「(幼馴染を恋愛的に見るのは)いやーきついでしょ」と言ったオリ主が幼馴染達に娶られるまで後…   作:ネマ

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ぶっちゃけるとこれもっと早くに出しておかないといけないネタだった気がするんだよね…ネタ回と思わせて実はめちゃくちゃ伏線になってるとかこれもうわかんねぇな。
まあ次回への伏線のために急いで書き上げました。本当のこと言うならクリスマス記念書きたかったんだけどね……ネタが、うん。書き終えるまでに時間が過ぎてましたよね。本当に12月は時間が経つのが早いです。

ではいつも通り設定崩壊・過去改変・キャラ崩壊・独自設定注意です




レオニミステリー!真夜中の演奏会の謎を追え!

 

 

「そう言えばさ」

 

「どうしたの?いっちゃん?」

 

ある日の事だった。いつもの様にバンド練習のために『教室のセカイ』へと集まったLeo/needの少女たち。一通り、通し練習をして間違えたところなどを修正しながら次のライブまで頑張っているある時の休憩時間だった。

 

持ってきていた水筒を口に付けた後、一歌が何かを思い出したかの様に呟いた。基本的に突拍子のない事を言い出すのは咲希の役割である。だというのに、今日は珍しく一歌が何か言いたそうなのに練習を手伝っていたバーチャルシンガーの面々まで手を止めて、次の一歌の言葉を待つ。

 

「願って今でも弾けるのかな?」

 

「「「………………」」」

 

一歌は下ろしていたギターを手に取り軽く鳴らして見せる。それだけで少女たちは何が言いたいのか分かったのだろう。幼馴染であるLeo/needの少女たちにはもう1人幼馴染である少年がいる。……その名前も外夜 願と言い、Leo/needのマネージャーをしているが基本的にはバイト戦士という一見は表に出てこないという縁の下の力持ち的な役割である。

 

だが昔から一緒にいる幼馴染として実は正式にLeo/needとして活動する前まだバンドとして音を合わせるだけでも楽しかった時、願もバンドの一員として一歌と同じギター・ボーカルで音を奏でていたのだ。

 

「………そういえば、どうなんだろ」

 

「でも、一緒に歌った事あるよ」

 

咲希の心底抜けたかの様な驚愕と自失したかの様な衝撃。無理もない。そんな一歌の疑問に、それに中学時代にギクシャクしていたせいか願の口から音楽についての話題を聞くことは殆ど無かった。

 

だがそこには例外が存在している。そう、それこそ1人でもベースを弾き続けた志歩だけがそんな一歌の疑問に答えられる。思い出すのはおよそ三年前から数ヶ月前までの記憶。ちょうど中学生だった頃の話だ。いつもの様に屋上に集まってベースを弾く志歩の隣で身体を揺らし歌を口ずさむ願の声色には、間違いなくボーカルとしての実力はあると証言した。

 

「そうなの!?」

 

「うん……休日とか時間がある日はギターも弾いてた」

 

いつもは忙しそうな願も休める休日に偶然志歩と一緒になった日は願もギターを肩から下げ、一緒に弾き合わせていたと志歩は思い出す。調子がいい日には路上ライブをして少なからずお捻りをいただいた事もあると志歩は誇らしそうに口にする。

 

あの転校生と願との関わりは最後まで無かったが、そう考えれば願も何処かで音楽的にいい出会いが有ったのかもしれない。そう志歩が考えているとふと脳裏で“何か”が引っ掛かった。……それは、まるで忘れかけていた過去の記憶がふと振り返すかの様な妙な記憶。

 

『そういえば願……?』

 

今となっては関係ない話だと言うのに何故か志歩の記憶の中から今浮かび上がったその言葉。一体願となんの話をしたのか。嫌でもその問いと答えは何かとても大切な事だったような気がしてならない。だというのに今の志歩の頭にはまるでモヤが掛かったかのようにその時のことが思い出せない。

 

もっと深く、もっと深くまで思い出そうと記憶を無理矢理こじ開けようとしたその時だった。

 

「……ほなちゃん!しほちゃん!!」

 

「何?どうしたの?」

 

そんなあやふやな過去の記憶の蓋に指を掛けかけていた志歩は咲希からの衝撃で中断させられる。

もう少しで何か大切なことに気がつきそうだったのにと志歩が咲希を見る視線は少し冷ややかだ。

 

「やっぱり気にならない!?」

 

