真の実力はギリギリまで隠しているべきだったかもしれない   作:ちぇんそー娘

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更新速度上げすぎてもはや生前葬なので感想いっぱいくれると豪華になって嬉しいです。潰れた福丸小糸みたいな声出しながら頑張ってます。
あと2話だったものを1話にまとめたので2話分褒めてください。






逢瀬はブッキング

 

 

 

 

 

 

 アニキスとシャッティが急に姿を消してから4日が経った。

 でもこの学院、生徒が急に消えることとか良くあることらしくてあまり騒ぎにはなっていない。カサネ先輩は捜索の手伝いとかさせられてるせいでめちゃくちゃ不機嫌そうだったけど。

 

 でも、アイツらの事だからそのうちひょっこり出てくるだろうから特に心配とかはしていない。

 唯一問題があるとすれば、学院で友達があの二人除くとおもしれーくんしかいないことだろう。なのでめちゃくちゃ寂しい。おもしれーくんは良い奴だけど語彙がおもしれーしかないので会話が恋しんだよ。

 

 あとなんだっけな……おもしれーくんの名前。

 教えてもらったのに思い出せないのでちょっと自分から話しかけづらい。もうおもしれーくんで頭が覚えちゃってるんだよ。

 

 

 そんなわけで、こんなところにいるわけが無いと分かりつつも俺は貴重な休日に街に2人の捜索に来ていた。

 

「休日まで友人の為に割くなんて……ハバキくんってばと〜っても友人思いだよね〜」

「すいません、なんでいるんすかアラシ先輩」

「だって婚約者だし〜。君のことはなんでも知りたいから」

 

 おかしいな、今日出かけることは誰にも言ってないはずなのになんで普通にいるんだろう。もう俺の全て知ってないかこの人? とりあえず部屋に帰ったら盗聴器とかないか探して……。

 

「部屋に何か仕込んだりしてないから安心して〜。愛する2人は以心伝心、ってやつだよ〜」

「今まさに一方的に読み取られてるんですよ」

「まぁまぁ、ハバキくんだって私みたいな可愛い女の子とデート、嬉しいでしょ〜?」

 

 そう言って可愛らしいポーズをとるアラシ先輩だけど、あまりに自然な読心が怖すぎるんだよな。

 第一、今日の俺はアニキスとシャッティの行方を探すためにここに来ているんだ。

 いくらアラシ先輩が普段の制服ではなく、ただでさえ長い足がさらに長く見えるパンツスタイルとお腹とか胸元がチラチラ見えるようなカジュアルな服をうぉでけぇ。この人胸デカイよなうん。めちゃくちゃ美人だし。しかも俺の事が好き。最高か? 

 

「よーし、それじゃあハバキくんの同級生ちゃんを探しに行こ〜☆」

「はぁ……じゃあ俺は向こうで聞き込みとかするんでアラシ先輩は」

「えぇ〜! 2人で回ろうよー! 私達まだお互いのこと全然知らないんだから、仲良く2人で〜!」

「効率悪いじゃないですか」

「やだ〜!」

 

 駄々を捏ねられても、どれだけアラシ先輩が可愛くても目的が目的なのだからさすがに効率を落とすわけにはいかない。

 そう言おうと思った時、アラシ先輩は俺の腕に手を絡めて、胸を押し付けてきた。

 

「──────ッ」

「これならどう?」

 

 この人にはプライドとかないのか? こんなに簡単に自分の身体を売るような行為を行えるなんて、魔導九家の人間としてどうなんだ? ハツネが見たらぶちギレそうぉ柔けぇ。え? 人体でこのやわらかさって許されるの? なんで俺の胸板はこんなに硬いのにアラシ先輩のはこんなに柔らかいんだ。不公平だから俺も柔らかくして欲しい。

 

「言ったでしょ? 私、君のことを知れるなら自分のどんなものも差し出せるよ。か〜わ〜り〜にぃ、ハバキくんも私にぜーんぶ、教えて欲しいな〜」

 

 そう言う先輩の目に、恥ずかしさとかそういう感情は一切ない。

 この人は単純に、自分の目的の対価として本当に自分の全てを差し出せるタイプの人なんだろう。

 ある意味でめちゃくちゃに純粋で、めちゃくちゃ純粋に俺のチート能力(ちから)にしか興味が無い。そう考えると複雑な気持ちになる。

 

 いくらチート能力で無双してモテモテになろうとしてるからって、やっぱり惚れられるなら中身で惚れられてぇよ……。わがままだけど。

 

