「(幼馴染を恋愛的に見るのは)いやーきついでしょ」と言ったオリ主が幼馴染達に娶られるまで後…   作:ネマ

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お ま た せ
ようやく幕間2開始です。幕間1の様に願が別ユニットに…系譜として今回から、いつぞやかのエイプリル・フールの時のユニットに願を混ぜていきます。……まあ最も、出ている情報が少なすぎるせいで独自設定モリモリですがあくまで“最初から”このユニットとして集まった体で動かしていますのでご了承を。後めちゃくちゃコロコロ視点変わります。

つまり何が言いたいって?まふゆ救済RTAだね、そうだね。
それでは設定崩壊・過去改変・キャラ崩壊・独自設定注意です。


幕間2
if・夜の輝きはショーに彩られ


 

 

ここ、フェニックスワンダーランドというテーマパークの片隅。そこでは野外劇場である【ワンダーステージ】と呼ばれる舞台に今日もまた多くの人が“とある五人組の劇団”を見ようと席だけでなく、立ってまでしても多くの人が押しかけていた。

 

勿論、テーマパークというだけあって多くのアトラクションがあり、多くの楽しめるスポットもある。だというのに多くの客は劇場であるワンダーステージを見ようとそちらに脚を伸ばす。それほど大規模な劇団があるわけではない。それほど豪華で絢爛な舞台があるわけでもない。

 

だがそれでも多くの客はそちらに脚を運ぶのだ。

その理由は何故か…それは“実力派少数精鋭”とまで讃えられるほどの劇団がここで日々多くのショーをこなしているのだ。

 

 

そんな精鋭たちが作り上げた劇団…“ハピネス戦隊サニサニ☆ワンダー”と言った。

 

 

 

 

〈某日、【ワンダーステージ】にて〉

 

 

舞台の上に特別豪華なセットがあるわけでもなく、特別何か大きな仕掛けがあるわけでもない。だというのにその舞台の上で劇を繰り広げる五人に、観衆は手汗を握るほどの熱量を持って見守っていた。

 

「そこまでよ!!ナイトメア!!」

 

最初に舞台の真ん中に立って現れたのは青を基調にした白色のコートを羽織ったヒーローがそこには立っていた。青い髪の色と目の色に統一されたその姿は凛々しくサーベルを腰に携え、声高らかにサーベルを引き抜いた。

 

まるで某劇団の男装スターと言っても過言ではないその少女の姿は凛々しく輝き、舞台の上での彼女の姿は決して目を離すことのできないそんなカリスマ宿るその少女の名前は……

ヒーローは一日にしてならず!ストイックチャレンジャー・遥!

 

 

 

 

 

 

「ようやく追い詰めたのよ。ナイトメア。」

 

 

観念するのね。とその後ろから現れたのは、オレンジとピンクを基本に白色が織り交ぜられた衣装を羽織ったヒーローが眼前に待つ“敵役”を遥に負けず劣らずの存在感を醸し出しながら立っていた。手に持った本は何かの魔法書の様で、表紙には幾何学模様の魔法陣が刻まれていた。尚、ちなみに設定では本の角と面を使って攻撃する物理型魔法使いである。

 

 

彼女の演技はまるで一人十色と言われるほどの演技の深さ。だがそれだけではこのハピネス戦隊では日の目を見ない。だが彼女はその演技の深さを全て“共演者を引き上げる”と言われるほど。そんな少女の名前は……

不屈のハムハムソウル!イメチェンビースト・こはね!

 

 

 

 

 

 

「っく…本当に君なんだね……グッド、ううん。ナイトメア」

 

 

その横で涙を見せずとも、声色と手の動きで悲しんでいると分かる演技をして現れたのはピンク色をベースに白色を合わせたステージ衣装を着飾ったヒーローが立っていた。手に持つのはステッキの棒。マジシャンが使う様な棒は、今から棒術の為に使われる予定である。

 

 

彼女が舞台で浮かべる涙の雫は、まるで見ているこちらさえも悲しくなってくるほどの強烈に揺さぶってくる共感させる天才。それは逆に笑みであっても同じ。そんな少女の名前は……

今日も笑顔をみんなにお届け!サニサニハッピー・えむ!

