ハイスクールP×P 作:鳳凰
「よし、証拠品ゲット。あとは過去を映すこのアイテムで」
「うわぁ………」
一瞬だった。嘗ての主の家に案内され、次の瞬間には終わっていた。
ナベリウス家の研究成果、資金調達のための様々な組織への癒着、実験体の廃棄場所などを記した書類を片手に屋敷の長が座るであろう豪華な椅子に座るライザー。
屋敷は現在炎に包まれ、意識を焼かれた住人が人形のように突っ立っている。訪れて、門を壊した。人が集まろうとしたその瞬間には炎が放たれて、これだ。
(彼奴等が作ろうとしてた、超越者…………こいつも、天然の超越者なのかしら)
お前も読んでみろよ、と渡された書類を見ながらそこに記された単語を目の前の存在に当てはめる。
無理だろうこれ、こんなもの誰かの手で造れる訳が無い。器に入り切らぬ力に、被検体が崩壊するだけだ。
「で、でもこれって貴族の不祥事でしょ? もみ消されないにゃ?」
「もみ消されるだろうな、大王派に知らされりゃ」
じゃあ駄目じゃん、と思った。大王派が一体どれだけ深く今の悪魔社会に蔓延っているかは知っている。自分の罪をなんとか出来ないかと色々調べたのだから。
「だから魔王に直接直訴する」
「い、いくら今代の若手最強だからってそう簡単に魔王に会えるわけ」
「いや、俺魔王の妹の許嫁だから」
「……………………都合よ」
ライザー達が去ると同時に意識を焼いていた炎が消える。意識を取り戻した者達は自分達の意識が全員同時に止められたと思い至りもせず、破滅の道が近い何時もの日常に戻るのだった。
四大魔王。
四大魔王は先の大戦で死に絶え、彼らの後継者たちは疲弊した悪魔達に尚も戦争の継続を命じ、衰退と全滅の危機を恐れた悪魔達により反旗を翻され冥界の片隅に追いやられた。
その際に新たな旗印として最強の魔王である4人が次の魔王として選ばれた。
今の魔王の実態は
そして、彼等は各々嘗ての名がある。72柱としての名が。
その一つ、ルシファーの名を手にしたサーゼクスの嘗ての名はグレモリー。サーゼクス・グレモリーであり、その次期当主がライザーの許嫁であるリアス・グレモリーである。
「よおリアス、今日も綺麗だな」
「ライザー? どうしてここに………!!」
「許嫁の顔を見に来たと言ったらあっさり通してくれた」
「私は、貴方と結婚する気なんてないわ!」
「そうか。だがこの婚約は両家の親が決めたこと。繋がりを強化するためだ、子の意志なんて関係ない」
もちろん、ライザーの意志も関係ない。ただしその部分は伝わらなかったのか、リアスはライザーを忌々しげに睨み去っていった。肩に乗った黒猫は呆れたような目でライザーを見る。
「あれが婚約者? 随分嫌われてるにゃ」
「昔、階級が上の貴族の子息も関係なくぶちのめしたからな。そのせいで貴族の皆様方に嫌われてな……遊び三昧の放蕩息子ってことにされてんのさ、俺は」
要するに貴族達の醜い嫉妬や怨恨というわけだ。フェニックス家は特にとあるアイテムの力で財政が階級が上の悪魔達より潤っているので、元より自分たちのことを心良く思っていない奴等も多いのだ。
「そこのメイド、今日は魔王様はいらっしゃるか?」
「サーゼクス様ですね? 少々お待ち下さい」
待合室に案内され、出された菓子を猫と一緒に食っていると扉が開く。
「やあライザー君。待たせてしまったかな?」
入ってきたのはリアスと同じ紅色の髪をした男。
ライザーの膝の上であくびをしていた猫がザワッと毛を逆立て飛び退く。それだけの存在感を、ライザーと異なり隠そうとしていない。或いは、隠しているが一部なのか………
「あまりあいつを脅かさないでください」
「はは、すまないね」
フッと場を支配していた気配が消える。魔王を名乗るに相応しいだけの威圧感こそ残っているが、先程よりはマシだ。
これがサーゼクス・ルシファー。四大魔王の中で、悪魔の始祖たる雌雄の片翼の名を継いだ悪魔。
「それで、その子を連れてきたということはリーアたんではなく私に用があったんだろう?」
「まずはこれを…」
「……………ほう」
内容に目を通したサーゼクスから、冷たい声が放たれ周囲の空気が張り詰める。猫はタンスの下に隠れライザーは気にせず菓子を食っている。
「ついでに、こちらも」
そう言って渡したのは鏡。とある別の世界の地獄で手に入れた過去を覗き見る鏡のレプリカだ。
