「(幼馴染を恋愛的に見るのは)いやーきついでしょ」と言ったオリ主が幼馴染達に娶られるまで後…   作:ネマ

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架空イベント書いてたらこっちのifが鮮明に浮かんできたから供養。
架空イベント待ち望んでた人は本当にごめんね…次回は絶対架空イベントなんで。
このルートに名前を付けるのなら“共有ルート”が正しいのかな?
願くんがいい感じに全員に関わって、いい感じにしあわせな未来です。

いつも通り、設定崩壊・過去改変・キャラ崩壊・独自設定・狂愛注意です。

愛の物語というのは、とても美しいものです。




if・無垢な夜に、縋りつき。

 

 

昔から、夢を見る。夢というにはあまりにも鮮明で現実味のある夢を。

そこは地平線まで広がる平原で空は白い雲は掛かっていれど隙間から見える空は何処までも澄んでいて綺麗な青空だ。

 

その平原で自分の身体は平原に一本だけ立っている木に背中を預けて寝ていたかのように目を覚ます。夢の中だからだろうか。その木に出来ている果物は鮮やかな…見方によって色の変わる半透明のシャボン玉みたいなモノで大きさもまばらでその木に出来ていた。

 

夢の世界ではたまに突風が吹く。その風は光り輝く半透明な何かを、それこそシャボン玉の欠片の様なモノを運ぶ。その景色は空の光を反射して色んな絶景を知っている自分でも息を呑む絶景だった。

 

いつものように目を覚ました木にもたれながら特に何かをするわけでもなく、地平線まで続く平原を眺め続ける。そんな夢の中でのルーティンを始めてどれくらい経った頃だろうか。

 

『…………ゲ、ン……』

 

何もない筈の平原に一つ、人型の影のような染みのような何かが蠢き近づいてくるのが見える。不思議なことにこの影は願が見ていた平原から前兆動作も無しに現れる辺り、“何か別の存在”なのでは無いかとふと感じ取っていた。

人型の影であろうとも腰まであるであろう長い髪やスカートの感じからその影が大体高校生ぐらい…今の願と同じぐらいだと自分に近づく影を見つめながら願は上手く回らない思考で考える。

 

アナタ…ニモ……オモイノウタガ……

 

願にはそれが何を言っているのか聞き取れない。けど凄く悲しそうに苦しそうに、けどとても愛おしそうに影は願の身体に腕を回し抱きついている。その影からは無機質じみた熱が伝わってくる。それを願はただただ見続ける事しか出来ない。

 

ダカラ……どうか……

 

段々とその声はノイズが掛かったかのように聞こえにくくなっていく。

それと同じように視界も少しずつ光に包まれて見えなくなっていく。

これは、目覚めだ。この夢の終わりはいつも決まってこんな感じだからこそ願は特に驚く事もなくぼーっと見続ける。

 

生きたいって…生きたいって言って…っっ!!!

 

意識が少しずつ消えていくような感覚の瞬間。その影がまるで泣いているように見えた。何かを強く訴えているようなその姿はもう影でなく緑の髪をした少──────

 

 

 

「……………誰だったんだろ」

 

目を覚ます。いつものように夢は肌を撫でる温度も風もまるで夢を見ていたとは思えないほど鮮明で瞳を閉じれば簡単に思い出せる。そんな中、身体を起こした願は頭に片手を当てて思い返そうと深く思案する。影は最後、影とは程遠く緑の髪と緑色の目をした少女。その姿は何処か神秘的で浮世離れした誰かだった。

 

「願ー……起きてる?」

 

その誰かと自分は会っているような気がして今までの記憶を掘り起こしている所で部屋の外から声が聞こえる。その声は何処か爽やかで、願にとって聞き慣れた声だった。

 

「ん。すぐ行くから待ってて」

 

願はノロノロと立ち上がりカーテンを開け、制服を着始める。

次第に願の瞳は意識の覚醒と共に理知的な光が宿るいつもの願となった。

 

 

「おはよう。遥、杏、みのり、こはね」

 

下に降りると今日は4人だろうか。リビングで思い思いに過ごす4人の姿があった。

遥とみのりはヨガだろうか?ストレッチをしながら身体を動かしている。杏とこはねはどうやらキッチンでコーヒーを淹れている様だ。コーヒーの良い匂いがリビングまで漂ってきている。

 

この4人は願の()()()である。小学生に成り立ての頃から遥と杏の競争に巻き込まれて…そして遥は早い頃から“アイドル”としてM()O()R()E() ()M()O()R()E() ()J()U()M()P()()を結成して4人グループで今や国民的大スターである。

杏ももう中学生に成り立てと同じぐらいには同じ願の()()()である彰人や冬弥を誘ってVividBADSQUADだなんて今やストリートミュージック界のレジェンドである。