 

 

 

「ナイトメア……貴方の悪夢を終わらせます」

 

そして最後に出てきたのは、濃い紫と薄い紫を基調にしたえむに似ている衣装を着ているヒーロー。その手に何も持っていなくても凄みがあるその少女が使う武器はこれまた驚きのメリケンサックである。

 

彼女は、まるで自身の喜怒哀楽を自在に操る様に演技する。全ての感情をまるで制御しているかの様な彼女の語り口は例えその気になくても、その気にさせるほどの実力がある。そんな彼女の名前は……

破顔一笑のキラキラ先輩!グッドネススマイル・まふゆ!

 

 

 

 

「よくぞここまで……ああ。口惜しや……」

 

そんなヒーローたちが睨む先、そこには1人の青年が立っていた。黒一色の軍服に羽織るまるで毛皮の様なコート。更には顔上半分に仮面まで被ったヴィランがヒーローたちを睨んでいた。

 

後少しだったというのに。後少しで世界征服が叶ったのにと言わんばかりのその怒気と狂気は、目の前に対峙していないと言うのに背筋を凍らせるほどの怨み口。ただ舞台に立っているだけだと言うのに、この場が王の玉座だけがある魔王の王の間でヒーローたちはそんな魔王を倒そうとする勇者であると脳内が勝手に保管しそうになる程場の空気が支配される。そんな演技の天才たちも呑み込む彼の名前は…

悪夢は深淵の底からこんにちは。ナイトメア・ネガイ

 

 

実は、この物語は二部構成であった。実はまふゆは裏切り者であったのだ。ヴィランであるナイトメア・ネガイに心からの信頼と親愛を捧げる手下である絶望の底からこんにちは。ダークネススマイル・まふゆであったのだ。だが、ハピネス戦隊たちの想いと心に光堕ちし、今ではネガイを止めるハピネス戦隊であった。

 

 

 

「ナイトメア・ネガイの思い通りにはさせない!」

 

「みんなー!力を貸してー!」

 

「さぁ!行くよ!!」

 

 

「来い!!ハピネス戦隊共!!我が屍の上こそ────正義である!!」

 

そうして始まった最終決戦。両手を広げまるで自分こそが悪、絶対悪であることを誇るかの様にハピネス戦隊を迎え討つ姿に、ハピネス戦隊は見ている観客にも沸き上げさせる。これはショーなのだ。ただ見ているだけでなく、観客と舞台上の演者が一纏まりになった舞台がそこにはあった。

 

 

 


 

 

「お疲れ様でしたー!」

 

そんな昼間の舞台も大盛況で終わり、少年少女はその脚で何処にでもあるファミレスの一席に座り込んだ。みんなみんな長時間の疲れからか好きな様に晩御飯となるメニューを頼んで入れてきたドリンクバーのジュースのグラスで乾杯したのだった。

 

「今日もいい舞台だったね」

 

「お客さんも満足してくれたからねー!!」

 

先陣を切ったのは遥とえむだった。今日の舞台も問題なく終わり、多くの人の笑みと感動の拍手が待っていてアンコールもあった。既にその時には全員ヘロヘロだったけど最後の最後まで全員が笑顔で舞台に立っていたのだ。えむはまるで今も今日の感動を忘れられないのか笑みを浮かべて喜んでいる。

 

ちなみに本日、遥はチートデイとしてめちゃくちゃ食べる予定らしいので後日全員ダイエットという名の過酷な運動に付き合わされる事が確定している。…まあこの場にいる全員がある意味フィジカル強者であるから問題はないが。

 

「け、けど反省が無いってところが無いわけでもないよね」

 

「うん。こはねちゃんの言う通りここで満足してはダメだよ」

 

そんな2人を引き締めるのはこはねとまふゆ。幾つかまだ詰められるところがあると指折り数えるこはねに、追加で喋るまふゆ。けどそのどちらも穏やかな笑みを浮かべているのを見るに今日の舞台は、及第点を大幅に超えた大満足の舞台だったと言えるだろう。

 

