言語系チート授かったのでvtuber始めました   作:gnovel

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閲覧ありがとうございます!
徐々に体調も良くなってきたので、投稿ペースも何とかなりそうです。

それではどうぞ!


ストーカー+謎のパワー=主人公の胃は死ぬ

「ストーカー……と気付いたところでねぇ……」

 

 帰宅途中の俺の脳裏には“ストーカー”という単語が浮かんでいた。まさか自分がストーカーの被害に遭っているとは夢にも思わなかった。

 

「でも、なんで俺なんだ? そんなモテる様な真似はしたつもりは無いんだが……それに俺既婚者だし……娘もいるし……」

 

 次々と浮かんでくる疑問に頭を悩ませながら今日も夜道を歩いていた。

 

 すると、

 

 

「……」

 

 明らかに足音が自分以外に()()()()聞こえる。今日もいる。

 内心、またかと思いつつ、何時ものように寄り道をして帰ることにした。

 

(今日はどのルートで撒こうかな)

 

 既に日が落ちた冬の午後7時頃、辺りは電柱につけられた照明しか明確な光が無い為、割と暗い。そんな中、カツカツと歩く俺の足音に合わせて後ろからついてくる足音が俺にストーカーという存在を嫌というほどに教える。

 改めて自分がストーカーされていたのかということを認識させられた。

 

(あーあー、今日も帰りが遅くなりそうだな)

 

 そうして俺は家にたどり着くまでに相当の遠回りをした。

 

 

 

 

(……あれ、今日は相手も粘るな……中々消えねぇぞ……?)

 

 あれから30分くらいは経過した。何時もならここいらで撒けるはずだが、今日は様子が違った。

 いつもならこの時点で撒けている筈だが、今日は中々撒けずにいた。それに心なしかいつもより距離が近い気がした。不気味な感じがいつもの3割増しだった。

 

(うーん、厄介だな。かといって、このまま家の周辺をぶらぶらとうろつき続けているのは勘弁だぞ? それに……何か執念じみた物も感じるな?)

 

 内心ストーカーに対してウンザリしていた頃、しびれを切らした俺は一つカマを掛けることにした。

 

(ここなら丁度……あれがあった筈……)

 

 俺は即座にある場所に向かって足を進めた。背後から聞こえる足音もついてくることを確認して、俺はある地点まで向かった。

 

 

 暫く歩き、俺は路地裏がある地点まで歩き、角を曲がった。

 

(ここらで……よっと……!)

 

 俺は路地裏で垂直に跳びあがり、路地裏を照らす照明の上に上った。常人には不可能な跳躍力だが、これは偏に今はいているシューズによるものだ。

 

(まさかイムール星人からの贈り物であるこの靴が役に立つとは……というか何でできるんだよ)

 

 イムール星人から贈られたシューズの効果に内心驚愕していると、やがて俺を追跡していたであろう人物の影が迫ってきていた。さて、これで正体が暴けるといいんだが……と思いつつ息を潜めて来訪者を待った。

 

 

 カツカツカツ

 

 そうしてヒールのような足音が鳴り響き、路地裏の入り口に差し掛かった。音の主は路地裏の方へ迷いなく足を向け、路地裏に入ろうとしていた。僅かな照明と月明かりがそれを照らす。

 

「……逃げられた」

 

(声は女性か……顔は見えねぇか……)

 

 20代か30代くらいの女性の声と共に現れたのは、顔全体を覆い隠すように垂れた長髪の女性だった。見知らぬ女性だし、俺の知り合いの女性ではないことはすぐに分かった。はっきり言って幽霊か何かだと言われても信じてしまう位には不気味な容姿をしていた。そして僅かに鉄のような匂いがして身を固まらせる。

 

 明らかにヤバく、このまま見つかれば自分を照明の上から引きずり落として、拘束するくらい訳ないとでも思ってしまうような、そんな気迫が女性から漂っている。

 

「……」

 

 女性は肩を落としたような素振りを見せたあと、踵を返して路地裏を後にした。張り詰めた雰囲気が暫く続き、女性が去った数分間は動けずにいた。こう、何となく、今この場を離れれば待ち伏せていた女性に拘束されるようなビジョンが思い浮かんだからだ。

 

 それから俺も数分経過した頃に路地裏を後にして、家路についた。時計は既に午後8時を示していたことから、あのストーカーと1時間近くいたことに内心気持ち悪いと思った。

 

