ハイスクールP×P 作:鳳凰
武器も持たず、構えもせず、散歩にでも出ているかのような無防備なライザー先生に斬りかかる木場。ライザー先生はそれらを全て回避し木場の剣を蹴り砕く。
「木場あああ!!」
『Transfer!!』
新たに生み出された魔剣に、今度は回避を選んだ先生。だけど………本命はこっちだ!!
「っ!!」
その拳を地面に向かって踏みつけられ、木場が腹に膝を喰らい吹き飛ばされる。同時に、タイマーが鳴る。
「ここまで……」
「っ…」
「か、はぁ…」
その場で倒れる俺と木場。肩で息をする俺と木場をライザー先生は見つめ口を開く。
「まあ少し動けるようになってきたな」
「なん、で………十字架しながら………俺達、悪魔……なのに」
「負荷をかけてやったほうが良いトレーニングになるからな」
そう言ってライザー先生は胸に手を沈め
「まあ俺の場合幼少期からやりすぎて耐性が付いちまってるが」
あくまで耐性、無効化ではない。
効かないのではなく、致死量が違うらしい。蟻が死ぬ程度の量の毒で龍は死なないだろ? との事だ。だから、一応あれでも弱体化している。
「俺以外に勧めてやってみたのはサイラオーグとサーゼクスだな。ああ、クロさんにも話したら「毒か………」とか呟いてたし、真似してるかも」
サイラオーグって人とクロさんって人は知らないけど、そうか、魔王様もやってるんだ。
「あの、ところでなんで鍛えるの俺達だけなんですか?」
不死の炎を浴び傷を癒やしてもらいながら、ふと気になったことを尋ねる。あの時ライザー先生は白音ちゃんや朱乃さんの名前も呼んでいた。アーシアを呼ばなかったのは、アーシアの強みである回復の鍛え方が解らないからだ。あれ、神器だもんね。
「白音は俺より黒歌が鍛えたほうがいいだろ。まあ妖怪、というか陰陽道には色の相性があるから黒歌は呪い系統、白音は浄化に特化してるらしいが………」
とはいえ仙術そのものに高い適性を持つから、どちらも使えないことはないらしい。なので教えるのは問題ないだろう。
「朱乃さんは?」
「俺は強くなる気もねえやつの面倒を見るほど暇じゃねえ……素質はあるのになあ。なれて中級だろあれじゃ」
と、ライザー先生はため息を吐く。呆れている? 強くなる気はないって、朱乃さんもあれ以来頑張ってる姿を目にするのに………。
「才能を持っているのにそれを忌避するとは勿体ない。俺には彼奴の考えが到底理解できねえな。血だろうと呪いだろうと禁忌だろうと、あるもの全てを注ぎ込まねえなら至った高みもたかが知れる」
ゾワッと背筋に悪寒が走る。
殺気とか怒気ではない。もっと狂気じみた何か。強さに対する執着。
『元々何か目的があったのかはしれないが、途中から力を得る為の目的ではなく、力を得る為に必要な目的となっているな。手段と目的の反転………よくある光景だ』
「否定はしねえ。強くなることは楽しい、本来の目的を忘れちまいそうになる程度には………ただまあ、俺みたいに根が俗物だと目的を作っておかねえとすぐ力に飲まれちまうんでね」
クク、と喉を鳴らしながら治癒の炎を消し去るライザー先生。
「次こそ片手を使わせろよ?」
「っ………はい!」
片手どころか、炎すら使わせられなかった。本当に俺は強くなれているんだろうか。
『成れているさ。ただ、彼奴が規格外なだけだ…………本当に悪魔か、あれは』
何でも魔王様の中にも二人しかいない、悪魔を超えた悪魔らしいぜ相棒。
その日の部活は、旧校舎の大掃除のため俺の家でやることになった。ライザー先生は来なかった。朝の鍛錬はともかく、部活動においては口を出してこない。
まあ顧問でもないしな。
「で、こっちがイッセーが小学生の時の写真なの」
「あらあら、全裸で海に」
「ちょっと朱乃さん! 母さんも見せるなよ!」
だけど部活動なんてしてない。俺のアルバムを皆で見ている。白音ちゃんは部活動からアルバム鑑賞に変わった瞬間窓から出ていった。
「小さいイッセー」
ん? なんか部長の様子がおかしいような?
「幼い頃のイッセー幼い頃のイッセー幼い頃のイッセー」
部長ってショタコンだったのか?
「部長さんの気持ち、わかります!」
アーシアと部長は何やら話が盛り上がっている。小さい頃の自分を見られるって恥ずかしいな。
「っておい木場! お前は見るな!」
「ハハハ、良いじゃないか」
と、アルバムを捲っていた木場だが不意に固まる。何だ、どうした?
