真の実力はギリギリまで隠しているべきだったかもしれない 作:ちぇんそー娘
感動の最終回です。
ありがとうチートハーレム杯。
久しぶりに、何も考えずに熟睡したからか。俺は朝日を浴びて眠気やだるさが一切なく目を覚ます。
ここ最近はずっと学校でどうやって生活しようとか、シャルロッティ達無事かなとか、色んなことを考えながら寝ていたせいで寝付きが悪かったからなぁ。
事件の辻褄合わせをアラシ先輩がしている間、実家に帰ってろと言われたので実家のベッドで眠ったというのも大きいかもしれない。
……それにしてもいい朝だ。
なんというか、いい感じの一日が始まりそう。そんな予感を胸に、俺は部屋の扉がノックされたのでとりあえず出てみることにした。多分使用人さんが朝食の用意が出来たことを伝えに来たのだろう。
「おはよう……おもしれー起床……」
「おはようございますハバキさん! 靴舐めましょうか?」
どうやら俺が寝ている間にうちの屋敷は変態万魔殿に改造されたらしい。
「使用人の雇用基準何にしたんですか?」
「何って普通に私が入れてやったんだよ」
ナチュラルにおもしれーくんが淹れたお茶を飲みながら、カサネ義姉さんは何かおかしいことでもある? と言いたげな顔だけれどおかしいところしかないだろ。
「仕方ないだろ。あの……えっと、おもしれーくんだっけ? アイツの正体を知ってるのは私とお前、そして多分アラシくらいなんだろ?」
俺が受肉降魔と契約してる、というのはバレていてそれなりに周知の事実になってしまったが、その相手がおもしれーくんであり、彼の正体が降魔七階の第五位であることまで知ってるのは義姉さんと……多分アラシ先輩も知っているのかどうか、その2人くらいなのだ。
「何かあった時の処理を一番楽にする方法は身内にすることだ。私だってアイツ見ると臀部に気持ち悪い感じするし、お前のことを見る目が性的だから嫌だけど仕方ないだろ」
「じゃあ……ネブの方はなんなんですか。アイツ俺の靴全力で舐めに来るから怖いんですよ」
今朝は靴がないなら素足を舐めればいいじゃないと、頭革命な発言もしてきたし、そのうち乳首とか舐められそうで怖いんだよ。女の子から乳首を舐められたらご褒美としか思えないはずの俺が普通に恐怖してるんだよ。
「お前忘れてないか? あの子の父親、受肉降魔に成り代わられてたんだぞ」
「そう言えば……」
義姉さんによれば、当主が受肉降魔とすり替わっていた、という事実に今日まで気が付かずに過ごしていた
更に何人も受肉降魔によって傀儡同然にされており、ろくに今あの家を動かすことが出来る人材はおらず、事実上解体状態であり次の九家会合の結果によっては取り潰しすら有り得るらしい。
「本人が何も気にせずお前の靴を舐めてるから忘れてたけど、アイツ今めちゃくちゃ危ない立ち位置なんだよ。お飾りの当主として祀り上げられるか、降魔と契約してそれを受肉させちまった父親の罪をそのまま押し付けられるか。どっちにしろろくな未来じゃない」
「え……めちゃくちゃ深刻じゃないですか?」
「だから誰かが守ってやる必要があるんだろうよ」
しかし改めて考えるとめちゃくちゃ可哀想な境遇だなネブ。
父親はいつから父親じゃなくなってたかもわからず、気がつけば家は取り潰され命か人権どちらかが奪われる可能性大の謀の世界にその身一つで放り込まれるなんて。
……変態変態と罵倒していたけれど、そんな境遇になったら普通は精神をおかしくしてしまってもおかしくないのかもしれない。
「まぁここに来たのはアイツが自己PRしてきてめちゃくちゃ家事も料理も上手で靴磨きが天才的だったから採用したんだけど」
はい心配して損した。
アイツもう俺の靴舐めたいだけだろ。そもそもなんで俺の靴を舐めるの? もう完全に俺よりも俺の靴のことの方が好きそうだったよあの子?
お家取り潰しからその足で入学式で自分をボコった男の家に使用人として自分を売りに来るメンタルどうなってんだ?
