C84頒布『茶柱エクストリーム』同人誌「大爆発の羊飼い」掲載。
それは、突然のことだった。
俺には昔から、予知能力がある。そう、『視えた』のである。目の前の人の死が。
一瞬の閃光の後、跡形も無くなっていたのである。
そう、鈴木(以降佳奈すけと呼称)の近くで爆発が起こるのだ。
その予知を見た瞬間、俺は彼女の手を取り、大声で叫ぶ。
「逃げろ!」
その数十秒後、目が潰れそうな程の閃光が辺りを包み、耳を劈く轟音が鳴り響いた。それと同時に、粉塵・瓦礫が舞い散り、視界が奪われる。
男、女問わず、悲鳴が上がる。
「大丈夫か?」
丁度俺の胸の内に収まった鈴木が、すすり泣いていた。
「・・・・・・し、死ぬかと思いました」
「良かった、怪我は無さそうだな」
「やっぱりこういう時に、頼りになりますよね」
俺を上目遣いで見てくる。誘惑しているのか?思わず、佳奈すけから目線を逸らす。
「なんですか~?恥ずかしがらないで、たっぷり見つめて良いんですよ~?」
「いやいや、そのちっぱいじゃ・・・・・・」
その『言葉』を口にした瞬間、俺の顎に音速を超えるスピードのヒジテツが飛んできた。
「ガフッ!」
「ちっぱいは立派なステータスです!馬鹿にしないで下さい!!」
「ごめん」
そう言うと、佳奈すけは俺の抱擁から逃れ、立ち上がる。
「そういう筧さんの素直なところ、好きですよ」
その不意な微笑みは、反則である。反応に困る。
俺がそんなキラースマイルに狼狽しているうちに、昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。先程まで爆発に巻き込まれ、死にかけていた俺らにとっては、非現実から日常に強制的に戻させる、一種の清涼剤になったかも知れない。その証拠に、周りの生徒はその場で固まっていたが、チャイムが鳴り出すと、冷静さを取り戻し、バックを持ってその場を立ち去る人や、先生などを呼ぶ人、瓦礫を片付け始める人、それぞれが行動し始めた。
俺らはというと、もちろん、警察の任意の事情聴取が待っていた。
まもなく警察が校舎に到着し、俺らは事件について覚えている限り話した。
突然食堂の一角で爆発が起こり、俺らは一番爆発物の近くに居た。実際俺らのことは食堂にある監視カメラで記録されており、そのことが確認されている。だが、俺らは爆発の兆候が出る前に逃避を開始していた。直感で逃げたのか、あるいはそれを知っていて逃げたのか。疑い深い警察なら、当然後者を前提に探りを入れてくるだろう。
だが、監視カメラなら、爆弾を設置した犯人が映っているはずではないのか?
もしかすると、犯人はその防犯カメラの死角を突いて、爆弾を仕掛けたのではないか?
一つの仮説を立てた俺は、ある人物に捜査依頼を出すことにした。
「え~。私がタダでそんなことするわけ無いって、あなたなら知っているハズですよね?」
嬉野はいつもの含みを持った笑みを浮かべている。
警察からの任意の事情聴取が終わり、真っ先に向かったのは、嬉野さんの所だった。
残念ながら、爆発の影響で食堂は一時閉鎖になってしまったので、「アプリオ」も当然、臨時休業になってしまった。
当然暇を持て余しているだろう嬉野さんに連絡を入れたところ、家に来て良いということで、狼一匹・・・・・・とは行かず、佳奈すけ同伴という形になった。
最初は、『いつかカップルになると思ってました~』とかからかわれていたが、事の顛末を話すと、一応理解を示してくれた、様に思われた。
「まあ、私もいつまでも『アプリオ』が休業を続けたくは無いですからね。ちゃっちゃとファックなポリ公には去ってもらいましょうか」
一瞬、その可愛い外見からに似合わぬ恐ろしい単語が、彼女の口から出たが、いつものことなので、軽くスルーする。
「そうですよ!今月の給料がこれ以上下げられちゃ困りますからね!」
「あなたはイザとなったら筧さんと同棲すればいいじゃないですか」
「な、な、な、何言ってるんですか!冗談でも、それは・・・・・・」
佳奈すけはその言葉にありったけの手振りで否定しようとしているが、顔の紅潮を見る限り、まんざらでも無いようだ。
「か、筧さんも何とか言って下さいよ!」
