真の実力はギリギリまで隠しているべきだったかもしれない   作:ちぇんそー娘

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蹂躙は最高の恋のスパイス

 

 

 

 

 突然空から降ってきた某国が開発し、空輸されていた荷電粒子砲に押し潰される形で俺は人生を終えた。

 

 と思ったら、神様によってチートパワーを授けられてなんか魔法とかある感じの世界に転生した。幾らなんでも荷電粒子砲に潰されて死ぬのは可哀想だったかららしい。じゃあそもそも荷電粒子砲に潰されて死ぬ前に助けて欲しかったんだけど、チートパワーを使えば富、名声、力、女の全てが手に入るらしいので俺はとりあえず神様の靴を舐めることにした。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「という訳で俺はみんなからチヤホヤされて女の子にモテモテの勝ちまくりモテまくりな学園生活を送りたいんだけど、どうすればいいと思います?」

「童貞の見本市か?」

 

 神に選ばれし最強チート能力者であるこの俺が、ただの一言で精神に裁判になれば間違いなくて勝てるレベルの傷を負うことになった。さすがに今の一言は犯罪だろ。

 

「お前顔も能力もいいのに中身がほんと20年くらい童貞拗らせたみたいだよな」

「先輩俺の事嫌いなんですか? そんなに俺に死んで欲しいんですか?」

 

 俺の問に対して、特に返事することなく紅茶を啜りながら今日はいい天気だなぁ、と話を逸らしている先輩こと惟神(かむながら)カサネ。

 燃える炎のような鮮やかな赤髪を束ねて左肩の前に流す、所謂ルーズサイドテールにしている御歳17歳の美少女である。

 母親になったら死にそうな髪型してるけれど、言葉と同じくらい鋭い目付きとかを見るに120とかまで生きそうな生命力があるタイプである。

 

「それで、真面目に私に何を聞きたいんだハバキ。お前も来年からシーカ魔道学院の生徒だものな。心配事があって私を呼び寄せたのだろ?」

「さっき言った通り女の子にモテモテでみんなからチヤホヤされる学園生活を送りたいです」

「厨二病拗らせた陰キャ童貞か?」

 

 さすがはシーカ魔道学院生徒会会計にして学年成績順位では常に1位らしいカサネ先輩。オブラートの欠片も無い言葉で現年齢14歳の俺の心を完全に抉りとってきた。マジで俺じゃなきゃ致命傷受けて遺族が裁判起こすレベルだぞこれ? 

 

 しかし冗談などではなく、これが俺の本音なのだ。

 男に生まれたからには誰だって、いや女の子だって思うはずだ。

 

 圧倒的な才能とパゥワーで頂点に君臨し、異性にモテモテ引っ張りだこの勝ちまくりモテまくりの人生を送りたい、と。俺は送りたいと思う。

 

 この世界に生まれて14年。

 生まれてすぐの時はちょっとした災害で両親を失い途方に暮れていたが、たまたま今の義理の両親に見つけてもらいここまで元気に育った俺こと、惟神ハバキはもうめちゃくちゃにモテたいのだ。

 

 その為に、魔道学院で才能と顔の良さでブイブイ言わせてるらしい義姉にして先輩になるカサネ先輩にこうして土下座で頼み込んでいる。

 

「お願いします先輩! 俺モテたいんです! 彼女とか出来れば5人は欲しいし、男からは嫉妬か羨望の目で見られたいんです!」

「養子縁組ってどうやって解除できたっけな」

「ちょっと待って、さすがに義父さん達に言いつけるのはやめてくださいマジで、学校通えなくなっちゃう」

「お前みたいなのが学院に来ること自体恥なんだが? なんで試験落ちなかったの?」

 

 義理の弟にして未来の後輩に対する発言じゃないだろそれ。

 まぁ俺は神様からチートを貰ってるし、ぶっちゃけそれはほぼ関係ないけどこれでも20と数年の人生の経験が頭の中にある。小さい時から怠けずに勉強をしておけば、お受験なんてマジでちょっと心が折れて、当日全然解けた気がしなくて、合格発表まで受かってる気がしなくてろくに飯が胃に通らないくらいの感覚で過ごすだけでちょちょいのチョイで合格できるんだよな。

