言語系チート授かったのでvtuber始めました 作:gnovel
今回は久し振りの掲示板形式となっております。
どうやって多言語チートを活かせるかを考えて何とか落とし込んでおります。
それではどうぞ!
あまりに唐突に告げられた衝撃の事実から2日が経ち、カラオケ企画前の打ち合わせが行われることになった。
今回の打ち合わせでスイスイと例の……人魚? らしき子が来るとのことだったが、既に嫌な予感がする。できる事なら穏便に終わってほしいという儚い思いを抱えながら俺は事務所の扉を開けた。
受付の職員に軽く挨拶をした後、時間を確認する。打ち合わせまであと30分はある。少し速く来すぎたようだ。
「『~♪』」
「……ん? なんだ?」
事務所の一室からどこか幻想的で穏やかな歌声が微かに響いてきた。しかし日本語ではなく、これまで聞いたことが無い言語だった。
俺のチートが発動してその内容を理解した直後、ふと俺の視界にとある光景が入ってきた。
「……皆寝てる……?」
ふと視線をオフィスに向けると机に突っ伏して眠りについている職員がいた。それだけならまだ良かったが、問題は……全員が眠りについていたことだ。あちこちから寝息のような物が聞こえてきた俺は大急ぎで一番近くにいた男性職員を起こそうとするが、起きない。
「お……起きねぇ……! どうなってんだ!?」
「う……うぅん……し、締め切りが……同人誌の締め切りが…………間に合った……」
「間に合ったのかよ」
どうにも起きる気配は無く、ただ寝言を漏らすばかりだった。軽く寝言につっこみを入れながらもよくよく周囲を見渡すと、床に寝そべっている人達も多々見られた。
「う……うぅん……素人質問は……素人質問は……止めて……」
「レポートが……課題が……終わらないよ……」
「ガチャは……悪い……文明……」
明らかにこの歌が原因であると考えた俺はこの歌の発生源に向かって行った。
「『~♪』」
「歌の内容は……子守歌の類か……? いや、種族が違うから何とも言えんな……」
徐々に鮮明に聞こえてくる歌は、とても穏やかで、まるで子守歌のようだった。恐らくこの歌を歌っている存在は、歌に夢中になっているんだろう。かなり機嫌がよさそうにしているのが伝わってくる。
そして階段に足を向けようとしたとき
「ふわぁ…………え? 嘘だろ? 俺ここに来る前にエナドリ飲んで昼寝した筈だぞ!? もう眠気が……やばい!」
口から出てきたあくびと僅かな眠気に脳が警鐘を鳴らす。俺は念の為に持ってきたヘッドホンをカバンから取り出し、耳に着けた。焼け石に水だろうが、それでも効果を発揮するはずだ。
それから階段を上がり、この歌の主がいるであろう『第二会議室』に向かった。
階段を上がって角を曲がると、やはりそこには半開きになった会議室の扉と、その付近で項垂れかかった人が…………スイスイがいた。
「大丈夫……ではなさそうか」
「えへへ……もう消化できないよぉ……」
「何て言っているかはわからんが……まぁ、何かいい夢を見ているんだろう……」
スイスイが何か寝言を言っているが、一先ず俺は中の様子を見た。
中にはorzの体勢で眠りに落ちている社長と……緑髪の女性が歌を歌っていた。どうやら相当夢中になっているらしく、目を閉じながら歌っていた。
「しゃ、社長ぉおおおおおお!?」
「……仕事が……終わらん……」
俺は元凶である女性に声を掛ける。
「あのー! もしもーし!」
「『~♪』」
「やっべ想像以上に夢中になってやがる」
割と大きな声で呼びかけても反応しない辺りもうわざとなんじゃないかなと思う位には没頭していた。なので、俺はヘッドホンを外し、更に大声で話しかけてみることにした。
「『ストップ! ストップ! ちょっと待って!』」
「『~♪ あら……? やだ、私ったら! 故郷の歌を唄ったら地上の生き物が眠っちゃうのに……』」
「『なにそれ怖い』」
どうやらこれが功を奏したようで、彼女は歌うのを止めておろおろと焦り始めた。どうやら悪意はないらしいが……一先ず彼女を落ち着かせることにした。
「『……君は……?』」
「『あっ、初めまして! 新人Vtuberの海音ウタと申します! あなたがあの群体さんの言っていた……』」
「『群体さん…………イシノヴァか』」
「『はい! そうです! 私の言葉が分かる貴方にお会いできて光栄です!』」
彼女は心底嬉しそうに握手をしてくる。見た目も相まってアイドルのようだなと思いつつ、この惨状をどうしようかと呟くとウタが、
「『あっ、すみません! そうしたら……耳栓か何かをしてくれませんか? 今から目覚めの歌と忘却の歌をするので!』」
「『目覚めと……何て? 忘却?』」
さらっと告げられた内容に驚愕しつつ俺は耳栓の上からヘッドホンを付けて完全に外の音が聞こえないようにした。そしてウタにオッケーサインを出すとウタは再び歌い始めた。
すると近くにいたスイスイとorzの体勢で寝落ちしている社長がビクッとしたかと思うと、やがて起き始めた。
「あ……あれ? 私は一体……?」
「う……ううん……あれ僕何をしてたんだろ……」
(記憶消されてるぅうううう!)