「そうだね…もしかしたらもう一度みんなで弾けるかも知れないし」

 

願はおそらくあの忙しさの中でも楽器を下ろすことはしなかったらしい。で、あるのならば願は一体何処でその腕を磨き続けたのだろうか。これも秘密主義な願の事だ。ただ聞くだけでははぐらかされるのがオチだろう。

 

咲希は既に謎を解き明かす探偵気分だし、一歌も穂波も気になるのか乗り気である。そんな3人の姿にキチンと練習をするのならという条件で志歩も願の秘密を暴こうと協力する事を口にした。

 

「あら、何か面白そうな事をしてるわね」

 

「何なにー?話聞かせてよ!」

 

「メイコにリン!?」

 

そんな時だった。隣からバーチャルシンガーの2人…MEIKOと鏡音リンが姿を表したのは。想いから生み出されたバーチャルシンガーたちはセカイに対応した姿をしていることが多い。事実、この『教室のセカイ』では制服を着ているのだから。そんな話はさておき。先ほどまでの休憩時間で一連の話について大雑把に共有する。

 

「……なるほど、そういう事ね」

 

「ふぅん。面白そうじゃん!」

 

バーチャルシンガーと願の関係性は、実をいうところあまり深くはない。やはりそれはなんと言ってもセカイに来る回数が他のメンバーと比べて圧倒的に少なかったり、同じ様に“導く者”として近しいなどと言った理由付けが出来るがそれでも願自身の想いだと公言して止まないGUMIを除いてルカやKAITOぐらいしかまともに関わりがあるとは言えない。

 

「………どうかしたの?」

 

そうしていると続々と他のバーチャルシンガーたちが集まり始める。かのGUMIと願以外の全員が集まったところでようやく話の共有が済む。あれほど強い想いを、それこそ()()()()()()()()()()()()()()()を秘めた願の過去というのは確かに気になる。KAITOが知る限りでも密かに弾きに来る願の腕は確かな研鑽の後が見て取れるとここでも衝撃の事実が口にされる。

 

「え、ええー!!げんくん、ここで弾いてたの!?」

 

「ああ……本当に…夜遅くだけど、何回かは……合わせた、な」

 

願とGUMI。そしてKAITOしか知らない真夜中の演奏会。よっぽど願に時間と余裕が出来なければしないが、基本的にみんなが寝ているであろう時間にセカイの一教室に集まって数曲弾くことがあるらしい。その曲もジャンルはバラバラで古い、古いヒット曲をカバー弾きする事もあるし、レオニの新曲を再現する事もあるらしい。

 

「カイト兄、教えてくれてもよかったじゃん!?」

 

「……と言われてもな」

 

末っ子役であるリンとレンがKAITOに詰め寄る。ミクやルカでさえ驚いているのを見るに本当に今の今まで誰にも見つかる事もなく、その真夜中の音楽会は続けられていたらしい。

 

「だが、やはり知りたければGUMIに聞いた方が、いいだろう」

 

「うーん……やっぱりそうなりますよね」

 

「GUMIちゃん神出鬼没だからね」

 

だがそれもKAITOが偶然、真夜中のライトが消えた廊下を練り歩いていたらとある教室の片隅で奏で歌っている願とGUMIの姿があったからである。それ以降、弾くときは声を掛けてくれるがいつから始めたのか、いつ何処でやってるかなんてはやはりGUMIに聞くしかないとKAITOは答えた。

 

そんな志歩から続いてKAITOから聞いたあまりに衝撃的な言葉に既に頭がプスプス…と焦げて混乱している一歌たちは、やはり探して聞くとなればGUMIしかいないだろうと確定させた。

 

「でも……ぐーちゃんも、げんっちも何処にいるんだろう……」

 

「まあこればかりは探すしか無いだろ」

 

そんなGUMIも中々姿を現さない。確かにこのセカイの中にいる事はわかっているし、必要なときはいつの間にかその場にいたりする。バーチャルシンガーだけで曲を奏でるときにもそれとなくいる(弾き終わったらいつの間にか居なくなってる)事から、出会えたら1日幸せなことが起きる。謂わば幸運の象徴として一種のツチノコ的な考えがなきにしもあらずと言ったところだろうか。

 

