雫の悪癖というのは“方向音痴”と言う事だ。そしてその方向音痴の上に機械音痴という事でナビさえも覚束無いと言う事でよく迷子になっている人である。ちなみにお約束通り地図は読めない。

 

「………はあ。花里さんにメールしましょうか?」

 

「いいの!?お願いするわ」

 

先日の一件(相変わらず周囲に満更でもない様子を見せてしまう幼馴染を〜より)から願はみのりとフレンドになっている。そこからチャットを打てば多分入るだろうと願は1人スマホを取り出す。その横で、みのりにメールしようかと願は聞いていた辺りからすごい顔で願を見ていた穂波には気づかずに。

 

願『雫さん発見〜』

    【現在地を送信しました】

 

みのり『願くん!!!!ほんとありがとう!!!!』

 

その数秒後。みのりから大量の吃驚マークと共に大量の謝るスタンプと感謝スタンプが送られてきた辺り大分逸れて時間が経っていたなと願は一瞬空を仰いだがそこには無常にも真っ青な空が広がっていた。

 

 

 

時間と場所が移り、MOREMOREJUMP!。

本日は次回のイベントのために見学に来ている所だった。勿論、見学を無事終えどういう風にするか構想を練り始めた所でいつの間にか雫が消えていたのだ。

 

「あー!もうっ!なんでこういう時に限って電話出ないのよ!」

 

真っ先に気がついた愛莉が電話するが当然のように応答なし。

雫の機械音痴は中々の物だが流石に迷った時は電話が欲しいと愛莉はその場で地団駄を踏む。本気でGPSでも持たせようかしらと考えていたその矢先だった。

 

「愛莉ちゃん!雫ちゃん見つかったってー!」

 

「ほんとー?!」

 

アイドルとして一定の知名度があるからこそ名前を堂々と呼んで探すのは難しいと遥も、愛莉もそう大事には出来なかったが流石にこれ以上は無理だと諦めかけていたその時、みのりから現状を打破する声が掛かった。

 

「うん!ここだって!」

 

みのりは愛莉たちに見えるようにスマホの画面を掲げる。画面に写っていたのは地図だ。一つのピンが刺されどうやらここに雫が居るらしい。

 

「……みのり。これ誰かから送られてきたの?」

 

「うん!外夜くん!って言ってね」

 

志歩ちゃんの恋人?かな。とみのりはサラリと言う。

その瞬間、愛莉と遥の脳内で色々と繋がるものがあったらしい。

 

(志歩ちゃんと言うと……雫の妹だっけ)

 

(そこで恋人なら顔を知ってておかしくはないわね)

 

つまり、愛莉たちの脳内で外夜くん?=志歩=雫という式が組まれるようになる。

勿論それが一つの問題を引き起こすとはもう考えるまでもなくと言う事だ。

 

 

 

 

「つまり今日は2人、デートしていたと言う事ね〜」

 

話は雫たちに移り、今日は何故願と穂波が2人だけなのかと言う話になった。

願はいつも一緒に居るように見えるのかと言う言葉を飲み込んで今日は“2人だけ”と言うことをボカして言っている。勿論、そんな論弁が雫に通るはずもなく雫は今日の2人をデートだと認識してしまった。

 

「……しかし雫さんデートと言うには…」

 

勿論、願はどうにか言いたげだが願の後ろで穂波がデートと雫が言った時点で全力で首を縦に振っているのだから到底覆すのは不可能という事に願はついぞ気付くこと無かった。

 

 

 

「─────────!!雫!」

 

そうこうしていると何処からともなく特徴的な桃色の髪の毛をした少女が突っ込んでくる。雫の仲間だろうと軽く横身にズレる。ぶつからない様にとする願の判断は悪くないし問題は無いはずだ。ただ今回は非常に間が悪かったと言わざるおえない。

 

「「………っ!?あぶなっ!!」」

 

避けた所に突っ込んできたのだその少女は。勿論、そうなると結末はひとつだけ。

そう正面衝突…所謂頭と頭がごっつんこと言うことである。一応危ないと声を出したのは良いもののそれでも止まるに止まれず。願の胸の中で愛莉を抱きしめる形となってしまったのだ。