 

「まぁ……内容はアレだが志を持つことはいい事だと思うぞ。うん、内容はどうあれ、頂点を目指すのは我が惟神家の家訓だからな」

「『強いものに従え、従いたくないなら強くなれ』。俺も覚えましたよ、改めて聞いたら野生のイノシシでももうちょっと理性的な家訓作りそうですけどね」

「何を言う。イノシシは家訓なんて考えられないから私達の方が賢い」

「野生動物に対してそのマウントの取り方ってもう負けじゃないですか?」

 

 俺を拾ってくれた惟神の家は中々にファンキーな家訓と思考をお持ちで、例に漏れず先輩もファンキーゴリラベイビーズである。

 

「とにかく教えてくださいよお姉様〜! 簡単に楽して女の子にモテてみんなから尊敬される人間になれる方法を」

「そういう発言する人間が尊敬されると思うか?」

「靴でもなんでも舐めますから!」

「惟神の人間がそんな簡単に服従をするな! あと靴をマジで舐めてくるやつとか嫌だろ普通!」

 

 実家に帰ってくるだけなのに、何故かおめかし用のハイヒールを履いているカサネ先輩が足でシッシッと俺を追い払う。

 でも、靴を舐めようとするとかそんな漫画でしか見た事がないような服従の意志、逆に見てみたくないかな? 

 

「全く……だいたい、お前はモテなんかしなくてもお父様とお母様の意向で、貰い手がいなければ最終的には……その、私と……だろ? それともなんだ? 私は嫌か?」

「何言ってるんですかカサネ先輩。先輩はめちゃくちゃ美人ですけど、それはそれとして女の子にはモテればモテるほど良く、男は女の子にモテることで磨かれるんです。惟神の男として、いつかこの家を継ぐときに恥ずかしい男にならないためにも、俺は学院で多くの女の子にモテたいんですよ」

「お前さっき欲望丸出しなこと言ってなかったか?」

「男は過去を省みてはいけないんです」

 

 そうかなぁ、と頭を悩ませてそうかも……とカサネ先輩は何とか納得してくれたようだった。割とこの人チョロいところがあるから、義弟としては結構心配なところあるんだけれどこういう時は説得しやすくて助かるね。

 この世界では一夫多妻制はある程度認められてるところもあるので、ハーレムを築くこと自体は価値観的にそこまでおかしいことでもない。

 

「……まぁ、そうだな。私ももしお前と結婚することになった時にお前が私に釣り合わないなんてことになったら困るし、アドバイスしてやろう」

「ありがとうございます! カサネ先輩大好き!」

「その先輩っての、学院に入ったらそれでいいが家にいる時くらい姉さんって呼んでくれ。なんかムズムズする」

 

 フッ、と笑ってティーカップを置いたカサネ先輩の顔に曇りはなく、なんやかんやで俺の言うことに納得して協力してくれるようだった。

 いやいいのか? 俺としてはこれでいいのだが、義姉がこんな妄言に引っかかって簡単に協力とかしてるとなるとさすがに心配になるんだけど。

 

 まぁそれはそれとしてマジでモテたいし力は借りよう。

 カサネ先輩はかなりの数の男子に告白されてると風の噂で聞いたからな。何故か全部断ってるらしいけど。勿体ない。

 

「じゃあ姉さん、異性にモテるためには何したらいいですか?」

「全員殴り倒せ」

「蛮族の成人の儀か何かで?」

 

 モテモテの女子の口から飛び出したとは思えない言葉すぎて思わず反射で答えたけれど仕方なく無いか? 