「俺は別に構わないけど。本を読む邪魔にならなければ」
火に油を注いでしまったようだ。
「もうあなた方の痴話喧嘩見ててもぶっ殺したくなるだけですから、良いですよ、協力しますよ。私も早く営業再開したいですしね」
一連の茶番が功を奏したのか、渋々依頼を引き受けてくれることになった。
翌日。佳奈すけ、俺、そして嬉野さんで食堂に向かった。
まだ捜査が続いており、警官が回りをうろちょろしている。しかし、昨日と比べてパトカーの数が減ったことから、ある程度捜査が集結に向かい始めているのだろう。
だが、学校や生徒会からは、事件がありました!皆さん気をつけましょう!事件についてベラベラしゃべるな!とだけアナウンスされ、詳細な情報は提供されなかった。おそらく校門に張り込み続けているマスコミに余計なことをしゃべらない様に、意図的に情報を制限しているのだろう。まあ、警察の捜査も絶賛続いている訳だし、迂闊にしゃべれないというのは当然だろう。
「今日もすごかったですね~報道陣」
もみくちゃにされ、汗ばむ額を拭う佳奈すけ。脇汗がにじみ出ているのがチラリと見えているが気にしない気にしない。
「あれで飯食ってるから仕方無いですよ」
嬉野さんはなにやらゴーグルを付けて、それをいじっている。
「さっきから何いじってるの?」
俺が唐突にさっきから気になっている佳奈すけの脇汗、もとい嬉野さんのゴーグルに突っ込んでみる。
「これですか?CIAのお友達から頂いた最新鋭の『電脳メガネ』ですよ」
ゴーグル改め『電脳メガネ』を額に掛け、得意げに話す。
「これを掛けて、目の前の空間に映っているアイコンにタッチするだけで、色々なことが出来るんですよ」
それに続けて、なにやら嬉野さんが指を一振りすると、にやりと怪しい笑みを浮かべ、
「今、食堂の監視カメラにハッキング出来ました。データを取り出してみます」
「そういえば、食堂の監視カメラとかは、インターネットじゃなくて校内のイントラネットで管理されているんだよね」
そういえば、生徒会長がそんな事話してて、いつかインターネットを食堂で使える様にしたいとか言ってたっけ。
「事件当時の映像は・・・・・・、あ、あった!」
嬉野さんは、食堂の白い壁の所に皆を呼び寄せ、その映像を『電脳メガネ』から、プロジェクターの様に映し出した。
そこには、紛れもなく、いつもの食堂の様子が映っていた。団らんする学生、ふざけ合う学生、一つのコップを二つのストローで飲み合う筋骨隆々の男子カップル等、そこには変わりない日常が映っていた。
そこから少し遡り、誰も居ない早朝の食堂に、それは映っていた。
「こ・・・・・・これは・・・・・・」
そこには、ぼやけてしまっていてはっきりとは判別できないが、人影が映っていたのである。
「一体、これは・・・・・・」
佳奈すけは、映し出されている映像に近づき、その陰の正体を見極めようとしている。
「塗り替えられてる」
食堂の監視カメラは高性能で、見ようとすれば、映った対象者のソバカスまではっきり見えるのだ。ところが、この映像では不自然に、黄色い服を着たヒーロー的な人影に塗り替えられているのだ。
「誰かがデータにアクセスして、書き換えた可能性がありますね。相当やり手ですよ」
嬉野さんが、目つきを鋭くし、苦虫を噛んだような表情で、その映像を見つめる。
「アクセスの逆探知とかは出来ないのか?」
「いや、こういうことする人は大体アクセス元がバレないように改ざんしてますからね。跡を辿るのは難しいでしょう。まあ、私の腕なら出来ないこともないかもしれませんけど」
さすが嬉野さん。逆探知に成功すれば、警察より早く犯人を捕まえることが出来るかも知れない。そこに痺れる憧れる。
結局、嬉野さんが画像データや通信記録などを持ち帰り、食堂を後にし、それぞれ帰宅
の途についた。
自宅に帰ると、既にベッドに横たわり、小太刀凪が海外ドラマを見ていた。
「おい、何やってる」
「良いじゃんお隣さんだし」
よく見ると、床にポテトチップスの開けられたものが転がっており、それを凪がガサゴソ漁り、口に運んでいた。もちろん食べる際発生するクズは、ベッドに無残にも散らばっていた。
「部屋汚すなら追い出すぞ」
