「(幼馴染を恋愛的に見るのは)いやーきついでしょ」と言ったオリ主が幼馴染達に娶られるまで後…   作:ネマ

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お久しぶりです。4ヶ月ぶり!?
全然更新しない間に全然変わりましたね。
色々とありますがやはり一番はレオニのリンクイベント。新しいセカイの場所では過去の自分が映されるという駅とかいう振り返る感じのイベントでしたね。もしもうちの願がいればそこには何も居ない病室か、或いは無数に吊り下げられた首吊り縄が出てきそうです。まあ後者の確率が高いでしょう。

それでは今回はifルートのひとつエイプリル・フールの青春/friendsのルートです。
やっぱりレオニがふたり固まっているという事でね。願の重要な設定も一部公開しておこうかなって感じです。

それでは、設定崩壊・過去改変・キャラ崩壊・独自設定注意です。




if・夜の輝きは青春と共に

 

 

「願ー!ここだよー!!」

 

ある日の放課後。ようやく着慣れた自分が通う神山高校の制服を着崩しながら人がごった返し、いつまで経っても慣れない交差点に立ち尽くす。程よく互いが互いに無関心な都会の喧騒の中、願は交差点の向こうで手を振る1人の少女の姿がふと目に映った。

 

煌めく金色の髪に揺れる少女の姿。そしてその横で控えめながらも小さく手を振る黒髪の少女の姿。この2人がいると言うことは…と少し離れた場所を見てみれば、晴天に気分が悪いのか少し萎びている茶色の髪の少女とそんな少女を支えている桃色の髪の少女が立っていた。

 

何もかもが色褪せて見えるこの世界で唯一輝いているその姿を見て、願は仏頂面から分かりやすく微笑み手を振り返す。そんな願の返事に気を良くしたのか更にブンブンと手を振り続ける金髪の少女…咲希の姿はまるで飼い主を見つけたコーギーか芝犬の様。尻尾と耳が見えてきそうな所でようやく信号が青に変わる。

 

「お疲れさま!げんくん!……ぎゅー!!」

 

「はいはい…咲希もね。」

 

少し願が速足で向こう側までつくより先にこちらに向かって全力疾走で走ってきた咲希が飛び込んできたのを抱きしめて向こう側へと抱っこした様な感じで歩く。

 

ただでさえ咲希は体が弱く、数ヶ月前まで病院のベッドの上だったというのに先ほどの様な体力を考えない全力疾走をすればどうなるかなんて考えるまでもない事だ。まだ陽春と花冷えが繰り返す薄い長袖が最も合う季節に咲希の体はまるで燃え盛る様に熱い。

 

「はぁ……はぁ、はぁ……」

 

空気を必死に吸おうとするかの様な荒い息。気管が狭まるような危険な呼吸音を前に願は慣れた手付きでベンチに座らせ姿勢を安定させる。勿論それだけではあまり効果が感じられないのを見るに願は咲希の背中を摩っている片手では無い方を使い早技のように咲希の制服のリボンを緩める。少しでも息をしやすい様にと言う配慮はどうやら少しずつ息が戻ってきており、後は少し水を口に含めば…と咲希に断りを入れながら鞄を漁って水筒を取り出し振ってみると水が入っている感覚は無い。

 

「………空じゃん……」

 

「………げん、くん……そのまま飲ませて……」

 

おそらく全部飲んだと考えられる事態に願は迷うことなく自分の鞄からペットボトルを取り出し飲み口をハンカチで拭き、咲希の水筒に移そうとする。その時、それを見ていた咲希が別にペットボトルのままでいいと手を伸ばしたのを見て願はそのままの状態で手渡した。

 

「はぁ………………ん、……………ぷはぁ、落ち着いたよ」

 

「それは良かった」

 

ピースといつもの花が咲く様な咲希の満面の笑みに願も胸を撫で下ろして、いつのまにか後ろに立っていた黒髪の少女…一歌とも挨拶する。つい数時間前の早朝にも会って途中まで同じ道で通学しているがそれでも互いにお疲れという言葉は欠かせない。

 