 俺の事童貞だの陰キャだの言ってなんか真面目な雰囲気出してたくせにいざこうなったら全員殴り倒せはもうキャラが違うだろ。真面目な生徒会役員ポジションの美少女の口から出ていい言葉じゃないんだよ。

 

「でも私モテてるぞ。結局異性なんて強くて顔が良くていい感じの遺伝子持ってそうな相手にホイホイついていくもんだ」

「生物学的な本能について聞いてるんじゃなくて生理学的な好悪について聞いてるんですよ」

「小手先の感情なんてパワーで捩じ伏せろ。お前だって、なんかすごいパワーで誰にも負けないやつとかそれなりにかっこいいと思うだろ?」

 

 うーん……確かに、言われてみればそうかもしれない。どんな奴と戦っても負けないってシンプルにかっこいいって面はあるしな。強さが尊ばれるシーカ魔道学院では更に効果があるかもしれないし。

 

「私の時は、入学式でとりあえず全員に勝負ふっかけて全員ボコボコにしたな。そうしたら次の日にはみんな私に抱かれたいって殺到してきてたぞ」

「学院の生徒ってもしかしてみんな野生動物なんですかね?」

「お前由緒正しきシーカ魔道学院に対して失礼だぞ」

 

 でもそうなのかな? 

 俺はこの世界で14年間生きてきたけど、魔術について以外は実はあまり外に出たことがなくて知らないことも多いし、初めからこの世界の価値観で育ち、俺よりもこの世界では長く生きているカサネ先輩の言うことの方が正しいのかもしれない。

 特にモテるというのは、自分中心ではなく相手の気持ちになることが大切だろう。ここは大人しくこの世界の女子であるカサネ先輩の言うことを聞くのが……いい……のかなぁ? 本当にこれでいいのかな? 

 

「分かり、ました。とりあえずやれるだけやって見ますね」

「あぁ、お前の晴れ舞台楽しみにしてるぞ。ところで……今日の私の服についてどう思う?」

「え、おめかししてて可愛いと思いますよ。でもなんで実家に帰ってくるだけなのにそんな感じなんです?」

「うん、お前モテないよ」

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「オラァァァァァァァ!!! 全身脳ミソの軟弱細胞共が! 全員纏めてかかってこいやァァァァ!!!」

 

 

 カサネ先輩が用意してくれた原稿を一言一句間違えずに真剣に心を込めて読む。結果として力こそが正義としか考えていない悲しき悪役の叫びのような俺の声がシーカ魔道学院の入学式会場に轟いた。

 

「何貴方? 煩いし生意気だし、消えていただけないかしら?」

 

 ある新入生の女子生徒が、そう口にして。

 次の瞬間には、もうそこは入学式会場ではなく戦場だった。

 新入生のほぼ全員からの攻撃術式、意識波動、視線の全てが俺に集中して空間がねじ曲がる程の魔力が個人を滅ぼす為に放たれ──────。

 

 

 

 

 

「……聞こえなかったのか? 三下共。全員纏めて、筋繊維みたいに力を合わせてかかって来いって言ってるんだよ」

 

 

 

 

 骨まで焼き尽くす業火。

 命を凍てつかせる極低温。

 神威の如き光の柱。

 数多のエネルギー、極彩色の破壊の全てを受けて、その上で俺は(カサネ先輩の用意した原稿に従って)告げた。

 

 お前達の攻撃では俺は傷つけられない。

 お前達の力では俺には未だ届かない。

 

 だから挑んでみろ、超えてみろ、と。

 言葉にすることなく、魔術には魔術を以て、今しがた俺に向けられた大量の術式、その全てを()()()()()()()()()を見せつけることで体現する。

 

 

「俺に従うか、俺に勝つか。選びな」

 

 

 もうやけくそ気味にカサネ先輩の用意した原稿を最後まで丁寧に読んでから、原稿用紙を投げ捨て光線で焼き払う。

 それが開戦の合図とでも言わんばかりに、再び俺に向けての総攻撃が放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……格が、次元が、何もかもが違いすぎる。なんだ、なんだこれは? アイツら、なんなんだ……?」

 

 1人の生徒が絶望していた。

 己の実力を信じ、努力し、輝かしい未来を夢見てこのシーカ魔道学院に入学し、その一日目にして心が折られた。自らが研鑽を続けても永遠に到達しえない極地を見せられ、彼は羨望や嫉妬すら感じることなく、ただ恐怖した。

 

「なるほど……これが『極点』か。面白い」

 

 1人の生徒が笑っていた。

 戦闘には参加せず、遠くからその様子を眺めていた彼はショーウィンドウの中のトランペットを見つめる子供のように瞳を輝かせ、瓦礫の中で傷一つなく頂点に居座る男だけを目に映していた。

 