 

そんな有名人中の有名人が…というより各音楽界の至宝とも呼べるレジェンドたちがよく遊び場兼練習場にしているのは願だけが知っている事実だった。

 

「おっはよー!…はいコーヒーね!」

 

「おはよう願くん。」

 

「ん!おはよう願くん……っていたたぁ!」

 

「あーもうみのり。変な体勢で立とうとすると……あー」

 

そんなこんな考えているとお盆に人数分のコーヒーを入れたコップを杏が慣れている手つきで持ってくる。その後ろから手持ち無沙汰になったこはねがひょっこりと顔を突き出してくる。

その近くではヨガの体勢のまま立ちあがろうとしたみのりが案の定転けてその横で同じ体勢をしていた遥が言わんこっちゃない…と言うかのように頭を抱えた。

 

 

「そういえば……」

 

みのりの騒ぎはものの数分で収まり5人は食卓の席に自由に座る。

そうしてコーヒーを飲んでいると思い出したかのように杏が声を上げる。

 

「昨日の夜、何かしてた?」

 

「あー……」

 

キッチンの惨状を見たのか願は杏の質問に納得の声を上げる。

今、キッチンは凄いことになっている。それはもう洗っていない皿が積み上がっているという意味で、だが。

 

「昨晩ボーイズで宴してたから……」

 

彰人、冬弥、司、類。そして願の5人で昨日、晩御飯を食べた。

晩御飯と言えど男子高校生が好きそうな唐揚げにポテトにピザにさらにお菓子も開けてジュースで乾杯しながらゲームしていた。ちなみに類が持ってきたジュースは明らかに酒精の匂いがしていた気がしたが……まあ気のせいだろう。

尚、次第に盛り上がってきて正気を失った男子の宴は類が寧々や瑞希、司が咲希とえむ。彰人が絵名…冬弥がこはねを呼んだが最終的に来たのは瑞希だけだった。

 

「「「「あー」」」」

 

その惨状を大体察したのか4人は納得の声を上げる。

どうにか部屋の換気はしていたが、リビングには色んなゲーム機やら誰かが持ち込んで置きっぱなしであろう何かヤバめな絡繰装置。その他etc…と転がっていたのだから。

 

「……あっ。願くん今日って誰が来るの?」

 

「え?……今日はレオニが来るけど」

 

そんなこんなしていると突然みのりが声を上げて願に問う。

そんなみのりに願は一瞬首を傾げたが直ぐにレオニが来ると答えた。

この家がよく遊び場兼練習場となると願は言うがそんなレベルではない。必ず願の家には5つのグループの誰かしらが居るというレベルなのだ。もはやそこらの拠点より豪華な一般家である。もちろん、願はそれを知らない(知らされていないが)。

 

「じゃあ久々にコラボのお誘いしようかな」

 

「レオニとモモジャン?…じゃあビビバスもとは言えないよねぇ……」

 

レオニが来ると言うことで遥は決めていたかのようにモアジャンとコラボしようと声を上げる。そんな遥に杏もコラボしようと声を上げるがレオニとモアジャンにビビバスを混ぜるのは正直悪手だと肩を下す。

 

世間体に疎い願だから話半分でレオニにモモジャンとのコラボの話をメールに打っていたが、これは本来そう耳から耳へ抜かして良い話ではない。

Leo/need。それはバンド界の一世を風靡する絶対的な存在。圧倒的な歌唱力と、バンドに興味がない人間でも引き込むダイナミックさと繊細…そして可憐さを兼ね揃えた音楽を奏でる少女たち。それがLeo/needだ。

そしてMORE MORE JUMP!もまたアイドル界の一世を風靡する絶対的な存在。文字通りのトップアイドル4人だけで構成されたそれは事務所を飛び出した後、完全フリーで尚、今もアイドル界の頂点に立ち続ける4人である。

 

そんな絶対的な存在たちがぶつかり合って一つの音楽を生み出すと言うことがどう言うことか。普段から各音楽界の至宝とも呼べるレジェンドたちに囲まれている願には疎い話かも知れないが、知る人が知ればその価値に卒倒する人が殆どだろう。

 

 

「──────……そろそろ行かないと」

 

そうして何気ない話に華を咲かせているとふと時計を見た願は立ち上がる。まだまだ授業が始まる時間には遠く、少女たちも制服には着替えていなかった. ちなみにこの家には20着の制服のスペアがある。

 

「あれ……?そっか」

 

()()()()()()のこはねはそんな願を不思議そうに首を傾げ、その直後に納得した。

願の()()()の1人にして()()()()()()であるとある少女は毎朝が弱い。その為によく願以下同じ音楽メンバーが起こしに行っている。今日は願だったらしい。

 