あの後紆余曲折ありながら何とか打ち合わせは終わった。幸いにも俺が着く直前に眠りに落ちたようで、業務的な支障は特になかったことが幸運だ。
そして社長たちはというと、眠りについていた時の記憶が消されており、特にその話題に触れることなく打ち合わせは進んだ。だがその際、社長が「何か……時間が早く進んでるような……?」と記憶が蘇りかけたため、何とか気のせいだとごり押しして事なきを得た。打ち合わせだけでこんなに精神がボロボロになったのは初めての事だ。
打ち合わせが終わった後、俺はウタに言われてとある場所に来ていた。
「ここです!」
「ここって……」
そこは海の近くにあるカフェで、地元の人には有名なスポットだ。海の景色を堪能しながらスイーツも堪能できることを耳にしていたが……。
そして店の扉を開けた俺を待っていたのは、妖艶な雰囲気を纏う女性だった。
「ほう、ウタかい。久しいね」
「お久しぶりです! ウネさん! 最後に会ったのは……100年前でしょうか?」
「……え?」
100年前……? それに人魚であるウタと面識がある……? 俺は次々と流れて来る情報の暴力に頭が真っ白になった。しかし二人はそんな俺に構わず話し続けている。
「そうさね……最後に会ったのは……100年前かい」
「ビックリしましたよ! まさかいきなり地上に興味が湧いたって言うなり、ここでカフェを開いているんですから」
「ワダツミ様は怒ってたかい?」
「いいえ、そんなことはありませんでしたよ!」
(
さらっと海の神様の名前が出たことで、俺は一瞬硬直した。しかしよくよく考えたら知り合いの地球外生命体と天狐曰く『川の向こう側の存在』である■■■■ちゃんのことを考えると、いつものことかと思ってしまった。これは慣れて良いのだろうか。ともかく話が出来そうで良かった。
「所で……そちらの人が……」
「はい! 私達の言葉が分かる源吾さんです!」
「あっ……どうも、源吾です……」
もうどうにでもなーれという心構えで挨拶をした。するとウネさんは、僅かに顔を近づけて匂いを嗅ぎ始めた。
「ほう、どこかワダツミ様のような神格を感じたと思ったら……あの天狐様の伴侶様じゃないか」
「え、分かるんですか……というか何でそれを……」
そういうとウネさんは手元のスマホを操作して、画面を見せてきた。……人外たちがガッツリスマホを持っているとかはもうこの際気にしないことにした。イシノヴァだって持っているんだ。今更過ぎる気もする。
そして見せられた画面には、
【速報】あの独身ショタコン天狐、ついに結婚する
「いや言い方ァ!」
思わずそう叫んでしまった。
そして画面をスライドしていくと、掲示板のように次々とこの結婚報告についての意見が述べられていた。
「というか、俺、身内にしか伝えてない筈なんですけど!?」
「……天狐様が結婚したあの式場にね、他の神様が……」
「あっ、はい。わかりました。はい」
(あの式場の…………だ、誰だ……? 駄目だ……候補が多すぎる! というか人外が多すぎて誰が誰だかわからねぇ!)