「……すごい」

 

 1人の生徒が希望を持った。

 完敗し、完膚無きまでに打ちのめされた。己の魔術の全てが一方的に打ち消され、術式の完成度、詠唱と構築の速さ、何から何まで敗北し、だからこそ彼は折れなかった。到達するべき目標を見つけ、彼は折れるのではなく己を奮い立たせていた。

 

 

 そして、そして。

 多くのものは最初の1人のように恐怖に呑まれていた。

 

 稲妻の如き金の髪をかき上げながら、『頂点』は全てを見下ろしていた。視線を向けられただけであるものは意識を失ったフリをし、あるものは本当に意識を失い、あるものは半狂乱になりながらその場から逃げ去ろうとした。

 意思の強いものだけが、何とかその視線に耐えて睨み返すことが出来た。そして、その強さに免じてと言わんばかりに彼は息を吐くように笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ふっっっっっっっざけんなよバカ義姉。

 なーにがすぐにモテモテだよ。もうみんなドン引きだよ。モテモテの対極みたいなことになってるじゃねぇか。

 

 何人か可愛い女の子いるなーって目を向けただけでその子達気絶するフリしたりマジで気絶したり泣きながら逃げちゃってるし。

 そうしない子も女の子はほとんどみんな敵意剥き出しにするなり負けを認めてか良い笑顔してたりするだけで誰も俺に近寄ってくれないんだけど。目を向けたら一歩下がられて警戒されてるんだけど。

 

 もっとこう……囲まれて黄色い歓声を浴びたかったんだよ。そう思って遠くに姿の見えるカサネ先輩に目を向けると得意げに親指を立ててるし。なんであの人あんな誇らしげな顔できるんだ? どう見たって悲惨な戦場でしかないだろ。

 

 男子の方も俺に羨望とか嫉妬とか向けてくるやつ全然いないしさぁ。

 何がこれが『極点』か、だよ。

 脳筋の極点は向こうで満足気に親指たててるバカ姉なのでお願いだからそっちに行ってくれ。俺をおもしれー男……みたいな目で見るな。おもしれーのは俺じゃなくて向こうの義姉なんですよ。

 

 もうヤダヤダヤダ。こんなのどうしろってんだよってなって頭を抱えて蹲りたくなってふと視線を下に向けると、足元に転がってた女の子と目が合った。よく見れば、最初に俺に消えていただけないかしら? とか言ってきて攻撃も最初にぶち込んできた女の子だった。

 

「…………」

「…………へへっ、生意気なこと言ってすいませんでした。あ、靴汚れてますね。舐めて綺麗にしますか?」

 

 そう言って、女の子は女の子が絶対にしちゃいけないタイプの顔をして俺の靴を舐めようとしてきたので静かに足を引いた。

 

 見たくなかった……自分に自信がありそうなお嬢様がマジで完膚無きまでに折れて自分から相手に服従する姿とか、そういう尊厳破壊はマジで見たくなかった! 

 

 脳が破壊されそうになる感覚に耐えながら、もう一度一応何かの確認のためにカサネ先輩に目を向ける。めっちゃ誇らしげにサムズアップしてる。一発くらい殴っても許されないかな? 

 

 

 

「惟神……あの惟神家!? ひぃっ……」

「惟神ハバキ……覚えたぞ」

「ハバキか、おもしれぇ男……」

「惟神ハバキ、それが彼の……」

「へへへ……マジで靴とか舐めますかハバキさん?」

 

 

 

 拝啓、前世のお父様お母様、そして今世の天国のお父様お母様。

 僕は元気でやっています。ちょっと元気すぎるくらいですのでどうか心配しないでください。

 

 そして惟神の家のお義父様お義母様。

 とりあえず娘の教育方針を変えた方がいいと思います。お陰様で、貴方達の義息子は明日から学生が学生生活で得るもの九割が欠落した学生生活が始まりそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 









・惟神 ハバキ
ハーレム願望と肉体年齢の厨二病の再発で童貞をこじらせてしまった子。だいたい義姉のせい。

・惟神 カサネ
ハバキの義姉。赤髪ルーズサイドテールのつり目美少女。背が高く腕っ節も強くモテモテ。脳筋。


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