「はぁ、何か疲れた」

 

 ストーカーというのは、だいたい俺の天敵である“言葉は通じるけど話が通じない”類である場合があるので、はっきりいって俺のチートはああした輩には無力なのだ。とはいえ面と向かって会話したことが無いから何とも言えないのだが……。

 

 しかし家路はいつものように静かで足音も俺だけだった。気が抜けたせいなのか、俺の腹は空腹を訴えていた。

 

 そんなことを考えながら俺は玄関の扉を開け、中に入った。

 

 

 

「……」

 

 

 

 

 それからというものの、俺の家に変な現象や手紙が来るようになった。

 

「……またか」

 

 手紙にはひたすら狐子と別れてとか、あなたと私は将来を誓い合った仲、とか書いてあるがどれも相手側の妄想の領域だと思うので、全部無視していた。Vtuberになる前の俺の交友関係には女性の影は疎か、同性だってほとんどいなかったんだぞ。そんな俺が見知らぬ女性に求婚できると思っているのかこいつは。……何か悲しくなった。

 

 しかしこれだけに留まらず、家に無言電話が掛かってきたり、買い物に行くたびに妙な気配と殺意の込められた視線を感じることが増えたと狐子は話し始めた。その度にその視線の正体の気配を辿ろうとするのだが、何かに阻まれているのか、匂いや気配がすぐに断たれてしまい、追跡が出来なくてストレスらしい。

 狐子も「人間だからと手加減していたが、そろそろ本気で消しに行くかのう」と苛つきながらマジトーンで呟いていたので、流石にそれは思いっきりハグして止めた。夜に死にかけた。

 

 また、星奈に関しても、家の周辺で変な女性が家を覗いている所を目撃していたらしく、それを女性に言っても、星奈をキッと睨みつけるだけでどこかに行ってしまうという。

 

 そしていい加減腹が立ってきたため、警察に相談しても「すぐに動く」だの「まだ証拠は不十分」とかほざきやがるため、当てにならないのが現状だ。それどころか警察に行ったその日からどんどんストーカー行為が加速していったのだ。何となく俺達に取り合ったあの警官の素っ気ない態度や前回提出した証拠を見せられないとか、既に機関に回したと毎回のように言って、俺達を適当にあしらっている感が凄かったので恐らくあの警察はストーカーと何かしらの繋がりがあるんだろう。俺が幾らあの警官に話しても、会話を打ち切るのだから役に立たないことは確定した。

 

「はぁ……」

「むむむ……なぜ気配が探知できぬ……? それにあの警察から感じた気配……」

 

 近頃のストーカー行為で実害が出始めているため、俺としてもそろそろストーカー相手が(周りの人外に)物理的に消滅させられる前に、片を付けたいところだと思っているが、如何せん狐子の探知に引っかからないし、警察もなんか知らないけど動かないし、完全に手詰まりだ。

 

「どうなってんだ全く……」

 

 そろそろ金庫の中にある“イムール星人召集スイッチ”や手元の黒い鐘を起動させるべきか否かを本気で検討していた。しかしこうした状況下にあっても、リスナーさんや周りの人たちを心配させるわけにはいかないため毎回配信をしているのだが、そのスパチャにて時たまストーカー女の物と思しきコメントが流れるのだ。

 

 正直俺としてもリスナーさんに不快になって欲しくて配信をしているわけではないので、この見知らぬ女には腹が立っていた。やっぱりこの“イムール星人召集スイッチ”を押すべきか? と考えそうになった。8割がた本気だ。

 

 

 そうして今日も会議を終えて、家路についていた時だった。

 

(……いる)

 

 俺の足音に合わせるようにして歩く足音が聞こえていた。最初はうっとおしいと思っていたが今では苛つきしかない。まさか自分がストーカーの被害に遭うとか思ってなかったことはある。しかし、俺だけに被害が来るのならまだ良い。狐子や星奈、果ては他のリスナーさんやVtuberに迷惑を掛けつつあるので、いい加減その面を拝んでおこうと思う。明らかに警察も動いていないし、手詰まりであるからだ。

 

「……」

 

 俺は角を曲がったところで立ち止まり、女の足音が角の向こう側に来るのを待った。

 

 そして、来た。

 

「動くな」

 

 俺が角の向こう側にいるであろう女に向けて威圧を込めた声を掛けた後、角の先を覗いた。しかし誰もいない。

 

