言語系チート授かったのでvtuber始めました   作:gnovel

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閲覧ありがとうございます!

ちなみにこうした旅行回ですが訪れることになる地名に関する知識は……とある漫画だよりです。何とは言いませんが、とある奇妙な漫画と言っておきましょう。タイトルに関してもお察しください。

それではどうぞ!


――『社員旅行』をします

 2週間前のこと

 

「という訳でこれからイタリアに行くことになって……今回も君に同行してもらいたいんだが……」

「うーん……そうですね……」

 

 そう言って俺は手元の書類に目を落とす。そこには【イタリアツアー企画書】とでかでかと書かれた書類がそこにあった。

 

 正直旅行自体は楽しみ。何だかんだ言って数年おきとは言え、毎回参加している為、年甲斐もなくワクワクしている。これもチートの賜物だな。ぶっちゃけ海外旅行での一番のネックはお金や現地の治安よりも言葉が通じるか否かだと思う。会話にならないと怖い。……会話になること自体が恐怖でしかない奴らもいるんですけどね。

 

 エジプトの時は一人身だったこともあって即承諾出来た。しかし今は狐子と星奈がいるのでどうしようかと思い、即答出来ないでいた。幸いにもこの三泊四日の期間の間には特に星奈の学校の予定だとか俺にも特に予定はないが……。如何せん俺には家族がいる為、二人を残しておくのは心配だ。……二人を襲う危機の方が。

 

 万が一家に強盗や変な輩が入ってきたら、普通ならヤバいことになる。しかし生憎うちは普通じゃない為、不埒な輩がどんな結末を辿るのかは想像に容易い。……間違いなく記憶を消されるか、食われる(捕食)か、或いは……焼かれるだろう。そんなことを考えていると俺のスマホにラインが届いた。

 

『向こう行って何かあっても儂が駆けつけるし、だから星奈の事は任せて楽しんでくるのじゃ!』

 

 そのラインの内容を社長に報せ、その旅行に同行する意思を伝えた。すると社長は「おぉそうか!」と嬉しそうに手続きを始めると言って書類を纏め始めた。俺も準備を整えるために社長室を後にしようとすると、ふと社長が呟いた。

 

「……何で君の奥さんは君がイタリアに行くことを知っているんだい……? これ、まだ社員の皆にも伝えてないけど……」

「……あれ?」

 

 

 そして当日。

 

「ではこれから暫くの間宜しくお願いしますね」

「まさか君が勝つなんてね――正雄君」

 

 前回はアカリちゃんが同行者だったが、まさかのスレンダー男こと正雄君が勝つことになるとは思いもしなかった。本人曰く「アカリさんは前回同行したので、じゃんけんには参加できませんでした」とのことで、正雄君も行けたらいいなくらいの気持ちでいったら、こうなったらしい。物欲センサーの良い事例だと思う。

 

 そして今は飛行機から降りて、イタリアの空港内に全員集合して案内の人を待っている状態だ。周りには多くの観光客がおり、とてもにぎわっている。

 

 今回はイタリアのとある遺跡から発掘された古代人を中心としたツアーの流れになっている。その道中で水の都ことヴェネツィアやコロッセオにも寄ることになっている。とある漫画の事前知識があるが、その影響でますます楽しみにしているのはある。

 

「それで今日はどこに行くんでしたっけ?」

「今日は……ヴェネツィアですね」

「古代人のミイラは……三日目でしたね」

「そうですね、二日目はコロッセオ辺りですね」

 

 旅の予定についての話をしていると、ガイドさんが来たので意識をそっちに向ける。というか俺が通訳を努めることになるので前に出る。

 

 

 その後、俺たちはガイドさんの案内の下、ヴェネツィア巡りを堪能した。久しぶりに怪異や人外が介入する余地が無くて普通に満喫していた時のことだった。

 

「『そこの方々……』」

「うん? 僕たちの事……ですかね?」

「そのよう……ですね」

 

 夜の時間帯で、少しホテルからぶらりと歩くことにした俺と社長、正雄君はある老婆から声を掛けられていた。その老婆は紫のベールを纏い、目の前の台には水晶が鎮座していた。老婆のしわくちゃの中から覗かせる鋭い眼光は俺達を見透かしているように思えた。

 

「『もしよろしければ……占って差し上げましょうか?』」

「えっと……何て……」

「占って差し上げましょうか……と言っていますね」

「ふむ! ちょうどいい機会じゃないか! せっかくだから占ってもらおうかな! 二人はどうだ?」

「じゃあ、僕も……」

「私も占ってもらいます」

 

「『では……こちらへ……』」

 

 

「『それでは……一人目を占って差し上げましょう。さぁ、そこの席に……』」

「最初に占う人は……そこの席に座ってとのことです」

「それでは私が先に占ってもらおうかな!」

 

 そう言って社長が一番最初に占ってもらうことになった。

 

