言語系チート授かったのでvtuber始めました   作:gnovel

26 / 40
閲覧ありがとうございます!
大分忙しくなって投稿が遅れてしまいましたが、何時も感想と評価ありがとうございます!

それではどうぞ!

追記
矛盾が生じている部分がありました……ご指摘感謝します! 修正いたしました……申し訳ございませんでした。


たまにあるほのぼの回

「へー、源野君は海外の大学に通っているんだ」

「はい、家族の後押しもあって……」

 

 配信活動が休みの日曜日、俺は源野君のお使いに休みも兼ねて同行することにした。

 

 家に源野君が来た当初は狐子が露骨に警戒した素振りを見せていたが、ここ数日からまるで手間のかかる子供の面倒を見る様な感じになっているのが何となくわかる。普通ならここで浮気か何かを疑うかもしれないが、どうにも俺にとっても他人のような感じがせず、割と受け入れている。知らない人に警戒心を露にしやすい星奈も警戒心を解いていることからもまぁ、悪い人間ではないだろう。

 

 そして今は、少し遠くの場所へ買い物に向かう途中だ。いつもの商店街ではなく電車に乗って三駅くらいの距離にある大型のショッピングモールが目当て。

 

「あっ、そういえば英語とか話すのに苦労はしなかった?」

 

 そう尋ねると

 

「……えっと……特に、苦労はしませんでした……ハイ」

 

 どこか歯切れの悪そうな感じであった。苦労はしなかったと言っても裏では相当苦労したんだろうなと思った。

 

(言えない……生まれてから一度も言語で困ったことはないなんて……この能力を持っているのは爺ちゃんと父さん、そして俺だけだから……ましてやこの時代の爺ちゃんに知られるのは不味い……)

 

「聞いちゃいけない質問だったかな……?」

「あっ、いいえ! 大丈夫です!」

 

 そうして他愛ない会話をしながら歩いていると道端にある家から二匹の犬の声が聞こえてきた。

 

「ワンワン『おい、聞いたか? ご主人が乗ろうとした電車で人身事故だってよ……』」

「ワン『マジで?』」

「ワンワン『せっかくの休日で何時も行っている○○○ショッピングモール? だっけ? そこに行けなくなったって嘆いていたって娘さんが呟いていたからな』」

「ワフゥ……『えぇ……ご主人はいつもそこで俺達のおやつ買ってきてくれるんだろ? それがなくなるのかよ……辛ぇわ……』」

「ワン『言えたじゃねぇか……』」

 

 あれ? そこ俺たちが行こうとしていたショッピングモールの名前だな、と思いつつAiに調べさせようとすると

 

「あ~……電車が暫く停止するみたいですね……別のショッピングモールに行きませんか?」

 

 俺がスマホを持って調べようとした瞬間には既に調べ終わっていたらしい。

 が、そもそも俺が調べようと思ったのも犬たちの会話を聞いてのことだったので明らかにおかしくないか? と思ったので

 

「あれ……何で今電車が人身事故を起こしたことを知って調べたんだい……?」

 

 すると源野君の顔色が一瞬悪くなったかと思うと

 

「もしかして……」

「あ、あぁ! 実はですね、その、えっと……そう! ほら! さっき通りすがった人たちが話していたんですよ!」

「あれ……さっき誰かと通りすがったっけ……?」

「通りすがりましたよー! アハハハハ……」

 

 やたら顔色が悪く、どこか焦っているようにも見えたが、俺が源野君との会話で見過ごしていただけかもしれないな、と思い特に気にしないことにした。

 

(あぶ……危っねぇええええええええ! 危うく犬達の会話を聞き取れると知られる所だったぁあああああ!)

 

 突然頭を抱えて項垂れた様子の源野君だったが「……ちょっと忘れたい過去があったので」という言葉にあぁ、黒歴史か、と納得した俺はそれ以上聞かないことにした。他人の傷口を抉る真似は俺には出来ないからね。

 

 

□■□■

 

 

(あぶ……危っねぇええええええええ! マジで爺ちゃんで良かったぁああああ! 婆ちゃんとかだったら間違いなくボロが出てバレる所だった……!)