 

そうなったらもう大変。雫はよくあるラブコメの一幕に目を輝かせ、穂波は現状を理解した瞬間瞳からハイライトグッバイ。願は愛莉の頭にちょうど当たり、愛莉は現状を理解しても初対面に手を出す事もできず赤面。

そして一番第三者として見ていたみのりと遥は頭を抱えるほか無かった。

 

「えーっと…あのその……ですね?」

 

「ふふふ。大丈夫ですよ。“花里さん”少し混乱してしまって」

 

 

うふふ。と微笑む穂波の背後からウネウネと影みたいなクトゥルフじみた何かが蠢いている。明らかにキレてるしそのキレている理由もなんとなく分かる。多分、外夜くんと望月さんは今日2人で遊んでいてそこに邪魔をしてしまった感じだ。

恋人がどうたらとは聞いていたが……多分この感じ、外夜くんに思いを寄せているのだろう。なら明らかに悪いのは私たちだと遥は考える。

 

「……お怪我は、無いですか?」

 

「…っ!ええ…ありがと、う」

 

ふとぶつかった2人を見れば滅茶苦茶ベタなラブコメ空間が広がっていた爆ぜろ。

遥は今の2人が何か言う方が修羅場が加速すると見捨てた。チッ使えねーみたいな表情をした後すぐに穂波に向かい合う。

今の遥の内心は魔王に剣を向けた勇者だ。そうなると外夜くんがお姫様になるのか。

 

「……穂波も。この辺りでお暇しよっか」

 

「…………!うん。そうだね。それが良いと思う」

 

その瞬間遥の後ろから外夜くんが声を掛ける。その瞬間、望月さんから黒い瘴気が消えたのはなんとなくだが納得いかない。徒労とは言わないが何というか巻き込まれた感が凄い。と遥は去っていった2人を横目に雫と愛莉に向き合うのだった。

 

 

「……凄い急だったね」

 

「そうだね。まあそれは置いておこう。」

 

穂波が嫉妬しているのはよく分かっている。昔から人との距離感が下手な癖に言いたいことは以外と表情に出やすいのが穂波だ。そういう所も願は気に入っているのだがまあ置いといといて。

 

「……大丈夫だよ。穂波」

 

「…………………………………」

 

片手を繋ぐ。幾ら平常を取り繕っていても穂波の手は恐怖に震えている。

それを分かっているからこそ、願は穂波の手を取り歩くのだ。

 

「穂波たちとは離れない……そうでしょ?」

 

穂波たちが自分で夢に羽ばたけるその日まで願は何があっても穂波たちから決して離れないと願自身が決めているのだ。それを穂波が一番知っているはず───

 

「…………絶対?」

 

「うん。絶対。」

 

「絶対、絶対、絶対に?」

 

「絶対絶対絶対に。」

 

それでも怖いものは怖い。穂波はそれでもと願に絶対を重ねる。

願は一度穂波の涙を拭い、お腹が空いたからご飯食べに行こうかと穂波の手を引いたのだった。

 

 

 

「ご主人様……」

 

夜。結局夜遅くまで遊んだ2人は晩御飯も食べて、願の家でお泊まり会となった。

何故か、願が風呂から上がると穂波が朝のメイド服で立っていたのは嫌な予感がしたが。

 

「ご、ご奉仕させていただきますっ!」

 

「畜生!やっぱりなぁ!!」

 

赤面しているというのに穂波は願のスボンに手を掛けていく。

結局、願の貞操は守られたが願は穂波が寝静まるまで寝れなかったとだけ言っておこう。

 

 

 

 

 

わたしたちは人形みたいだ。

願からの言葉を動力に動くブリキ人形。願の言葉で一喜一憂してその姿はまるで糸繰りで動くマリオネット。そして何より悍ましいのは……

 

そんな願に操られて悦んでいるわたしたちだろう。

 

首輪を嵌めて、手枷足枷を嵌めて…願は心の底からそんな事望んでいないのに。私たちが悦んで渡す吊り糸さえ願はとても苦しい顔をして持つ。願は分かっているのだろう。その糸を拒絶するということがどういう事か。