「うん……じゃあ後は鍵掛けて学校で」

 

「はーい」「いってらっしゃーい!」

 

「学校で返すねー!」

 

遥とみのりが見送るように手を振るのを願は片手を上げて家を出る。今から向かう先は───奏の家だ。

 

 

 

「それで、どうだったのさ」

 

願が立ち去った願の家。

4人の少女は先程まで和かに話していたとはうって変わり非常に真剣に、そして厳かに、そしてハイライトが消えた目で卓を囲んだ。

 

「全然ダメ。そもそも願、耐久値高すぎ。」

 

杏が声を上げる。一体何がとはあえて言わないし何とも言わない。ただ偶然、“類”がブレンドしたジュースには口が軽くなる成分が入っているだけであって

 

「まあ瑞希や類くんが落ちちゃうレベルだからね」

 

類とか強い部類に入る。とナチュラルに遥は話を続けている。遥もなにかと強い方ではあるがそれでも願には敵わない。なぜだろうか確実に願の方が飲んでいるというのに。

 

「まあ精神年齢入れたらもうおじさん、おばさんなんだけどね」

 

別で話をしていたみのりとこはねだったが、こはねの呟くような一言は空間に静寂をもたらした。例えそれが“事実”であろうとも年齢の話は禁句だ。例え精神年齢が四十路超えているとしても、だ。

 

「それは……そうだけど」

 

「まあね………どうしてこうなったのやら」

 

杏とみのりの脳内には今も鮮明に浮かび上がってくるあの日。苦々しく唇を噛む4人は“あの日”を直ぐに誦じることができるほど。

また明日ねと手を振って別れた筈なのに。ついさっきまで電話で会話していたのに

次の日、願の家にみんなで迎えに行ったら。珍しく願は遅刻したから。

チャイムにも反応がなくて。スマホでも反応がなくて。

家の中でぶら下がる願の身体。家の中で冷たくなっている願の身体。

事実に気がついた時泣き叫ぶ私たち、悲鳴と頭の中を満たす絶望。言葉にしようなら今でも吐きそうになる。

 

その時、きっとみんな願ったのだろう。思ったのだろう。考えたのだろう。

 

「「「「いやだ。こんな結末は認めない」」」」

 

ダカラ、時間の針よ。マキモドレ。愛おしき日々に。今度こそ─────

 

 

 

 

 

 

「かーなでー!」

 

1人制服のまま家の戸を叩くのは、とある少女の家。

ここの家には家族単位でお世話になった覚えがある。ここのおばさん…奏にとってのお母さんは体が弱かったせいでまだ幼い時に儚くなってしまい、深くおばさんを愛していたおじさん…奏の父は考えることを辞めてしまった。

 

「う…願。おはよう」

 

今日も体が溶けそうなぐらい良い天気だね。と言い家を出てきたのは“制服姿”の奏。

願と同じように神高に進学した奏は同じクラスで勉学を共にするがいかんせん奏は昔から朝が弱かった。…やっている事を鑑みれば当たり前であるがそんな調子では卒業できるかどうかさえ怪しいと言う事でいろんな人が奏の登校を手伝っている。

 

「昨日も遅くまで頑張ってたの?」

 

「…………うん。形になってきたから一回聞いてみて、どんな形か教えてほしい」

 

そんな私生活がダメダメな奏ではあるがその実は世界的に有名な音楽サークルのリーダーにして作曲担当だ。世界的に有名でそれこそ音楽には“聴くだけ”という人でも知っているような世界的に有名な所からハンティングを受けようとも全て断り、内輪だけで作詞、作曲、イラスト、動画の全てをこなす。出す音楽はどれもこれも世界的に大ヒットを起こし、彼女たちに音楽を書いてもらえるだけで一生誇れる名誉として今も注目と称賛、栄光を受け続ける音楽サークル。それが“25時、ナイトコードで”…通称ニーゴである。

 

「わかった……でもあんまり具体的には言えないよ」

 

「………そう?結構的を突いてると思う、けど」

 

ニーゴの曲は世界的な人気だ。勿論、それ相応のやっかみも多いがそれら全てを音楽でねじ伏せて来た。奏は“願”をニーゴは“願”を重宝している。それは何故か、世界的人気になった今でも“昔”と変わらず鋭く具体的に意見をしてくれるから。

 

「忘れた?……願。ううんwish。貴方だけ私は救えなかったの。」

 

貴方は神さま。天上にて憐れなる私たちに“救済”を施す聖者。

けどそんな神さまは自らの意志で空に飛んだ。

どうして咎人の私たちに二回目が許されたのかは分からない。けど今度は絶対に願を神さまにしないし、救ってみせる。

 