 

 横で呑気に歩いている源吾を見ながら冷や汗交じりに源野はそう思った。顔は平静を装っているが内心はどちらも動揺しまくっているのである。明らかに不審過ぎる行動に流石に終わったか、と肝を冷やしに冷やしまくった源野だった。

 

(ま、まぁ……爺ちゃんのそういう所も良い所って婆ちゃんや星奈おばさんが言ってたけどさぁ……)

 

(……何ていえば……そう、良く言えば許容範囲が広くて、悪く言えば人間としての何かが欠如している、が爺ちゃんだからなぁ……)

 

 己に降りかかる事象を「まぁそういうのもあるか」と許容し、夢物語であった筈の人外という未知の存在に対しても「言葉通じるから大丈夫だろう」と平然とした様子で語っていたことを思い出しながら源野と源吾は予定を変更してバスでショッピングモールを目指していた。

 

(というか――)

 

 源野はちらっと源吾を見た。視線に気づいた源吾は

 

「どうしたんだい?」

「あぁ、いえ……何となく身内に似ていたもんでつい……」

「ははは、ぜひともあってお話してみたいね」

「ソウデスネ……」

 

()()が無い爺ちゃん見るのも久しぶりっちゃあ久しぶりなのか……元は黒髪だったことにも驚いたな、そういえば)

 

 未来という物を想像すら出来てないであろう己の祖父の姿に何とも言えない何かを覚えつつも同時にまだ残っているレポートの束があることを思い出し少しナーバスになった源野だった。

 

(それにしても……本当にこの能力が無ければ教授たちとも巡り合えなかったし、ほんと様様と言った感じだけど、どうやって俺にこの能力が発現したんだろ……?)

 

(うーん……まっ、いっか。別にこの能力があって俺が困ることは特になかったし。大丈夫!)

 

 ――血は水よりも濃い、とはよく言ったものである。

 

 

 

 

「大丈夫だと……思いたかったのに……!」

「あー……完全に迷い込んだね……」

 

 そう呟く俺と源野君。俺達の後ろを()()()バスが通り過ぎる。そう、無人である。運転席には制服が乱雑に散乱しているだけで完全に俺達以外はいなかった。

 

 俺たちは予定通り買い物を済ませ、遅めの昼食を取りいざ帰ろうとした時に乗ったバスが何故か、目的地から外れてしまい結果、この有様になったというわけだ。傍で源野君が項垂れているが本当に申し訳ないの気持ちで一杯だった。

 

(忘れてた……爺ちゃんも父さんも怪異に遭遇しやすいんだった……! というか俺も怪異に狙われているとは未来の婆ちゃんもこの時代の婆ちゃんからも散々言われてたじゃないか……!)

 

 マジでごめん。そうとしか言えない程に項垂れている源野君を見て取り敢えず辺りを見渡す。

 辺りを見渡すと、空は完全に深夜のように真っ暗で星の光すらなく心なしか赤みがかっていた。さらに言えばバス停に書かれている筈の停留所の名前の所に文字化けした文字だけが書かれている始末。

 

 はい、完全に怪異に巻き込まれました。またかよ(白目)

 

 ん、で停留所に書かれている文字にチートが発動したので読み上げる。

 

「……『ゆるさない』って書かれてるね……」

「orz」

 

 明らかにやべー所に迷い込んだと確信する俺。かなり前に「きさらぎ駅」に迷い込んだことを思い出しつつ、念のためにスマホを開く。

 

【圏外】

 

 うん、圏外。知ってた。

 

(まぁ、今すぐ戻れる可能性があるけど……)

 

 俺の上着のポケットには■■■■ちゃんを呼び出すための鐘があるし、何なら狐子がそろそろ俺が消えたことを察知してきてくれるかもしれない。だが、

 

(……どうやって源野君に説明しようかな……)

 

 このTHE異世界に巻き込まれて自分たち以外誰もいない筈なのに、そこに表れる■■■■ちゃん、もしくは狐子を見てどういう反応をするんだろうか。いや、普通に考えて良くて発狂、悪くてショック死の可能性もある……?

 

「どうしようか……ん?」

「ヒエッ、空がますます赤くなってきた……」

「あー……やっべ……久しぶりにヤバいのと遭遇したかも……」

 

 空を見上げると、明らかに先程よりも赤に染まった空が見えていた。そしてふと停留所の標識を見る。そこには『ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ……』と書かれていた。うーん、殺意が高い。

 

(うっわ……というか時刻表の所も……)

 

 よくよく見れば時刻表のところも数字の代わりに『死』とか『呪』とか『444444444444』という文字が羅列されており、隣で見ていた源野君も文字の意味は解読できないが事の異常さに気づいたようだ。

 

(ヒエッ、『死』とか『呪』とか書かれてるぅううううううう!? 早くぅううううう婆ちゃん来てくれぇええええ! でも言えねぇええええええ!)