ちなみに、遥のチートデイの多くに付き合っているのはまふゆである。

遥ほどストイックな生活を送っていたわけではなかったが食に興味が湧かなかったのが少しずつ変わってきて、今では逆に気になった食べ物を自分から誘う様になるほどだった。(それでも遥以上に鉄壁のボディラインに遥が“こんなんチートや、チーターや!”と騒いだ話は今は置いておこう)

 

「まあ、言いたいことはあるだろうけど。今日はひとまず成功を喜ぼう」

 

そんな4人の様子にネガイ…またの名を願が横から纏める様に口を開く。

“ハピネス戦隊サニサニ☆ワンダー”の座長はえむで、副座長はまふゆである。だが“頭脳役”として牽引しているのは誰かと言われたらメンバー全員が迷いなく願の名前を挙げるだろう。

 

だが勿論願としては座長という名前をお飾りにするつもりは無いし、副座長という名を無価値にするつもりも無い。必要な伝達事項は必ずえむに伝えてもらう様にしているし、何か問題事や相談事があればまふゆに尋ねる様にしている。……側から見ればそういう流れを作っている、とも言えるが。

 

「今日の成功は非常に意味のあるモノになった……だからこそ」

 

話を戻そう。本日の舞台の成功は願の想像を遥かに越えるモノとしての成功を納めた。その成功は自分たちの名前を上げると同時に、メンバー1人誰かの軽い考えの行動で何処までも堕ちていく未来が含まれる事になる。

 

「………まぁ。心配は要らない、か」

 

「そうだよ〜!願くんも頑張ってくれてるんだから!!」

 

だからこそなんて言おうかそう願が言葉に詰まった瞬間、再度メンバーの顔を見る。未来に向かって輝く光、そしてどんな壁があろうともこのメンバーなら乗り越えられて当然という熱意を持った瞳。若さ故の蛮勇、若さ故の無謀と笑えるかもしれない。でも願は、この光に焼き尽くされている。この輝かしさに何処までも。

 

えむの笑い声に釣られて、みんなが笑顔になる。

この光景が何処までも続きます様にと、願は人生の先駆者より祈るのだった。

 

 

 

 

 

みんなお腹いっぱいになった頃、話は二転三転しながらも着実に次回の公演に向けて準備が始まっていた。基本的にショーで使う台本となるストーリーは最初にまふゆが大まかな骨組みを作り、そこに願が矛盾点などが無いか精査しておく。そうして調整できた骨組みに全員で肉付けしていく。と言うのがいつもの流れだ。

 

願を除いて全員女子校の進学校とだけあって平日も忙しい中で、まふゆは授業中でも密かにストーリーを作っているという“優等生”と名高いまふゆには思えない行動をするが、それでもまだ余裕があると言うのだから恐ろしいと同じ学校に通う下級生の三人は震える。ちなみに願らもまふゆと同じようにのらりくらりとやっているため、比較的まふゆの仕事を手伝う事も多い。

 

そんなこんなで次の題材はどうしようか。

それを考えながら会議していたその時だった。

 

『 〜』

 

願のスマホから着信音がし始めたのは。

ちなみに願のスマホは実は、今となってはメンバー全員で撮った写真や、メンバーでお揃いのアクセサリーが付いたりしているが最初期は本当に黒のカバーケースだけであった。流石に夢がないというかあまりにもアレすぎる為(ちなみに最初期のまふゆでさえ無言で首を横に振った)練習日の一日潰して願のスマホ大改造があったというのはまた別の話。

 

話を戻そう。掛かってきた電話の相手はえむの兄でありフェニックスワンダーランドの社長である慶介さんからの電話だ。これが専務である昌介さんからの電話だったら何か問題事があったのだと覚悟をするが社長からの電話となるといつもの労いの言葉とお褒めの言葉だろう。出ないわけにはいかないからとりあえず、外に出るのだった。

 

 

「…………誰からだろうね」

 

「多分、慶介兄じゃない…かな」

 

そんな願がファミレスから姿を消して少し、少女たちは不思議な後味悪さを前に願の話題を出す事にした。意外と表情豊かの様に思えるけど実は割と冷静沈着な彼があそこまで内心を揺らして電話に出る姿は少女たちも気になった。