そうして一歌が咲希の額に手を置き熱を測っている間に、願が咲希の首筋に指を当てて脈拍をある程度測る。両方とも特に異常なしと手慣れた様子の3人。実は彼、彼女らの付き合いは長く“幼馴染”と言えるほどの期間、寝食を共にする機会があったほどの親密さ故にこうして咲希も2人のなすがままにされているのだ。

 

「……熱もそんなに高く無いよ」

 

「ああ……こっちも問題ないな」

 

おおよそ咲希が願の所まで暴走した事による息切れが原因だろうと2人は当たりを付けた。身体が弱いことは自分がよく知っているだろうにそれさえも無視して走ってくる咲希に願は忠告代わりに軽く額にデコピンをする。せめてこの暴走癖が無くなればなぁ…という願の思いと1人の時間が長い入院が終わった嬉しさを理解する気持ちで板挟みになった故のデコピンだ。

 

「……っ!えへへ………」

 

だがそんな願の無言の忠告でさえも咲希は少し驚いた後に、何故か喜ばしそうに叩かれた額を両手で押さえる。そんな咲希の姿なんて気がつくことなく願は近くにいたはずのもう2人を探そうと首を左右に回した所だった。

 

「………いた」

 

歩道を挟んで向かい側のベンチで我関せずといった態度で座っている二人組を見つけて願は微笑みかける。無視はさせないぞという願の念は通じたのか少しした後観念した様に2人とも立ち上がりこちらに近付く。

 

「全く……その空気に割り込みたくなかったから向こうで座ってたのに」

 

「そうよ……熱いし、疲れた……」

 

フンッと桃色の髪の少女…愛莉が願にもう少し後で呼んでくれても良かったのにと呟くとその隣で茶髪の少女…絵名がそれに同意するかの様に頷く。確かにその配慮は感じていたがそのままでは話が進まない。いつもこうして煮詰まった時には願が話を進めようと一番前に立つのだった。

 

 

 

 

合流してから歩きだしてから数分。前から一歌、咲希、願の横並びにその後ろから愛莉と絵名が着いてくる感じで食事も出来るカフェに向かっていた。生憎と願が通う神高も一歌達が通う宮女も本日は昼まで。程よくお腹が空いているということで5人はまず腹ごしらえをする事に満場一致で合意した。

 

「あーっと……まあ一歌には焼きそばパンは確定か」

 

「ねえ願。こっちも可愛くない?」

 

焼き立て色艶のあるパンが並べられた販売スペースに立つのは願と絵名。2人とも片手に白いトレーとトングを持ってパンを選んでいた。一歌は大好物である焼きそばパンは絶対に外せないと2、3個トレーに載せて後ろから裾を引っ張ってくる絵名の方を向く。あまりそういうのには詳しく無い願でさえも知っている様な有名なキャラクターを模したパンが並べられている。生憎と願は食い気の方がデカいためあまり唆られなかったが、隣で選んでいる絵名にその辺りは任せて自分はボリュームのあるパンを取りに行ったのだった。

 

そうしてパンを選ぶ事十分ほど、2人とも十分な量をトレーに乗せてカウンターまで待っている間の話だった。一応座っている3人から飲み物や追加の希望は聞いているから問題は無いが、それでも待っている間は暇である。だからこうして願と絵名が話し込んでしまうのは道理であった。

 

「そういや…願、アンタ最近はどうなの?」

 

「どうなの、とは?」

 

一つ年上の先輩である絵名について願が知ることは少ない。

たまに、本当に気まぐれに見せてくれる絵には決して消えぬ研鑽と努力の跡が滲むのが分かる。そしてそれと同じぐらいにバンド活動に向き合っておりそのドラムを演奏する姿は堂に入っている。……後は、まあ姉貴分みたいに世話焼きな所だろうか。

 

「その隈の隠し方。……教えたのは私たちよ」

 

「ああ……確かに」

 

そんな願に絵名は手を伸ばし、願の瞳の下を優しく撫でる。どうやらそこには薄く化粧をしていたみたいでその裏からは疲労故の青い隈が薄らと浮かんでいた。確かに最近の願のスケジュールは過密に刻まれており、掛け持ちのバイトからバンド活動の手伝いまで自分が最低限倒れないギリギリまで詰め込んで動いているのだ。

 

「ちゃんと寝れてるの?」

 

