言語系チート授かったのでvtuber始めました   作:gnovel

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という訳で主人公君には人間を辞めてもらいます(唐突)


「言語」系チート+人外スペック=?

「……だるい」

 

 休日の朝、今日は源野君の為の個人的なプレゼントを買いに行っていた。雲一つない青空の中、普通なら気分よく道を歩いている所だが、今日は一段と気分が悪かった。

 

「頭痛がする……それに目が、少し痛い……」

 

 これまで生きてきた中でトップクラスの体調の悪さだった。頭がズキズキと悲鳴を上げるように痛みを訴え、目に関しては時々ズキッとした痛みと共に若干の視界のぐらつきが起きていた。

 

 朝起きたころにも若干の頭痛がしていたのだが、軽い頭痛だと思い、念のために頭痛薬を飲むくらいの対応を取ってはいたが、どうやら無駄だったようだ。まるで効果がない。

 それでも何とか外に出るために髪の毛を黒く染めてきたが、まるで体が作り変えられるようなそんな痛みが絶え間なく襲ってくる。ズキズキする頭痛の痛みとボーっと思考が定まらない今の状態ははっきり言ってかなり危険だ。

 

「……何とか……歩けはする」

 

 歩道の端にある壁に手を付きながら家路についていた俺だったが、ふと前方から誰かがこっちに向かって来ていることに気が付く。

 

「――!?」

(なんて……言っているんだ……? クソ……上手く聞き取れない……)

 

 頭痛の痛みに何とか抗いつつも、顔を上げて目の前にいるであろう誰かに自分は大丈夫だという意思表示をしようとして、思わず驚愕した。

 

「葵……さん?」

「……本当に、大丈夫ですか? さっきから私の声が聞こえていなかったようですけど」

 

 そこにいたのは葵さんだった。――心なしか、不満げな表情をしているように見えたが、多分俺の体調が悪い所為でそう見えるだけなのだろう。

 

 

□■□■

 

 

「本当に……助かります」

「良いですよ。これくらい」

 

 何やかんやで今の俺の体調について話した。すると目を見開きながら「胃の痛み以外、常に健康と言われる源吾さんが風邪を引くんですね……」と言われた。ちょっとクスッときてしまった。

 

 そして葵さんはというと、どうやらちょっとした用事で学校に呼ばれていたらしく、その帰りに寄ったカフェの帰りに俺を見つけたということらしい。

 

「正直会いたくも無かった」ボソッ

「どうしました……?」

「いえ、なんでもありませんよ」

 

 にこっと微笑みながら俺の抱えていた荷物を持ってくれる葵さんのその姿に正直感謝しかなく、それと同時に素直に外出を控えるべきだったと後悔する俺だった。しかし本当に体がだるいし、頭が痛い。

 

 正直このまま何事も無く家につければいいのだが

 

 

 ――どうやらそうもいかないらしい。

 

 

「あ、あれ……? ここ、さっきも通ったような……?」

 

 葵さんと合流してから既に三十分くらい歩き続けているが、さっきから見えるのは同じ景色ばかりだからだ。

 

(それだけじゃない……さっきから聞こえていた猫や犬、鳥の声が……)

 

 葵さんが聞こえている筈もないのだが、さっきから聞こえてくる動物の声が悍ましい内容に変わっていた。

 

「ワン『死ね』」

「ニャ『死ね』」

「カー『呪われろ』」「カー『呪われろ』」「ワン、ワン『何で僕たちが死ななきゃならないんだ』」「ニャー『お前達も苦しめ』」

 

 今の俺は先程よりも更に気分が悪くなって、うつむいたまま歩いているが、見なくても分かる。恐らくこの動物らしき奴らが考えていることは――ただ一つ。

 

「な、なに……!? 周りの動物が、私達を見つめている…………ヒイッ!? あ、あの猫の目……真っ黒!?」

 

(――人間に、死んでほしいんだろうな)

 

 

「『死ね』」「『死ね』」「『死ね』」「『死ね』」「『死ね』」「『死ね』」「『死ね』」「『死ね』」「『死ね』」「『死ね』」「『死ね』」「『死ね』」「『死ね』」「『死ね』」

 

 

 周りの動物がそれぞれの鳴き声と共に飛ばすのは怨嗟が込められた呪いだった。

 怯えた声を出す葵さん。どうやら周りの異常性に気づき始めつつあるようだ。そう不運なことに、俺達は彼らの領域に引きずり込まれていたようだ。

 

(そういえば……この近くに……既に閉鎖された保健所があったような……)

 

