言語系チート授かったのでvtuber始めました   作:gnovel

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ホラーの終焉は唐突に

「それじゃあこれで今日の会議は終わりにします。お疲れ様でした!」

 

 次の企画会議が終了した後、俺は席を立って家路に就こうとしていた。すると会議の参加者の一人が話しかけて来た。

 

「あ、あの……マルチさん、ちょっといいですか……?」

「うん? はい、いいですよ」

「少し……お話したいことが……」

「私に……?」

 

 

 俺に話しかけて来たのは、細井正雄(ほそいまさお)ことホラー系Vtuber『スレンダー男』だ。リアルでも身長が195㎝もあってかなりの長身で、俺の配信を見てからV活動を始めるに至ったらしい、と本人から聞いた。

 

 スレンダー男としての活動は、ホラーゲーム実況を主としており、立ち絵なんかはどこぞのスレンダー●ンにそっくりののっぺらぼうにスーツだったのを覚えている。

 

「……実は、視聴者からのコメントで……こんなものが……」

 

 そう言って正雄は俺にスマホのとある画面を見せてきた。そこに映されていたのは、やけに可愛らしいフォントで書かれた文章だった。

 

「『いっしょになれるおまじない』?」

「そうです。僕も視聴者に言われて、初めて知ったのですが……その手順がどうも、可笑しいのです」

 

 正雄からスマホを受け取り、内容を吟味していく。どうやら日本語で書かれているようだ……。

 

「えーっと……?『はじめに五人組を集めてね! 次に、五人で輪を作るようにしてテーブルを中心に座って!』……なんだコレ?」

 

 次々と読み進めて行くに従って、何か得体の知れない感情が湧いてくる。なんだこれは……。ポップな文字のフォントがさらに不気味さを醸し出している。

 そしてスマホを更にスライドさせていく。

 

「『3つ目! ここまで来たら後は簡単! 次の呪文をみんなで一斉に唱えるだけ! はい! これでいっしょだね!』」

 

 そうして俺がさらに下にスライドさせていると……得体の知れない文字列と、読み仮名がふってあった。

 

「ここです、ここの呪文はみんな唱えているようなのですが、読めないならこの文字をわざわざ記す必要がないんじゃないかと思って……」

「……それで、私に尋ねてきた訳ですか……」

「申し訳ありません……どうしても僕だけじゃあ力不足でして……」

「気にしなくていいよ……えっーと……」

 

 そういって俺は文字列を眺め、チートが発動するのを待った。チートが即座に発動しないことからもこれは俺が一度でも見たことのある文字でないことは明らかだった。

 

おしょくじのよういができました。どうぞおたべください

 

 

「……!」

 

 チートが発動して、徐々に文字列が明らかになっていく。しかしそこに書かれていたのは想像を絶するほどの内容だった。

 

(……『お、しょ、く、じの、ようい、ができ、ました……どうぞおたべください』…………『御食事の用意が出来ました。どうぞお食べ下さい』!?)

 

 冷や汗が止まらない。背筋が凍り付くような錯覚さえも覚えた。こんなものが……存在していたのか……!?

 俺がスマホを睨んでいると、正雄が俺に声を掛けてきた。

 

「ど、どうですか……? 凄い強張ってますけど……」

「……あ、あぁ! 大丈夫だよ正雄君……」

 

 どうやら俺の表情は相当強張っているらしい。正雄君が心配をしてくれる。

 

 どうすればいいんだ。と悩んでいると正雄君が、

 

「……僕の考察なんですけど……多分、この文章に書いてあるのは、おおよそ仲良くなるためのおまじないではありませんよね……?」

「……」

 

 絶対違う。ここに書いてあるのは、得体の知れない何かのための食事の挨拶であるということは流石に伝えられない。しかし伝えなければ、更に犠牲者が出る。

 例え、このまま俺がここに書かれていることを馬鹿正直に伝えた所で、あまりにも解読が早すぎると、逆にいらない不信感を植え付けることになる。

 

 そうして俺がひたすら悩んでいると……

 

「それで……僕、ふと最近のニュースを聞いて思い出したんですよ……」

「……何を、ですか?」

 

 そう言って正雄はスマホを操作して、ネットニュースを開いた。そこには

 

「【女子小学生5人組が意識不明】……?」

「これだけではありません……他にも」

 

 正雄が画面をスライドさせると、同様の事件が相次いでおりいずれも共通点として5人組であることが挙げられる物ばかりだった。

 

「……関係ないと思われているかもですが……僕にはどうしても……」

「……成程わかった」

「すいません……こんな話をしちゃって……迷惑でしたよね……?」

「……気にしないでいいよ。あと、次回のコラボは宜しくね」

 

 そう言って俺は事務所を後にした。

 

 

 その道中。

 

「……クソ……俺にも何か出来ないか……? 俺だけが気付けた真実を……そのままにしたくないな……」

 

 帰宅途中もどうにか出来ないかという思考が俺を支配していた。このまま何も出来ないのは歯痒い思いだった。

 そして考えている途中に既に自宅に着いた。

 

「ただいま……」

「お帰りなのじゃ。ん? どうしたのかの?」

 

 ……ダメもとで言ってみるか

 

「実は……」

 

 

 

 

◆◆

 

 

 

 

~???視点~

 

(くくくくくく……またしても御馳走が来たか……)

 

 深淵のごとき真っ暗な空間にて、下卑た笑みを浮かべながら佇む何かがいた。

 

(ちょろいもんだぜ。いっしょになれるというおまじないを流すだけで、次から次へと餌が運ばれてくるんだからなぁ!)