「んまあ、問題ない程度には……」

 

そんな願の(死なない程度に)問題ないという言葉の意味を察したのか絵名は小さくため息を吐いて持っていた鞄の中から小さなポーチを取り出し、指で剥がした願の化粧を更に目立たぬ様に上塗りする。

 

「……ありがとうございます」

 

「気をつけなさいよね全く……貴方のそれを教えたのは、無茶して欲しいからじゃないんだから」

 

だがそんな願の化粧技術は一体誰から教えて貰ったのだろうか。

もうここまでくると分かっていると思うが、その相手こそ絵名と愛莉である。趣味と実務という身近にある2人の技術は非常に分かりやすく、ただでさえ不安定気味な咲希を困らせたくないという願の想いに2人はあくまで趣味の範疇で教えたのが始まりだ。

 

決して、この様な無茶を隠して欲しいわけでは無かった。

そう口から溢す絵名に向かって微笑む願の笑みから何かを読み取るのは難しい。それは単純に内心を隠すのがうま過ぎるせいではあるのだが、これからも無茶を重ねることだけはなんとなく理解できる。

 

「………本当に、無茶だけはやめてよね」

 

 

 

絵名にとって願とは、たった1人の理解者である。

それは絵名が今も諦め難いまるで醜い、醜い執着の様なちっぽけな夢の理解者である。そんな夢は既に己の理想に打ち砕かれて久しいはずなのに、絵名はまだ白いキャンパスの前に座っている。

 

思えば、出会いとは案外思いがけない始まりだった気がする。

己に才能がない事を理想に砕かれて、そしてそれが事実だったと言われたかの様な後にひどく荒れていた時に、絵名は愛莉に誘われたのだ。

 

『ねぇ、絵名。私と、後輩の子達とバンドやらない?』

 

そう、バンドに。青春らしいことを全力で楽しみたいという言葉で集まったその名もなきバンドに最初は絵名は断るつもりだった。……けど、せっかくの親友の誘いだ。最初から断るのはどうも気が引ける。ならば一度だけ見てみようと誘われる様に向かった先に、願はいたのだ。

 

そこから色々とあった気がする。いつの間にかこの時間が一番落ち着く様になって、このバンド唯一の男子である願が化粧技術を身につけたいということで教えるにあたって親交を深めていくほどに、私は絵を見せる様になっていった。

 

生憎というべきか、それ故にというべきか。願は全く絵について知らなかったけどそれ故に、願の感想は絵を見せるごとに伝わっていく様な気がした。前回に比べて、これはいつかの絵を踏まえた。そういう願の感想は、私の絵を観て覚えてくれているのだと……ええ、認めよう。あのどうにも危なっかしい弟の様な外夜願を私は、東雲絵名は好いている。

 

「アンタは本当に、無茶するんだから」

 

小さく口に含んだ言葉に何故か絵名は可憐に微笑む。

もしやと思いそれとなく愛莉にも牽制してみたけどまさか同じ人を思慕する様になるとは思わなかった。……いやまあ、愛莉の場合あの姉御肌だ。どうにも甘え下手な弟味があるくせに、その立ち振る舞いはまるで年上の様にも思えるその曖昧さ。それでいて一途な所のある願に惹かれるのは、絵名だって同じだった。

 

「……私たちが奪っちゃうかもよ?」

 

それとなく絵名が願に近づき、腕を組む。特に願が何かしら言うわけではないのはやはり絵名にも慣れてきたからだろうか。そうして願に気が付かぬうちに絵名は後ろを振り向いて、小さく舌を出す。その視線が向かう先は、おそらく恋敵になる現状一番手強い相手に向けて、絵名は笑ったのだった。

 

 

 

 

「願ー?ちょっとこっちー!」

 

「はーい。どうした?愛莉」

 

そうして食事を終えること少し。本日この5人が集まったのはただカフェで駄弁る為だけではない。…いやまあ確かにそれも魅力的だが、今日は生憎とバンド活動中に消耗してしまったモノを新調しに来たのだ。

 

勿論、新調と言っても同じモノを使い続けると言うわけではない。

何か新しく手に馴染むモノは無いか、とか前々から気になっていたモノを手に取ってみたりとしているとそりゃ確かに時間が掛かる。その為願もゆっくりと見ながら歩いていると隣の棚から愛莉が声を掛けた。