「・・・・・・ごめんなさい」
そんなに海外ドラマが好きなのか。そうですか。
「それより、海外ドラマより面白い話があるんだけど、聞きたい?」
凪が怪訝な表情でこちらを睨む。
「どうせ食堂の爆発事件でしょ。誰も被害者が出なかった」
語尾を強調し、威圧的に話す。
「ああ、『視えた』んだ。爆発する直前に」
「また『視えた』んだ。へー」
「驚かないの?」
「いや、あんただったら不思議じゃないでしょ?」
凪の目線は、テレビを捉えたままである。
「・・・・・・もしかしたら、凪が目を掛けてる奴が、次に被害にあったりして」
「何で知ってるの?」
突然俺の方を向き、にじり寄る。
「え、いや、適当に言っただけだけど」
実際、俺は人の危機であったり、条件がつかない限り人の未来の予知は出来ない。だが凪は『羊飼い』だ。視ようと思えばいくらでも他人の過去・現在・未来を視ることが出来る。
「もしかして、あんたが犯人だったりして?」
「そんなはずないだろ、俺ら死ぬかもしれなかったんだぞ」
その言葉を聞いて、安堵したのか、凪は深く溜息をついた。
「・・・・・・そうだよね、疑ってごめん」
「それより、凪なら今回の爆発の犯人とか、一瞬で分かっちゃうんじゃないの?」
「いや、私はそういう役割じゃないし。第一そんな事したら上司に大目玉食らっちゃうし」
「そうだよね、そんな都合良く使ってたら大変だもんね」
俺は、凪の散らかしたポテトチップスのクズを手で集め、それを口に掻き込む。
「あんた、そんなに食べ物に困ってたの?」
「いや、勿体ないな~と思って」
「汚い」
「もとはお前が落とした奴だろ」
「まあ・・・・・・そうだけど、それとこれとは話が違うでしょ?」
呆れ顔で凪は俺を見つめてくる。
「いいわ、何かベッド汚して悪い気がするし、お腹も空いてきたし、何か夕ご飯作ろうか?ポテチのカスを食べるくらい食に困ってるなら」
「いいよ別に」
「良いじゃんたまには」
「確かに料理してるところはあまり見たこと無いな」
「私に感謝しなさい!私の料理無しじゃ生きられない体にしてあげるわ」
そう言い放つと、近くに乱雑に落ちていたエプロンを手に取り、体に付ける。やはり男ものなので、あれがあれしてあれが切れそうになっている。
「なんか、エプロンが可哀相だな」
「うるさい!好きでデカくなった訳じゃ無いわよ!」
胸のパンダの柄が伸びに伸びて、とても苦しそうだ。
取りあえず、凪はあり合わせの物で作ってくれるそうだが、あると言っても腐りかけの野菜や牛乳くらいしかない。そういえば干からびたキノコもあるな。
冷蔵庫から、使えそうな物を取り出し、適切な処置を施し、鍋に投入する。手元にカレールーが見えたので、今日の夕ご飯はカレーのようだ。
「手伝おうか?」
俺は凪の側に近づく。
「大丈夫。今日は日頃の恩返しってことで、ひとりでやらせて」
そう言って、凪は俺に満面の笑みで応えた。
「・・・・・・出来た!」
しばらくテレビを見て時間を潰していると、キッチンでは、緑色の不思議なカレーが出来上がっていた。雑草の香りが、部屋に漂う。
「これは・・・・・・カレーかな?」
「そうだけど、何か?」
早く食べろ、と言わんばかりに俺を睨みつけてくる。
「い、いただきますッ!」
俺は、覚悟を決め、最初の一口目にチャレンジした。
口に入れた途端、体は震え、目は踊り出し、全身から吹き出すように汗が出てきた。何かに取り憑かれた様にうなされるような辛さであった。
「ど、どう?」
感想を聞かれたが、とてもじゃないが喋れる状態では無い。
「な、何とか言いなさいよ!」
「・・・・・・み、みず」
「え?ミミズ?ミミズなんて入れて無いわよ」
「・・・・・・ちが、う。みず・・・・・・、水をくれ・・・・・・か、辛くて・・・・・・」
「水?分かった」
凪は流しの近くにあったコップを手に取り、水道の水をコップに注ぐ。それを俺の元へ運んでくれた。その水の入ったコップを咄嗟に俺は掴み取り、口の中に放り込んだ。
「辛過ぎた?」
俺は無言で頷いた。
「ごめん。ホントは料理作ったこと、無いんだ・・・・・・」
凪が、そっと背中をさすってくれる。先程の水も幸いし、大分辛さが落ち着いてきた。