何と素晴らしい崇拝だ。何と美しい従属心だ。………それと気がついていながらも糸で動かされないことの方が恐ろしいだなんてよく言えた物だ。

 

わたしたちは舞台で動くドール。観客席に座るのは願ただ1人だけ。

わたしたちはどんな命令も喜んで従う従属人形。そしてそんな観客は人形に自由を想う。人形は自由より観客の寵愛が欲しいからさらに自ら糸を掛けていく。

 

なんと最低で卑劣で下劣な人形たち────────

 

 

 

早朝。まだ日すらも上がっていない時間にわたしは家を出る。

朝霧が掛かる街を歩き、私は一つの家にたどり着く。そこは願の家。きっと自宅以外なら一番足を踏み入れた家だ。ひどい時なんて…今もそうだけどほぼ毎日この家に来ているレベルだ。

 

「……お邪魔しまーす」

 

いつもと変わらないポストの底のダイアルキーを回して願の家の合鍵を入手する。

家は真っ暗で、それでもキチンと整理整頓されている辺り願くんの几帳面さがよく分かる。あまりに当たり前だと思っているし、なんならわたし以外気がついていないだろう不思議なアンバランスさ。

 

「子供1人だけが出来ることなんて限られているのに」

 

この家に掛けてあるエプロンを背中で結び買っていた食材を取り出し、この家には何が残っているのか見る。…以外と物は充実していてこれならなんでも出来そうだ。

 

「オムレツひとつだって…作るのに時間がいるはず」

 

そうだ。この家はあまりに『普通』過ぎるのだ。不足なく棚に並んでいる料理のさしすせそ。詰め替え用まで準備されている洗濯洗剤。万が一にも毒が発生しない様にと中性風呂洗剤が並んでいる。

 

そんな『普通』を穂波だけが唯一訝しむ。家事を幼馴染の中で願を除いて一番知っているからこそ願の一人暮らしの違和感に気がつく。

 

「………………よし」

 

ヘラとフライパンを巧み動かして穂波は綺麗なオムレツを作り上げて皿に並べる。

大は小を兼ねるという事か願の家のフライパンは少し大きめだ。少々一人分というには多すぎる量が出来てしまったような…?

 

「こ、こんなに短いの??」

 

朝食の準備を終え、穂波は今日のためにとわざわざ通販で取り寄せた服を着る。

その服の名前は“メイド服”。しかもスカートは穂波が一度も着たことがない様な短さで少し屈めば下着が丸見えという事だ。

 

「これなら…もう少し下着も考えたらよかった……っ!」

 

今日は下着は凝った物は着けていない。けど下手をすれば丸見えなこの服で見せる相手が願ならスケスケの奴の方が良かったんじゃないかと穂波は一瞬考える。もちろん、今の穂波にそんな羞恥心を振り切ったことは出来ないが。

 

「…………すぅ……」

 

願の部屋を開けるとそこには仰向けで寝ている願の姿があった。規則正しい寝息を立てて寝ている願は昔からそうだが一度寝ると本当に何をしても起きない。まだ幼い時、咲希ちゃんと一歌ちゃんが2人がかりで揺らしても起きなかった程だ。その後、起きない願くんに泣きべそかきながら最後には5人全員で寝ていたのは良い思い出に入るのだろう。

 

「……………むにぇ………ん………」

 

そんなこんな過去を思い出しながら穂波はゆっくりと願のベットの上に上がる。

仰向けに寝ている願くんの顔に指を沿わせながら瞼が開くのを待っていると、少しずつ願くんの目が開いてきた。今だ。

 

「おはようございます。ご主人様」

 

寝ぼけ眼で周囲を見渡した後に、まるで夢の中みたいに願くんはまた布団に入っちゃった。1日、こうやって無為に時間を過ごす時も十分、長年付き合ってきたカップル感が有って好みだが今日はご飯作ってるから起きてもらわないと。

あ…でも

 

「…もしかして、似合ってない?」

 