 この近くに閉鎖された保健所があり、そこでかつて非人道的な動物虐待が行われていたことを思い出した。恐らくこの子たちは「被害者」だ。そしてそれに伴って更に、この近くで度々行方不明事件が多発していることも思い出した俺は、荒い息を整えながらこの状況を打開する術を考える。

 

 しかし、思考が定まらない今の状況では考えても考えても、考えがまとまらない。

 

「源吾さん! 少し背負いますのでここから逃げましょう!」

 

 そう言って俺を背中におぶさりながら、その場を後にしようとする葵さん。俺はというと見目を気にする余裕はなく、されるがままにしていた。

 

「さっきまでの通路だと、ここを真っ直ぐに行けば分かれ道がある……! 私達はさっきから同じ方向に曲がっていたからダメ……なら!」

 

 自分たちが通ってきた道とこの辺りの地形を脳内で照らし合わせているのか、必死に最適解を出してこの場から抜け出そうと躍起になる葵さん。

 

 ――しかし、恐らくそれは徒労に終わるという確信があった。

 

「さっきはここを左に曲がったから……今度は右に………………嘘……」

(……さっきの、場所に戻ってきた……)

 

 また、同じ場所にたどり着いた。

 

「ど……どうすれば……間違いなく“地形把握能力”と“記憶力”でさっきとは違う道を選んだのに……!?」

(地形……記憶……なんの……こと……?)

 

 既に葵さんの言葉すら聞き取れるか怪しいレベルで自分の消耗が進んでいることに驚愕しつつも、地面に座りながら周りを見渡す。

 

 そこにはこちらを睨みつける動物――怨霊の類だろう――が近寄ってきている光景が微かに見えた。

 

「――クッ! なら仕方ない……源吾さん! そのまま目を閉じててください!」

(何を……聞き取れない……)

 

 何かを言っていることは分かるのだが、もはやそれすら判別できないレベルまで来た俺は聞き取れた「目」「閉じ」という単語から、目を閉じて的なことを言っているんだなと思い、目を閉じる。

 

 視界の外から聞こえてくる怨霊の足音を感じ取りながら、葵さんを信じることにした俺だったが、一体何をするのか見当がつかない。――その瞬間。

 

 

「――破ァ!!」

 

(何かが……通り過ぎた……?)

 

 葵さんの掛け声らしき物が聞こえたと共に、何かが自分から怨霊に向かって突き抜ける感覚がした。

 

「はぁ……はあ……どうよ……私の“霊能力”……! 胡散臭いと思って今まで敬遠してきたけど、アンタらみたいな低級霊には効くんじゃないかしら!?」

(霊……能力……葵さん……霊能者、だったんだ……)

 

 葵さんが霊能者だったことに驚愕した。確かに周りから動物の足音は消えていたし、成功と思える。

 

 

 ――だが、俺はある気配を感じていた。

 

 

「……? 変ね……低級霊を祓ったのだから周りの景色も変わる筈なのに……?」

「葵……さん……」

「源吾さん! もう大丈夫ですよ、ほら、さっさ……早くここから抜け出しましょう!」

「いえ、そうでは、ないんです……」

 

 俺は息絶え絶えになりながらも葵さんにある事実を告げる。

 

 

「――前方から、先とは比べ物にならないモノが、来ます」

 

 今いる一本道のその先、保健所がある方角からこれまでの怨霊とは比べ物にならない化け物が来ていることを告げた。

 

 

「オォオオオオオオオオオオオオオオオ……!!」

 

 

□■□■

 

 

「は……」

 

 葵は目を見開いて、こちらに向かってくる黒くブヨブヨとした大きな肉塊を見つめていた。

 先程己が行使した霊能力で意気揚々と低級霊を祓ったと思っていた矢先、唐突に通路の先に表れたそれに、頭の中が真っ白になっていた。

 

 動きはゆっくりだが、着実に、こちらに向かって蠢きながら近づいてくる黒い肉塊。

 近づくにつれてうじゅり、うじゅりと肉がはねる音と鼻が曲がりそうになるほどの腐敗臭、そして何よりもその肉塊を構成していた何かに、葵の心はへし折られた。

 

「あ……あぁ……っ……」

 

 ――それはバラバラにされた動物の死体だった。

 

 そしてさらに気づく、その中で蠢く人間の手のような何かが、子供から大人まで、彼らの八つ当たりにも等しい呪いに巻き込まれ、行方不明となった犠牲者たちが取り込まれていたことに。

 あまりにも悍ましすぎるその有様に葵は腰が抜け落ちてしまい、徐々に息が乱れていく。ふと後方から感じる殺気じみた気配にゆっくり振り向くと

 

「嘘……さっき、わたしが、はらったはず……の……」

 