「……とりあえず、今は2人の痕跡を探しましょう」

「ぶ〜、わかったわかった。さてと、じゃあ私は向こうで探すね〜」

「え、2人で一緒に……いや、はい。お願いします……お願いしまぁす!」

「なんで泣いてるの〜? あは〜、ハバキくんって全然分からないから好き〜」

 

 腕に残る柔らかな感触に思いを馳せながら、俺は普通に手伝いをしてくれる意外と常識のあったアラシ先輩にまた複雑な感情にさせられていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「当然だけどここに来た様子はないね〜」

「そうですねぇ」

 

 ベンチに座り、本日の徒労を思い出して俺は大きくため息を吐いてしまい、手伝ってもらった身分でこんなこと失礼だと思って慌てて口を抑えるが、アラシ先輩は特に気にすることも無く前髪を弄りながら遠くの鳥に目を向けていた。

 

 アラシ先輩の言う通り、俺達が調べられる範囲のことなんてとっくに捜査されてるに決まってるので何も見つからなかった。

 

「すいません、無駄な時間とらせちゃって」

「ううん、ハバキくんと一緒の時間は楽しかったから全然無駄じゃないよ〜」

「一緒って言ってもほとんど分かれて探してましたけどね?」

「アイス美味しかったし」

「遊んでんじゃねぇかアンタ」

 

 あは〜と誤魔化すように笑うアラシ先輩。

 何もかも独特でまるで宙に浮いてるような不思議な人だ。

 

「でも一緒だから楽しいってのはホントだよ〜? 今日は離れて行動してたけど、2人で協力して探したでしょ?」

「それはそうですけど」

「それがいいの。君と同じ考えを持って、君と同じ目的で行動する。それって、ただ2人で一緒にいるよりもずっと相手のことを思い、考えて過ごしてると思わない?」

 

 相手がどうなっているか、何を考えているか。

 分からないなりに考えて動くことは相手をより深く知るために必要なことだ、と。

 

「……とか、カッコつけて言ってみたり〜?」

「え、やばい。普通にめちゃくちゃカッコイイですアラシ先輩」

「ホント〜!? カッコイイ? 私の事好き〜!?」

 

 浅い考えかもしれないが、どんなことにも自分なりに意味や答えを見出そうとして動き、しっかり考えて生きているって姿は俺は普通にかっこよく感じる。

 しかも可愛くて優秀とかこんなの好きになっちゃうに決まってるじゃん。

 

「私は〜ハバキくんのこと好きだよ〜?」

「アッ……あー! 俺の才能がでしょう? そう言ってくれないとマジで好きになっちゃうのでやめてください!」

 

 くそっ、ダメだ。この人顔が良すぎる。意識をしっかり持たないとこの俺のことが好きでかっこよくて可愛くて優秀な人のこと大好きになっちゃう。

 何も問題なくね? 

 

「うーん、ハバキくんってカサネ先輩の言ってた通りの人だな〜」

「カサネ先輩俺の事なんて言ってたんですか?」

「童貞の見本」

 

 あの義姉さすがにライン超えてるぞ。かっこいい先輩からいきなり童貞とか言われると男の子は心臓止まっちゃうんだぞ。俺はチート能力持ちなので鈍い悲鳴をあげ、止まった心臓を叩いて無理やり動かすだけですんだが。

 

「すいませんどの辺が? どの辺が童貞なんですか? いえ知りたい訳じゃないんですけど……後学のため、優しく言葉を選んで言ってください」

「そのまんまだよ。人を好きになるのにはかっこいいとかそう言う理由が必要とか思ってそうなところ〜。ハバキくんって恋愛小説みたいな恋を神格化してるでしょ〜。相手の内面に惹かれて、色んなところを好きになって両思いになるみたいな!」

「ウギッ」

 

 やばいぞこの人、下手に喋ると俺は殺される。とんでもない言葉の切れ味持ってきてる。童貞に優しそうで全然優しくない先輩だ。

 

「別に悪いことじゃないと思うから安心して〜。でもぉ、私は人を好きになるなんてそんな特別な理由いらないと思うな〜」

「はぁ……はぁ……それは、どう言う?」

「これもそのまんま。きっかけなんて顔でも、助けてもらったことでも、体とかお金持ちだからとか、すっごい能力を持ってるからでもなんでもいい。大事なのは相手にどれくらい興味があるか。どんな理由でも好きって気持ちに優劣はないんだよ」

 