そう。奏は身勝手な我欲とも取れる言葉で願の精神を乱す。

願はwishなんて知らない。ましてや救えなかっただなんて一体何を言っているのか。そう口にしたいのにそれは声に出せない。

 

「奏………君は……っっ!!」

 

「願くんー!わんだほーい!!」

 

考えを中断するように首を振る願に後ろの方から元気いっぱいな大声と共に背中に衝撃が走る。その衝撃で前に居た奏に抱きつくような形になってしまったのはやらかしたと思う。

 

「………おはよう。えむ」

 

「えへへ……おはよう!」

 

願が後ろを振り向くとそこには満面の笑みで“わんだほーい”しているえむの姿が有った。その後ろではモアジャンの残りのメンバーである“雫”と“愛莉”がこちらに向かって歩いてきている。

 

「………おはようございます。雫先輩、愛莉先輩」

 

「おはよう。今日も良い日ね〜」

 

「おはよう。こら!えむ。危険でしょ!」

 

えむの頭をグリグリしている愛莉。そして後ろで倒れそうになっている(大体願のせい)奏を支える雫。こう見ると不思議だ。全員が全員、有名人というレベルで測れる以上の重要人物だというのにこうしているうちはただの高校生に見えるのだ。……まあ事実、高校生には違いないのだろうが。

 

「そうだ!願くん!今日の放課後、ショー見にきてね!」

 

「今日…?良いよ。特に何もないし」

 

こうして簡単に遊ぶように誘っているが本当はそんなレベルの話ではない。

鳳えむ。日本の大企業の一つフェニックスグループの御令嬢。つまりはお嬢様という事だ。……だが今のえむにはそんな物など霞んで見えるほど。

世界から、それこそショーの本場から“是非来てくれ”と懇願されるほどのショーを世界に笑みを届ける世界的大スターの1人。それが鳳えむであり、そんなスターが集まったショーバンド。それがワンダーランズ×ショウタイムである。

 

勿論、そんなショーをフェニックスワンダーランドの一つでしかしないとなればその倍率もおかしい物になる。そんなショーをいつも願はほぼ顔パスで行けるようになっている。“幼馴染”というのか、勿論それだけではない。

 

「じゃあまた後でねー!」

 

そんなこんな考えているといつの間にかえむは走って行ってしまった。

いつものえむの忙しさに願はいつも通りだと微笑む。そんなこんなしているともうそろそろ急がなくてはならないとして互いの道を歩み始めた。

 

 

 

「……けどあれね。」

 

2人、いつの間にかえむが合流していた3人は特に声を上げるわけでもなく歩いていた所に、愛莉が一言、呟く。

 

「こう見ると願。“あんな事”しそうに見えないのに」

 

「……今更ですよ。愛莉先輩」

 

愛莉のその表情は酷く悲しそうで、瞳が揺れていた。そんな愛莉とは対称的にえむの瞳は燃え上がるような炎を宿して虚空を眺めていた。

 

「………だって願は」

 

同時刻、誰も聞こえないほど小さく奏がポツリと呟く。

 

「「6月のあの日、自らの命を絶つ」」

 

えむと奏の脳裏に鮮明に浮かぶあの日。苦々しく、悲しそうに、苦しそうに唇を噛む4人は“あの日”を直ぐに誦じることができるほど。

明日、新しい舞台をしようと拳を合わせていたのに。新曲の打ち上げをしようと部屋を別れたた筈なのに。

次の日、願の家にみんなで迎えに行ったら。珍しく朝、願が部屋にはいなくて。

チャイムにも反応がなくて。家のどこにもいなくて。

車の中で横たわる一つの袋。とあるビルの下、まるで潰れた柘榴のような。

事実に気がついた時泣き叫ぶ私たち、悲鳴と頭の中を満たす絶望。言葉では表そうとするならば今にでもその拒絶で吐きそうになる。

 

その時、きっとみんな願ったのだろう。思ったのだろう。考えたのだろう。

 

「「「「認めない。こんな今なんて望んだ物と違う」」」」

 

ダカラ、時よ。マキモドレ。ワタシタチは運命に反逆する。

 

 

 

 

 

学校生活は特に語ることはない。

いつものように類が学校を改造してビックリ屋敷に作り替えたりそれに彰人冬弥、俺…以下省略の全員が巻き込まれたり、こはね、奏と一緒にご飯食べたり、寧々・杏・瑞希達とで類をとっちめに行ったりといつもの暇をしない神高生活だ。

 

 

 

放課後、ワンダーランズ×ショウタイムのショーをみて幾つか意見を聞かれたから演出上、そして音響上の意見を交わしていて遅くまで掛かったということだ。

いつの間にか日が暮れ夜になった街を1人、願は歩く。

 

(随分……遠くまで来ちゃったな)

