言語系チート授かったのでvtuber始めました 作:gnovel
いつも感想・評価・誤字報告ありがとうございます!
それではどうぞ!
「はい、粗茶ですが……」
「あっ、どうも……」
真夜中の午前0時。とっくに星奈は眠りについている時間だがリビングに俺と狐子、そして……俺に似た青年がいた。
「(其方……彼奴何者ぞ……?)」
「(いや……何か、その……寝床に困っていたし……それに何か、ほっとけない感じがして……)」
「(まぁ……幸いにも敵意や悪意は感じないようじゃが……ちと危機感が欠如しておるのでは?)」
「(言い返す言葉もありません……)」
お茶を飲んでいる青年を余所眼に俺と狐子が小声で青年について話していた。俺は自分の危機感の欠如の原因が少なからず狐子を含めた人外連中にあるのではないかという考えを言おうとしてグッと堪えた。そして視線を目の前の青年に向ける。すると青年はお茶を飲み終わると改めて俺達に礼を言った。
「この度は見ず知らずの俺を泊めてくださりありがとうございます……」
「あ、あぁ……」
「あっ、申し遅れました俺の名は…………」
「……?」
名前を名乗ろうとした青年が突如固まり、額から汗を流していた。何かやましいことがあるのか?
「……あのー?」
「アッ、えっと、俺は……
「あぁ……うん。そうなんだ……」
苗字を名乗らない辺り何か複雑な家庭事情があるのだろう。俺は敢えてそれに触れないでやった。今更住所不定とか異世界人だとか気にしているだけ無駄だと悟ったからだ。あと何より話す言語が幸いにも日本語であったため俺のチートが発動することはないだろう。
ピリリ
「あっ、すみません。ちょっと失礼しますね」
そう言って青年は携帯を手に取って隣の部屋に移動した。襖越しにだが僅かに会話の内容が聞こえてくる。
「『はい……はい……すみません教授……設定を間違えたのか……この時代に……』」
(おっと……? 英語……それもかなりネイティブな……)
青年の声で聞こえてきたのはネイティブな英語だった。見た感じ生粋の日本人という感じがしたがどうやら英語が得意らしい。俺は悪いことだとは思いつつ青年の会話内容に耳を傾けていた。
「『はい、それで帰還の目途ですが…………え? あと一か月!? は、はぁああああああああ!? 嘘、嘘ですよね!?』」
「『えっ? 君の家族と会っていないだろうかって? ……すみません教授、もう手遅れです…………はい、もちろん反省文を書かせていただきます……ですのでどうか、30ページ分の反省文は勘弁してください』」
何か凄いことになっているなと思いつつ、コンビニ袋からスルメイカとサイダーを取り出して堪能し始める。うん、美味い。
(なぜ……彼奴から儂の気配が微かにする……?)
「どうした?」
「いや、何でもないのじゃ」
なにやら悩んでいる様子の狐子に声を掛けたが、どうやら俺の杞憂だったらしい。俺は一頻りつまみを堪能した後源野君の布団を敷く準備をした。幸いにも一つ部屋が空いている為、そこで泊まってもらうことにした。
翌朝
今日も今日とて配信活動をする。今日は土曜日ということもあって平日よりも多くの人たちが見に来てくれている。
「はい皆さんこんにちわ。土曜日の朝から来てくださってありがとうございます。今日はたまりにたまったマシュマロや質問に返答していきますよ」
ちなみに源野君は暫く居座る代わりにと家事を手伝って貰っている。心なしかこの家を見る時の目が何となく懐かしさに満ちていたことがあったが、たぶん俺の家と作りが似ているんだろうな。まぁ精々一か月だし、狐子も害はないと判断して今も星奈の朝食を作っているとのこと。
リスナー:おっつ
リスナー:また怪文書が生み出されそう
リスナー:いつものこと
「さてそれでは早速マシュマロから行きましょう」
『先生が今まで訪れた国の中でどこが一番印象深かった?』(中国語)
マシュマロ
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リスナー:えっ、初っ端から何語?