 

「あ!いたいた。……ちょっと押さえといてくれない?」

 

「ちょっ!代わりに登りますよ」

 

どうやら棚の上の方の物品を取ろうと近くにあった踏み台に登ろうとしていたのだ。これには流石に願も交代しようと踏み台に脚を掛けていた愛莉を下ろして代わりに願が登り始める。

 

確かに愛莉の前職が前職なだけあって無茶には慣れているんだろうなとは分かるが、それでももしかしたらケガするかもしれないという無茶はしてほしく無い。それにこれは下世話な話になるがどうやら本日、愛莉は休みだったらしく私服という事もあって少し丈が短いスカートを履いている。流石にそんな事にはならないとは思うが、互いにめんどくさい事になるのは避けるべきだと願は思っているからこそ急いで愛莉を踏み台から下ろしたのだった。

 

「……これですか?それともこっち?」

 

「うーん、その隣よ。そう、それそれ!」

 

そうして願が上に立つ事少し。手に取った幾つかの物品を前に下から愛莉が最初に見たかったモノを指示する。特に重たくは無いが結構大きめの箱というだけあって、下まで下ろすのに途中少しだけ苦労した。

 

「うーん……買おうかしら?」

 

「そんな即断即決で大丈夫なんです?」

 

何に使うかはまあ想像できるが、やはり良いモノとだけあって値段もそれ相応の値打ちはする。どう考えても普段使いに向いてなさそうなのを使おうとするのだから流石の願も尋ねる。

 

「ええ……別にお金ならあるわよ?」

 

「そういう意味では言ったのでは……」

 

愛莉の前職はアイドルである。それもどちらかといえばバラエティ寄りの。それ故に学生が持つには少し多くのお金を持っている。勿論、それを鼻にかけているわけでは無いとは分かっているが茶目っ気ある愛莉の笑みに願も何も言えなくなる。

 

「一緒に選んで買ってあげましょうか?」

 

「………やめときます」

 

この前だってそうだ。愛莉に願は服買いに行くから付き合えと言われたから鞄持ちに徹しようと思ったのに気がつけばメンズのフロアにおり服を見繕われた挙げ句私が我儘言ったんだからと言ってプレゼントされた過去があるのだから、ここで主導権を握られたらまたそういう展開になりかねないと願はため息を吐く。

 

「なら、また今度ね」

 

「………鞄持ちとしてなら付き合います」

 

勿論、今まで服だけでなくそれに合う鞄だとか装飾だとか靴だとか。どう考えてもやり過ぎな愛莉を、願は何度も何度も男の意地で回避しているがそれでも愛莉は諦めず不屈の精神で願に奢ろうとするのだ。……流石にそろそろ諦めて欲しい所だとも願は思って、また小さくため息を吐いたのだった。

 

 

 

 

「……ええ、またいずれ、ね」

 

そんな願のため息を吐く前で愛莉は小さく怪しげに微笑む。

ああ、ここまで上手くいっているのだ。急ぎ損じるのはごめんだと愛莉はその身に秘めた熱を隠す様に願の隣を歩く。生憎とこちとらアイドルとして簡単には悟られないぐらいには経験がある。

 

思えば、この出会いは本当に運命みたいだった。

自分が憧れたアイドルと、世の中に求められているアイドルのその違い。次第にそれが苦痛になって自分が思っているよりも早くアイドルを脱ぎ捨てた。そんなある日だった。アイドルでは無くとも、桃井愛莉を慕ってくれる可愛い後輩がこう言ったのは。

 

『あいり先輩!一緒にバンド、しませんか!?』

 

青春を、全力で楽しみたい。そのひとつがバンド活動だったのだ。

その時やる事もないし、何かしたいわけでもなかった。だからそうして誘われてついて行くのはある意味必然だったのかもしれない。……それに華の高校生として青春を楽しみたいと思う心があってもおかしくないでしょう?