 

ふと願は過去に思いを馳せる。常に騒がしい日々はこうして過去に思いを馳せることも無くなってくる。それはつまり傷が目に入らないということ。

 

(けど……)

 

目に入らないだけであって、その傷が癒えることはない。

針で硝子を砕くように内袖の“仄暗いモノ”は常に訴える。

苦難の旅路の末に◼️◼️老爺という物語は完結した。

だと言うのに“後書き”と言わんばかりにまだ書き続けられる。

耳を塞いで、瞳を閉じて、もう何も考えたくない。後悔と、無念だけが残っていた筈だった。ズキズキと訴えるこの痛みだけが唯一の“赦し”。もう“今”なんてどうでもいいと投げ出したかった。

 

『願!』『願くーん!』『おーい。願』『願。』『願、行くよ』『願くん…ふふっ』『願。』『げんくん!』『願ー!』『願。手を』『願。いつまでも一緒』『願。アンタは……』『願。行くぞ』

 

けどそれでも今はまだ生きたい、のだろう。

“外夜 願”を必要としてくれる人たちがいる。“外夜 願”の存在を知る人がいる。

ならまだ、終われない。終わってはならない。置いていく苦しみは、置いていかれる苦しみはよく知っているからこそ。…………ああでも

 

「終わるのなら、きっと─────────」

 

貴方達の手で終わらせてほしい。

 

 

 

「ただいまー!」

 

願は家の扉を開ける。一人暮らしというのにこの家には常に人が居過ぎて、家でライトが付いてたり鍵が掛かってなくても最近は驚かなくなったと願は考える。

 

「おはえりー!」「もー!咲希ちゃん。つまみ食いは─!」

 

出迎えたのは口に何か食べながらの咲希とその後ろからエプロンを着て菜箸を持って出てきた穂波の姿だった。今日の晩ご飯は揚げ物らしいと察する。

 

「帰ってきたの?願。」「おかえり。願。」

 

そうしていると上から志歩と一歌が降りてくる。

この4人こそ、Leo/needにして願の最初の幼馴染。

生きることさえ諦めかけていた願の手を取り、導いてくれた輝ける星。

だから願自身はあまり気がついていないがレオニに対しては対応が比較的甘い。

その甘さは周りの人間を以ってしても甘いと言われるほどだ。

 

「……ただいま」

 

願は知る由もないがその表情は一番柔らかく、溢れるような笑みが浮かんでいたという。

 

 

 

 

「……おや。揃ったかい」

 

1人の少年がその空間に声を掛ける。

真っ暗で周囲が見えなかった筈の空間は何処からともなく光が溢れ、そこにはラウンドテーブルと椅子がある事が分かる。そこに座るは総勢19名の少年少女。片肘を付いていたり、足を組んでいたりと自由に座っているがその視線は1人の少年を非難するかのように目を細めているのが殆どだった。

 

「一番、アンタが遅かったんすけどね。神代先輩」

 

「おや。それは失敬。」

 

そんな少年にとある1人が声を上げる。…類は何も悟らせないような笑みを浮かべながら声を上げた彰人に微笑みかける。勿論、彰人はきっしょと言わんばかりに顰める。

 

「それじゃあ。定期会議と行こうか」

 

ここは“名も亡きセカイ”。セカイに存在するのは二十の席と一つのラウンドテーブル

セカイに本来いる筈のバーチャルシンガーの姿は確認できず、このセカイに空も地も存在しない。

 

「まあいいけど、早くしてね」

 

そんな類とは裏腹に不満げに声を上げるのが1人いる。志歩だ。

どうやら志歩だけでなくレオニ全員が声さえ上げていないが不満げな表情を隠そうとしない。まあそれもそうだろう。

 

「確かに、本来なら昨日だったものな」

 

真っ先に冬弥が呟く。今日はレオニの日だった筈だ。それを邪魔されるなんて正直言ってキレてもおかしくない。本当は前日だったものを代わってもらっているからこそ。

 

「さっさと本題に入った方がいいんじゃない?」

 

次に声を上げたのはまふゆだ。まるで嫌悪感さえ丸出しに声を出す彼女を他の少年少女は咎めることが出来るはずがない。……本来なら自分のメンバーを除いて全員が敵だから。“来るべき絶望”のために手を一時的に結んでいるのであって隙があれば背中を刺す事さえ厭わないほど仲は宜しくない。

 

「確かに。……それじゃあ何か変化はあったか?」

 

そこで類に代わり、司が声を上げる。

普段いつものような底抜けの明るさとは程遠く周囲を威圧する。その対象には愛してやまない程の妹の咲希にさえ威圧を隠さないのだからそれがどれほどかよく分かるだろう。

 