「こういうのって……心理学の応用だとかなんとかって言われてますけど……どうなんですかね?」

「さぁ……取り敢えず結果を知るまでは何とも……」

 

 僅か胡散臭さを覚えながらも、占いは始まった。占い師が水晶に手をかざし始めた。

 

「『……』」

「タ、タロットとか使わないんですね……水晶だけってのも珍しい……」

 

 数分もかからず、占い師が水晶から手を放した。

 

「ど、どうですか……?」

「『貴方……最近、時計を無くしたね? 40歳の誕生日に奮発して買った高級ブランドの』」

 

 俺が占いの内容を伝えると……社長が目を見開いて仰天した。

 

「あ、当たってる……!?」

「「!?」」

 

「『その時計は……貴方の息子のおもちゃ箱の中さね』」

「な……なんだと……いや、まさかな……」

 

 そう言って社長は電話をつないだ。恐らく相手は社長の奥さんだろう。こっちは夜でも向こうは朝だから多分起きている筈。

 

『あら、どうしたのアナタ?』

「あぁ、えっと、その……ちょっと○○のおもちゃ箱の中を見てくれないか? もしかしたら……俺の時計があるかもしれん」

『えぇ!? ま、まぁ、良いけど……』

 

 

 数分後

 

『えっと……あったわ……一先ず、手の届かない所に保管しておくわね……』

「マ……マジで!?」

「「!?」」

 

 この占い師……本物……!?

 

 俺達も驚愕して咄嗟に占い師を見る。変わらず占い師は椅子に座ったままでいた。社長は奥さんとの電話を切り終わると、恐る恐ると言った様子で席についた。

 

「あ、貴女の言う通りでした……ありがとうございます……!」

「『気にしないで……さぁ、次よ』」

 

 そう言って今度は社長の抱える腰の病気が治る病院の名前や、社長が趣味で賭けようとしている競馬の万馬券が当たると占われ、一先ずの占いは終わった。

 俺たちはこの占い師の異様な力にただ圧倒されていた。

 

「『さっ、次は貴方よ』」

「よ、よろしくお願い……します」

 

 満足した様子で終わった社長と入れ替わるようにして正雄君が席についた。

 

「彼女……一体何者なんだろうね……」

「それは……何とも……」

 

 俺の直感的には、悪意が絡んでいるとは思えないし、怪異とかそういう物でもないと思う。

 

 

 この時俺はあることを思い出していた。潜伏中のレプティリアン(コンビニ勤務)から小話的な感じで話されたことだ。

 

『地球人によくある超能力だが』

『超能力……?』

『確かにあれは空想上の物に過ぎない……これは地球人の定説だろう。しかしその実は違う』

『……マジですか?』

『確かにそういった存在はいる。しかしその数が極端に少ないのと、そうした連中は外に出ることを好まないことが多いから発見報告がされないのだ』

『なるほど……? それで、これ、俺に話してよかったんですか……?』

『我々の中では君もその部類に含まれているのだよ“バベルの塔”』

『知りたくなかったそんな事実、そんな異名……』

 

 そんなこともあったなーと思いつつ、占い師の言葉に耳を傾け通訳していく。

 

「『貴方……この旅行が終わった後、日本の○○○○に行こうとしているわね?』」

「は、はい……! そうです……!」

 

 そこは割と有名な心霊スポットの廃墟だが……。

 

「『そこに行けば貴方は死ぬことになるわ』」

「「「!?」」」

 

 唐突な死亡予告に唖然とする俺達。占い師は続けて語りだす。

 

「『その場所は……頭のおかしいガキ共がたむろしているわ。そこに行ったが最後、貴方はリンチに遭って力加減を間違えたガキの一人に殺される』」

「ヒ……ヒエェ……」

「……日本に帰ったら警察に相談するとしようか」

「……そうですね」

 

 自らに迫りかけていた死にただただ驚くことしか出来ない正雄君だった。

 

 その後は、旅行の後に素敵な出会いがあるとかこの先も慎重なままでいれば明確に大きな損失はしないだろうという有難い助言で済んだ。正雄君も胸を撫でおろしてお礼を言っていた。

 

 

 で、俺の番になった。

 

「『よろしくお願いします……』」

「『……貴方……貴方は……ッ!』」

 

 そう言いかけた占い師。

 

 ――その瞬間、水晶が突然粉々に砕け散った。

 

「え!?」

「『……気にしないで、貴方の力に耐え切れなかっただけだから。弁償については気にしないで』」

「『えっ、でも……』」

「『いいから』」

 

 有無を言わさないその圧力に負け、俺は申し訳ない気持ちのまま占いを受けることにした。すると占い師は目を伏せながら、一言。

 

「『……分かれ道が見える』」

「『え?』」

「『……一つは“川”もう一つは“機械”に“吸血鬼”、“狐”そして……“人間”ね』」

「『えぇ……?』」

 

 川に、機械に……? 吸血鬼……? 全く心当たりが無い……狐以外は……。

 

