言語系チート授かったのでvtuber始めました   作:gnovel

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盲目なのは誰か

 急に周囲の景色がぶれたかと思うと、目の前には俺のよく知る狐子がいた。

 

 そしてここは、実家近くにあるあの神社のようだ。どうやら知らず知らずのうちに狐子に誘導されていたらしい。

 

「Aiとやらに頼んで、お主が次に向かう所の……携帯を弄ってもらい、ここに誘導して貰ったのじゃ」

「……」

「それよりも……なんじゃ、その姿は。まるで祟り神のように禍々しいのう。見ず知らずの者達の無念も、呪いも、何もかも全て引き受けおってからに……この森に住む動物たちも怯えておる」

「……俺は」

「まぁ、そんなことより……ほうら、はよう帰ろうぞ」

 

 そう言って狐子が、俺にゆっくりと手を向けて来る。……だけど、俺はそれを受け取れない。

 

「まだ使命という名の呪いに縛られておるのう。あぁ、すっかりやつれてしまって……喉も、何度出血しては吐血し、その度に再生してきたのじゃ? 其方の身体は無事でも、負った傷だけ心が傷ついていることに気づけていないぞ」

「でも、俺は……やらなきゃ……」

「むぅ、変な所で頑固だのう。それとも、人間を辞めたことで、ますます自分の価値を自分で下げておるのか」

「何を……?」

「気が付かないのか? 其方がしてきたことは、其方が最も忌み嫌う『一方的な対話』でしかなかったことに」

 

 

 その瞬間、俺の心にひびが入る音が聞こえた。

 

 

「其方は優しいのう。ただの一人、悲運な目に合った幼子にそこまで入れ込み、そこから全てを救おうとする心がけ。――しかしそれは、傲慢にすぎん」

 

 さらにひびが入る。

 

「神ですら全ての者を救うことは出来ん。ましてや只人から現人神になったばかりの人間が、出来るはずが無かろう。まぁ……なまじ責任感が強かっただけに今回のようになったんじゃろうが……そのやり方は、良くない」

「……でも、今も、苦しんでいる人がいる。そんな中で、それを解決できる力を持った俺が、何とかしないと……」

「戯け。それで自分を追い込み、危うく全てを呪う祟り神になりかけていたとしてもか? そしてその結末に全ての者が納得するとでも? ――儂は天地がひっくり返ってもそんなことは許さんぞ」

「……」

「まっ、元も子もないことを言えば、その能力を授けた存在が元凶だからのう。其方はただ奴の手の中で踊らされていただけにすぎんよ」

 

 じゃあ、俺はと言葉を紡ごうとした所で、狐子がゆっくりとこちらに無言で近づいてくる。

 

「き、狐子……?」

「ところで源吾。そなたの全言語が唯一対応していない、いや出来ないものがなにか知っておるかの?」

「や、やめ……俺は……■■(止ま)……」

 

 れ、れ。最後の一文字を言おうとしても、言葉が出てこない。喉は問題ないのに、微笑みを浮かべながら近づいてくる狐子に怖気づいた俺は後ずさりをする。

 

「ほうら、こっちに近寄れ」

「ま、まだ……俺は……俺は」

 

 恐怖に屈した俺は、その場にうずくまって顔を逸らしていたが、狐子は……無言で俺を抱きしめた。

 

「あっ……あぁ……」

「お疲れ様。もう、十分がんばったのう。だから――安心せい」

 

 その言葉と共に、俺は強張っていた身体から緊張がほぐれて、脱力していくような感覚を感じていた。身体から何かが抜け出すような感覚と共に、肩の荷が下りてどこか安心するようだった。

 

 

「ほうら、これを見よ」

 

 そう言って狐子が俺を抱擁したままの状態で見せてきたのは、スマホの画面だった。

 そこには、俺が潰そうと思っていた宗教団体が全国各地で摘発され、また悪質な手口に対しての注意喚起やごくわずかの体験談が寄せられていた。

 

