言語系チート授かったのでvtuber始めました 作:gnovel
配信を終えた俺は本日6度目の宗教勧誘を回避し、コンビニに来ていた。目当てはコンビニ限定スイーツのケーキだ。
胸を躍らせながらコンビニに向かっていると、道端で一人で泣いている女の子を見つけた。親が近くにいない辺り、恐らく親とはぐれたのだろう。
俺はわんわんと泣いている子供と同じ目線に立つようにして腰を落とし、声を掛けることにした。
「大丈夫かい?」
しかし、どうやら聞こえて無いようだった。
試しに言語を幾ら変えても聞こえていないのか、相変わらず泣き続けるばかり。ちょっと困ったな。
泣き声が大きすぎて聞こえていないのか、それとも――他の要因があるのか。
少し困り果てていると、女の子がこちらに気づいたのか何やら手を動かしながら俺に語り掛けてきている。とても必死な様子でひたすらに何かを伝えたがっているようだ。
「……もしかして」
と、思った瞬間。
「……ッ! 久しぶりの感覚……!」
チートが発動した感覚が俺を襲った。そしてこの子が何を伝えたかったのかが口では無く、手で理解することが出来た。
この少女が求めていたのは、日本語でも、ましてや他の国の言語でも、全言語でもない。
――手話だ。
俺は自分の意思を伝えるべく手を動かしながら、少女との対話を試みる。
『大丈夫かい?』
『えっ、お兄さん……手話がわかるの?』
どうやら本当に手話を求めていたようだ。
そしてこの子の名前は愛梨と言うらしい。
『うん、さっきはごめんね。君が聞こえないのにも関わらず、話しかけちゃって』
『ううん、大丈夫。ありがとうお兄さん……』
『君はお母さんやお父さんとはぐれたのかな?』
はぐれてしまったであろう、親について質問を投げかけてみると
『ううん……違うの』
『ん? それはどういう……』
『私、逃げてきたの』
『……逃げ、た……?』
嫌な予感がする。
よくよく愛梨の身なりを見てみると、色々とおかしかった。
まずこの寒い季節なのにも関わらず裸足であったことに加えて、やたら服がボロボロだった。傍目から見ても気づかなかった。
さらに髪の毛に至っては、手入れがされていない状態であり、頬も痩せこけてまともに食事をしていないことがわかってしまう。
明らかに只事ではない。
『……君は、何で逃げ出したの?』
『お母さんが、おかしくなって――』
しかし突然、愛梨が表情を強張らせ、俺の背後に視線を向ける。一体何が……
「愛梨」
とても威圧的な声だ。凡そ親が子供に向けるような、そんな声ではない。
俺は愛梨の母親らしき人物の方に振り向き――絶句した。
「あっ……あぁ……」
「こんな所まで逃げて……オオミヤ様がお待ちよ」
明らかに正気ではない眼に、愛梨以上にボサボサの長髪。見た目も相まってそんじょそこいらのホラーゲームよりもヤバいと言える。
「あら! 貴方もオオミヤ様のご加護をお受けになるのかしら!」
「……いえ、それよりもなぜこの子を」
「貴方もオオミヤ様のご加護を受ければ幸運が訪れて、毎日が幸せになるのよ! 私もかつては半信半疑だったけどこの前突如として聖書が輝いたの! つまりオオミヤ様は存在して、しかも私達を見てくれているの! 生まれつき耳が聞こえなかったこの子も今すぐオオミヤ様の儀式を受ければ今すぐにでも――」
「聖書が、輝い……た……?」
「えぇ! そうよ! さぁあなたも――」
聞くに堪えない。
どうやら愛梨の母親は狂ってしまったようだ。それで愛梨が逃げ出したのも頷けるが、同時に俺はある一つの感情に支配された。
――死にたい
元はと言えば俺が原因だ。俺が聖書を光らせる様な真似をしたからこんなことになったのだ。……自分のしたことには、自分が何とかしなくてはな。
「さぁさぁ! 今すぐにでもオオミヤ様の下へ行きましょう! そうすれば貴方m」
「
「誰ですかな? おぉ! 佐々木さんじゃあありませんか! 隣の人は新たな信者d」
「
俺は愛梨の母親を一時的に操り、そのカルト宗教の本拠地に案内してもらい、そこにいる信者……もとい詐欺集団を撲滅させることにした。
これは俺の罪滅ぼしだ。
ただの幼い少女に悲しい思いをさせたことに対する贖罪と調子に乗った自分に対する戒めを込めて、責任を取る。
愛梨の母親は今は虚ろな表情をしているが、事が済めばこの宗教に関わる前の状態に戻すつもりだ。
案内された家から出てきた男に対して全言語を使用。喉の痛みが出始めた。
「どうしたのですか!?」
「
突然倒れた男に駆け寄ってきた数名に対して全言語を使用。血が出始めた。
信者たちは洗脳されていたが、再び目覚めた時にはこのことはすっかり忘れるだろう。
そしてこの光景を見て仰天した様子の信者たちにも同様に、全言語を。
「グッ……」
ずきんとした鈍い痛みと共に、視界が赤く染まり始めた。頬を伝う温かな感触が俺の眼から出ていることに気づく。更に鼻血まで出始めた。
信者たちは、まだいる。