「いや、気持ちだけでうれしいよ。ありがとう」
すると凪の顔はみるみるうちに紅潮し、
「な、な、何、柄にも無いこと言ってるのよ!格好つけるんじゃないわよ!」
先程まで優しくさすっていた手は、いつの間にか背中を鈍い音が出る位に叩く凶器へと変容を遂げていた。
「痛い、痛い、や、止めろって」
「恥ずかしいこと言うからいけないんでしょ!」
そんなツンデレの応酬がしばらく続き、その後凪はカレーの鍋ごと持って、隣の部屋へと帰っていった。
すると、凪が帰った途端に、視界がグニャグニャと曲がり始めた。
「あ、あれ?」
立ち上がろうとするが、足がおぼつかず、すぐに倒れてしまう。先程のカレーがまだ影響を及ぼしているのか。恐るべし凪カレー。まさか本当に凪の料理無しでは生きられない体になってしまったのか?いや、さすがにそれは無いだろう。SMプレイじゃあるまいし。
移動しようにも、部屋が回転しているので、いつまで経っても動けない。取りあえず横になろうとベッドへ行こうとするが、ベッド自ら離れていくので、むり、だ。
ナメクジの様に這い、必死に前進する。無限に拡散する部屋をひたすら進む。虹色に染まった俺の部屋をひたすら。
10分、20分・・・・・・
もうどれだけ動いただろうか。全くベッドに着く気配が無いので、その場に寝転んで、朝まで寝ようと試みる。
そうしようとした、瞬間。
『何寝ようとしてるんですか?ファックですね』
耳元で、嬉野さんが囁く。
「え?」
『私の声を忘れたとでも言うんですか?ファックですね』
「何回ファック言うんですか嬉野さん」
『あなたがファックだからファックっていうんですよ』
「ファックファック連呼止めて下さい」
『そうですね。失礼しました』
出てきてファックばかり連呼してきた嬉野さんだが、どうやらこの声は『電脳メガネ』の機能の一つである『脳内ファック』を使っているらしい。この『脳内ファック』というのは、『電脳メガネ』を介して、思い浮かべた人に対し、思考盗撮、思考操作、更には思考通信も出来てしまうというとんでもない機能だというのだ。機能のネーミングはどうかと思うが。
そして加えて嬉野さんは、今日の防犯カメラの映像も、実は思考操作されて、別の物を見させられたのではないかという可能性を示唆した。
「でも、その電脳メガネ、CIAしか持って無いんじゃないの?」
『ええ、確かにそうなのですが、どうやら、私以外にも、一般の方に流しているそうなんです。しかも研究段階の超小型の』
「え、それって相当まずいんじゃないの?CIAの情報機密どうなってるんだよ・・・・・・」
『そうなんです。その研究段階の奴は、ポケットに入れておいて、手から情報を脳に送り込み、操作できるらしいので、誰が使っているか、人目では判断がつかないんです。しかも、指向操作とかも、相手にばれず、こっそり出来るそうなんです』
「じゃあ、勝てないじゃん」
『いえ、勝つ方法が一つだけあるんです』
勝つ方法として紹介されたのは、なんと、先程の凪カレーであった。
「え、これって・・・・・・」
『実はこのカレー、思考操作防止の為に編み出された特殊なカレーらしいんですよ。特にこの材料の中の、このキノコは、そう言ったのをある程度防げるらしいんです』
先程の視界がグニャグニャ曲がったりしていたのは、その防御が働いていたせいらしい。
「俺がカレーを食べたのは、偶然では無かったのか・・・・・・」
『私にも分かりません。実は私の元に『羊飼い』から、そのカレーのレシピが届いたんですよ』
粋なことしてくれやがって、凪の奴。素直じゃ無いな。
『とにかく、今から学校に来て下さい。もう一度、食堂を調べましょう』
そう言った途端、視界が元に戻り、部屋も通常通りに戻った。
嬉野さんの言った通り、脳内で情報が操作されていたとしたら?それが可能な奴がいるとしたら・・・・・・一体誰がこんなことを仕掛けているのだろうか。
気がつけば俺は、外に飛び出していた。
校舎に辿りついた時には既に、嬉野さんと佳奈すけが待ち構えていた。
「遅いですよ、筧さん!レディを夜に待たせるなんてヒドイです」
「ごめんごめん、これでも急いだんだよ・・・・・・」