 先程と違いずいぶんと曖昧な内容に困惑する俺に、畳みかけるように占い師は更に告げる。

 

「『“川”……黒衣と……鎌が見える。“機械”……空を覆う機械の集団……その中心に……貴方が見える。“吸血鬼”……貴方の身近にいる。彼女は虎視眈々とその機会を狙っている……と言っておくわ』」

 

「どういうことなの……?」

「えっ……と……どうしたんですか……?」

 

「『“狐”……これは貴方を護っている存在。その傍に居る“牙”も大切になさい。“人間”は……既に閉じられたようね』」

「『……どうやってそれを知ったんですか……』」

「『これ以上は言えないよ。安心しな、これは誰にも話さないよ。もっとも、貴方もそれを話す気がないようだけどね……』」

「『……ご尤も』」

 

 その後はというと――この先、あらゆる賭け事で俺はイカサマをしない限り絶対に勝てないことと、少なくとも人間としての死は迎えられることを告げられた。……賭け事絶対やらん。

 

「賭け事で負けるって……何か……源吾さんらしいっちゃあ……らしいですけど……」

「あー……その……なんだ……賭け事が出来なくても……生きていけるから……」

「止めてくださいその言葉が一番傷つくんですから」

 

 

 それから帰ることになった時。

 

「『貴方達が三日目に訪れることになる遺跡と博物館……そこで厄介ごとに巻き込まれるわ。だけど心配することは無い』」

「『えっ何でそんなことこのタイミングで言うんですかァ!?』」

「『一泡吹かせてやろうと思ってね』」

「『さては貴女相当性格悪いですね!?』」

 

 ……念の為に持ってきた胃痛薬が役に立ちそうだ……。あぁ、狐子の飯が食べt(ラインが届いた音)

 

『夜食用にカバンの中に弁当を入れておいたのじゃ!』

 

 だから何で俺の思考というか考えが分かるの!? そしてどうやって俺のカバンに弁当を入れた!?

 

『ひとえに――愛!』

 

 なぜそこで愛!?

 

 

 

 

「ふぅ……全く……老体には堪えるわい」

 

 源吾たちが去った後、占い師の老婆は首の骨を鳴らしながら体を伸ばしていた。その声色には心底疲れが見えていた。

 

 

 ――実のところ、この老婆にはもう二つ見えていた。

 

 

 あの男性の上から垂れるようにして伸ばされる悪意あるおぞましい何かの手が。そしてもう一つ、その手を掴もうとして虚空から現れた身の毛もよだつ程に力に満ちた圧倒的“神格”。

 陰と陽……実際は陽の方がはるかに優勢の様であったが、少なくともそれは老婆の肝を冷やすのには充分だった。

 

 あれほどの存在達は、悲惨な戦火に見舞われた場所や、虐殺の歴史が刻まれてしまった場所に出没する“良くない物”よりも遥かに質が悪く、そして強力すぎた。あの瞬間老婆は生きた心地がせず、その時だけ己に備わった力を呪った。

 

 しかし結局は己の飽くなき好奇心に従い、あの男性を占ってやったのだ。“危険”ほど恐ろしく、美しく、そして甘美な物はない。それが老婆の考えだった。

 

「あの小僧は……まぁ、大丈夫じゃろ。色んな奴らを引き寄せるが……あの悪運ではそうそう死にはせん。このままいけば“狐”の道を進むだろうさ」

 

 さてと……と老婆は椅子から立ち上がり、砕かれた水晶を見て思わず一言。

 

「……やっぱり弁償して貰った方が良かったかねぇ……面白い物を見れたのは間違いないんじゃがのう。よっと……!」

 

 

 僅かな哀愁を漂わせながら老婆は水晶をかき集め――布を被せ、手で勢いよく押しつぶした。

 

 

「――ま、普段よりも高めの値段で済んだからこれで良しとするかねぇ」

 

 老婆が手を布からゆっくり引き上げると――布の中から傷一つない水晶が出てきた。

 

「やっぱこの商売はやめられないねぇ。自分のことを完全に言い当てられた連中は値段なんか気にしないから、財布のギリギリまで躊躇いなく払える。儂の経験則さね」

 

 

 

「あれ? どうしたんですか? その弁当」

「……愛妻弁当です」

「え? でも奥さんは……」

「それ以上いけない……それ以上……うん……良いね?」

「アッハイ」




主人公
狐子の行動に疑問を抱かなくなってきた。狐子は絶対大丈夫!
占いの“狐”は分かるがそれ以外については分からないまま。



……実は主人公の辿りかけた未来だったり

狐子
手をグシャリっとな。弁当箱はカバンに入れた瞬間に回収した。


占い師
数少ない“本物”。御年97歳。能力が成熟したのは60歳ごろ。
能力を使って競馬や株などで大儲けしてきた中々肝の座った狡猾な婆さん。相手の思考や辿る未来が分かるが、異質過ぎる主人公に困惑。

Vtuber要素と異種族要素の比率はどちらが読みやすいですかね?

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