そこには妹には何もしないという姉の懇願を確かに聞き入れ、しかし姉の才能の前に妹にすら手を出そうとした悪魔の過去が映される。
「なるほど………つまり君は、そこに隠れた彼女………はぐれ悪魔黒歌の手配取り消しを要求しに来たんだね?」
「はい」
「…………………」
正体がとっくにバレていると悟り、タンスの下に隠れていた黒猫が姿を表し、その身を黒髪和服の美女に姿を変える。
「まずは謝罪を。我々悪魔の監督不行き届きが原因で、君達家族には迷惑をかけた」
「っ!」
魔王に謝られたじろぐ黒歌。とはいえ簡単に頭を下げないあたり、魔王としての立場を分かっているらしい。
「ライザー君も、よく私のもとに持ってきてくれたね。これが貴族の誰かに渡っていたら、権威のためにこの事実は消されていただろう」
「でしょうね」
「いやむしろ、あえて貴族達に流してもみ消そうとしているところで告発するべきか。発言力を少しは削げるはず」
魔王と貴族は実はあまり仲が良くない。成り上がりの偽物と見下すものもいれば、表向きは魔王に敬意は払えど悪魔社会を運営するのは自分達だと思っている…大王派のトップであるゼクラム・バアルといった古い世代とかがいるのだ。
「まあ、本当に少しだけどね。それでも、わかった。黒歌の指名手配は解除しよう」
「ありがとうございます、魔王様」
「ははは。お義兄様と呼んでも良いのだよ」
「ははは、ご冗談を。結婚したく………していないのに魔王様にそのような呼び方出来ませんよ」
「…………やはりリーアたんは好みではないかい?」
ライザーの言葉にサーゼクスは困ったように尋ねる。
「好みであろうとなかろうと、しろというのならするまでです。俺はライザーである前に、フェニックスなので。まあ婚姻前に魔王の座につけたら問題はないんでしょうが」
そこまでの実績を立てるとなると相応の功績が必要になる。無理やりなれば、従わない者達が暴れまわりそれこそ他神話から余計な憎しみや怒り、恨みを買うことになる。
「かと言って、婚姻をかけたレーティングゲームをしたってわざと負けるのはありえない。まあ結婚した後頑張って愛してみますよ」
「う〜ん。リーアたんいい子だと思うんだけどな」
「いくら俺のレーティングゲームの公式映像が見れないからって噂を鵜呑みにして一方的に人を嫌うような奴が?」
ライザーのレーティングゲームの映像は公開されていない。表向きには才能の差に若い悪魔の心が折れないように、実際は貴族達の嫉妬。まあ、いつまでも隠せるものではないだろうが。
「ま、噂を鵜呑みというよりは、婚約者である俺のことが嫌いだから良くない噂を信じて更に嫌ってるって感じですが」
「はは。君達結婚しても最低限の夫婦の義務しか果たしそうにないね」
「自由恋愛したけりゃ魔王になれって目の前の存在が証明してますからね」
「まあとにかく、この事実を使って眷属の定期調査を行う法策を立てられないか頑張って見るよ。これで、少しははぐれ悪魔になるしか道がなかった者を減らせるといいんだけど…………」
「そのあたりは大人に任せます。では魔王様、私はこれで」
「現実感がわかないにゃ」
「だが現実だ」
ライザーの部屋で猫の姿でぐでー、と転がる黒歌。賞金首ではなくなり、悪魔でもなくなったので冥界に迷い込んだ一匹の猫魈になった黒歌。これからどうしよう。妹に会いに行く? でも魔王様が言うには心の整理がついていないらしい。
置いていったし、自分のせいで怖い思いもさせただろうし、会うのが怖い。
「方針決まったらさっさと出ていけ。俺は異世界で眷属を探してくる」
ライザーは旅行かばんに服や現地換金用の宝石、UNOやオセロを突っ込みながら黒歌に言い放つ。
「眷属……ねえ、ライザー」
「ん?」
「私を眷属にしないかにゃん☆」
と、可愛らしいポーズを取る黒歌。
「いいぞ」
「あっさり!?」
「駒はいつどういう風に使うことになるかわからねえし、とりあえず価値が低い順に」
「フフン。私はこれでもSS級にゃん。安い女とは思わ──」
「お、
因みに異世界に向かうためにヴァイスをドラゴン形態にしてその背に乗ったが、黒歌は宇宙猫になった
ライザー(笑)の眷属
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