「ま、まぁ……それくらいならね? もう慣れましたよ」
「そうだぞ。これから主にお前のせいでこんなことばっかになるだろうからな」
「言うて義姉さんも俺以上にトラブル呼び込んでません?」
「……おーい。シャル、お茶ー」
明らかに返す言葉がなかったなこの人。
お茶を濁すというか、お茶で濁すと言わんばかりにメイド服に身を包んだシャルロッティを呼び付けて、お茶を淹れさせて。
「おい待て、義姉さん。シャルロッティ」
「どうした?」
「どうしたんですかハバキくん。お茶嫌いでした?」
なんか当然みたいな顔でシャルロッティは給仕してるし、義姉さんは亡国とは言えお姫様であるシャルロッティを使用人にしてるし、これっていいの?
「本人がしたいって言うんだから別にいいだろ」
「そうですよ。私はハバキくんに命を救ってもらった身。この家の為ならば、何でもします!」
「いいんですか……?」
元気いっぱいで張り切ってるシャルロッティ。
こんな可愛いメイドさんならば確かにいてくれると嬉しいけれど、一国のお姫様をこの扱いとか本当にいいんだろうか?
「心配するな。俺も一緒だ」
そうして俺の後ろから現れたのは、何故かシャルロッティと同じメイド服を身に付けたアニキスだった。
美少女であるシャルロッティが身につけるからこそ映える衣装は、筋肉モリモリスキンヘッドのマッチョが着るとなんかの拘束具にしか見えない。
「あの……なんで、その服」
「……可愛いものが、好きなんだ」
「そっかぁ」
まぁ、趣味は人それぞれだからね。
とりあえず早く学院に戻れねぇかなと、騒がしさしかない実家の惨状を省みてお空を見ながら俺は思った。
改めて考えると、学院に入学してからここまでは激動でしかなかった。
しかしその結果として得たものは沢山ある。受肉降魔2体との契約とか、道祖のやばい娘さんに目をつけられたりとか、うちにキャラの濃い使用人が一気に4人も増えたりとか。うん、トータルで見るとマイナスしかねぇよ。負を取得してるんだよ。
しかし、さすがに受肉降魔を倒したともなれば俺の評価も変わるだろう。
アラシ先輩との契約で、彼女の国家転覆に付き合うことになった以上詳しいことは表に出ないだろうし、俺は今度からは受肉降魔を倒した英雄なのだから。
きっと次学院に行った時は、もうモテモテのハッピーライフが始まるんだ。色々あったが、ようやく俺のチートハーレムが始まるという訳だ。
出来れば彼女とかは5人欲しい。そして支離滅裂な言動をしなかったり、靴を舐めてこなかったり、ちゃんと女の子がいいな。
「ふっ、おもしれー妄想」
「勝手に部屋に入ってくるな変態ホモ受肉降魔メイド」
「ふっ、おもしれー呼び名」
「ホントだよ」
一応表向きの立場は使用人のくせに堂々と主人の部屋を鍵も開けずに侵入してくるおもしれーくん。使用人としてどうなんだ? と思わなくもないが、それは受肉降魔に言っても無駄な事だろう。
「だいたい妄想とか言うな。きっと今度から俺はモテモテだぞ」
「……真面目に答えると活躍したからと言ってすぐに異性に言い寄られるほど人間の心は単純じゃないと思うよ」
「急に真面目なこと言うのやめろ。夢を見ることくらい自由だろ」
今のところ、俺のことを好きって言ってくれてるのおもしれーくんとアラシ先輩だけで100%受肉降魔という悪魔ハーレムだからな。
アラシ先輩はハーレム要因って言うよりは完全に違う独自ポジションに立ちつつあるし、ここから頑張ってハーレムを作っていかないといけないのだから気合いも入ってくる。
「……そういえば、俺の知らないところで勝手に別の受肉降魔、それも『王』の一角と契約した?」
そういえば、アラシ先輩との契約のことは勝手に把握してると思っていたから伝えてなかったけれど、もしかしてこれってやばい感じだろうか?