 

 この状況に混乱しているようで顔色が次々と変わっていく。流石に限界か、と思い懐から鐘を取り出そうとすると

 

 

「……ォオオオオオオ」

「ん?」

「ヒョオッ……」

 

 呻き声がした方を振り向くとそこには、白い服を着た巨大な女性のような化け物が俺達の間近まで接近していた。源野君の喉から枯れそうな声がすると共にそいつは俺達の顔を覗き込んだ。

 

「ォオオオオオオオオオォオオオ!」

 

 明らかに人間の背丈でないそいつは、俺達を手の中に納めようと両手を大きく広げる。

 

 ――が

 

 

「……ん? あっ(確信)」

 

 ――だがその瞬間、俺はチートが発動したのだ。そして俺はためらいなく

 

「『取り敢えず話し相手になろうか?』」

 

「『……えっ』」

「ファッ!?」

 

 

 

「本当にッ!! 私と子供を捨てて別の女の下に逃げやがったあの根性無しの糞ったれ脳みそ下半身接続ゴミカス野郎は!! 何べん殺してもの飽き足らない! かといって殺そうにも足が付くのを怖がってんのかわかんねぇけど全然ここら一帯に来ないしさ!!!!」

「復讐したい気持ちはわかるけどね……それで俺達を巻き込むのはどうなのよ」

「それについては本当にごめんなさい……! これまでも何度か巻き込んじゃったけど皆あの男じゃなかったから記憶を消して帰してあげたから……」

「……(俺は、何を見ている……? あの明らかにヤバい怪異を前にして、爺ちゃんが相談に乗っているだなんて……)」

 

 結論から言えば、会話が成立して現在この人の愚痴を聞いていた。俺の傍には死んだ目をしながらジンジャーエールを飲んでいる源野君がいた。

 

 どうやらある男性に母子ともども捨てられたこの人? はずっと復讐相手を殺すために地縛霊になっていたらしく気が付いたら怪異になっていたと。で、俺たちが攫われたのは恨みの力が強すぎることによって力の制御が出来ずにたまに俺達のように迷い込む人が出てしまうらしい。そのことに関しては深く謝っていた。

 

 彼女曰く、幸いにも子供は通りすがった老夫婦に拾われて今も元気に暮らしているとか。

 

 そうして一頻り話を聞き終えた所でふと思いついたことがあったので、提案することにした。

 

「んー……もし、地縛霊から解放される手段があるとしたら、どうします?」

「えっ……? 本当に……?」

(おつまみの……味がしない……何で爺ちゃんは平気なんだよ……!?)

 

 そう言って俺は懐から■■■■ちゃんに繋がる鐘を取り出しながら説明を続ける。源野君にはこれから起こることは内緒であることを言ったら、無言で首を縦に振ってくれた。

 

「だけど……復讐は出来なくなるかもしれませんが……」

「……」

 

 ■■■■ちゃんを呼んだところで出来るのは死者の成仏。そうなると復讐は出来なくなってしまう、と付け加えると暫く悩んだ様子の彼女だったが、

 

「……いいわ」

 

 どこか諦めたような口調で言葉を紡ぐ。

 

「なんか……ここで貴方と会話して全部吐き出したら……娘の顔が浮かんできちゃってね。ここで当てもない復讐を待つよりもあの子の幸せを願って見守ることにしたわ」

「それで、いいんですね?」

「えぇ、なんかすっきりしたしね。はぁ……でも、欲を言うなら彼奴には痛い目に遭って欲しかったわ……」

「ちなみにその人の名前は何ていうんです?」

「――佐藤誠よ あの糞野郎、私と娘を捨てて他に十数人の愛人を囲っていたのよ!? しかもその中には彼奴の近親者までいたのよ!? 信じられるかしら!?」

「えぇ……(困惑)」

(うわぁ……)

 

 恨みが籠った声色とその内容に思わずドン引きした。

 

「まっ、いいわ。さっさとあの世に行って娘の幸運を祈りながら、あの男が誰かに制裁されることを待つとするわ」

「なんか……随分と思い切りが良いですね……では……」

 

 そう言って俺は鐘を鳴らし、自宅に帰ることが出来た。

 

 

 後日、俺と源野君が夕食後のデザートを取りながらテレビを見ていると

 

『昨日午前十二時ごろ、佐藤誠氏が一人の女性により包丁などの刃物によってバラバラ死体にされていたことが明らかになりました。28か所の刺し傷だそうで……』

「「あっ(察し)」」

 

 この時、脳内にあの女性が清々しい笑顔を浮かべながら中指を立てている姿が過った。




主人公
怪異に慣れ過ぎてハイハイ何時ものね、の精神が染みついた。

源野
主人公が怪異と話している間ずっと生きた心地がしなかった(正常な反応)

怪異
今頃あの世で中指立てながらヒャッハー!している

佐藤誠
元ネタは無論、アレ

Vtuber要素と異種族要素の比率はどちらが読みやすいですかね?

  • 1:9
  • 2:8
  • 5:5
  • 8:2
  • 9:1

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。