「お主が思っているほど、人間は弱くない。少なくとも、其方一人が背負うべき重荷ではないぞよ」

「そう、か……ははっ、なんで俺は……忘れていたんだ。自分も人間だったことも含めて、あぁ……」

 

 

「安心した」

 

 

 乾いた笑いをこぼしながら、俺はどっと全身の疲れを感じて、ただ狐子に身を委ねていた。

 

「さて、見事に白に戻った所で家に帰るとしようかの」

「……うん、ごめん……もう、眠い……」

「飲まず食わずで動くからじゃ。ほうれ、また昔のようにおぶってやるとするかのう」

 

 懐かしさと人肌のあったかい熱を受け、俺の瞼が閉じ、意識も落ちようとしていた。

 

 黒に染まった意識の中で、すっかり雨が晴れると共に眩しい日光が俺を照らした。

 

 ――既に、夜明けのようだ。

 

 

 

 

□■□■

 

 

 

 

「ふふっ、よく眠っておるわ」

 

 熟睡といった様子で眠りについている源吾を起こさないように優しく尾で包みながら、狐子はそう漏らす。

 先程までおぞましい邪気を漲らせていたが、狐子が全言語が対応することが出来ない、たった一つの『愛』によってすっかり元に戻っていた。

 

「あまりに昔過ぎて覚えていないかもしれんが……この方法を教えたのは……其方だったからのう」

 

 狐子の脳裏に浮かぶのは、源吾がまだ五歳の頃。

 山から気まぐれに降りた時に、うっかり転んでしまい傷を負った狐子の前に源吾が現れ、

 

『だいじょうぶ? いたいの?』

『い……いや、別に……』

『うそつき! 足から血がでてるのに、痛くないなんて、うそついちゃだめ! ぼくがお医者さんのところに送ってあげるから!』

 

 そう言って幼き頃の源吾は狐子を背中に抱えながら、田舎の病院へと送り届けたのだ。源吾は狐子と遊ぶようになってからが初めての邂逅だったというが――これが本当の始まりだったのだ。

 

 

「さて、と。――もう用済みじゃの」

 

 

 

 

「――ッ! 危ッッッッぶね!!!!」

 

 一方、女神は狐子からの明確な殺気を感じ取りすぐさま、源吾との繋がりを切った。

 

「はぁっ……危なかったな……流石にそろそろ引き際かな……だけどまだ――」

「まだ、なんじゃ?」

「ッ!? な、なんでここに!?」

 

 女神しかいない筈の空間に狐子の姿がそこにはあった。

 

「ははっ、そう警戒するでない――燃やしたくなるじゃろ」

「ク……!? だ、だが私1体を倒した所で……!」

「ん? あぁ、何を勘違いしておる? 儂はお礼を言いに来ただけじゃ」

「……へ?」

 

 狐子はあっけからんとした様子で女神に話す。しかし女神は目の前の狐子が考えていることが分からずに、この場を打開する策を練ろうとしていた。

 

「まず、儂と源吾をこの世界に引き合わせてくれて感謝する。この世界でなら、儂と源吾が結ばれることが出来たからのう」

「……なるほど? それで……?」

 

「お礼に――その地位、儂が剥奪してやろうと思っての」

 

 女神の言葉を遮った『笑顔の』狐子が、女神の腹に手を潜り込ませる。

 一瞬の間に自分の腹がまさぐられるような感覚と、狐子のあまりに唐突な行動に混乱している女神だったが、直ぐにその言葉の意図に気づく。

 

「なっ、やめ」

「見っけ」

「がハァアアアアアアアアア!?」

 

 豪快な血しぶきと共に女神の腹から取り出されたのは、神々しい輝きを放つ光の球体だった。

 

 その光景を目の当たりにした女神の顔がみるみるうちに青ざめ、咄嗟に手を伸ばす。

 

「返……せ……ッ!!」

「――不敬な」

 

