転生人後~めだかボックスの箱庭で好き放題に生きる~ 作:碧桜琥珀
恋乃宮の放ったレイピアの高速突きは、俺の心臓部分へと突き立った。
「【
血液を硬化するスキルだ。
血流が止まらないように隙間を開け、血管の外側だけを硬化させる。
皮膚は突き破られたが、血は一滴もでずにレイピアは防いだ。
恋乃宮は構わずレイピアを抜き、今度は左の脇腹あたりに突き刺した。
脇腹に留まらず、肩、胸、腹、腕、足と様々な場所を突いていたが、多少の衝撃が走るだけで、傷は少しも負っていない。
「かっっっっったいですねぇ!」
苛立った声を上げると、恋乃宮は大きく息を吸った。
一旦レイピアを腰まで引き、回転をかけ、体重を乗せた突きで俺の喉を突いてくる。
「ふっ!」
小さな気合いと共に、レイピアが向かってくる。
あ、これは刺さるかも。
「う……おっ!!」
ギリギリのところで体を右に倒し、避けた。
俺が居た場所の後ろにあった窓ガラスに、綺麗な小さい穴が開いた。
窓ガラスにはヒビもはいっていない。上手く力が集中されている。
「あ~もう、なんで避けちゃうんですかぁ」
突きの姿勢から体を起こし、俺を睨む。
「だって、当たったら痛いだろ」
レイピアが投げつけられ、尻餅をついていた俺の頬をかすめて壁に突き刺さった。
「動かないで下さいよぉ、早く帰って鈴様に褒めて貰うんですからぁ!」
そう言いながら、今度は背中からチェーンソーを取り出した。
「って、お前の背中どうなってんだよ!」
四次元ポケットかよ。
チェーンソーが唸りを上げ、恋乃宮が振り上げる。
「え~いぃ!」
気の抜けた掛け声に似つかわしくないスピードでチェーンソーが振り下ろされる。
こうなってくると、血液硬化を防御にしても意味がない。
だからと言って、避けられるようなスピードでもない。どうしたものか……。
「じゃあ避けんの止めたわ」
そのまま避けずに、攻撃を喰らう。
チェーンソーは俺の頭に直撃し、そのまま唐竹割りのように切断される。
血が飛び散り、あっという間に血の池ができた。
「……ふぅ、案外あっけなかったですぅ」
顔に付いた返り血を拭きながら、チェーンソーを投げ捨てた。
ピンク色の服にも赤い模様が出来ていた。
「さぁ、帰りましょ。早く鈴様に報告しないとぉ」
安心しきって、死体を放置したまま教室から出ていこうとした。
その時だ。
どすっと鈍い音が鳴り、恋乃宮の指にレイピアが突き刺さった。
「いっ……ぎゃああああ!!」
叫び声をあげて、床に
血はそれほど出ていないが、意識が飛ぶほどの痛みを感じてるはずだ。なぜなら……
「痛覚倍増のスキル、【
痛いだろ?何たって、今お前の指は通常の5倍の痛みが走ってるはずだからよぉ!」
「なん……でぇ……」
痛みのあまり朦朧としている意識で声の主を見ると、
殺したはずの男、一刀両断したはずの男、天笠碧人がそこに立っていた。
「千回生き返るスキル、【
俺を本当に殺したけりゃ、あと999回殺しな」
意地の悪い笑みを浮かべ、恋乃宮へと近づく。
「お前に選択権をやろう」
恋乃宮の耳元でそう囁き、刺さったままのレイピアを乱暴に抜いて、喉に突き付けた。
「ぐぁあ!!」
抜いた痛みで声を上げる。しかし喉のレイピアが怖いらしく、暴れはしなかった。
「お前の敬愛すべき鈴様とやらに使えて、今ここで俺に殺されるか、
俺に使えて、生き延びるか」
顔を上げた恋乃宮の目には、絶望の色が映っていた。
「わた……しに…………、鈴様を……裏切れ…………と?」
途切れ途切れの言葉。
俺は構わずレイピアを構える。
「選ぶのはお前だ。まぁ、どっちにしても楽にはなれるぜ。一瞬で殺してやるから」
恋乃宮は俯き、考え込んだ。
暫く待つと、小さな声が聞こえて来た。
「……なさいよ」
「ん?なんだって?」
聞き取れなかったので聞き返すと、恋乃宮は顔を上げて睨んできた。
「殺しなさいよ!鈴様は、鈴様だけは!絶対に裏切らないんだからぁ!!」
確かな意思を込めて、恋乃宮は叫んだ。
激しい憎悪の視線が、俺の目を射抜く。
「……ああ、分かった」
俺は恋乃宮の喉にレイピアを突き刺した。
「ぐっ……」
声が少し漏れ、そして恋乃宮は倒れた。
「無力化のスキル、【
他者を傷つける、暴力をふるうといったマイナス方面の行動が一切出来なくなるスキルだ。
筋力などはそのまま、ただ悪いことには使えないという封印のような形にになる。
俺はそれを恋乃宮に使った。
殺してはいない。レイピアも、見た目はショッキングだが、外傷は全くない。
「……殺しておくのが、良いのかもしれないけどな」
でもダメだ。こいつも多分、被害者なんだ。
鈴という自分勝手な奴の、道具だったんだ。
俺は恋乃宮を床に寝かしたまま、教室にあった毛布を一枚かけて、家へと帰った。
「というか俺、今日家と学校往復しすぎじゃね?」
時刻は10時。まだ二時間目も終わっていない。
「なんつーか、こんなの毎日会ったら大変だなぁ……」
そう愚痴をこぼすも、ただ静寂の中に染み込んでいくだけだった。