似合ってないなんて言われたらどうしようか。なんて不安を前に願くんの指は上に向けられた滅茶苦茶いいらしい。それだけでも着た甲斐が有ったのだ。……このまま“ご奉仕”と入ってもいいのだが、というか入って欲しいが朝食はやっぱり温かいものを食べて欲しい。

 

ちなみに願のチョップで穂波がマゾっ気を出し、下着を濡らしたことは穂波の中での秘密だ。勿論、願と同じ墓まで持っていくつもりである。

 

 

「……命令だ。………一緒にご飯食べよう?」

 

命令にひざまづきたくなるわたしの身体をどうにか力を入れて違和感がない様にする。力強く喉の奥から出されるその声はわたしの“支配者”だと身も心も…いや魂から理解させられる。このヒトには…この雄様には敵わないんだ……って。

それがまた情けなくて、その情けなさがグチャクチャの背徳感と興奮を呼び覚ます。

 

(付き合ってもないのに…っ!まだセックスもしてないのにっ…!)

 

一緒にお風呂も入った。この無駄に大きくなった(昔から願くんとのイチャネチョで慰めてたせいか)胸も触ってもらったのに。一緒の家で暮らしてるのに(注.存在しない記憶です)まだ付き合っても、ヤってもないのだ。だと言うのにわたしの身体は疼いて仕方が無いのだ。

 

 

「あっ…でも今日は一日メイドとして扱ってくれていいからね?」

 

いっそのこと。◼️◼️◼️ピー!で毎日お手軽に使える◼️◼️◼️◼️◼️放送禁止!みたいに願くんの家で監禁してもいい。というかして。いっそ◼️◼️禁止ったら禁止!みたいにわたしを飼ってくれても構わない。いっそ自分から段ボールと首輪とリードを付けて待ってみようかと考える。

 

 

 

「だって願くんの苦しみを理解できているのは一番わたしだったんだよ?」

 

あーあ。言ってしまった。わたしが一番言いたくなかった事言っちゃった。

一番隠してたかった仄暗いモノ。けどきっとこうなってしまったら誰も幸せにならないことは確定していた事。

もし、わたしみたいに一歌ちゃん達が真っ正面から打つかってくれなかったらきっと願くんは今じゃ考えられないぐらい酷かっただろう。

もしかすると関係が進むのは早いかもしれない。きっと前までの願くんなら何でもいうことを聞いてくれた筈だ、それこそ襲ったとしてもポーズとしては怒るだろうけどそれだけだ。

 

けどそれは多分凄く虚しいモノだと思う。わたしたちは願くんからの愛が欲しいのだ。その肝心の願くんが心を完全に閉じちゃったのならもうわたしたちの声も想いも届かない…なんて事も有ったかもしれない。

 

 

「………ごめんね。ごめんね。本当はこんなこと言いたくない……のにっ……」

 

どうしようもなく涙が出る。この涙に付ける感情は見当たらない。

それとも見当たらなくて良いのか。見つけたくないのか。

ああ。でも。昔からそうだったけど願くんは変わらずあやすのが上手い。4人で喧嘩した時とかいつも願くんが仲裁に来て慰めてくれた。……ある時それに味を占めて喧嘩を偽って慰めて貰ってたっけ。

 

 

 

「………はあ。花里さんにメールしましょうか?」

 

わたしが泣いて泣き止んで少し願くんの膝枕を堪能した後お昼を作る様な空気じゃなかったから外に出た。今日は志歩ちゃんが押さえ込んでくれているとは言え近場だと邪魔が入らないわけじゃない。少し2人して足を伸ばした所だった。

 

何故か迷子になった雫さんと出会ったのだ。……正直にいうならもうこの時点から嫌な予感がしてきていたのだ。まるでこの世界の運命がわたしたちを引き裂こうとする様な嫌な予感。中学の時みたいに強硬手段で繋ぎとめないとどうにかなると名状し難い不安が込み上げてくる。

 

……願くんはさっき花里さんと言っただろうか。そんな花里さんと知り合う時間なんて…………志歩ちゃんか。今はそんな悪態吐いている程余裕はない。耐えろ。耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ耐えろ

