タイトルのまんまです。

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シンフォギア装者、声継晴香。

 

先の大事件、ルナアタック事変にて元凶を打破した4人の装者のうちの一人であり、墜ち迫る月の欠片を己の命と引き換えに破壊した英雄。

 

風鳴翼と共に戦い、立花響に勇気を与え、雪音クリスの帰る場所を作った彼女の死は、多くの者に悲しまれ、同時にある決心をさせた。

 

もう誰も失わないように、強くなる、と。

 

 


 

 

完璧ッ!まさに完璧ッ!これが我が逃走経路だァ!!

 

この世に産まれ19年、この晴香ッ!ようやっと戦いの日々からおさらばよッ!ハッハッハッハッハッ!!!

 

ふぅっ(冷静)

 

全く、思い返せば険しい道だった・・・。

 

シンフォギアの適合者になって翼や奏と戦って、奏の死後も2人で戦って、やっと来た新人と翼との間を取り持って、雪音ちゃんをウチに勧誘して、櫻井さんことフィーネにボコされて・・・。

 

だがしかし、それももうおしまい。落ちてきた月の欠片をぶっ壊して命からがら逃走!適当な離島に上陸して記憶喪失のフリ!日本語の代わりに英語を話す!

 

これで、『何らかの事故に巻き込まれた外国人』のキャラ付けが完成する!!!

 

幸い、黒がかった紫色の髪に藍色の瞳という外国人感満載の容姿に完璧なスピーキングで怪しまれることはなく、かわいそうなので居場所をあげようという田舎特有の人情に助けられて今に至ります。

 

あの日から結構な、といっても数ヶ月程度の時が過ぎ、私は島唯一の中学校に用務員として働かせてもらっている。偽名はギル、ベースの聖遺物の名前から取った。

 

機械に囲まれた快適生活はもう戻らないけれど、自然に囲まれた生活ってのも悪くない。10年くらいここにいようか。

 

「ギルさん、お弁当忘れてましたよ」

 

「あれ、ホントだ。ありがと、セレナちゃん」

 

この子はセレナちゃん。私の同居人で、同じ境遇の人物だ。境遇、とはいっても記憶喪失というわけではなく、幼い頃にいつの間にかこの島にいた捨て子らしい。

 

住む場所に困っていた私にシェアハウスを提案してくれた、正しく天使のような人。

 

あとめっちゃかわいい。

 

ともかく、そんなこんなで順風満帆な生活だったわけですよ。

 

うん、だった。

 

「ようやっと着きましたね」

 

「ウン、ソウデスネ」

 

ワタクシ、現在本州におります。

 

セレナちゃん、どうやら生き別れのお姉さんがいるらしく、つい最近そのお姉さんが島を訪れてきた。どうやって知ったかは知らないが、まー感動の再会だったのでエエ話しやなぁで終わろうとしたら、実はお姉さんは歌手で、ライブをやるから来てほしいとのこと。

 

ぶっちゃけ興味はなかったし、本州行きたくねぇしで断ろうとしたが、押しに負けてチケットを貰ってしまった。

 

で、後日よく見たらこれコラボライブで、相手は風鳴翼だった。

 

風鳴翼。

 

うん、まぁ、そういうこと。

 

あとは、あれだ。なんかお姉さん、マリアさんの私を見る目がちょっと怪しかった。もしかしたらなんか私に関する情報掴まれてんじゃね?大分ビビってる。

 

しかーし、ここで無理に断ろうものなら逆に怪しまれることは明白。私は敢えて敵陣に脚を踏み入れるのです。

 

私記憶喪失(偽)だし、ギアはとある理由で私にへばりついて離れないし、見た感じセレナちゃんは巻き込みたくないみたいだから強引な手は使ってこないだろうし。

 

翼のほうも、まぁ観客なんてそう細かいとこまで見れないだろうし、私どうせ死んだことになってるだろうし、まま大丈夫やろ。

 

そう思ってた時期が私にも(以下略)

 

「私は──私達はフィーネ、終わりの名を持つ者だ!!」

 

なーにしてくれちゃってんですかね。ほらもう隣でセレナちゃんが信じられないみたいな顔してますよ。

 

さてと、現状把握はしとこか。

 

ノイズが現れたってことは敵はソロモンの杖かそれに似た聖遺物を持っているのは確実。で、マリアさんがギア使ってるあたり、多分米国に関係してた。フィーネの名も使ってるしね。

 

米国まで敵に回してたってことは、これが個人組織だということになるわけで。これがまー厄介。ぶっちゃけ世界敵に回して安全に過ごせる場所なんて地上どころか空にもない。

 

それでもやるってことは、逃げ切れるあるいは隠蔽するだけの切り札があるって考えるのが妥当かな。

 

例えば、とんでもない破壊兵器とか、完全ステレスとか。

 

前者ならちょーーーーーーーーーー不本意ながら私が出れば無力化できる。けど後者ならお手上げ。なので絶対に参戦しない!!