 

そこからは怒涛の毎日だった。バンドを始めるにあたって毎日の様に放課後に街を練り歩いて準備する傍ら、絵名を勧誘して……そう考えると割と願と一緒に行動することが多くなったのはこの時からかなと思い出した。

 

愛莉は前職を隠すつもりはない。だけど驚きだったのは願がそれを知ってからもいつも通りに先輩で同じバンド仲間である桃井愛莉を見てくれているのが嬉しかった。……ああ、確かにこれはハマる。ハマってしまう。願なら、私が何者になろうとも私のまま見てくれるという実感に、プロデューサーとかさせちゃダメだという確信をしてしまった。絶対に他のアイドルと取り合いにされる自信がある。

 

「でもそれがいつかは言ってないわよ?」

 

小さく口に含んだ言葉に何故か愛莉は可憐に微笑む。

もしやと思いそれとなく絵名にも牽制してみたけどまさか同じ人を思慕する様になるとは思わなかった。……いやまあ、絵名の場合はあの褒め上手に惹かれてしまったのだろう。少なくともその真摯さに、無自覚か知らないけど本当に欲しい言葉を本心から口にするその姿は本当に人誑かしと言っても過言ではない。勿論、そんな願に惹かれてるのは愛莉も一緒だった。それはもう自分の色に染め上げてしまうぐらいには。

 

「……私たちが奪っちゃうわよ?」

 

気がついていないのか。いや、あの後輩たちは気がついているのだろう。

同じ人を好きになってしまった恋敵だもの。なんとなくわかるのはあの2人は間違いなく願を共有する前提で動いていること。それだと確かに常に劣勢なのはこちら側……ええ、それがどうしたの?

 

「元アイドル、舐めんじゃないわよ」

 

たった1人の好いた人の視線を奪えないで、偶像は名乗れない。

後輩たちには悪いけれど……勝つのは私だ。

 

 

 

 

 

夕方、遅くまで一緒にいた愛莉や絵名と別れ願たちは同じ道を歩いて帰っていった。今日も楽しかった事や、明日弾きたい曲など話しながら帰る帰路は3人にとって何気ないけど素晴らしい時間だ。そうして話したりしながら家の近くの分かれ道に着いたところだった。

 

「……そういえば今日も2人は泊まるの?」

 

「え?そのつもりだよ」

 

「もうすでに許可もらってるよ」

 

ふと願が振り返り2人に問う。願の家は基本的に1人だ。だからこそいつでも来ていいと敷居は低くしている(幼馴染限定)ため一応茶碗や椅子、布団など4人分の用意はしているがそれでも最近は一歌と咲希の泊まりが多いなと感じている。……まあ最も、残りの2人との付き合いが疎遠になっているのも理由かもしれないが。

 

「なにも言われないのか…?」

 

「別に……げんくんなら良いだろうしお兄ちゃんは今日も帰ってこないよ」

 

「私のところも。願のとこなら良いって」

 

連日泊まるのは、まあいい。別に願はなんとも思わないがまだ18にも満たない異性の家に一週間のうちの半分は寝泊まりに来ているこの惨状は願の前の常識から考えても普通ではない。親からも色々と言われるだろうにという願の心配は咲希も一歌も素っ気なく否定する。

 

今更ではあるが咲希には1人兄がいる。そんな兄…司とは願の一つ上の先輩でクラスメイトで友人である彰人たちとストリートミュージックをしていると聞いているがどうやらその前から咲希と司の仲は少し距離があったみたいだが学校ではそれとなく司先輩から咲希について聞かれたり頼まれたりしているし、咲希の方にもそれとなく司先輩について話してみると司先輩と同じ様な反応を返すあたり、どうやら会話が足りていないだけではないかと思っている。一歌に関しては親の許可の元らしい。

 

「そうか……そうなのか」

 

本当かどうかはさておいて今晩なに作ろうかとか考えている2人と共にスーパーに寄って帰ろうと願は考える。どうやら最近は3人で肩を並べてキッチンに立つということが楽しみらしく、願の男料理丸出しから華やかな料理のレパートリーも増えている。

 

そう考えると家の中も大分変わったと願は思う。無味無臭のただ漠然と白だけが並んだ家の中から、いつの間にか幼馴染たちの席が増え今となっては咲希がファンシーなぬいぐるみや装飾を置き、一歌が音楽関係やミクのグッズなどを並べている。

 