「それこそ、貴方達が怪しいことに気がついてます?天馬さん。神代さん。青柳さん。東雲くん。」

 

そこに遥が声を上げる。昨日の件で、わざわざ口を軽くするのを準備したというのに願から何も聞けなかったというのはあまりにも信用ならない。…世界的大スターとストリートのレジェンドと言えどその程度なのかと皮肉と嘲笑を隠さずに男子4人を糾弾する。

 

「おやおや。本当に何も聞けなかったんだよ?」

 

「それ。非常に胡散臭いって気がついてます?」

 

類の弁解に遥の口調も荒くなっていく。

すわ一触即発かと、周囲に座る少年少女は興味深そうに、あるいは白けた顔で。または野次を飛ばすかのように面白そうに行方を見守る。

 

「まあまあ。ボクも居たけど本当に何も聞けなかったよ」

 

そこで仲裁に掛かる一つの声。あの夜、同じように参加していた瑞希だ。

最悪、それ以上疑うのなら今も願の家についている盗聴器を利用すればいい。無駄にハイテクな類製の盗聴器は一般的に流通している盗聴器を見つける道具では一才感知されない優れものだ。

 

「………まあいいでしょう。」

 

「ふむ。助かったよ。瑞希。…まあでも今日はここまでにしようか」

 

そろそろレオニがブチギレそうだと類は周囲を見渡す。

ピリピリし始めるレオニにまあ分かるとモアジャン…落ち着いてと言いたげだがその心理がよく理解できるビビバスとワンダショは治めるにも治めようと出来ない。ニーゴは我関せずと無言を貫いている。

そんな姿に、本当に願が居ないと纏まりもクソもねぇなここと類は目を細める。

 

「僕たちはあの日を思い出せる筈だ」

 

類の締めの言葉に全員の空気が一度沈静化する。その直後に巻き上がる負の感情は途方もない絶望そのものであった。

 

「だからこそ…今回こそ失敗しない。」

 

そうだろう。わざわざ仲の悪い…その仲の悪さも元を辿れば解釈違いという永遠、分かり合えぬモノであるには違いない。けど、全員が辿った道は同じだ。

 

「そのために、全てを賭けろ」

 

その言葉の圧力に負けないほど、全員の表情は“何を当たり前を”と言いたげだ。

世界から?栄光?そんなもの取れて当たり前だ。“あの”願と共に過ごした時間はこうやって今世の栄光として輝いている。それはつまり何よりも“今”の裏付けである事に間違いない。

 

 

「………言われるまでもない。」

 

そう奏が一言呟きニーゴが去っていく。自らのセカイに戻ったらしい。

今夜もまたニーゴは夜の訪れと共に動き出す。次こそ救う歌を作るために。

 

 

「同じく。……今度こそ間違わない…っ!!」

 

一歌がそう呟きレオニは去っていく。今日はレオニの時間だ。

星の少女達は夜が無ければ輝けない事をよく知っているのだから。

 

 

「…ま。ここら辺でお暇しよっか。」「異議なし」「それでいいだろ」

 

そんな上二つと違いこはねは軽く呟き去っていく…その後ろ姿を追わんと冬弥と彰人も声に出して行く。少年少女はあの輝かしい日々をもう一度渇望する。

 

 

「そうだね。もうここにいる意味ないし。」

 

そんなビビバスの声にみのりも賛成の意を表する。同じように座っていた雫と愛莉も似たような顔をしていたのだから問題ないだろうと去っていく。最も願に愛されたのは私たちだと自負しているのだ。

 

 

「およよ……相変わらず仲悪いねぇ……」

 

「類。思ってもない事言うのは性格悪いと思うよ」

 

「寧々ちゃんの言う通りだと思うよ?」

 

「総スカンではないか。類」

 

そんな4グループを見て類は一言言葉を溢す。

明らかにそう思ってない類の呟きは寧々とえむの顰めっ面、司の笑いを堪える様な声で反応されたのだった。

 

 

「それで、類。本当はわかったことがあるんだろう?」

 

「…………まあ、ね」

 

少しした後、セカイに残留したワンダショは類が言いたいことがある事に気がついていた。そして今日の会議。そこから導き出せるは現状を覆す“何か”

 

「それで?早く言っちゃいなよ。類」

 

「……ああ。うん。」

 

言いにくそうに類は口籠らせる。つまり類が言いたいことはそれほどよろしくない事なのかと空気が緊張に満ちていく。

 

「願くんの家にあるものと言えば何が思いつくかい?」

 

その類の問いに司も寧々もえむも簡単だと幾つも答えられると指折り数え始めた。

音楽系の用品。ショーで使う手品。楽譜と音響セット。コーヒーミルやコップ系。ペンギングッズの数々。可愛い系の小物類。上げていけばキリがない程だ。

一体、この問いに何の意味があるのか。寧々は半目になりながら類を見る。

すると類はさらに一つ問いに条件を付け足した。

 