 

そんな中、複雑そうな顔をしてえむが小さく手を上げる。

実は…と言わなくても良いがえむ、もとい鳳えむはフェニックスグループのご令嬢である。謂わば社長令嬢でありフェニックスワンダーランドのお嬢様でもあるのだ。そんなお嬢様が語る兄とは……

 

「……社長に直接呼び出される様になったんだね」

 

「いや。割と前から呼び出されていたみたいだよ……?」

 

フェニックスワンダーランドの社長。つまりは雲の上の存在にも等しいと言えるだろう。だがえむだけは知っている。願がえむの家族に気に入られていることを。

 

願を最初に見つけたのは誰か。その答えは間違いなくえむであった。どういう想いがあって互いに手を取り合ったのかそれは2人とも語ろうとはしないがえむは願をスカウトし、願はえむの手を取った。それが間違いようの無い事実であった。

 

実は、最初【ワンダーステージ】は取り壊される運命にあった。だがこの場はえむとえむの祖父の夢が詰まったステージ。そんな場所を壊されたく無いえむは、どう考えても無謀な“この場所に採算が取れるほどのお客さんを呼ぶ事”という条件の為に孤軍奮闘するつもりだった。

 

どうやっても実りにならない日々。そんなある日えむは願と出会った。何処をどうしてそうなったのか2人でさえ謎だがあったその日にたった2人だけの舞台を演じた。勿論、観客なんて居ないたった2人だけの舞台。

 

─────そして、えむは運命に出会う。

 

でもこれが恐ろしく噛み合った。

願に煽られる様にえむの演技が引き出され、えむに誘われる様に願の演技に色が付いていく。まるで欠けたパーツが、ようやく手に入ったという満足感ともっとこれからも願と演技をしたいという願望に満ちたえむがもう遠慮するわけがない。

 

『願くん!私と一緒にショーをしようよ!』

 

『……ええ……(ガチ困惑)』

 

最初は断られていたけど、そんなので諦めるもんか。ようやく見つけた人なのだ。ようやく私の夢を理解してくれる人なのだ。決して、逃すものか

 

何度も、何十回でも、何百回でも。

願が首を縦に振るその時までえむは決して離れるつもりは無かった。どうしてそこまで固執するのか。どうしてそこまで執着するのか。えむでさえ定かじゃ無い。けどえむの胸の内にあるのは、絶対に逃さないという意思だけ。

 

そしてその意思はついに実る。

主に願が折れる形で。

 

『………はぁ、これからよろしく。えむ』

 

差し出した願の掌。何処か清々しそうに笑うその姿にえむは自分の判断を間違いではなかったのだと確信した。きっとこれから何もかもか上手く変わる。そんなえむの確信を持って……

 

 

「まあまあ、願くんがあたしたちの為に頑張ってくれてるんだからさ!」

 

周囲のえむに対する“こいつ家族を使って外堀を……”という乙女の盟約に真っ向から叛逆している所業に無言の抗議を込めた視線を誤魔化すかの様にえむが口を開く。

生憎と少女たちもそれ以上する事は出来ない様だ。それもその筈、自分たちだってえむほど露骨には言わないが似た様なことをしているのだから。

 

「そう、いつも願は抱え込んでしまうから…」

 

そんな中、口を開いたのは遥だった。ティーカップを持ち心配そうに手を頬に当てる遥の姿は非常にお上品に見える。……その下にあるデザートの皿が大量に積まれていなければの話ではあるが。こんだけ食べてもまだ入りそうなのかという驚愕と、明日のランニングはおそらくキツくなるだろうなという合掌の雰囲気に少しだけ頬を赤らめながら遥…桐谷遥は、決して忘れられないあの日を思い出した。

 

 

 

桐谷遥は、元アイドルである。それも国民的人気アイドルのセンターをやっていたほどの超人気アイドル。それがかつての桐谷遥であった。ではそんな雲の上の存在だったのが今はショーの座に所属しているのか。それはかつての遥の失意があった。

 