路面電車に乗るまで走り、さらに降りてから着くまで走り、既に俺の心肺機能のキャパをオーバーしていた。
「全く、だらしないですよ。FPSなら即ヘッドショットです」
「ヘッドショットは勘弁して下さい」
待たされた腹いせを一方的に集中放火されながら、食堂に向かう。
既に通信圏内のようで、食堂のシステムに、嬉野さんは『電脳メガネ』を通して侵入していた。そして該当する映像が検索され、映し出される。
そこに映っていたのは、昼間見た黄色い服を着たヒーロー的な人影では無く、黄色い髪の小さな女の子であった。
「これは、一体・・・・・・」
「この人影は、まるで・・・・・・佳奈すけじゃないか!」
「な、なんで私が映っているんですか?記録が塗り替えられたんじゃないですか?」
佳奈すけが狼狽し始める。
「この映像は、事件以降書き換えされた形跡は一切ありませんでした」
「え?そんなはずないですよね?私はこの日・・・・・・」
「ええ。確かにあなたはこの日、『アプリオ』は非番でした。ですが、この映像では、あなたが、あなた自身が、早朝に食堂に忍び込み、事件の爆弾を仕掛けていたんですよ」
確かに、『アプリオ』のスタッフであれば、食堂に入れる鍵は持っていてもおかしくない。しかもスタッフであれば、怪しまれずに侵入する事など容易いはずだ。
「でも、なんで佳奈すけが爆弾を仕掛けようとしたんだ?」
俺は、一縷の望みを掛けて、佳奈すけに問いかける。
「・・・・・・筧さんに、振り向いて欲しかったんです」
どうやら、佳奈すけは、俺ともっと親しくなりたかったらしく、このような事件を起こしたという。
「ごめん。いつも佳奈すけのこと、からかってばかりだったな」
「私こそ・・・・・・、ごめんなさい。他にもっと方法があったはずなのに・・・・・・」
「でも、よく爆弾なんて作れたな。佳奈すけってそういうの詳しかったっけ?」
すると、佳奈すけは、俯き、
「実は、爆弾を作ったのは私じゃないんですよ」
「な、なんだって?」
「爆弾は、ボルグ博士と名乗る人から、もらいました」
ボルグ博士?そんな人、学校に居たっけ?
「ボ、ボルグ博士・・・・・・」
嬉野さんには、どうやら心当りがあるらしい。
「確か、レセプションホールで今日集まりがあるそうで、そこに・・・・・・」
「行ってみよう!」
この事件の元凶だ。会場に殴り込んで捕まえてやる!
一同は、学園の地下にあるレセプションホールへと急行した。
「ボルグ博士はどこだ!」
レセプションホールに着いた俺らは、重い観音開きの扉を開け、高らかに叫ぶ。
「いかにも、私がボルグだ」
その瞬間、俺に映像が流れ込んでくる。そう、『予知』である。
・・・・・・頭の中に爆弾?
「お菓子、好きかい?」
「大好きです!」
佳奈すけがお菓子に釣られて、ボルグ博士に近づく。
「ダメだ佳奈すけ!ボルグ博士の頭の中に、爆弾が!」
「え?」
俺は咄嗟に佳奈すけを抱きかかえ、レセプションホールを脱出する。
「ちょっと!まだチャージングGOを見せてないですよ」
「あとでいくらでも見せてくれ!」
嬉野さんも状況を察し、レセプションホールから出て、扉を閉める。その瞬間、物凄い轟音を立てて、爆発が起こった。
「ボルグ博士・・・・・・オユルシクダサイ・・・・・・」
佳奈すけは、涙を流し、呟いた。
その翌日、佳奈すけは逮捕された。供述によると、最近俺が連れないことを聞きつけたボルグ博士が、より仲を進展させるキッカケとして爆弾によるテロを持ちかけたという。当然、佳奈すけは最初は反対していたが、ボルグ博士からもらったお菓子と不思議な音楽によって、いつの間にか無意識にそのことしか考えられなくなっていたという。
嬉野さんが言っていたもう一台の『電脳メガネ』であったが、やはりボルグ博士が所有しており、それによって記憶改ざん、意識操作がされていたようだ。当然、このことは警察によって隠匿されている。
「どうやら近いうちに、釈放されるようですね」
嬉野さんは『電脳メガネ』を没収されて、少々落ち込んでいる。
「良かった・・・・・・」
図書部のみんなも喜ぶだろう。また本をゆっくり読める、平穏な日々(?)が戻って来そうだ。
「ハハハ!実験大成功」
(おしまい)