「?どうしたのげんくん」

 

「?願、どうしたの」

 

それが良い変化なのか、悪い変化なのか。もしくはそれを考えること自体間違えであるのか──そんな願の考えを遮る様に少し前から咲希と一歌が少し振り返り願を心配そうに見つめる。

 

「…………ううん、なんでもない」

 

今は考えることを諦めて…願はまた同じ様に2人の肩に合わせるように歩き始めた。

夕方、日が落ち始める黄昏時。これを昔の人は互いに互いの顔が分からぬから貴方は誰だを転じて誰そ彼…黄昏と呼んだそうな。そんな顔さえ分からなくなるほどの日と影の中でも少年少女は昔から変わらず誰も逸れぬ様に、誰も置いていかない様にと手を繋いで歩くのだった。

 

そうして歩くこと少し。もう日は既に落ち切っており辺りには暗い夜の雰囲気が漂っている。そんな中、買い物を終えた3人は仲良く手と手の間に二つのビニール袋を持って帰り道を歩いていた。本来なら買うモノなんてそんなに多くはない。願1人なら最低限の今晩の食材を買うぐらいだというのに、3人で色々と話しながら買っているといつのまにかカゴの中に入れているのが増えている。不思議な話だ

 

「♪〜〜〜♫〜〜〜〜」

 

「♪〜〜〜〜♪〜〜〜」

 

「♫〜〜〜〜♫〜〜〜〜」

 

そうやって歩いていると誰からともなく歌声混じりの鼻歌が響き始める。自分たちがよく弾く曲。その中でも特に気に入っているAメロにハモリを重ねてひとつのコーラスになる。流石はバンドマン、音の感覚に関しては優れていると言っても過言ではない。

 

何か語るわけでもなく、何か示し合わせた合図など要らない。

こうして繋いだ手の温もりと歌だけでまた3人は歩いていける。

“これ”以外は何も要らない。“今”この一瞬の輝きだけを調に歩いていける。

 

──────そうして、その向こうで堕ちた星がヒトツ

 

 

『──────────ね、そう思うよね!穂波ちゃん!』

 

『────────────そう思うよね!穂波ちゃん』

 

『あはは……そうだね……ぁ』

 

欠けた月に、夜は闇のように覆う。

それはまるでその身を嘲笑うかのように。

 

 

 

 

生きている。とはなんなのだろうか。

そう私は、天馬咲希は考える。産まれついた時から身体が弱かった私にとってその質問は遠い未来ではなく、いつか必ず訪れるモノだと分かっていなくてもどこかで感じ取っていたモノだった。

 

事実その通りに私は遂に倒れて、病室のベットの上で過ごす以外の時間を許されなかった。周囲と完全に断絶される空間の中でやはり一番堪えたのは何よりも大切で、一番の親友と言っても過言ではないほどの幼馴染と離れる事だった。

 

私の病院にお見舞いに来てくれると何度も励ましてくれた。でも、病院から家近くの駅まで新幹線を使って2時間も掛かるし、それにお金も掛かるのだ。…つまり意味するのはこれから今まで通り毎日会えなくなるという事になってしまう。

 

『……ゃ、いや……だよ……なんで、どうして……』

 

人知れずベッドの上で泣いた日もあった。入院のその日までみんな、みんな一緒にいてくれたけどだからこそ感じてしまう1人になった時の心細さ。同じ様に時間を重ねるはずなのにそこにある差がどうしようもなく、重い。

 

その差にはきっと、置いていかれるという恐怖の中に先に進まれる恋心があったんだと思う。アタシたち全員の想い人にして、アタシたちの幼馴染。外夜願。アタシはげんくんと呼んでいるその彼をアタシたちは恋している。

 

『おいて、いかないで……いや、だよ……』

 

誰よりも優しくて、そしてアタシたちを見守るその名前に相応しい夜。天に咲くアタシがきっと一番願の隣に相応しいと幼い事ながら密かに胸を張っていた。だからこそ嫌だった。盗らないで……アタシの場所を盗らないでよ。

 

けどそう思っても無情に時は過ぎて行くのだ。お泊まり会でどれほど長く一緒に時間を過ごそうとも、アタシがどれほど嫌がろうとも、アタシの身体は……

 