自分の言葉が1人の人間を歪めた。その恐怖に遥は耐えきれなかった。ステージに立つのを嫌い、いつの間にか自分に当たるスポットライトでさえも遥自身を責めている様に見えて逃げた先が、このフェニックスワンダーランドだった。

 

⦅………遊園地、か⦆

 

急遽出来た休み。何処かに行きたいわけでもないが、部屋に籠っていたいわけでもない。通りがかった遊園地に、まるで誘い込まれるかの様に遥は気がついた時にはもう園内に入っていた。

 

遊園地に入っても何かに乗りたいだとか、楽しみたいとかは無い。当たり前だ。この時、遥は何もかもから逃避してこの場に立っている。逃げた先での理想郷が…多くの人が楽しみに笑う遊園地にはどう考えても向かない。この時ようやく遥は悟った。

 

⦅……ああ、この場所に来たのは……⦆

 

間違いであったのだと。誰も彼もが幸せに微笑み楽しむ世界に1人、取り残されたと感じる世界はどれほどモノクロで救いが無いのだろうか。行き交う人の顔がまるで黒色のクレヨンで乱雑に塗りつぶされた様に見え、そして今自分が歩いている道さえも脆い、脆い崖の端に立っていると錯覚したその時だった。

 

⦅…………光?⦆

 

何処からか聞こえる優しげな音。何もかもが白黒の世界で一つだけ輝いて見えたモノ。小さい旋律に、小さな歌声。そして小さな笑い声。今でもこの輝きから少しでも目を逸らして仕舞えば見失いそうな細い、細い輝き。

 

気がつけば、遥はその光の方向に走っていた。今まで、アイドルとして生きてきた人生の中でもした事ないほどの全力疾走。この後どうなっても構わないからこの光だけは手放したくない。そうして人並みを掻き分け、ただ向かうのは一筋の光に。

 

─────そして、遥は運命に出会う。

 

こじんまりとして捨てられていると錯覚できるほどの寂れたショーの舞台の上に三人。その輝きは、その星は、人の姿をしていた。舞台の縁に座り、まるで台本の様な白い紙の本を片手に思い思いに喋り合う。1人の男の子が口を開けば星は輝き、他2人の女の子が、まるで煽られる様に輝きが強くなる。

 

頬に、熱い雫が掛かる。己さえも気が付かぬうちに遥は、滂沱の涙を流していた。

きっとこの時の想いを遥は一生忘れられない。仲間に入れて欲しい/否定して欲しい。私もその場に入りたい/どうか壊して欲しい。相反する全ての感情。言葉が持つ“意味”を忌み嫌い逃げてきた少女が、その果てに言葉に魅了されるなどと、一体どんな冗談だろうか。

 

でも間違いなくこの時、遥は一歩を踏み出した。

それが例え篝火に惑わされる蛾の様に、その末路が己の破滅だとしても。桐谷遥はきっとこの時の判断を間違ったのだとは到底言えなかった。

 

 

 

「でも最初の方に比べれば、大分マシなんだよ?」

 

そう言い笑うこはねは、ジュースの入ったガラスをかき混ぜながらあの日の出会いを思い出す。それはこはねを変えたあの日。きっとこれから何も変わらないと思っていた自分を変えたあの日のことを──

 

 

こはね…小豆沢こはねは控えめに言って“普通”だった。

何処にでもいる少女A。物語の片隅に乗っているモブA……悪く言えばその程度。だがそんなこはねを良く見ると言うのならば、きっと彼女は運命に愛されている。

 

ある日から愕然と抱いていたこはねのなかの想い。

即ち“変わりたい”という世の中にはありふれた意思。だがその意思は酷く脆く、大体の場合は現実に折れて妥協する。それが大人になると言う事だという人も居るだろうが、そんな大人になる前にこはねは運命に出会った。

 

『………わわわ!』

 

『………きゃ!?』

 

その日、こはねはフェニックスワンダーランドに遊びに行っていた。

よくここへ遊びに来るこはねにとって、慣れた場所であるここを今日もまた楽しもうと足を踏み出したその時だった。後ろ背中から感じた衝撃。誰かとぶつかったのだろうか。そう後ろを見てみればそこにはピンク色の髪をした同い年?ぐらいの少女がぶつかってきていた。