俺が式場にいた人間? の顔を思い出していくが、確かに近寄りがたい雰囲気を醸し出している人物だったり、天井付近からやたらと視線を感じることもあったが……それでも候補が多すぎるので、俺は考えることを一旦止めた。考えるだけ俺の胃と何かが削れていく気がしたからだ。
そして当初の目的を思い出した俺はウタにそのことを聞く。
「あっ、そうでした! あ、あの! 源吾さんにお願いがありまして!」
そう言ってウタはカバンから紙束を取り出した。紙束にはウタ達の言語で歌詞が書かれていた。
「――あの、これを、日本語に翻訳していただけませんか!?」
「別に良いけど……ウネさんも出来るんじゃあ……?」
俺は思った疑問をウタにぶつける。するとウネさんが
「……今は違うけど、あたしが地上に出た時は、なかなか制約が厳しくてね……結果としてあたしは、故郷の言語を扱えなくなっちまったんだよ」
「昔はそうでしたもんね……あっ、源吾さん、今は違いますよ!」
ウネさんがはぁ、とため息を吐くと、
「全く……いやになっちゃうね。若さゆえの過ちというか、惚れた男の為に……制約の事なんかすっぽかして意気揚々と地上に出たら……このザマだよ。全く、もう少し……あと50年地上に行くのをためらっていたら、こんな制約に悩まされることなんかなかったのに……いや、あの男と会う為なら別に……か……ははっ、あたしは未練がましいねぇ……」
そういってウネさんは自嘲するような笑いと共にどこか悲し気な視線を窓の外、海の方に向けた。
「という訳で……あたしには無理さね」
「……成程、わかりました……」
こうして俺はウタから紙束を受け取り、家で翻訳作業をすることにした。
「今日の夕飯はサンマの塩焼きじゃ!」
「……うっす」
「其方!?」
たまたま今日の夕飯のメニューが魚料理のサンマであった為、人魚のこともあり僅かにウタ達を連想してしまった俺は少しだけサンマを食べるのが億劫になった。ご飯は三杯おかわりした。
◆◆
【速報】あの独身ショタコン天狐、ついに結婚する
1:名無しの八百万 ID:dWXny9iei
遂にやりやがりました
2:名無しの八百万 ID:R9W898+PT
おいおいあのショタコン、遂に結婚しやがったのか……
3:名無しの八百万 ID:lRs5rZoDC
我、山から漂う異様な気配に目が覚めたら、まさかの天狐だったことに驚愕。
4:名無しの八百万 ID:4DagRHWC/
これ以上に無いほどハイテンションになってやがるなあの天狐
5:名無しの八百万 ID:kJ+epf763
というか天狐の伴侶ってどんな奴よ
6:名無しの八百万 ID:SfO8vWl3b
>>5配下に調べさせた所……こんな奴だ
【源吾のプロフィール】
7:名無しの八百万 ID:k/AXmRIih
>>6 こいつあの多言語系ぶいちゅーばーという奴か
8:名無しの八百万 ID:rwNLjCRdS
こうもあっさり人間の情報が暴露されるのは如何なものかと
9:名無しの八百万 ID:c/aur6RSF
>>8 だって我神やし……人間の法律の適応外やし……
10:名無しの八百万 ID:Ie3WPRdff
これがプライバシーの侵害……という奴かの?
11:名無しの八百万 ID:toDfI2ovx
というかこ奴調べれば調べるだけ、外の連中との関係が出てくるんだが!?