それでもやはりリンやミクにとっては一緒に遊びたいし、色んな話をしたいし、何より親友になりたい。そう、切望するぐらいには付き合いが薄いのだ。それはGUMIだけでは無い。願とも親しくなりたいのだが中々壁があるとリンは嘆く。その横で理解できるがたまーに願と会えたときは、飴やらお菓子をくれる手前なんとも言えないレンがそれとなく肯定する。

 

「案外、声を掛けたらすぐ出てきそうな感じはあるけどね」

 

「あら。もしかしたら今も何処かで聞いてるのかしら」

 

MEIKOの呟きにルカが反応する。言っていることはまるで懐かない家猫の様だが、それもそうなのだろう。たまに見つけると1人で歌っていたり、ごく稀に何も言わずに背中合わせで座っていたりと距離感をまだ掴めていない様で微笑ましい。これを機に一気に距離を詰めてしまえば良いだろうと、そんな話に盛り上がっていた所だった。ミクが一歌たちを置いてけぼりにしていると話を戻した。

 

「……でもこれは間違いない」

 

「願にも同じ『想いの歌』が聞こえているよ」

 

そうして優しげな顔でミクが口ずさむ様に伝える。どうやらその言葉にバーチャルシンガーが誰も反応しないところを見ると間違いのない事実なのだろう。『想いの歌』それは間違いなくあの日、本当の意味で再会した夜空の下の話。

 

ならきっとここからの話は、きっと余談と言っても良いのだろう。

 

 

「GUMIー?」

 

「GUMIちゃーん?」

 

そうしてまずは唯一の手掛かりであるGUMIを一歌たちは探し始めた。『教室のセカイ』は非常に広く、教室から廊下。更には屋上とそこから見える街並みとある種もうひとつの現実と言っても過言では無い光景が見える。そんな中で、1人の少女を探すのは非常に至難の技であった。

 

というわけで第一の作戦として、二手に分かれることだった。ひとまとまりになって探すよりも断然効率の良いやり方であるため、とりあえず一歌と穂波。そして志歩と咲希に分かれて探し始めた。

 

「……居ないね」

 

「うん。これなら何か好きなもので釣るとか……」

 

だがやはり神出鬼没、懐かない家猫、ツチノコとまで言われるだけあって影も形も無い。かれこれ一階数ほど探して歩き回ったがこうも成果がないとなると別の方法を考えた方がいいんじゃないかと穂波が考えだした。

 

そんなGUMIの好きなモノとは……ダメだ咄嗟には出てこないと一歌が首を振る。バーチャルシンガーとしての好物なら調べるまでもなく答えられる。だがこのセカイのGUMIが何かが好きだとかまでは分からない。

 

「一歌に穂波。」

 

「志歩ちゃん………」

 

どうやら探しながら歩いていると、目の前から咲希と志歩が現れた。どうやら見て回っていたところ遂に合流できてしまったらしい。成果は有ったかと聞くよりも先に志歩が首を横に振るのを見て、一歌たちも何も無かったと目線で訴えるしか無かった。

 

「……もう、これは願に聞くしか……」

 

「願と、私がどうしたの?」

 

そうして当初より手っ取り早く願に聞こうとしていた猪突猛進系狼犬こと志歩がウンザリした顔で、直接聞いてはどうかと口にしたその時だった。廊下に続く階段の上からGUMIが姿を現したのは。

 

「GUMI!?……今まで一体どこで?」

 

「アタシたちずーっと探してたんだよ〜!」

 

私たちが探しているとは思わずキョトンとしているGUMIの顔はどこかあどけなく、不思議そうにこちらを見ている。取り囲んでも、特に何か怯えた様子さえ無いのを見ているとやはり何処か不思議と幼ささえも感じてしまいそうだ。

 

「………話は分かった。」

 

そうして落ち着いた後に一歌たちはGUMIに聞きたいことを聞く。それはつまり今も願はギターを弾くのか。そして深夜に合わせているのは事実なのか。そう聞いたGUMIが重々しく口を開く。

 

「真夜中に弾いてるのは本当。でも次いつかは分からない」

 

確かにその話は事実で、KAITOに見つかったのは本当。でも次がいつになるかは不定期故に分からないとGUMIは口にした。何故ならこの2人の演奏は誰かと奏でる歓びを、誰かに己を表現するための演奏会ではないからだ。

 

鎮魂歌を、聞いて欲しいとは思わないから。

 

「そっかぁ……でも、続けていたんだね」

 

「うん。願も歌が嫌いなわけじゃないから」

 