「……は?」

 

 俺が目の前の現象に理解できずにいると、俺の背後から

 

「おかえり」

「……ッ!?」

 

 俺の意識は首元に充てられたであろうスタンガンの電流によって落とされた。

 

「ふふふ……」

 

 薄れゆく意識の中で、女の不気味な笑いが響いた。

 

 

 

 

 パリン

 

「……狐子どうしたの?」

「……」

 

 一方こちらは源吾の家。普段よりも空気が一段も二段も重いリビングにて、狐子は目を見開いたまま硬直していた。流しの水は流れ放しで、手元の皿は綺麗に真っ二つに割かれていた。

 

 そして暫くすると狐子の周囲の空間が揺れ始め、狐子から白色の尾と耳が露出し始めた。それに合わせて瞳孔も縦になり、牙が尖り始めた。

 

「やりやがりましたね……人間風情が……!」

「……源吾、誰かに連れ去られた?」

 

 狐子の怒りは収まらず、普段身に付けている割烹着が着物に変化し、言葉遣いも普段のそれとは異なり、完全に怒り心頭と言った様子だった。星奈も表面上は冷静だが、それを否定するように全身の口が開き始め、まだ見ぬ標的を貪り喰らわんとしていた。

 

「最後に感じた場所は……ッ!?」

 

 窓の外を見た狐子が突然驚愕した。それもそのはず、窓の外には外の真っ暗な闇に紛れて……首だけの犬が数十体、宙を舞い狐子を睨みつけて威嚇していたからだ。

 

「犬神……! 面倒な連中め……邪魔立てをするか! 消し炭にしてくれるッ!!」

「「「■■■■■■■■!!」」」

 

 犬神が狐子に襲い掛かり、狐子も周囲に悍ましい程の狐火を展開し、犬神の一体を握りつぶし、焼却した。

 

 

 

 

 一方我らが主人公、源吾はというと

 

「ここが私と、貴方の家よ。結婚してからずっとあの女の所にいて、ずっと待ってたのよ? ずっと夫が誰とも知らないメスの下に入り浸って……だからこうしてお犬様を使ってあの女を殺そうとしたの。これも貴方と……」

「」

 

 凡そ正気の沙汰ではない女から自分の出会い(捏造)、結婚に至るまで(捏造)、お犬様とかいう絶対ヤバい存在についての話を聞かされていた。どれも自分本位で、本当にあったかのようにふるまう女に心底ドン引きしていた。

 ちなみに会話を試みて「ここはどこだ」とか「お前は誰」とか話してみたが、

 

「貴方は私の夫、そしてここは私とあなたの愛の巣、あの女から逃げられてよかったね」

(あっ、コイツマジで話通じねぇ……)

 

 他にも

 

「さっさと家に返せ」

「? ここが家じゃない?」

(コイツマジ?)

 

 とか

 

「警察に何かしたか」と聞けば

 

「お父さんは警察に勤めているんだけど……貴方を取り戻すために協力してもらったわ。愛に障害は付き物ね」

 

 とさぞそれが当たり前のように話し出すものだから源吾も一周回って冷静になっていた。絶対警察に通報……いや、その警察が汚職してんのか、と思う位には冷静だった。

 

「さぁ、ご飯にしましょう。私の手料理がいつも好きだったわね」

「……いらん」

「まぁ、強情ね。でも食べなきゃだめよ」

「いらねぇつってんだろ」

「ふふふ、待っててね。貴方の大好物の煮物を用意するから……」

「コイツ話通じなさすぎるだろ。あと俺の好物は唐揚げだが」

 

 このように自身の天敵中の天敵に遭遇した源吾の目は死んでいたし、最近は無かった胃の痛みが再発し始めた。

 

「あー……何か知んねぇけど、携帯も圏外だし、どうすればいいんだ……? はぁ……さっさと帰って狐子の飯が食いたい……」

 

 救助まで、あと3分




主人公
常識人ぶっているが、頭のネジが幾つか外れている
こいつが取れる最終手段の数はめっちゃある


狐子
犬神数十体を蹂躙中。人間相手だから手加減はしていたが、既にリミッターは外した。

星奈
犬神をパクパク

ストーカー
話が通じない

Vtuber要素と異種族要素の比率はどちらが読みやすいですかね?

  • 1:9
  • 2:8
  • 5:5
  • 8:2
  • 9:1

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