 

 

「「………っ!?あぶなっ!!」」

 

 

あっ無理。頭の奥で何かが壊れる音がする。心の中から黒い何かが溢れてくる。

確かに淑女の嗜みとして“寝取られ”は知っているし、履修もしてるけどいざ自分がそうなるとキツイものがある。いや。正直に言おう泣きそう。

 

「ふふふ。大丈夫ですよ。“花里さん”少し混乱してしまって」

 

こうして虚勢を張るのはいいけど正直泣きそうだ。昔みたいに大泣きしながら願くんにコアラみたいにくっついて良いのか。くっつきたいが。

少しの混乱といったがそんな少しってレベルじゃない。今までに感じたことのない感情。絶対に離れない筈の絶対に一緒にいて何があってもわたしと一緒の願くんが離れようとする。そんなこれが………恐怖。今までに感じたことのない離別の恐怖。

 

「……穂波も。この辺りでお暇しよっか」

 

涙で視界が見えなくなりそうになってきたその時。願から救いの一言が掛かる。

願くんの身体に雌の匂いが付着しているのは酷く気に入らないが、わたしの想像している最悪よりマシだと納得させる。

 

「穂波たちとは離れない……そうでしょ?」

 

ホントにそういう所と頭の中で怒りマークが付く。そういう事をするから他の勘違いの雌豚が近づいて来るのだ。そもそも願くん自体昔からそうなのだ。言うならば全方位に優しいせいで“この人って自分が好きなんだろうな…”と勘違いさせるムーヴが上手すぎる。最初っから私たち以外見てないのに…

 

 

今日、分かった事がある。

それは“幼馴染”というこの位置に胡座をかいていたら簡単に奪われてしまうという事。“寝取られ”なんて物語だけのカタルシスだと思っていたけど現に目にすれば…何よりも愛しい人がそうなってしまうと今日明確に分からされた。

 

 

「ご、ご奉仕させていただきますっ!」

 

ちなみにご奉仕はさせてくれなかった残念。ここで手を出してくれたら全部がハッピーハッピーだったのに。

 

 

あっ。ちなみにわたしが寝たと思って願くんすぐにおやすみしちゃったけど。

わたしは寝たフリしただけだったけどね。流石にヤる事やっちゃうと色々とマズイから手だけお借りしました。

 

 







外夜 願

もうだめだ猫の子。幼馴染特攻型スパダリ。
何も知らないのか、知っている上で無視しているのか。


望月 穂波

多分一番頭ピンク色なのは穂波だろうな…穂波であって欲しいなという。
他のみんなが危惧していた奪われる恐怖を今日漸く知った。その恐怖のインスピレーションは穂波の愛に新しい領域が生まれる──────!!!
ちなみに寝ている願の手を使う(意味深)のは今までで一番捗ったらしい。
これは全員に当たるがナチュラルに永遠、願と一緒だと思っている。




次回、架空イベント『未だ果てなきバルカンに手を伸ばして』を開催

プロになると道を決めたLeo/need。それを祝福する願に渦巻く一つの感情。
その感情を自覚してか、願の足は迷う事なくとある場所に向かっていた。
三者四様の想いが交錯する中、事態は次第に混迷していく。
相反する想い、訣別に振り払われる手。その最後に導く答えとは───??

バナー:星空背景に、願が手を空に伸ばす姿。その表情は優れず、どちらかと言えば苦悶に満ちている。文字も何処か禍々しく、“果てなき”の文字は腐り落ちている様に見えるし“手を伸ばして”の所では幾多の黒い腕の影が空に向かって手を伸ばしているように見える。


感想お待ちしてます。
新イベントの考察でも良いですよ。というか是非考察聞かせて(ハート)

次回何書きましょう(最終的に全部書きます)

  • 異聞:魔法少女パロ
  • 異聞:夜の娘続き
  • もしも冬弥と兄弟だったら…
  • もしも奏と双子だったら…
  • もしもまふゆと双子だったら…
  • TS願
  • 配信者願
  • 幕間1 続きリメイク
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