 

以上!解散!

 

「会場にいるオーディエンスを解放する!」

 

あ、マジで解散?やったぜ。

 

 


 

 

「マリア姉さん、一体何をしようと・・・?」

 

あれから数日、島に帰ろうにもいろいろ気になって仕方ないと本州に残っている。幸い金には余裕があるので、あと2、3週間くらいは大丈夫だ。

 

情報収集を行って分かったことは、敵戦力は装者3人とパンピー2人であること、相手方が複数の聖遺物と抱えていること、昨日二課とフィーネが一戦やらかしたこと。

 

昨日の一戦、望遠鏡で見た限りだと多分戦ってたのは装者じゃなくて獣っぽい四つん這いのなにか。恐らくは聖遺物を喰らって巨大化、凶暴化していた。響ちゃんにぶっ倒されてはいたが。

 

やべぇのは響ちゃんの方。響ちゃん、あれ大分ガングニールの侵食進んでるね。いつかの暴走形態になってたし、喰われた腕生えてたし。

 

私みたいにはならんで欲しいね。

 

個人的には嬉しい情報もあった。それは、奴さんの逃げるための切り札が完全ステレスだったこと。乗ってた飛行機が唐突に消えたあたり、レーダーも視覚での発見も、聴覚による特定も不可能とみた。こーれ私役立たずです。参戦しなくてよくなったぜ。

 

は?米国エージェントマ?

 

マリアさんの関係者だから捕縛する?おいおいやめてくれよ。こっちだって探してるんだからさー。

 

銃まで持ち出してきて、穏やかじゃないなぁ。

 

いや、ほら、私ら一応パンピーよ?あんたら手出したらアメさん大変じゃない?

 

隠蔽する気マンマンですかそうですか。

 

・・・5人、セレナちゃん護りつつだとちょっとキツいか?いや、時間稼ぎさえできれば私は1人で逃げられるし、なんなら伸してもいい。

 

よし、やる───あー、ノイズが現れたの?よーし、逃げようぜセレナちゃん。なぁに安心したまえ。弾避けは慣れてんだわ、あのお転婆娘のせいでな。

 

皆に顔見られたくないってのは内緒。

 

さてと、しかしどうしたもんかね。奴ら、これからもセレナちゃんを狙ってくるだろうし、ホントなら二課あたりに保護してもらうのが妥当なんだろうけど。

 

「・・・ギルさん、お願いがあります」

 

ん?どしたん?

 

「私、マリア姉さんと話がしたいです。どうすればいいですか?」

 

すぅーーーーーー、はぁーーーーーーー。

 

無理、ではない。ノイズが現れたということは、近くにフィーネ側の何者かが潜伏してる可能性が高い。セレナちゃんが襲われそうとなれば、早急に保護してくれるはずだ。

 

ただし、それはあくまで人為的な発生の場合。もし今回が自然発生だとすると、確実に死ぬ。

 

安全かつ確実な方法がある確立できない以上、やめたほうがいいと言わざるを得ない。

 

いつか会えるさ。だから今は逃げよう。

 

「はい・・・」

 

 


 

 

権利も力もない以上、現象は情報収集が限界。最も、それすら米国までの追っ手のせいで満足に行えないが。

 

直近であれば、東京スカイタワーへのノイズの襲撃。あれが何を意味することかは分からないが、あちらの計画を妨げるような事件があったと納得させる。

 

ここまでの暴挙、奴らの計画も佳境と考えていいと思う。

 

その計画の目的が全く分からないのが不安要素。正直、私一人なら今すぐ日本から高飛びしてる。てか今もセレナちゃんを連れて飛びたい。それが一番安全だからだ。

 

しかし、セレナちゃんの意思は固い。ならば付き添ってやるのが恩返しというものよ。

 

それに、直近のノイズ騒ぎから数日、動くならそろそろだ。

 

ほーら来なすった。

 

『私は、マリア・カデンツァヴナ・イヴ月の落下が齎す災厄を───』

 

「マリア姉、さん・・・?」

 

言いたいことをまとめると、先のルナアタック事変で月が少しずつ落ちてきている。それを止めるために力を貸してほしい、と。

 

予想以上に大事だ。こりゃ覚悟は決めないとかね。

 

それに、泣きそうなセレナちゃんなんて見たくないし。この子は笑ってるのが一番だよ。

 

ひっさしぶりに使いますか、ギア。

 

 


 

 

「ごめんセレナちゃん、私いくつか嘘ついてた」

 

突然の告白だった。

 

「嘘って・・・?」

 

覚悟を決めたように、意を決してというように、その手の内に隠していたそれを見せつけるように垂らした。

 

「シンフォ、ギア」

 

懐かしく、そして酷く見覚えのある赤いクリスタル。それが意味するところは、装者。

 

「私の本当の名前は、声継晴香。魔鉱ギルガメスの装者だよ」

 

死んだはずの、月砕きの英雄が目の前にいた。




続かない


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