ラル王国第3の都市リリルンの一丁目の朝。
静まり返った街に、起こってしまった緊急事態を知らせるべくサイレンが鳴り響く。
最初はなんともない異生物の事案、警戒ランクもCと最低であったのだが。
いざ、現地支部所属の隊員が駆除しようと攻撃を仕掛けた時、事態は急変した。
その異生物は急速に進化すると言う能力を持っていた。
結果、魚の様な巨大な頭部に直接触手が生えた様な風貌にまで、僅か30分で変貌を遂げ、最初に来たガドール隊員達は悉く壊されてしまった。
国は警戒ランクを引き上げ、Aランクとし、増援としてガドール戦闘部特殊三課を26名、警察庁特殊戦闘部隊も数十名で挑んだ作戦も,失敗に終わりその進撃を止めることは出来なかった。
「…どうして、こうなっちゃったかな」
今回の作戦を任された三課の副課長リンダは、自らの無力を呪ってい、絶望していた。
魚のような巨大な頭部に太い触手を持った異生物。
自分の指揮下にあった人間は全員鋼鉄以上の強度を持つ触手に弾き飛ばされ、未だ進化を続けており、その強さはSランクへの到達は時間の問題。その様を見たリンダはすでに戦意を喪失、BALで肉体を最低限強化することすら出来ずにその場にヘタレ込んでいた。
彼女の能力、『雷』。
その名の通り強力な電気を発電、放出することが可能で、その出力、思考力、高い指揮能力を買われ三課の指揮役として副課長にまで上り詰めた。
「…私の能力が、もっと強いものだったなら、皆んな守れたのに」
皆んなを凶悪な遺物犯罪から守るために入隊したのに、私にはその力があると確信していたのに、たくさんね努力を重ねたのに、圧倒的な力の前で部下達のように立ち向かう勇気すらない。
彼女の心はもう既に折れてしまったいた。
最初は遠くの方にいた異生物も、もう目と鼻の先である。
自分は部下達のように、壊されてしまうのだな。
そう悟り、目を閉じる。
ヒュン、と風を切る音が聞こえたその時、
ドゴッ!!
来るはずである衝撃の代わりに来た目の前から感じる衝撃に、思わず目を開ける。
そこには地面に頭部をめり込ませた異生物と、その上に立つ青年の姿があった。
特殊戦闘四課。
肩につけられた異能の証。
AからSランクの事案時にのみ出動する、ガドール各支部に配属される戦闘部の切り札。
四肢に黒い鎧のような物を纏っている。
青年は異生物の頭部から降りると、リンダに自分が遅れてしまった事を謝罪した。
「申し訳ない、俺は特殊戦闘四課のガーべ・ラリルです。生き残ってるのは貴方だけですか?」
「あ、あぁ、多分、そうだ。まだ、分からないが」
そうですか、と短く言い、ふぅ、息をついた。
「じゃあ、さっさとここから退避して下さい。こっからは俺が相手します。」
そう言ったと同時に、地面に頭部を埋めていた異生物は頭を上げ、触手をうねらせ始めた。
「さぁ、早く」
そう促すと青年は異生物に向き直り、戦闘体制に入る。
私は全力で、その場から走り出した。
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異生物との戦闘は、凄まじいものだった。
高速で中を舞う触手、それを避けつつ攻撃する。
周辺住民の避難が完了しているのが唯一の救いであった。
やばいな、さっさと決着つけないと。
さっきから速度が上がっている。
「これがお前の能力か!」バコッ!
「シィャァァアアアアアアア!」
こいつは段々と『進化』している
グダグダやってると不味い事になる。
「ん!」
ガッ
ザザザザッ!
衝撃で後方に吹っ飛びそうになるのを触手で抑えたか。
まだ頭が働く方のようだ。
打撃だけでは少し厳しいかな。
朝日から生まれた影を利用し黒物質を生み出す。
『闇』、それが俺の祝福の能力。
影または人間の心の影、負の感情を媒介に黒物質を生み出し自由に操る能力。
割と汎用性は高い方、身に纏う事で運動能力も向上する。
ここは背が高い建物が多く、登ったばっかりの朝日の光を遮って、黒い影をあちこちに作っている
今俺が立ってる場所も、建物の影となっている。
ならば
「そっちがドンドン強くなるんならこっちも装備を強化させてもらうぜっ」。
亀裂のようにも見える骨組みに糸状の黒物質が纏われる。
武具はみるみる生成され最終的に剣の形へ。
割と濃い影であったので強度も切れ味も良さそうだ。
すぐに手に取り間髪入れず
高速で飛んでくる触手を捌きつつ斬撃も入れてゆく。
スパッ
「ギュアアアアアアアアッ」
断末魔のような叫び声を上げながら更にに攻撃を仕掛けてくる。
元々人間だった面影はもはやない。
一度飛び上がり本体への攻撃
ガッ
ギリリッ
「チッ」ガギン!
なんて簡単にさせてくれるはずなく一旦後ろに下がり、今度は足に黒物質を集中させる。
一撃で決める
ドン!
ザッ!!
「ガッ」
宙を舞う異生物の頭部の一部。
切断面からは血が噴き出て、あたりに撒き散らされている。
「グッロ」
ビシャっ!
「…いし汚ね」
触手は活動を停止、異生物はその場で動かなくなった。
「仕留めましたか?」
「ん?」
横からから声を掛けられ、見るとそこには先程退避をさせた三課の生き残りが一人。
「…あぁ、終わりましたよ、はい」
「そうですーーーー!?」
「?」
三課隊員は突然顔色を変え、言った。
「後ろ!」
「は?」
ヒュン
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