「それじゃあ、その中で願くんが欲しいと言ったものはあるかい?」

 

「「「………………」」」

 

音楽系のものは最初、置き場所が無いならと保管庫代わりに願の家に置かれたモノだ。ショーの手品は言うまでもなく、自分達が置いて行った物だし、それに伴うカラクリもだ。コーヒー系やペンギンの大きなぬいぐるみもその殆どが願以外が触っている。

 

「コーヒーは願くんも飲むから使ってる。ペンギンのぬいぐるみは掃除に日陰干しをしてる程度」

 

ここでようやく三人は類の言いたいことに気がつく。つまり願は

 

「一度も自分の要求を言ったことがない………ってコト?」

 

言葉にする寧々の顔は青褪めて、口にさえ出さずとも司とえむも似たような表情だ。

 

「そう。それはつまり…」

 

中々残酷なことだ。自分の要求というのは社会に属する以上何かしら生まれるモノ。それが生まれないと言うことはつまり、願は何もかもを諦めているということに過ぎない。

 

「僕は…いや。僕たちは願を根本的に履き違えていたのかもしれない」

 

僕たちは…いや。ワンダーランズ×ショウタイムも。25時、ナイトコードでも。MOREMOREJUMP!も。VividBADSQUADも。Leo/needも。全員全ていずれ現れる将来。願が“絶望”する何かが発生すると考えていた。そしてその運命を覆すためにこうして段取りを取ったと類は喋る。

 

「まだ幼く、レオニと会った直後の願くんと知り合い、幼馴染としての地位に収まった。」

 

その際、Leo/needと激しいぶつかり合いが発生したがそのおかげで全員が全員同じ結末を辿ったと知った。そして仕方がなく、本当に仕方がなく手を組まざる終えなかった。4人ではダメだったから。4人ではまた同じ結末になってしまうから。

 

「……もし、もしも、もしもだ。願くんの絶望が……」

 

一過性のモノでなく、今も…もしくはもっと昔から願くんの身体を蝕んでいるとしたのなら。と類は言葉を括る。もしそれが本当なら今までの全てはほぼほぼ無意味となる。何故なら上辺だけ並べた希望なんて、新しく出来るキズよりも痛いことを身をもって知っているからこそ。

 

「………全て、茶番。僕たちの独りよがりに過ぎないんだろうね………」

 

 

 

 

「げーん?」

 

寝てるのかな?と頬を指で突つく。

ん……と小さく身じろぎするけど目覚めるような感じは全くしない。昔からそうだ。願は一度寝ると中々起きることはない。

 

「一歌ちゃん…起きてる?」

 

そうしていると微かに扉を開けて、穂波が入ってくる。

その手にはマグカップを持って。ココアでも淹れてくれたのだろうか。

 

「うん。…願も大丈夫。」

 

そんな事を考えていると、隣に穂波が座りマグカップを手渡してくれた。ココアだ。ご丁寧にスプーンとマシュマロまで付いている。一息吐こうとココアを啜っていると穂波も同じように願の頬をプニプニと突つく。

 

「………どうしてだろうね。願はさ。」

 

この世界に於いて私たちは“仲違い”した事はない。

志歩も、穂波も私も…咲希は変わらず病院送りになっちゃったけど。

周囲に程よくそしてめんどくさくならない程度に愛想を振り撒き、いつも一緒にいるみたいな事実を塗り込み続けた。それでもクラスでは省かれ気味だったし別にそれで良かった。わざわざそれで腹を立てるほど“子供”じゃない。

 

「……うん。でも願は願なんだよ」

 

話を戻そう。それでも願は願だった。1人、1人私たちに根気強く関わり、私たち以外の“幼馴染”が出来たというのに“前”と比べると回数は落ちたけどそれでも変わりない愛だった。つまりあの世界の願と今の願は“同じ”なのだ。それってつまり──

 

「同じ運命が願に降り注ぐ」

 

一歌と穂波の脳内に鮮明に今も繰り返されるあの絶望の日。

幸せだった。栄光を掴んだ日の翌日だった。

朝起きたら隣で寝ているはずの願の姿が無くて。ただ少し買い物に行っただけなのだと思ってて。

けど時間だけが願が居なくなった時間だけが過ぎていく。昼も、夜も。

知り合い全てに電話を掛けても居なくて、私たちは警察に駆け込んだ。

数日後、だろうか?私たちはその時どう生きていたか何となくでしか想像つかないがそんなぐらいで、私たちは、私たちは、わた、し、は

 

『…残念ですが』

 