そもそもアラシ先輩は正確には受肉降魔ではなく、受肉降魔の力を持つ人間だからセーフかなって思ってたんだけど。
「いや、二重契約なんておもしれー男……」
「お前ワンチャン俺が何してもそれで許してくれる節ない?」
返答はせず、おもしれーくんはニッコリと笑みを浮かべるだけだった。
多分本当に何やってもおもしれーで流してくれる気はするんだけど、万が一流してくれないと俺のケツがぶち抜かれるから気軽に試せるものでもない。
「あぁ、でも一つだけ気をつけて欲しいことがある」
「なんだよ。ケツは常に綺麗にしとけとか?」
「完全に降魔の王をケツ狙いのホモ扱い……おもしれー……」
「お前はケツ狙いのホモだろ。それで、何に気をつければいいんだよ」
「多分俺じゃない方の降魔が特殊なんだろうが、本来降魔との二重契約はその時点で
おいそれ早く言えよ。
もしかしたら気付かずに契約して爆散して死ぬことになってたかもしれないだろ。危うく死因がアラシ先輩のおっぱいになってたわ。
「降魔との二重契約なんて、そんなおもしれー奴今までいなかったからな」
「そもそも受肉降魔2体が同時に鉢合わせるなんて俺の知る歴史書でも起きてねぇよ」
「おもしれー状況……と言いたいんだが、実はあまり面白くない」
なんでもおもしれーと言うイメージがあったおもしれーくんが、なんと面白くない、と真面目な顔でそう告げた。
さすがに俺も巫山戯て聞いている場合ではないと思い、姿勢を正して彼の話に耳を傾ける。
「特殊な状況と言えど、降魔との二重契約が響いたのか今君の体はなかなかおもしれーことになっている」
「なになに? モテやすくなるとかそういうやつ期待していい?」
「……不安定な契約が響き、今の君は魔術的な契約を例え人間との間のものであろうとも複数重ねると降魔との二重契約と同条件になりかねない」
契約、というのは降魔とのそれでなくても人間の日常生活、魔術概念の中で結構登場するものだ。
「つまり俺は誰かと契約をし過ぎると、死ぬかもしれないってことか?」
「そういうこと。でも多分死にはしないかな。それに契約って言っても簡単な口約束とか、取り決めとかでは発動しないと思う」
じゃあどんな時にその条件を満たしてしまう恐れがあるのか。
「恐らく、
「そんなピンポイントなことある?」
それって、つまり。
ハーレム作るったら……死ぬってことじゃん。
待て、まてまて。
おもしれーくんとの契約は解除方法がいまいち分からない。だから解けるとしたらアラシ先輩との契約の方だ。
内容を大雑把にまとめるなら、『降魔七階の全てを討伐』することだ。
つまり、これって……。
「降魔七階をお前含めて全滅させるまで、俺は恋人を作ったら股間が爆散して死ぬ……!?」
「……ふっ、さすがにかわいそーな死に方」
降魔七階って言ったら、正真正銘のバケモノ。
大災害の顕現、何故か俺の周りに2人受肉しているアレだ。今回倒した上級降魔とは比較にならない強さ、狡猾さ、隠匿性を持つ存在。
それを7体、全て倒さなければ俺は女の子と恋仲になることすら許されないというのか!?
どこだ……?
どこで俺の人生間違えてしまったんだ?
頭に浮かんだのは、入学式で全員ボコって頂点に立ったあの時。思えばあそこから何もかもおかしくなったのだ。
力さえ見せつけりゃあとりあえずモテるんじゃね? と安易な考えで義姉さんの考えに乗った、あの時点で俺は全てを間違えたんだ。
「…………頑張れ。明日はきっとおもしれーことになるよ」
「これ以上なってたまるか……!」
嗚呼……。
真の実力はギリギリまで隠しているべきだった。
後悔しても、もう遅い感じ?
ここまでご愛読ありがとうございました。
チートハーレム杯中に終わらせる予定でしたが、ちょっとオーバーしてしまいました。
とりあえず完結です。
でも、思った以上にたくさんの感想(主におもしれーくんに)とか評価を頂いたので、現金な話ですがもしかしたら何か追加の話を書きに戻ってくるかもしれません。
ひとまずは、改めてここまでありがとうございました。