12:名無しの八百万 ID:SWh9iwrA5
>>11 この前の、機械生命体という奴らか
13:名無しの八百万 ID:PAH7m4RvK
今のところ、全盛の力を失った我らでは太刀打ちが出来るか怪しいぞ
14:名無しの八百万 ID:JOk9n4NC4
>>13 神から人の時代に移り変わり、結んだ決別の契約が仇となったか……
15:名無しの八百万 ID:k1uxDTSxK
今の所……全盛期以上の力を持っているのは……
16:名無しの八百万 ID:5EpX3nG3G
>>15 かの七福神と……天照大御神様程の神格の御方達か……
17:名無しの八百万 ID:R25sQsW2h
今やすっかり信仰は全盛よりも衰えたが……かの御方達はどうやら信仰されておるようだの
18:名無しの八百万 ID:ax3qwZM6I
だが、一部の御方達は、歪な信仰によって変貌したり、酷いものだと、性別が変わったということが……
19:名無しの八百万 ID:tDrSnzy8i
>>18 黄泉の国にいるツワモノ達も性別が変わるという出来事があったの
20:名無しの八百万 ID:RBP9Gfx/W
第六天魔王が良い例だの
21:名無しの八百万 ID:O9Gj52jMK
>>20 「知らぬ間におなごになっていた……遂には儂のへし切長谷部が人の姿に……」
22:名無しの八百万 ID:oRGhGsMd7
海の向こう側でも同様のことが起きておるらしい
【URL】
23:名無しの八百万 ID:GGhGVv2ki
>>22
騎士王「なぜ……自分が可憐な少女に……?」
とある暴君「僕が……騎士王のような美少女に!?」
万能の天才「やったぜ」
24:名無しの八百万 ID:0HB9Rr9WC
やはりどこも変化しておるの……
25:名無しの八百万 ID:2c6dY+omA
そ奴らは主にこの日ノ本が原因であると訴えておるんだが……
26:名無しの八百万 ID:yoR4eX4Zq
>>25 何も言い返せない
27:名無しの八百万 ID:Xm37uLtA1
>>25 そもそも閻魔大王が女体化させられた時から既にこの日ノ本は手遅れだった気が……
28:名無しの八百万 ID:38hzv0T/1
>>26 そうじゃった……
29:名無しの八百万 ID:DC+NJTn9v
その内一人残らず、女体、或いは変貌するのではないかと不安に思う。
30:名無しの八百万 ID:fk9LyaVDC
>>29 新たに誕生した機械を担当する神は既にその影響を受けておるしの
31:名無しの八百万 ID:on+eNvRxJ
人の子の考えることはよう分からん
32:名無しの八百万 ID:UptjOsURk
一旦話を戻すとしよう。この天狐の婿であるこ奴。明らかに何者かにいじられた痕跡が見受けられるのだが。日ノ本の危機となれば儂は動くぞ
33:名無しの八百万 ID:POe5e29C3
確かに、儂らとは異なる神格……この星の外の連中の物だと思うが……如何せん何とも言い難い。
34:名無しの八百万 ID:pethNwLjC
>>32 我は動かん。天狐の報復が恐ろしい。
35:名無しの八百万 ID:2m1YPMYxy
妾も一抜けという奴じゃ。正直、全盛の頃の妾でさえ勝てるか怪しい段階になっておるしの。
36:名無しの八百万 ID:8jELgJ42a
>>32 だが、今のところ特に何も起きてはおらん。急いては事を仕損じるともいう。我らは只見守るとしよう。
37:名無しの八百万 ID:Hgq4NisUk
>>36 ……しばし見届けるとしよう。確かに我も焦りすぎた
38:名無しの八百万 ID:weI6IONJm
それにこ奴は川の向こうの連中とも付き合いがある。いざとなればそ奴らが裁断を下すだろう。
39:名無しの八百万 ID:ppz7XIHYb
だと、良いが
主人公
多言語チートと天狐の加護で人魚の歌に対する耐性を得ていたが、直に聞くとやはりキツイ。
この後必死に日本語に翻訳したのを必死にパソコンに打ち込んだ。プリンターのインクを切らしていたことを忘れてコンビニ行った。コンビニ店員がレプティリアンだった。腰を抜かしかけた。
海音ウタ
人魚。
綺麗な歌声で見事VTuberデビューを果たすことになった。しかし故郷の言語で歌うと周りの人間が眠ったり、目を覚ましたり、寝ている人の記憶をある程度操作できる。しかし一定のラインを超えないように制約で力を縛られている。
ウネ
100年前の日本に人間として上陸した人魚。今は海辺のカフェを運営している。
昔助けてもらった男と結ばれるために人間になり、婚姻関係を結んだが……夫があえなく戦死。それ以来ずっと一人で生きてきた。
Vtuber要素と異種族要素の比率はどちらが読みやすいですかね?
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