覗き込むと園児の頃の俺が写っていた。あと、別の園児とその親御さん。よく近所の公園でヒーローごっこした男の子とそのお父さんだ。
親の都合とかで外国に引っ越しちまった。何でこんなに興味を示してるんだ? ま、まさかこの子が木場!?
「これ、見覚えは?」
そう言って木場が指差したのは親御さんの持ってる剣。流石に模造剣だよな? 古ぼけた西洋剣だ。
「ウーン。いや、何分ガキの頃過ぎて覚えてないな」
「そっか………こんな事もあるんだね。思いもかけない場所で見つけるなんて」
一人ごちて、木場は苦笑する。だがその目には激しい憎悪に満ちていた。
「これは聖剣だよ」
「お兄様、侵入してきている神父達が殺されていますが、よろしいのですか?」
「この街は表向きにはなんの支配権はなくとも、裏側の連中には悪魔の領域となってんだ。それを無視してなんのアポもなしに入る馬鹿など知るかよ。まあ裏について何も知らねえ表の神父なら助けてやるが」
とあるマンションの一室。ライザーの言葉にそうですか、と呟くレイヴェル。
「リアス様とソーナ様はこの街で殺し合いが起きてることに気付いてないのでしょうか?」
「気付いてないだろ」
「ソーナ様はともかく、リアス様は領地経営の練習として貸し与えられたのでは?」
「今は部活動が忙しいんだろ。堕天使共も事を起こす準備段階で目立つ行為はしねえから一般人に手は出さねえだろうし、放っておけ」
ライザーはリアスに興味がない。婚約破棄もしたし、元から上級悪魔だし、そもそもレーティングゲームで負けておいて、次は負けないと言いながら修行もしていない。そんな女にどんな興味を抱けと言うのか。
「それよりこれ食うか? ようかん鳥」
羽が羊羹で出来た不思議な鳥。ライザーがよく持って帰ってくる異世界産の食材の一つだ。切り分けて差し出された羊羹に、レイヴェルがたじろぐ。
「あ、あーんは流石にこの年ですもの。は、恥ずかしいです」
「じゃ、私が貰う」
パク、と突然現れた白音が食べる。レイヴェルはなっ、と目を見開く。
「毎度毎度どこから現れますの泥棒猫」
「玄関。
「なっ!? そ、それよりその
「やだ」
「ぐぬぬ!
「姉様が結婚すればちゃんと妹になる。だから姉様、頑張れ」
「にゃ!? そ、それは……まあライザーの子種は欲しいけど、結婚はさ………その、別の話にゃ」
改めて結婚と言われ顔を赤くする黒歌。こういうところは意外と純情なのだ。
「それでも私が本物の妹ですわ! 血の繋がりに勝る絆はありません!」
「む。でも血は繋がってないから結婚できる」
「………………」
ライザーは巻き込まれる前に部屋を出ることにした。ついでにこれは余談だが、貴族の血を濃く保つために近親婚を行うことは稀にある。
まあ縁談の申し出は毎日のように来てるが。
「お前、ふざけてんのか?」
ライザー先生は木場を踏み付けながら苛立ったように言う。ミシリと足に力が更に加わり木場が呻く。
「心此処にあらずで、俺の修行を受けてんじゃねえぞ」
「……………すいません。今日はもう帰ります」
木場はそう言うとライザー先生は足をどかし、木場は本当に帰っちまった。
「あ、あのライザー先生。その、木場のやつ昨日から様子が変で……なんか、聖剣に纏わる何かがあったみたいで」
「聖剣?」
「は、はい。俺のアルバムに写ってて」
「……聖剣が昔、この街にあったのか?」
「そうなるんすかね。どうかしました?」
ライザー先生は何やら考え込んでいた。
「だとすると前任は………いや、貴族共が何もしない理由………その聖剣は?」
「えっと、昔の友達の親御さんが持ってて…………多分、外国に」
「臭いな」
「え、汗臭いっすか!?」
「ちげえよ」
ライザー先生は呆れたようにいう。なんでもきな臭い、らしい。十数年前、俺が幼稚園の頃、つまり聖剣があった頃この街には部長とは別の悪魔がいたらしい。でも教会といざこざを起こして結果的にどちらもこの街から去ったらしい。
「この街に来るにあたって俺は彼女から話を聞けないかと思ったのだが、死んでるんだよ。ディハウザー………彼女の親戚から昔そう聞いた。公表されない死、不透明ないざこざとやら、町から離れるほどの何かをやらかした教会………きな臭え。それに、確か彼奴の話だと『
と、そこまで考え頭をかくライザー。
「やめだ。政治だ何だは俺に向いてない。サーゼクスとアジュカに投げる………それで赤龍帝、お前は木場祐斗に何があったのか知りたいのか?」
「はい……!」
「………汗を流す。うちの風呂は無駄に広い、そこで話してやる。ついてこい」
ライザー(笑)の眷属
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