 私も恋人なんてできたことないけどね〜、と言っているが、確かにと思った。

 アラシ先輩にとっての好きとは、興味を持った相手をどれだけ知りたいか、ということなのだろう。

 

「つまりそれは俺の強さの理由を知れたらもう好きじゃなくなると?」

「うん」

「やだ俺すぐ捨てられちゃうじゃん」

「え〜? 顔で好きになったり性格で好きになったり体目当てでも飽きたら好きじゃなくなるでしょ〜?」

「やめてくださいよ俺はもっと恋愛に夢を持ちたいんです。末永くお付き合いする夢を見せてください」

「ならさ、見せてよそんな夢。一生をかけても私が知悉しきれないような、魅力的な男ってところをさ」

 

 アラシ先輩はいつものようにあは〜、とは笑わなかった。

 その表情の全てを覚えるように俺の目をじっと見つめ、ほんの少しだけ口角を上げる上品な笑い方。

 

 おいおい、こんなの反則だろ。

 俺この人の事、めちゃくちゃ好きになっちゃうよ。アラシ先輩の理論で言うなら、今俺先輩に興味津々だもん。

 

「アラシ先輩、俺……」

「あ、そういえばさっきカサネ先輩から聞いたんだけど〜、ハバキくんが探してるお友達お2人、戸籍が偽装されてたらしいよ〜」

「…………今言います!?」

「今探してるんじゃないの?」

 

 その通りだけど! 

 なんか今いい雰囲気だったのに……やっぱりこの人分からないな。とはいえ結構重要な情報だ。

 外国から留学生が来たりなんて珍しくもないが、少なくとも2人は名前からしてこの国の人間じゃなかった。

 偽装していたとなると良い捉え方をするなら、亡命などになるだろう。それがバレて今は何処かに逃げているとか? 

 だが悪く捉えると……。

 

「スパイ、って可能性〜?」

「いやいや、うちの学校は名門とは言え潜り込ませる理由とかあります?」

「う〜ん? ハバキくんじゃない? 強い! 秘密が欲しい! みたいな」

 

 ぐうの音も出ない正論出てきちゃったよ。

 えぇ……じゃああの二人も俺の力目当てで擦り寄ってきたってこと? さすがにそうなるとショックがでかいぞ。

 

 

 

 ちょっと落ち込んで視線を下げようとした時、視界の端で誰かが路地裏に入っていくのが見えた。

 背丈は俺よりもかなり低く、同世代か年下の女子だろうか。そして彼女を追うように何人かの大柄な男性と思われる人影も路地裏へと入って行く。

 特に、追っている方は明らかに魔力の隠し方やらが一般人ではない。

 

「先輩」

「ん〜? ハバキくんの探してる子ってあの子なの〜? 見つかってよかったね」

「いや、違うかもしれませんが明らかに怪しかったですよね」

「そうだね〜」

 

 おかしいな、これは2人で一緒に様子を見に行く流れだと思ったんだけれど。

 

「アラシ先輩」

「なに〜?」

「小さい子が怪しい大人に追われてたらどう思います?」

「へぇ〜」

 

 この人アレだ、興味無いことには本当に興味無いタイプの人だ。既にさっきの光景を忘れたと言わんばかりに今の彼女は空を飛んでる鳥をぼーっと見つめている。

 かと言って俺の魔術は一節詠唱の低コスト以外だいたい街中でぶっぱなすとちょっと……なやつしかないんだよな。

 

「先輩、欲しいものとかあります?」

「君の睾が」

「俺が出しても死んだり生命活動に支障をきたさないものでお願いします」

「うーん、血かな? もちろん死なない程度の量でいいよ〜」

「じゃあ()()()()()()()()摂って、痛ぁ!?」

 

 俺がそう口にするとアラシ先輩はほぼノータイムで何処からか取り出したぶっとい注射を腕に刺して血液を抜いてきた。

 

「カッコつけてる途中だったのに……」

「あは〜、研究サンプルゲット〜! それで? 私に何をして欲しいの?」

「さっきの子、もしかしたら危ない目にあってるかもしれないので一緒に様子を見に行って、必要があれば助けましょう」

「判断が早いね〜。うん、そういうところ好きかも〜」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

「くそ……くそくそくそくそ! クソォ!」

 

 口からは怨嗟の声しか、目から悔しさの籠った涙しか出てこない。

 準備は万端だった。切り札だってあった。気持ちだって、相討ちすら覚悟していた。

 

 足りないのは純粋な力だった。

 用意した札を全て真正面から打ち砕かれて、従者に庇われて情けなく逃げ延びた。

 