リスナー:中国語ゾ
リスナー:中国人がマシュマロ送ってて草
リスナー:いや流石に日本人やろ
「今まで訪れた国の中でどこが一番印象深かった……ですか」
リスナー:はぇ~そんなこと言ってたんですね……
リスナー:翻訳かけたらちょっと可笑しくなっちゃった……
リスナー:それでも比較的昔よりはマシぞ
質問を受けた俺の脳裏には幾つかの国が上がっている。前に行ったイタリア、エジプト……卒業旅行と称して初めて行ったアメリカ、インドや中国……数えればキリがないが同時にそれらの国々で何かしらのハプニングに巻き込まれていたことを思い出すと言葉に詰まったが、
「(色んな意味で)印象深かったのは、イタリアですね。あっ日本語じゃなくて『印象深かったのは、イタリアですね』、と」
リスナー:うーんこの語学力
リスナー:この前行ってたもんね
リスナー:俺も行きてぇな
リスナー:けど仕事が……
「皆さんも一度海外旅行に行ってみてはどうでしょうか。さて次のマシュマロは……っと」
いつもお疲れ様です! 先生の嫌いな動物がカラスだと聞いたのですが本当ですか?
マシュマロ
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「あー……そうですね……」
リスナー:カラス嫌いだったっけ……?
リスナー:最近更新されたプロフィール欄に書いてあったぞ
リスナー:【嫌いな動物:カラス】って
リスナー:あぁ……あの無駄に項目が多いプロフィールか
そう、最近になって長年使ってきたプロフィールを変えてもいいんじゃないかという話が事務所で持ち上がり、あれはこれやとアイデアを出した結果、項目が百以上になったのだ。もちろん全部書かされた。
「私がカラスが嫌いな理由は」
流石にここで「前世で鳥葬されたことがあった」と言う訳にもいかない為、
「昔、カラスにつつかれたことがありまして」
百倍に希釈した事実を伝えた。嘘は言ってない。
リスナー:こっわ
リスナー:カラスに襲われるって何したんや……
「何もした覚えはないんですけどね……」
リスナー:強く生きて
朱い月の城 ¥10,000
いつもご苦労様です! 先生が一番好きなVtuberを教えてください! 答えないのは無しです!
「へぇっ!? えっと……そ、そうですね……」
アリュカード:勿論妾に決まっておる!
ヒカリ:誰を選ぶか楽しみです!
リスナー:質問した奴の悪意が見える……
誰だこの質問をしたのは……! おかげで部屋の向こうから謎の圧を感じるようになってしまった。
(ど……どうする……ここで具体的に誰かを言った所で後々狐子が怖くなるし、かといって答えなければクソボケの異名を貰いかねない……!)
スレンダー男:何か……愉快なことになってますね
スイスイ:うけるw
ウタ:さっきから日本語以外の言葉も流れていますね!
リスナー:めっちゃ来るやんけ……
画面内では俺と関りのあるVtuberが次々とコメントを残していく。気分は処刑台に上がる罪人だ。なんで俺、こんな目にあっているんだろう……。
「一先ず愉快なことだと言ったスレンダー男さんとスイスイには後でお話があります」
スレンダー男:ヒエッ
スイスイ:ヒエッ
リスナー:草
レオ・ブロード:主が狙ってて草
アリュカード:貴様は後で覚えておけ
レオ・ブロード:!?
リスナー:えぇ……
「……まぁ、あくまで同じVtuberの中で、
リスナー:めっちゃ予防線貼るやんけ
リスナー:一番は先生の嫁さんだろjk
リスナー:何で休日の昼間から修羅場を見せられてんだ俺達……
レオ・ブロード:……おもしれー男だ
リスナー:貴族か何か?
「……スイスイさんですかね」
スイスイ:え?
アリュカード:少し事務所の裏に行こうか
ヒカリ:よよよ~(悲)
スイスイ:え?(大困惑)
リスナー:草
何となくムカついたのもあるけど、話していて割と楽しかったこと、だいぶ交流があったことを踏まえて敢えてスイスイを選んだ。後で配信に凸されるだろうが、俺は何も知らないし、何も聞こえない。
スイスイ:ちょ、そんなことしたら後々が……
アリュカード:配信の際にうっかり乱入するかもしれないのぅ
スイスイ:あばばばばばばばばば!!