 

『ご、ごめんなさい!!』

 

『だ、大丈夫…だよ……えっ!?』

 

すぐに頭を下げるそのピンク色の髪の少女。優しい人なんだなと認識するよりも先にその少女は走り去っていく。その方向は間違いなくアトラクションとは別方向。だというのに、その走り去る少女の楽しげな顔が何よりも輝いて見えた。

 

⦅………気になる⦆

 

いつもならそんな楽しいことがあるのか…と流すこはねだが、何故か今日はその後ろを追ってそんな楽しそうなコトが一体なんなのか知りたくなってしまった。

 

─────そして、こはねは運命に出会う。

 

そうして小さくなっていくピンク色の影を追っていった先で、そこにはピンク色の髪の女の子と黒髪の男の子が誰もいない舞台で演技をしているのを見た。たった2人だけの舞台。2人だけのショー。だというのにこはねはその2人にまるで魅了されるかの様に心が惹かれた。

 

⦅………すごい、すごい、すごい……すごい!!⦆

 

目まぐるしく動く場面。だというのにその物語がまるで魂に訴えてくる舞台は間違いなく2人が作っている世界だからだ。そんな世界にこはねは心底震える。…ああ、この舞台に混ざることが出来たのなら……

 

そうして、こはねは舞台前に飛び出す。

私を、小豆沢こはねをあなたたちの仲間にして欲しいのだと伝えに。

 

 

 

「……そっか、なら大丈夫かな」

 

そんな浮き足立っているえむたちを前にまふゆは冷静に落ち着く様に口を開く。

またいつもの様に出会った日の事でも思い出していたのだろうかと思いながらティーカップを傾ける。うん、おいしい。紅茶とはこんな味かぁ…とまふゆと願しかわからないまふゆのブラックジョークに、まふゆ…朝比奈まふゆはあの日から続く夢の日々を思い出した。

 

 

朝比奈まふゆはどうしようもなく絶望していた。とは言っても、この感情が絶望にも似た諦観であることに気がついたのはつい先日の事であったがとにかく、まふゆには未来を夢見ることなどあり得る話ではなかった。

 

親の期待通りに“優等生”であり続け、親の期待通りに“医者になる”夢を与えられ、“優等生”の通りにクラスメイトと交流を作り、“優等生”らしい行動を行ってきた。…さて、その中に“朝比奈まふゆ”という一個人はあったのだろうか?

 

答えは、そんなモノなど無かった。

最初はただの期待だった。だがまふゆはその期待をそっくりそのまま叶えるほどのスペックを持ち合わせてしまった。それ故の悲劇。もはやまふゆは自分が何なのかさえ分からなくなってしまった。

 

そんな、ある日の事だった。

たまに顔を見合わせる後輩から、とあるチケットを手渡されたのは。

 

『はい!先輩に見にきて欲しいんです!』

 

ピンク色の髪をした後輩が手がけるショーの一幕。

最初は、社交辞令で終わらせようと思っていた。……別に特段ショーに興味があるわけでは無かったのだから。

 

『はい。だって先輩と願くんはよく似てますから』

 

『………ぇ?』

 

まふゆがその言葉の意味を咀嚼するよりも先にピンク色の髪の……鳳さんは既に立ち去っていた。鳳さんという後輩はまふゆも何故かよく覚えていた。それは彼女の親がどうたらとか言う話ではなく……鳳さんのまふゆを見る目が何故か悲しそうで、それでいてまるで誰かを重ねていた様に見えたから。

 

もし、もしも。その“誰か”が鳳さんの言った“げんくん”とやらと一緒なら。

まふゆは合わねばならないと思った。この何も分からない、感じられない。深い深い海の底でもがき続けるのが、まふゆ1人でないとしたら。

 

『………確かめないと、いけないよね』

 

まふゆの心は既に決まっていた。

例えこの先にある光がまふゆを喰らい、呑み込もうとする魔物の瞳の光であろうとも。今のまふゆにはまだ光の方向に脚を引き摺ってでも、歩もうと前を向き出した。

 