一歌の感慨深そうな声色に同意する様にGUMIが頷く。…ああそういえばいつかの幼い時に願になんの楽器を持って欲しいのか譲れなくて、結局みんな願に自分の楽器を教えたんだっけと一歌は思い出したかの様に苦笑した。私たちも強引だったけど……それでも根気強く付き合ってくれた願も凄いなと思うかの様に。

 

もちろんそんな事を一歌以外にも思い出したのだろう。みんながみんな似た様に苦笑しながらもその目は笑ってないと一歌は気がついてしまった。差し詰め、最終的に願が選んだのは一歌の楽器だったのだと嫉妬するかの様に。

 

「じゃあ今度弾く時、教えてよ!」

 

「…………………夜遅くになるよ」

 

だけどそんな感慨深い過去を振り返りに来たというわけではなく、目的はその願の真夜中の演奏会に参加する事だ。ずっと願が隠していたことだ。こうなってしまってはGUMIを言いくるめて教えてもらった方がいいと咲希が口にする。

 

勿論そんな意図をGUMIも分かっているのだろう。非常に悩み込み、考え込み…非常に長い長考の後に絞り出すかの様に本来ならもう寝ていてもおかしくない時間に演奏会をしているという遠回しの言葉だった。

 

「うん。いいよ」

 

「…………ほなみ」

 

だがそれでも構わない。とそれでも願ともっと仲を深めるためなら構わないと強い勢いで穂波が首を縦に振った。GUMIでさえ想像していなかった穂波の意志の強さを前に流石にたじろんでしまう。

 

「あの日の続きを私たちは待ってるんだよ」

 

確かに幼馴染の形は戻った。みんなで共有した夢の証。互いに必要とするあの日の星空から続く夢はまだまだこれからだ。……でもそこに欠けている最後のひとつをずっと穂波は気にしていた。

 

「うん、そうだね…!」

 

「……まあどうせ私たちは夜遅くまで起きてるだろうし」

 

穂波の力強い言葉に同意するかの様に一歌が頷く。そこでようやく志歩が口を開く。どうせいつも通り寝るまで電話しながら作業しているのが私たちだ。頑張って起きていればきっといつかはその日がやってくるだろうと励ました。

 

「……………分かった、じゃあその日になったら伝える」

 

渋々…本当に心の奥底から渋々と言いたげにGUMIが頷く。

そうしてこの日は一歌たちもまた練習に戻っていつもの様にセカイから出ていった。つまりここから先は1人残ったGUMIの時間であった。

 

 

 

来た道を戻るかの様にGUMIは、1人誰もいない廊下を歩き続ける。そうすると彼女にしかわからない何かがあるのだろうか。いつもの様に渡り廊下の端の階段を登っていく。

 

「………間違えた気がする」

 

あの約束は結んで本当に良かったモノなのか。そうして階段を登り切ったGUMIが1人呟く。目の前に広がるのは学校の渡り廊下などではない。……そこにあるのはまるで駅のプラットホームというべきだろうか。だが築かれたコンクリートの地面はところどころ陥没し、地面の白線は薄くなって、いかにも寂れている或いはもう廃駅になった廃墟のプラットホームではないかと思えるほどだ。

 

吊り下げられている電光掲示板からは何度も何度も不規則に点滅し、アナウンスを伝えるスピーカーからは絶えずノイズ混じりの音が聞こえるのだと屋根から括り付けられた無数の首吊り縄が揺れている。

 

「……………………」

 

そう、こここそがセカイの続き。空は深き夜に染まったまま動かない願だけの想いのセカイの続き。あの日のままずっと止まったままのセカイに根は育たない。そう、慣れた様にボロボロに錆びたベンチの片隅に腰を下ろしたGUMIは聞こえるノイズ混じりの音声を聴きに入る。

 

『─かけ─────電話は、繋がらないか─────もう──でいるため』

 

        『──さん!──さん!』

 

           『手は尽くしましたが、が、が、ががが』

 

『つながりませんつながり────。────ません。ません、ません、ません』

 

きっとここはそういう場所なのだろうとGUMIは知っている。掠れて読めなくなった駅の看板には前も次も書かれてない。着くことが無くなった電車の行方など知る由もないこんなセカイの片隅に、GUMIは芽が出始めた小さな双葉を護るかのように手を添える。これが何を意味するかGUMIには知ることもしない。けどこの新しい想いの続きがより良い方向に進むことができるのならと祈った。