『……やっほ。咲希』

 

『ぇ……!?げん、くん』

 

いやでも、心細くても。出来る限り早く治して戻るんだ。それだけを胸に入院したその次の日だった。げんくんが来てくれたのは。昨日までと同じ様に笑みを浮かべたげんくんがそこには立っていたのだった。

 

『どうして……来たの?』

 

『ん?行くって言ったよ』

 

出来るだけ来ようと思ってたからね。約束は破るつもりは無いよ。とそういうげんくんに胸の中から身体に染み渡る様なネツを今もアタシは忘れられない。ただの子どもの戯言のはずの指切りをげんくんは律儀にも守ってくれたのだから。

 

そこから時は進んだ。アタシに残ったのはいっちゃんとげんくんだけになった。お兄ちゃんもしほちゃんもほなちゃんもみんな、みんなアタシを置いていく。少しずつまるで奪われて行く感覚に震えたある日だった。少しでも笑顔で居たかったのにもう限界だった。

 

『ふたりは……ずっと、いてくれるよね?』

 

誓って縛るつもりなんて無かった筈のアタシの心の弱さが招いた言葉。ここに来るまでのお金も時間も莫大なモノになってると知っておきながら、毎回毎回持ってきてくれるお見舞いがどれほどのモノなのか知っておきながら、アタシは更に罪深くとも縛ろうとするのか。

 

『……咲希が望むのなら、いくらでも』

 

『私たちはずっといるよ。咲希』

 

忘れて欲しいとアタシが口を開こうとしたその時、2人は一瞬驚いた様に目を丸くした後、小さく微笑んでアタシの両手を握った。まるでここにいるよと言わんばかりに。

 

きっとこの時だ。何がなんでもアタシはこの2人と一緒に居たいと思ったのは。

 

「……ホントにそうだよね。げんくん」

 

隣で寝ている願にパジャマ姿の咲希はクスクスと笑った。いつもの様に願の両隣に潜り込んだ2人は手慣れたように願を愛撫するかの様に手を伸ばす。いつもいつもアタシたちのために頑張ってくれていると分かっている咲希にとって願が簡単には目を覚さないぐらい眠りが深いのもよく知っている。

 

「これからも、ずっと一緒だよ」

 

絶対に離さないアタシだけの夜。

 

 

 

 

 

私たちは5人でひとつだった。

けど、いつしかその指は離れて私たちは3人だけになってしまった。

 

『……別れっていうのは当たり前にあるものだよ。一歌』

 

そう、悲しげに笑う願の顔を今でも覚えている。当たり前だったものがいつしか当たり前じゃなくなって、結局私たちはみんなバラバラになってしまった。けどやっぱり私たちは同じ夜にいた。

 

志歩がアイドルになっていたり、穂波が新しい友だちのグループにいたり本心はどうであれ咲希が病院から戻ってきた時にはもう私たちはただの顔見知りになっていた。

 

『………あはは、そうだよね』

 

どこか諦めた様な、納得した様な咲希の声がまだ耳から離れない。

もしかしたら咲希もまた5人で集まっていつかの時と同じ様に音楽を奏でたかったのかも知れない。もしかしたらまた元の5人に戻れるかも知れないと思っていたのだろうか。

 

そんな心配をよそに咲希は持ち前の明るさと天真爛漫さで瞬く間にバンド仲間を作った。まさか愛莉先輩まで連れてくるとは思わなかったけど、意外と早く打ち解ける事ができた。……まあそれもこれも、全部同じ人を好きになってしまったからだけど。

 

『一歌、行こう?』

 

昔から星乃一歌にとって外夜願こそ輝く星だ。夜に輝く私たちだけの道標。

初めて会ったあの日、手を伸ばしたあの時からずっと私たちの想う光だった。

嬉しい時も、悲しい時も、喜んでる時も、苦しい時も。ずっと、ずっと一緒に居てくれた。………だからこそ

 

『………いや、だなぁ』

 

誰にも、盗られたくない。志歩が何かに勧誘しているのも知っている。穂波が何度も電話しているのも知っている。咲希…はまあ、私含めた3人だから今は置いておいても良いとして、志歩と穂波に盗られるのは嫌だった。