 

 ナニカは、効率よく食事にありつけるための儀式を作成し、人間たちに広めた主犯格であった。

 そしてその何かは自身が召喚される気配を察知し、よだれを垂らした。

 

(あぁ~全くちょろいもんだぜぇ! 人間ってのはよォ!)

 

 そうして光がナニカを包み込むと、やがて空間から姿を消した。

 

(さーて! 御馳走の時間だァ!)

 

 

 

 

 数秒後

 

「ギャアアアアアアアアアア!」

 

「なんじゃあ……思ったより張り合いがないのう」

「『食べるだけ食べて、自身の強化に努めなかったのが運の尽きだね』」

「……これ食べれる?」

「おう、待っておれ、今妖術で実体化させるからのう」

「ワー、凄イナー(棒読み)」

 

 

(何だ、何がどうなっている!?)

 

 このナニカは何時ものように魂を貪り食らおうとしていた。男の方は多少歪な形状の魂をしているが、美味しそうに見えた。しかし残りの4人? は想像の遥か上をいっていた。

 まず、あの白色の毛並みを持つ天狐に加え、川の向こう側の連中が二人、そして身体中に口がある明らかに人間ではない少女、そして……唯一無力そうで極上の美味しさを持っているであろう青年。

 

 ナニカは悟る。自分は罠に嵌められたと。

 

「『源吾さんご協力ありがとうございます。こいつは指名手配中でして……』」

「『あっ、そうなんだ。で、後の処理は……?』」

「『はい、私達は魂を運ぶので、後はお好きに……』」

 

(なっ……!?)

 

 そして■■■■が連れてきた存在とも青年は会話していた。

 

「『おひさー! 源吾! 毎回楽しませてもらってるよ!』」

「『そっち側でも電波が通っているのか……いや、今更か』」

 

(何だコイツは!? 何故生者が理解できない言語を話すあいつらと会話出来てやがる!? それに……何だ……これは、なんだコレは!?)

 

 先程狙おうとした男の方の魂をよくよく見ると、今も自分の身体を燃やそうとしているこの天狐と、■■■■との間に途轍もなく強力な縁が結ばれており、更に、得体の知れない縁が天井に、空に向かって伸びていることにも気づいた。

 

 コイツは明らかに普通の人間ではない。

 

 ――こいつは狙うべきじゃなかった!

 

「オ、オオオオォオオオオオノレェエエエ! せめて、せめてその小娘だけワァアアアアア!」

 

 ナニカは悪あがきとして褐色の少女に襲い掛かった。何やら体に変化が起きているが、そんなことは知ったこっちゃあない! 今すぐにでもあの小娘を喰らって……あの空間に帰るしか……!

 そう考えていたナニカであったが、飛びかかろうとしている少女が手を広げて、自身を待ち構えているように見えた。

 

 しかしその時だった。

 

「――よし、食べられるようになったのじゃ! さぁ、召し上がれ」

「……いただきます」

 

(ア……)

 

 次の瞬間ナニカの顔は星奈の口の中に納まり、そして食いちぎられた。明らかに身の丈よりも大きい筈なのに徐々に食べていくその姿からも星奈も立派な人外であることがわかる。

 

 

 

 

◆◆

 

 

 

 

「あー……味はどうだった?」

「……ぺっ、不味い。でも残すのは良くない……。狐子との約束守る」

 

 俺は狐子に事の顛末を話すと、憤怒の表情を浮かべた。どうやらそいつの手口と所業にブチギレたようで、その余波で家中が軋んだりした。

 

 そしていざその儀式をしてその元凶を迎え入れようとした時のことだった。

 

『……人数足りない』

『『あっ』』

 

 うっかりしていたが、ここにいるのは俺と狐子と星奈の3人? であった。それに頭を悩ませていると、ある一つの考えが浮かんできた。

 

『……■■■■ちゃん達呼ぶか?』

 

 その後の行動は早かった。以前俺に■■■■ちゃんが手渡した黒いベルを鳴らすと、パソコンの画面からヌッと■■■■ちゃんが現れた。

 

『あっ、久しぶりー!』

『……もう源吾が何と縁を結んでも驚かんぞ……』

 

 そして事の顛末を伝えると、■■■■ちゃんは『一人連れて来るねー!』といい。もう一人連れてきた次第だ。ちなみにもう一人の子はというと、発言とテンションのそれが完全にギャルのそれだった為、少し困惑した。あの姿で……ギャルなのか……。

 

 そうしていざ召喚した瞬間、狐子が一瞬で燃やし、■■■■ちゃん達は手にした鎌と触手で手足を切断した。酷いリスキルを見たもんだ。

 

 ちなみに星奈の腹が減る夕飯時だったが、間食としてあれを食べたいと言ってきたので俺は困惑した。しかし今やそのナニカは星奈の腹の中だ。

 

「ちなみに……これ星奈が食べても大丈夫なの?」

「安心するのじゃ! すでに消毒済みじゃ。食っても腹を壊したり、乗っ取られたりはせんぞ!」

「……うえぇ……後味最悪……早くご飯食べたい……」

「そうじゃの! それじゃあご飯にするかの! 今日は唐揚げじゃ!」

 

 

 後日談として、昏睡状態に陥っていた人たちが次々と目を覚ましたそうだ。そしていつの間にかあのおまじないの話題は消え去っていた。




主人公
やはり持つべきものは縁だよね(白目)
改めて人外共の脅威について思い知らされた

狐子
ムシャムシャさせてやった。
妖術で大体何とでもなる

ナニカ
相手が悪すぎた。この後ちゃんと裁かれた

Vtuber要素と異種族要素の比率はどちらが読みやすいですかね?

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