 

夜は深くなる……星も見えぬ深い闇の底で。

己こそが最も醜く穢らわしいと、救済の言葉を口にすることもなく黙って己の心臓を貫くそんな…張り詰めた冬の月さえ登らぬ真夜中の空気によく似ている彼の姿をGUMIは夢に見る。

 

『ああだからお願い。俺なんて放って何処までも天高く飛び立って。』

 

外夜願という存在を裁定するのなら、間違いなくこう言えるだろう。

この世界で生きている存在として最も欠陥品の出来損ないだと

 

『だから、俺を優しいと思わないでくれ。……俺をそんな目で見ないで。』

 

生まれ変わるというのはそういう事なのだ。

本来なら一つずつ、一つずつ積み重ねて手に入れていく筈の歓喜も悲哀もその全てを生まれながらにして知りうるということは、それほどまでに罪深い。

 

『そんな目で、そんな輝く目で俺を見ないで。』

 

本来あり得た筈の物語をバラバラにグチャグチャにしてそこから生み出した残骸だけを抱えて、前を見ることなく歩いていく。躓く事も、傷つく事も、果てには間違いを犯す事もない。……ああ、なんてそれは素晴らしい物語だろうか。

 

『だからこそ、早く早く、天高く飛び立って。』

 

誰も彼もがその物語を褒め称え、美しいモノだと崇めて奉ろうともその物語はこの世で最も否定され踏み躙られなくてはならない…いわばそういう物語なのだ。

 

「………けど、それだけじゃないと思う」

 

今は例え慚愧だけを抱えて歩こうとも、それで終わりだとGUMIは信じていない。いつか必ずその絶望の中から希望という芽が芽吹き、いつか華を咲かせるのだと想いによって生まれた幼子は愚直に信じていた。

 

「例え今はまだその時でないにしても」

 

そう。例え今はノイズ混じりの音声だけがこのホームに満ちていたとしても少しずつ、少しずつ微かにそれでも確かに聞こえてくるこの想いの歌が物語の行末を変えてくれると信じていた。明けぬ夜がない様に、きっとこの場所にも夜明けの時が来るのだと

 

「………だから」

 

そう言い、GUMIは隣にいつの間にか座っているその女に向かって吠えるかの様に口を開く。いつの間にかこのプラットホームの椅子に座っているこの女。銀色の髪をたなびかせ病院服だろうか?白い衣類だけを緩やかに袖に通したその女は確かにこの場所に座っているのに非常に存在が薄い。まるで幽霊…いやそれよりもタチの悪いモノかとGUMIは顔を顰めて吐き捨てる。

 

「お前はこの場所にいてはいけないんだよ」

 

いつまでも、いつまでも願の脚を引き、目を奪うこの世ならざる存在をGUMIは知らない。でもこれが良くないモノだとは分かっている。願が危うくいつまでも脆いのはコイツがいるからだと目尻を上げる。

 

だがそんな視線に反応する事もなく、またその女の姿は薄くなって消えていく。本当に訳のわからない存在だとしばらく見張っても姿を現さなくなってからようやくGUMIは肩を撫で下ろした。

 

「………消えた」

 

本当はもう2度と現れてほしくないんだけどなとため息を吐きつつも、どうせまたすぐにその姿を表すのだろうと心のどこかで確信していた。想いとは厄介だ。確かにそれは歌になり、力になり、導く導になる。だが逆にそれはあり得てならない存在さえも想いによっては肯定することになってしまう。

 

この世にはここ以外にも多くの想いとセカイがあることを知っている。だがその大半が想いを忘れるか想いを否定するかで捨てられて忘れ去られていく。或いはそれでも良いと想いから出来た私たちは想いの主の選択を肯定する。

 

「どうか」

 

だからこそGUMIはこう口にする。

この言葉がいつか形になりますようにと。

 

「本当の想いが、見つかりますように」

 

 

きっといつかの未来、それが叶っていると祈って

 

 

 

 






外夜願

人でなし。ちなみに前世の愛した人は銀髪だった。


それでは感想、評価お待ちしてます。

次回何書きましょう(最終的に全部書きます)

  • 異聞:魔法少女パロ
  • 異聞:夜の娘続き
  • もしも冬弥と兄弟だったら…
  • もしも奏と双子だったら…
  • もしもまふゆと双子だったら…
  • TS願
  • 配信者願
  • 幕間1 続きリメイク
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