 次元が違う、格が違う、存在規模が違う。

 シャルロッティ・ニベルライトは己の弱さを嘆いていた。

 

 本来の計画であれば、潜伏する敵を誘き出し、誘導してこの国の軍とかち合わせる。その上で自分の『切り札』を使う。ここで彼……惟神ハバキが巻き込まれる形でも参戦してくれれば最高であった。

 

 結果から言えば、それは初期段階で失敗した。

 そもそも誘導する暇もなく、シャルロッティとアニキスは敗北したのだ。

 

「っぅ……毒か……」

 

 解毒の術式はあるが、複雑な毒ともなるとかなり高度になるために集中力が必要。

 4日間ろくに何も食べずに逃げ惑い、既に気力も体力も魔力も尽きかけているシャルロッティに残された自由は、死に方を選ぶことだけだった。

 

 このまま敵に捕まるか、ここで自分で命を絶つか。

 死体は利用されるだろうが、それでも生きたまま殺人機械のパーツにされるよりはマシだろう。

 

「……考える時間はない、か」

 

 背後から聞こえてくる足音は、まるでチェックメイトと言ってくるようだった。

 迷いはあった。けれど、その震えを無理やり押さえ込んでシャルロッティは懐に忍ばせていた短剣を取り出して、己の首に向けて──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──────魔導錬成」

「え、使うんですか!?」

 

 建物の屋根を飛び移り、標的を目に収めた瞬間にアラシ先輩はなんの躊躇いもなく、己の魔力を圧縮し始めた。

 

解糸(analyse)……んー、めんどい! 詠唱破棄(cut)!」

「待って待って何してるの!?」

「詠唱って長いから私嫌い〜!」

 

 まるまる詠唱をすっ飛ばして、先輩の手には青色の植物が絡み付いたような見た目をした弓矢が現れた。

 

 魔術の詠唱とは、短い単語を口にしてるだけのようだがその短い言葉を口に出す過程で頭の中で様々な事象整理、簡単に言えば計算のようなものを行っている。

 詠唱が長くなれば魔術の効果も上がるが、扱うのは難しくなる。逆に言えば詠唱を長くすることで魔術は強くなるのだ。

 

 まぁ長すぎると当然言ってる間にやられるし、節を増やすと別の節と効果を打ち消しあったり狙いがズレたりするのでみんな二節か三節位をメインにしているが。

 

 つまり、詠唱をどれだけコンパクトにしつつ強力な魔術を行使できるかが現代魔術の流行りなのだ。

 

 

 それをこの人、威力強度全振りでクソ長い詠唱必須の魔導錬成の詠唱を丸々カットしやがったよ。

 こんなのチート能力者である俺ですら知らないんですけど!? 

 

 

「よし、断蒼(ブルーローズ)現出完了! 合図で飛び込んで!」

「え? 本当に詠唱すっ飛ばしたの何やったか説明ないんですか?」

「あは〜、企業秘密☆」

 

 

 地上にいる怪しい男達も俺達の接近に気が付いたようで、何か術式を出現させて……いや待て、もうみんな待って。なんだあの魔力量。俺ほどじゃないけれど、数人併せたとしても規格外のとんでもない熱量が収束してるんだけど。

 

「え、先輩あれやばくないですか? 打ち勝てます?」

「無理無理〜。ハバキくんほどじゃないけどあんな魔力量に勝てるわけない〜」

「じゃあさすがに守りますよ!? あれ受けたら死にますからね!?」

「いいから、私を信じて突っ込め〜!」

 

 しかしここまで来てごちゃごちゃ言っても始まらない。

 先輩を信じ、俺は熱光線の射線から外れながら追われていた子の方へと飛び込み、それと同時に先輩へと向けて熱光線が放たれた。

 

 見掛け倒しではなく、その光線に込められた魔力は俺程ではないがとんでもない量で掠めるだけでも体が消し飛ばされそうな攻撃だった。

 

 

 

「あは〜……つまんない攻撃。もう全部わかっちゃったから、興味無〜い。消えちゃっていいよ」

 

 

 

 それに対して先輩は、ただ弓矢を引いて細い矢を1本放っただけ。

 込められた魔力も見た目も何もかもアラシ先輩の魔術が敵う要素はどこにもなく、細い矢ごと業火が先輩を飲み込み灰に変えてしまう。

 

 そんな未来は、訪れなかった。

 

 矢が光線に触れた瞬間、大量の魔力と共に先輩に迫っていたそれはまるで()()()()()()()()()()()()()()()()消えてしまった。

 

 何……今の? 