 飛び掛かる女神に対して、今度は自身の尾の一つを槍のように尖らせ、そのまま勢いよく女神の心臓部位に目掛けて打ち込んだ。

 

「が……ッ……ハァ……ッ!?」

「やはりのう。この球の力があるおかげで、お主は無限に残機を増やせて呪いの回避に成功したんじゃの。どれ……味の方は」

「なっ、待て!? それは!?」

「あーん」

 

 そう言って一口で球を飲み込んだ狐子。するとたちまちに女神の身体から霧のような何かが抜け出したかと思えば、やがて姿形を保てず、醜い触手の化け物が現れた。

 

「ク……クソ……!」

「うわっ、キモ」

「貴様、自分が何をしたと――」

「そりゃあ、儂がお主の地位に成り代わったということじゃろ」

「そうだ……! そんなことをしたら、この世界に他の転生者は……」

 

 

「アヤツ以外に要らん。この世界を締め切って永遠に儂とアヤツだけの世界を生き続ける」

 

「それと、お主の介入のお蔭で、全てをお主に擦り付けることが出来た。――ありがとう。おかげでアヤツを完全に儂のモノに出来た」

 

 

 どこか『狂信的』な目を浮かべる狐子の発言に絶句する女神だったが、ふと周囲の様子がおかしいことに気づく。

 

「そしてこの空間は既に儂の領域。――だからこそ、容易に壊せる」

 

 すると空間が軋みだし、瞬く間に崩れ始めた。『元』女神は、というと驚愕に次ぐ驚愕に混乱していたが、ふと何者かの気配を感じ取り、空間のある1点を見つめていた。

 

「ヤバイ……! 猟犬共の仲間が……!」

「ほーん、お主、あれが苦手なのか?」

「当たり前だ……! あの猟犬はまだしも……あの猟犬共の『長』が、一番ヤバイんだよ……ッ!」

「その長とは、あれのことじゃないかの?」

 

 狐子の視線の先、空間が崩壊し始めたことで生まれた――()()から何か、途轍もなく大きなナニカが顕現しようとしていた。

 

「ば、馬鹿な……! ■■■■だと!? なぜここが……いや、とにかく逃げなくては――」

「逃げられるとでも?」

「な、なんで、ここから逃げられない!?」

「言ったじゃろう。ここは既に儂の領域――そして今から貴様をこの空間に紐づけ、そのままこの世界の外へと飛ばす」

「待て!? そんなことをしたら私は……」

 

「まっ、死ねないんなら永遠に食われ続けるじゃろうな。猟犬とその■■■■とやらに。じゃあのう、()()()()

 

 

「うっ、ウワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 

 狐子が空間から姿を消した瞬間、元女神の周囲にこの世の物とは思えない、それこそ『猟犬』と『その長』としか表現できない存在が降り立った。彼らは女神に屠られた自分の同胞の恨みを晴らそうと言わんばかりに次々と群がり、元女神を貪り始めた。

 

 

 元女神は死ねないまま、永遠に猟犬とその王によって何度も、何度も、何度も腸を貪られては殺され、そして復活しては、また殺されを永遠に繰り返したという。

 

 かくして、この世界は女神の介入を失った。




主人公
精神的に逝かれかけてたので狐子が元凶ということに気づかないし、気付くことはない。

たとえ気づいたとしても、一切の拒絶はしないだろう

この後星奈がドン引きするレベルで食べて、三日間寝て、完全回復する。
そして時々、この時の自分を思い出して悶えるように。所謂黒歴史的な何かになる。

狐子
大体の元凶だが、この度その全責任を元女神に擦り付けることに成功。勝つためなら手段を選ばない。
主人公の見てないところで死ぬ程いい笑顔をしている



次回、エンディング、かも?

Vtuber要素と異種族要素の比率はどちらが読みやすいですかね?

  • 1:9
  • 2:8
  • 5:5
  • 8:2
  • 9:1
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