 そこには先程葵が祓った筈の怨霊が、先程よりも多くの数になって後方を塞いでいた。

 

 道路は異形と化した猫や犬だったものが。空には無数の鴉の群れが。そして――前方には肉塊が。

 

 

「も、もう嫌、もう嫌ァアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

 

 

 金切り声を上げて叫ぶ葵。

 しかしそうしている間にも徐々に怨霊の群れは近づいていく。そうして肉塊も、怨霊も間近に迫ろうとした時。必死に源吾が背を掛けている壁の方まで体を動かすと、必死に

 

「た、助けて! 助けなさいよぉぉおお! 助けて……助けて……助けてぇえええええ!!」

 

 既に息も浅く、まるで眠っているかのようだった源吾の胸元を掴みながら取り繕っていたメッキも剝がしながら必死に頼みの綱に声を掛ける葵。――するとその瞼がゆっくりと開かれる。

 

「あ……あぁ……葵さん」

「助けて……私、まだ死にたくないの……まだやりたいことがあるのに……」

 

 涙目になりながら必死に懇願する葵。それを見た源吾は鉛のように重い己の身体をゆっくりと動かして、立ち上がる。

 その姿からは生気を感じられず、まるで亡霊のような佇まいであった。そして迫りくる肉塊と怨霊に相対するように正面切った源吾は

 

「葵さん。少し耳を塞いでいてくれませんか?」

「……え?」

「効くかどうかは分かりませんが、今から、私が言う言葉は、決して聞いては、いけません……いいですね?」

「は、はひぃ!」

 

 手元にあった布を必死にあてがい、外の音を遮断した葵は一体何をするのかという目線を源吾に向ける。

 既に目と鼻の先に迫っている怨霊たち。それを見据えた様子の源吾はゆらゆらと身体を揺らせながら、まるで別人のようにゆっくりと、虚ろな表情のまま徐に人差し指を怨霊たちに向け――ただ一言、こう告げた。

 

 

「『■■■■(光あれ)』」

 

 

 

 

 

 

「――はっ!? ここは!?」

 

 葵が目を覚ますと、先程までいた場所の近くのベンチに座っていた。

 

「あ……あれ? 私、ここで何をしていたんだっけ……?」

 

 先程まで、背筋も凍るような何かを体験したような感じがして “記憶能力”で己の記憶を掘り起こしても、一向に自分が何をしていたのかを思い出せずにいた。

 

「う、うーん……? 何か、気持ち悪いわね……って、もうこんな時間!? 二時間もここで寝ていたの私!?」

 

 慌ただしくしながらも急いで持ち物を確認してベンチから去ろうとする葵。

 

 

 その背中を源吾が見つめていた。

 

「あ゛ー……体調不良は治ったけど……喉が痛い……う゛え゛っ゛、ゴホッゴホッ」

 

 手で喉を抑えながら、葵の無事を見届けた源吾も同様にその場を後にする。

 

「うーん……まさか『忘れて』でほんとに忘れてくれるなんて…………あ゛ー駄目だ。喉が痛゛い゛。早く帰ろっと……ゴホッ。……血が出た」

 

 体を襲っていた不調もすっかり治まったが、今度は喉の痛みに悶えつつ、その場を去った源吾。

 

 

 そうして急ぎ足ぎみの源吾が、とある母子とすれ違った時のことだった。唐突に子供が、母親に向けてあることを話し始めた

 

「ねーお母さん」

「なぁに?」

「今のお兄さん、何で髪の毛が白くて目が赤かったのー?」

「えっと……そ、そうね……」

 

 母親が気まずそうにして、自分たちの遥か後ろにいる源吾に視線を向ける。子供の言う通り、たしかに髪が白かった。それ以外は普通な為「そういう髪型の人もいるのよ、目は……多分気のせいじゃないかしら」と返した。だが続けざまに子供が、

 

「あとね、お母さん」

 

 

「――あのお兄さんの影にね、大きな尻尾のような物があったんだー!」




主人公(進行率80%)
帰ってから鏡見て、髪を染め忘れていたか!? と慌てる。あとカラコン(黒)を購入した

狐子
この日ずっと笑顔が絶えなかった。なぜだろうね(すっとぼけ)


なんか……忘れているような……。なんかあのカラス見ると、身体が震えるような……

源野
あっ(日付を確認)ふーん(察し)……

怨霊
恨みつらみが重なって無差別に人間を襲うようになっていた。この後ちゃんと成仏した。

Vtuber要素と異種族要素の比率はどちらが読みやすいですかね?

  • 1:9
  • 2:8
  • 5:5
  • 8:2
  • 9:1

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