 俺ですら何をしたのか分からないのだから、敵も何をしたのかわからず無機質な立ち姿にすら動揺が見える。

 

 

 まぁそのおかげで、こうして追われていた子は既に俺の腕の中にいて、アラシ先輩の方に意識を向けている変なやつらの真横から攻撃をぶち込める訳だが。

 

光芒(shine)

 

 この路地裏の長さと幅は既に上から降りてきた時に把握している。

 逃げ場のないように、されど表通りまで飛び出さないように、しっかりと調整して俺はお得意のビームをぶち込んだ。

 

 光が晴れた時、そこには誰の姿もなかった。

 焼き払った、と言うよりはギリギリで逃げたという印象。しかし危機は去ったのは確かだろう。

 

 

「おつかれ〜。いやーすごい魔力量。一節詠唱であんなことやるなんてねぇ」

「俺よりも先輩の方がやばいですよ。その魔導錬成何やったんですか?」

「えへへ〜。さすがに秘密かなぁ? お互いまだまだ知らないことだらけということで。それより、そっちの子は?」

 

 追われていた子はどうやら衰弱して意識を失ってしまったようで、ぐったりして呼吸も荒い。

 そして、体格的にかなりシャッティに近い。もしかしたら、と思い恐る恐る深めに被ったフードを外す。

 

 

「…………女の子、だね」

「え、あー……ホントだ」

「あ〜胸見て言った! やらし〜」

 

 

 髪色や顔立ちはシャッティによく似ているが、この子は女の子だ。

 壊れかけの軽鎧の下の胸には確かに膨らみがある。顔立ちとか髪色はほとんど一緒だが、シャッティは男なので別人か。

 

 そして、街中であれだけの魔力量の砲撃が空に向けてでも放たれれば誰だって気がつく。

 遠くから人の騒ぎ声が聞こえてくる。

 

「とりあえずこの場を離れて病院、ですかね?」

「いや、衰弱とかはどうしようもないけどそれ以外は私がどうにかできるからまずは確認しよう。その子が()()()()()()()()()()。だって、ここ街中だよ?」

「……あー、確かに」

 

 街中で追われているのであれば、警察なりなんなりに駆け込んで助けを求めることが出来たはずだ。

 それをしないということは、警察などには頼れない事情があるということだろう。

 

「とりあえずカサネ先輩に連絡して〜、安全な場所用意してもらおう〜。その子、ちょっと面白そうな魔力してるし〜」

「なんでカサネ先輩なんですか?」

「一番権力と信頼を両立してる人〜。あと迷惑かけてもあまり心が痛まない」

「割と最悪な理由ですね」

 

 しかし確かに権力と信頼を両立してるという意味ではカサネ先輩は最適だろう。

 とりあえず、人が集まってくる前にここから離れて、アラシ先輩と一緒にこの子の応急処置でもしておこう。

 

 ……それにしてもこの子、シャッティによく似てるな。

 しかしシャッティは男の子。体格が華奢で声も高くて可愛らしい顔立ちをしているが、男の子だからこの子は残念ながら別人だ。アイツら一体どこに行ったのだろう。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 アラシから連絡を受け、惟神カサネはちょっとキレながら一応駆けつけた。

 あの後輩は自分を便利な駒扱いしている節がある。しかし惟神の人間として「ちょっと事情を抱えてそうな女の子がいる」と言われたら助けないわけにもいかない。

 加えて現場にハバキがいると言うのだから、駆けつけないわけにも行かない。

 

「さて、この辺にいると言われたが……」

 

 とある公園にたどり着き、周囲を見渡すとすぐに見慣れた2人の姿が……

 

 

「あは〜、初めての共同作業〜。ハバキくん上手い上手い〜」

「そう言う言い方やめてください」

「ほら。2人の愛の力でこの子も元気に産まれました〜」

「だから……あ、カサネ先輩! こっちです!」

 

 

 

 なんかアラシが小さな女の子を抱きかかえ、ハバキがそれを心配そうに見つめている。

 惟神カサネは、妄想力豊かな17歳の少女である。そんな彼女の脳みそはその光景を見てただ一つの単語を弾き出した。

 

 

 

 

愛の結晶できてる(NTR)ー!?」

 

 

 

 惟神カサネは、妄想力豊かな17歳の少女である。

 付け加えるなら、割と常識に欠けた妄想力は人一倍の17歳の女の子である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 








これチーレム期間中に終わらねぇな……ってなってますが頑張ります。
あとランキング1位ありがとうございます。



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