重い体を引きずるようにして全言語を行使しようとして――吐血した。
「ゴフッ……」
遂に体が痺れ始めた。息も荒くなり、全身が悲鳴を上げるような痛みが襲ってきた。
信仰を捨て去る、という余りにも大雑把で、大きい意味を持った言葉。これまでの全言語では比べ物にならないレベルの負荷が俺を襲う。
どうも以前から近所にあった宗教で、俺が引っ越してくる以前から、存在していただけに割と人数はいたらしい。そして今回の騒ぎでさらにその規模と内容が過激化していた。
愛梨の母親から催眠で聞き出した通りだと、信者たちの大元は法外な値段で聖書等を信者たちに売りつけるようになったり、自らを『神に選ばれた』として信者との肉体関係を迫るようになったりとただの糞野郎に成り下がっていた。そして俺もそれに劣らないレベルだと思い知らされる。何せ、そいつの強欲を招いたのは他でもない、俺だからだ。
廊下に倒れ伏していく信者たちは、このことを忘れ、普段の日常を取り戻すだろう。
しかし、愛梨と俺は違う。
愛梨は母親から受けた虐待まがいの所業を忘れることは出来ず、俺はこの事態を引き起こしたという事実を一生抱えることになる。そして何よりも恐ろしいのは、今回の事例がたまたま俺に見つかっただけで、本当はもっと多くの人が今も犠牲になっていることだ。
レプティリアン達の工作で大きな事件には発展してないが、こうした小規模の範囲で行われているという事実が今、まさに目の前で起こっている。
俺はこれまでにないほどに動揺していた。
ドグラマグラを読んだ時も、ヴォイニッチ手稿を読んだ時も、怪異に遭遇した時よりも、何よりも恐ろしいと感じた。
――全言語はただ単語を発するだけならあまり反動はない。命令をする時に反動が来るだけだ。
いつも狐子に対してやっている分にはまだ大丈夫。
しかし今回のように大勢の人間にほぼ同時にかつ、複雑な命令を与えるとなると、人間の身体では限界が来るようだ。
今も目からとめどなく出血し、鼻血は勿論口からも大量の血が溢れ、吐血する。喉の奥から尋常ではない痛みと血が沸き上がり、布代わりの袖を赤く染める。
手足の先も震え始め、立つのもままならない状況だ。後で狐子にどやされるなと思った。
震える身体に鞭を打ちながら俺は信者たちの大元……救世主と崇められている人物がいる部屋の扉を開ける。
「だ、だれだ貴様は!」
男の部屋はそれはもう、悪趣味。この一言に尽きる。
かすむ視界の中でも分かるほどに部屋の隅に積まれた大量の札束と、自分の血の匂いに混じる汗と、合意なしの営みを繰り返した悪臭が伝わってきた。
俺はコイツの欲望を助長させてしまった。そしてこのような事態を招いたという事実を、心の奥底にナイフのように突きつけられた。
「ガフッ……いいか、
「そうだ! ……待て! 私は何を言っている!?」
「……お前は、聖書が光った時、何て思った?」
「信者共から金を巻き上げられるとな! …………どういうことだ!? なぜ、私の口は……! 私は神に選ばれた存在なんだぞ!?」
男の口からは次々と、自身の欲望が述べられて言った。
聖書が光った時、信者の一人が駆け寄ったことで都合よく金を巻き上げられるように信者たちに、自分が聖書を光らせたとして崇めさせ、自身の欲望を満たしていったという。
「な……るほど、正直安堵した。なんの躊躇いも無く、全言語を使用できそうだ……」
「……何のことだッ!! 貴様ッ! ここから生きて帰れるとも!?」
そう言って男が机から取り出したのは――拳銃だ。
「信者たちに集めさせたか。それとも、元から持っていたか……?」
「上の連中から渡されたものだ!」
どうやらコイツの背後にも色々といるらしい。後でそいつらにも
「死ね!」
三発引き金を引いたようだ。
そしてその三発は、それぞれ俺の胴体、左腕、そして脳天に直撃した。一瞬、意識が途切れるような感覚がした。
体がふらりと、後ろに倒れる――その寸前に、足を前に踏み出して踏みとどまる。
「な……な、なぜ、死なない……!?」
どうやら本当に人外になったようだ。
今も出血はしているし、痛くもある。だが、死ねないようだ。
とは言え俺もまだやることがあるからそれはある意味好都合だ。俺は残った右手をゆっくりと男に向けながら
「
こうして、一つの組織が壊滅した。
主人公
この度人外スイッチを振り切ることを決意。
なまじ責任感が無駄にあったが故に責任を取ろうと必死だけど、自分が嫌悪していた『会話が通じない存在』になりつつあるのを認識できていない。
誰かが止めないと、本当に死ぬ。
狐子
「……」
女神
女の子は曇らせちゃだめって聞いたことがあるけど、男の子は幾らでも曇らせてもいいって言われているからヨシ!
Vtuber要素と異種族要素の比率はどちらが読みやすいですかね?
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