そして運命の日。お母さんには後輩の鳳さんから誘われた演劇を見に行ってくる。と伝えた。それとなく鳳さんの名前とその意味を伝えて快く送り出してもらったけれど、生憎と今のまふゆにその罪悪感はない。何処か足取り軽くまふゆは更に追加で鳳さんから貰った【ワンダーステージ】へと向かった。……そこには、

 

──────そして、まふゆは運命に出会う。

 

『………ぁ』

 

まふゆは一目見て分かった。舞台で誰よりも鮮烈に“悪”を演じる彼。同類でありながら“朝比奈まふゆ”とは違い、ただひたすらに上だけを向いて走る様な彼。

その彼こそ“誰か”であり、“げんくん”だったのだ。まふゆはきっとこの日の事を忘れないだろう。暗闇の中に差し込んだ一筋の導を。ただ脚元の地面さえ分からない様な暗い、寒い善夜の中に差し込んだ一筋の標を。まふゆは初めて、運命という二文字を信じた。

 

『………き、れい』

 

私を見て欲しい。私に触って欲しい。私と喋って欲しい。私を抱きしめて欲しい。

何でもいい。どんな形でも良いから貴方に“朝比奈まふゆ”と言う存在を知って欲しい。気がついた時には、まふゆは木陰で涙を流していた。拭うこともせず、ただ“彼”の姿を1秒でも多く、刹那でも多く脳裏に、瞳に焼き映しておきたかったから。

 

その後の話だった。

鳳さんの手助けがあって私は願くんと一対一で話をする機会をくれた。…その時何故か、後ろにいた願くんと同じショーをしていたメンバーが納得した顔でこちらに頷いたのは謎だったが。(遥「光に目を焼かれたね」こはね「ようこそ“こちら側”へ」)

 

『……初めまして。朝比奈さん』

 

『初めまして。……どうかまふゆって呼んでほしい。』

 

そこから色んな話をした。彼の事、私の事、このショーの事、私のこの空っぽの事、ショーを共にする仲間のこと。この私を突き動かす衝動の事。全部、全部打ち明けた。例えきっと自分で舌を噛みちぎってでも話し続けるほど私は今の私の衝動を抑えきれなかった。

 

『………そう、か。』

 

『うん……』

 

一通り話終わって最後、願は大きなため息を吐いて後ろへともたれかかった。

一体何を言うのだろうか。一体どんな言葉が聞けるのだろうか。胸の内がどうしようもなく騒ぎ立てる。

 

『なら共に来たらいい。……進んだ道に、何も残らないわけが無いのだから』

 

『………!』

 

朝比奈まふゆに…いや。朝比奈まふゆだけに差し伸べられたその手。

分かりやすく鮮烈にそれでいてどうしようも無いほど、一目惚れだったのだろう。

それからの話は早かった。結局のところ、朝比奈まふゆの感じていた“虚無”は転じて縛られ続けた事による“窮屈感”であるだろうと願はある程度当たりを付けた。そしてまふゆを縛り付けていた鎖が悲しい事だが親子愛である事も理解していた。だから願はある程度、知名度が集まった所で大博打を打つつもりだった。

 

ショーをする“ボランティア”という名目に、集まった知名度。そしてフェニックスワンダーランドという舞台の知名度。大舞台を前にまふゆがすることは親をこの舞台に観客として呼ぶこと。その全てを、まふゆを救うためだけに使う。一世一代のショーが始まった。

 

まふゆが主演の舞台。まふゆ以外は全て悪役で、そして逃がそうとしない“人ならざるモノの愛”。少しずつまふゆの“それでも”前を向こうという直向きさに心を打たれて悪役の少女たちはまふゆに味方し、最後に“森の王”である願の問いを前に締めくくられる。

 

『この森を超えて歩むことは道なき道を歩むということ。必ずお前は1人になる。その苦しみが、その虚しさが耐えられるのか?』

 

 

『それでも、私は生きていたい!自分の脚で、自分の道を歩む!!』

 

そう、あの日のことを思い出して、ふとポツリまふゆは笑みを溢すのだった。

 