リスナー:怖いなーとづまりすとこ
リスナー:うわぁ……
「さて、気を取り直して」
リスナー:こっから取り直せるの!?
リスナー:すげぇさわやかな笑顔で言ってそう
リスナー:スイスイちゃん犠牲になってて草
「次は……っと」
あなたは神を信じますか?
マシュマロ
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リスナー:ただの宗教勧誘じゃねぇか!
リスナー:クソマロがよぉ……
リスナー:怖い(直球)
「えぇ……ランダムに選んだ結果がこれなのは……どうしましょう…………神は貴方の心のうちにいると思います……と言っておきます」
本当はいる。何なら今、それに近しい存在が俺の家にいるし、なんなら妻だし。そして神なら転生時にあったことある。ので、当たり障りのないことを言っておくことにした。
リスナー:こっちもこっちで怖い
リスナー:律儀に答えなくていいから……(良心)
リスナー:新手の教祖かと思った
リスナー:危ない気配を感じるねぇ……
卍月ドッカン ¥10,000
人間辞めるとしたら何になりたいですか?
「最後の最後まで人間でありたいです(願望)」
リスナー:時々人間を辞めさせる勢がいて草
リスナー:大体質問返答の際に一人はいるのは何なの……
リスナー:石の仮面でも被るのかな?
「……残念だけど……人間を辞めることになるんだよねぇ……」
星奈の食事と家事の手伝いを終えた源野は一人、パソコンに向かいながら源吾の配信を見ていた。
「まぁ、確かにひと悶着あったって言ってたけど……父さん達が頑張ったおかげで事なきを得たから良かったけどね。……それにしても星奈おばさんの食べる量、まだまだ少なかったから苦労しそうだなぁ……」
自分のいた時代との違いを思わずつぶやく源野。暫くすると部屋の扉をノックする音が聞こえ、源野は作業(という名の反省文作成)を中断した。
「ちょっと良いかの?」
「あっ、どうぞー」
部屋に入ってきたのは狐子だったが、その顔つきはどこか険しかった。その様子を受けて源野は少し萎縮した。
「今朝はご苦労様じゃ。若いながらも良く働いたのう」
「は、はい……祖母によく教わったもんで……」
「ほう、よほど育ちがいいらしいのう」
「い、いえそんなことは……」
と他愛のない会話をしていた所でふと、狐子が唐突に源野に
「お主に何があったのかは敢えて探らないでやろう」
「あ、ありがとうございます……」
「じゃが……その代わりこれだけは答えてもらおうかの」
「お主、混ざっておるな?」
――その瞬間、源野を得体の知れない圧が襲い掛かった。
(やっ……ば……! 間近で受けるのはこれが初めてだけどこれは……!)
脂汗を流しながらも源野は首を縦に振った。それを見た狐子はおもむろに手を源野に向けて翳していった。すると
「……儂よりは劣っているが、少なからずその体にあるそれは紛れもなく儂由来の物……」
(やっぱり無理だったんだ! 婆ちゃんに隠し事なんて……! どうする……!? ここで下手に反応をすると未来が変わりかねない……教授は『例え君が未来の孫だと言っても、未来が変わる確率はかなり低いだろう。しかし少なからず影響は出るはずだ』って言ってたけど……)
有無を言わさない狐子にたじたじな様子の源野。僅かに髪の色が白くなる狐子、それに伴い少しばかり揺れ始める家。
しかし、直ぐにそれは収まった。
「ま、一か月で迎えが来るならいいじゃろ。少し驚かせたのう」
「は、はい……」
「さて……昼飯をこしらえるとしようかの。少し待っておれ。儂の子孫よ」
「……え」
「儂を甘く見るでない。それぐらいの事、察することなんぞできる。安心せい、主には言わないでおいておこう」
その後運ばれてきた昼食をぎこちない動作で食する源野の姿があったとか。
主人公
この後も日本語以外の言語の質問が来たし、危うく修羅場になりかねない質問が来て精神的に死にかけた。許さんぞスイスイ
狐子
何となく自身との繋がりを感じていた
源野
どうにかなれーっ!の精神で一か月を過ごすことに
後でさらに反省文を追加された模様
Vtuber要素と異種族要素の比率はどちらが読みやすいですかね?
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