水に濡れて冷たくなって。まだそれは願だとよく分かって。

それがどういう意味か、それが何を意味するのか。目を塞いで知らないふりをするにはもう私たちは大人になり過ぎて。私たちは、私たちは

 

…………そうだった。そうだった。私たちは、思ったのだ。祈ったのだ。願ったのだ。

 

「「「「こんな、こんな現実なんて認めない…っっ!!!」」」」

 

その想いは何処かに通じたのだろう。気がついたら私たちはまだ一歌達とさえ知り合っていないまだ本当に幼い、幼い時期に巻き戻っていた。

多分、その時だ。その時に私たちのタカが外れたんだと思う。

 

『……貶める。蔑める。おとしめる。オトシメルッッッッッ!!!』

 

怒りと嘆きと、憎悪。希望よりも熱く、絶望よりも深い。人間の感情の極地。

という感情に狂った少女が狂笑を上げる。

私たちを救う、救済するたった一つの光を、穢れを知らぬ聖者を蔑めると息巻く。

その身体に柘榴を投げつけ、私たちは光を愛の力で天上から引きずり堕とす。

 

『そうだよね。もう二度ともう二度と』

 

願。貴方を離さなければいいだけの話。

何を迷っていたんだろうと少女が全身を震わす。その表情はどこまでも歪んでいて、それでも幸せそうに法悦に微笑んでいる。

わたしの手から、私たちの手からスルリと抜けていくのならその腕を、その身体を、その心を、その魂さえも掴んで離さないでいればいい。一体何を血迷っていたのだろう。それが最善策だったのに。

 

『そうだよね。本当にげんくんを思っていたのなら』

 

その身体も心もその全てをアタシたちの愛で覆い尽くしてしまえばいい。

悦びにも似た感情を溢れさせ、笑みを溢す少女。だがその瞳の奥は深淵よりも深い闇だけが映されており、どう見ても正気とは言い難い。

願の全てを、魂を、心を、願を構成する1ミクロンに至るまでアタシの、アタシ達の愛で満たしてしまえばもうこんな事は起きるはずがない。

 

『首輪で繋いで、糸で絡めて、後はどうしよっか。私たち以外考えられないように……』

 

けど願は私たちの手から離れていくだろう。そんな事許さない。ならどうすればいいか。………簡単だ。願を私の…私たちの箱庭に閉じ込めてしまえばいい。と少女はいずれ至る理想に表情を綻ばせる。その頬は紅潮し、いかにも恋する少女のように見える。

永遠とも取れる時間。その時きっと願も私の、私たちの愛を理解してくれる。昔から願は私たちの愛を理解してくれたのだから今回は少しだけ過激になっただけ。

 

 

そう。この瞬間、この世界に怪物が産声を上げた。

 

 

「なんて……ね?」

 

過去を想起し、一歌は微笑む。一歌の中では既に箱庭で愛し合っているはずなのに邪魔が多すぎる。と憎々しげに表情をコロコロ変える。

全く幼馴染という地位は本来私たちのモノだった筈だ。それを傲慢な簒奪者達は愚かにもこの座を奪おうとする。何と罪深い事だ。Leo/needは激怒した。

 

「まあでも……」

 

「最後に勝つのは私たち。Leo/needだ。」

 

聖者を蔑め、愛という名で蝕む。それは正しく悪魔の所業。

愛という一文字で運命も、人の意志さえも支配しようとする狂った少女達は月の下、願を撫でながら三日月状の笑みを浮かべながら笑ったのだった。

 

 

 






ね?いい感じでしょう?

外夜 願

幼馴染がめっちゃ多い子。不思議なことにその幼馴染が四六時中ずっと一緒にいるせいで友人らしい友人は幼馴染以外にはいないと言う。
前世?今は亡くなったはずの歴史では無事全員の脳を焼き尽くしたようだが…?
ちなみにこうなった理由はどの√にも相応する一回目の“架空イベント”が発生していないから。


ワンダーランズ×ショウタイム

世界的に認められる大きなショーを成功させた翌日だった。


25時、ナイトコードで。

世界的に有名な賞を受賞し終えた翌日だった。


MOREMOREJUMP!

トップアイドルとして全世界ツアーを終えた翌日だった。


VividBADSQUAD

伝説の夜を超え、新しい伝説になった翌日だった。


Leo/need

世界で一番大きなライブ会場で成功したその翌日だった。


うん。言いたい事は分かる。
感想などありましたらよろしくお願いします。



次回何書きましょう(最終的に全部書きます)

  • 異聞:魔法少女パロ
  • 異聞:夜の娘続き
  • もしも冬弥と兄弟だったら…
  • もしも奏と双子だったら…
  • もしもまふゆと双子だったら…
  • TS願
  • 配信者願
  • 幕間1 続きリメイク
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