 

 







外夜願

脳を焼く事に関しては天才的だよね。脳を焼く事に関しては。
ワンダショifと同じ様に色々と手を尽くしてきているせいで、鳳家から外堀を埋められつつあるのに気が付かないのは彼だけである。

RTAかと言わんばかりの速度で周囲の脳を焼いていくせいで、どのルートよりもラスボス格2人が異常な速度で浄化される。なんならされた。そのくせ自分の事に関しては何も言わないのだからそれが更に周囲の湿度を高めている事を早く気がつけば良いと思う。



鳳えむ

その執着と執念のお陰で、運命は好転した。
原作と違いえむが座長のせいで色々と願から仕込まれているお陰で割と大人びた考え方を視野に入れる事ができるようになったが、根っこは最初からあった誰かを笑顔にしたいという考えである。

なおちなみにその執着心は今も尚、えむの心に残っている。




小豆沢こはね

ナチュラル平凡だというのに、運命的な出会いが全てを変えた。
変えたい運命、変わった運命に対する平凡な少女の視点は間違いなく願の救いになり得るだろう。

まあ分かりやすくいうのなら願が追い求めていた平凡からの視点は、願を救える鍵になるよという事。そもそも、どこかのifで“成長したら怖い”とまで言われた少女がただの凡夫であるはずがないのだから。


桐谷遥

願と関わったどの世界線よりも鮮烈に脳が焼かれているのがここの遥。
言葉の力を忌み嫌った矢先に出会ったのが、まだまだこれからの上記三人の台本読みに脳が焼かれた。そこからの遥は早かった。即座にアイドルを辞めて、このショーの一員として強く自分を売り込んだ。

願は元アイドルという知名度ある存在を抱えるメリットデメリットを考えたが、その間にえむとこはねが同志を見つけた様な素早さで受け入れた。なんて裏話もあるが、少なくともアイドルをしている時と同じぐらい今が満たされているらしい。

アイドルで無くなったお陰で食事制限を少しだけ緩めて、よくまふゆと2人で食べ歩きをしている…なんて話があるとか、何とか。そして願もよく食べる子とか嫌いにはなれないからよく餌付けされているなんて蛇足もある。



朝比奈まふゆ

間違いなく真っ当に幸せなまふゆがこのルート。
失意を抱えてヒトに混じる願の姿ではなく、失意があろうとも舞台の上で眩しく気高く吠えている願の姿を見てその姿に憧れと期待とそれ以上の感情を抱えたのがここのまふゆ。

早い頃から願に悪知恵を仕込まれているお陰でまふゆの親にはこの“ショーをする”という“ボランティア”については何も言われず、まふゆは一体どうしたいのか考える時間が生まれた。そしてえむやこはね、そして遥やその他の観客との触れ合いにより“ここ”をもっと続けたい。こんな所で終わりたくないというまふゆの心から生まれた叫びに少年少女たちは大事な舞台をまふゆの為に使う潰すとしてもまふゆの本心を舞台の上で暴き出した。

その結果は……語る必要もないだろう。
まふゆの親は子どもが自分が考えている以上に自らの脚で歩み始めた事を知り、まふゆは自らの夢へと一歩踏み出せる様になった。失った感覚も今は少しずつ元に戻り始め、作り上げた笑みも今はショーのメンバーだけだけど本当の笑みを浮かべる様になった。

ちなみに遥の暴食とその後のダイエットに巻き込まれる回数が一番多いのもまふゆである。後で過酷なダイエットするぐらいなら、腹七分目にしておけばいいのに…とは思っていても言わない。言ってはならない。



このifでこのユニットのセカイの話とか。
少女たちの秘密話とか書こうとか考えていたけど、それより先に力尽きた。
感想、評価お待ちしております。

次回何書きましょう(最終的に全部書きます)

  • 異聞:魔法少女パロ
  • 異聞:夜の娘続き
  • もしも冬弥と兄弟だったら…
  • もしも奏と双子だったら…
  • もしもまふゆと双子だったら…
  • TS願
  • 配信者願
  • 幕間1 続きリメイク
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