 

『………ああ、そうだ』

 

だから、私は先手を打った。誰よりも早く、誰よりも願の特別になれる様に。

私たちを、できれば私だけを見て欲しい。それはうまくはいかなかったけど、こうして願の家に転がり込んでいるからある意味で成功だろう。まさか咲希まで同じ考えだったとは思わなかったけど。

 

「………そうだよね、願」

 

隣で寝ている願の手に手を重ねる。所謂恋人繋ぎになって一歌は小さく微笑んだ。本当に昔から寝ている願は無防備だ。そういうところも魅力的なんだけどと一歌は悶々とする自分の理性と闘いながらまるで祈る様に呟いた。

 

「ずっと、ずっと一緒だよ」

 

私だけの星を、絶対に誰にも渡すもんか。

 

 

 

 






外夜 願

もはや今更明記することでも無いが、現時点で願が救われる世界線はどこにも存在しない。というより願の【執着】が強すぎる故か、現時点でどこの世界線も願が成り行きで少年・少女と共にあるというだけである。

そのため、その【執着】を何か別のに移すことさえ出来てしまえば願を手に入れる事も可能だろう。……それが良いか悪いかは置いておいて。勿論それも簡単なことでは無いが何故かどこかの世界線の朝比奈まふゆだけが致命的成功をしてしまった。なんでかなぁ!?

だから現状できるのは願の【執着】の正体を暴き、少しずつ解くしか方法はない。
その点、今回のルートでは最も早く一定の効果が見られるだろう。だが……
これはどの世界線でも言えることだが前◼️の◼️◼️た◼️と出会ってしまえば、今の願では

《これ以降は掠れて読めなくなっている》



東雲 絵名

願を神ではなくありのままの姿を見れている以上、どこかの世界線よりは上かも知れない。尚、両者が激突した場合には間違いなく向こうが勝つだろう。

あり得ない仮定はおいておいて絵の事と言い、どこか秘密主義なところやそれでいて親しい人にかける献身を見て完全に願に惹かれてしまっているのだろう。愛莉と分けるのは吝かではないのかもしれないがやはり自分が一番でありたいのは当たり前の心理である。



桃井 愛莉

卑しか姉貴分アイドル属性の愛莉ちゃんは大好物ですか?大好物です(鋼の意志)
時には頼れる小さなお姉ちゃん属性で癒し、時にはわざと裾がちょっと短いスカートを履いてきて下から覗ける様に自然と誘導する強かさの卑しさの両方を兼ね揃える押しても引いても恋愛強者な愛莉=サン。

そりゃアイドルたちの一人勝ちって言われますがな。まあ事実、どこかの世界線で裏技じみたやり方で願の心を奪える事のできるグループの1人である。今更だがもう少し押せていたらひとつひとつif・夢見るクローバーのハッピーエンドを迎えれたかも知れない。惜しかったねドンマイ!



天馬 咲希

兄は離れていき幼馴染は離れていき最終的に残った、残ってくれた願と一歌に強い執着を覚える。ある意味当たり前の行動だが何故かこの世界線ではその意思が強い様だ。他を裏切り者。とまでは思わないが、少なくとも良いようには思っていない。

どこの世界線と比べても幼さが残るのがこの咲希。まあ可愛いからヨシ。




星乃 一歌

幼馴染を選ぶ。とまでは言わないが、この2人と共にいるのが良いだろうと決めている少女。志歩はある意味遠いところに行ってしまったし、穂波も新しい場所で居場所を作れた様だ。

とは建前で、志歩や穂波が願を狙っていると知っているから先に動いたずる賢い子。恋愛にルール無用だろとは本人談。いつもはそういう腹黒系は咲希ちゃんのお仕事だったがたまには一歌でもいいでしょう。




感想、評価お待ちしております。
そろそろネタ回を書きたいなぁ……ボカロ曲パロとか需要あります?

次回何書きましょう(最終的に全部書きます)

  • 異聞:魔法少女パロ
  • 異聞:夜の娘続き
  • もしも冬弥と兄弟だったら…
  • もしも奏と双子だったら…
  • もしもまふゆと双子だったら…
  • TS願
  • 配信者願
  • 幕間1 続きリメイク
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