アンチョビが画面から出てきた   作:とにざぶろう

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2017年11月5日

 

 2017年11月5日。日曜日。

 

 一人暮らしのリビングで、アンチョビが眠っているのを見つけた。

 

「…………???」

 

 昨日は従姉妹の結婚式。

 地元の愛知まで出向き久方ぶりの親族と顔を合わせ、疲れ果てて埼玉の自宅へ戻った俺は、酒をかっくらいながらガルパンの劇場版を観て眠りについたのだった。

 

 それで、何故、自宅にアンチョビが?

 まだ寝ぼけているのかと冷蔵庫からボトルコーヒーを取り出して口に含んでみたが、やはり目の前のアンチョビは消えてくれない。

 

 いや、『アンチョビ』と表現してはいるが、冷静な頭で考えれば、彼女はアンチョビのコスプレをした一ファンに過ぎない。

 コスプレの完成度は相当に高く、身に纏ったアンツィオ高校の制服などは、市販のものでなくおそらくは手製だろう。

 

 彼女はこたつに倒れ込むようにして眠っているが、目を覚ます様子はない。

 

 俺が連れ込んだのか、それとも不法侵入か。

 

 さすがに前者であれば記憶も残っているだろうから、おそらくは後者だろう。

 とはいえ、どれだけ間抜けな泥棒だって、ターゲットの家のこたつで眠りに就くなんてことしやしない。

 

「あ、鍵をかけ忘れたとか?」

 

 それで彼女の方も部屋を間違えて入ってきてしまったとか?

 顔を合わせたことはないけれど、お隣さんという可能性だ。

 

 しかし玄関へ向かい確認してみたところ、問題なく鍵はかかっている。

 

 ――だとしたら、考えられるストーリーはこの辺りだろう。

 

 俺は鍵をかけ忘れた。

 部屋を間違えた彼女が内鍵をかけた。

 内装が似ていたせいでミスに気付かず、疲れていた彼女はそのままこたつで眠り込んでしまった。

 

 ……俺の部屋に似ているなんて、彼女も相当ひどい生活を送っているんだなあ。

 

 壁一面を覆い尽くす本棚。

 そこに並ぶゲーム、漫画、小説、CD、Blu-ray。

 床には同人誌タワー。

 空いた酒瓶に、Amazonの段ボール箱。

 

 彼女が目覚める前に多少なりとも片付けておかないと。

 

「……と、その前に、シャワーでも浴びるか」

 

 昨夜は風呂に入らなかったし、寝間着のままだ(フリースの上に着る毛布)。

 シャワーついでに着替えてしまおう。

 

 バスタオルと着替えを洗面室へ持って行き、シャワーを浴びる。

 バスタオルで水滴を拭い服を着て髭を剃ると、リビングの方から「うあああっ!?」と音の濁った声が聞こえた。

 

 目を覚ましたかとリビングの扉を開くと、その通り、彼女は座椅子の上に立ち上がり、大きく目を見開いていた。

 

「誰だっ!?」

 

 発せられた声が思いのほかアンチョビとそっくりで驚く。

 薄緑のツインテールを揺らしこちらを振り向いた彼女は、改めて見ると超がつく美人だ。

 綺麗に巻かれた縦ロールが映える。

 

「いや、あの、どうも貴女は昨晩、酔っ払ってうちに入ってきちゃったみたいなんですよね。あ、私、戸庭といいます。28歳です。どうか落ち着いてください」

 

 自分でもしどろもどろになっているのがよくわかる。

 

「落ち着いていられるかあ! どこだここは! ちゃんと説明しろお"お"お"っ!」

 

「えーっと、まず、ここは私の家です。朝起きたら貴女がリビングで寝ていたという状況なので、私もあまり話を飲み込めてません」

 

「……なにい? 本気か?」

 

「あ、はい。本気です。不法侵入なのではないかと疑ってるくらいですし。いえ実際その通りだと思うんですけど、ひとまず貴女の名前を聞かせてもらえますか」

 

「わたしはアンチョビ。ドゥーチェ、アンチョビだ!」

 

「そういうのじゃなくて、本名をお願いしたいんですけど」

 

「う…………安斎、千代美、です」

 

「いや、そういうのでもなくて」

 

「そういうのってどういう意味だあああああっ!」

 

 叫ぶ彼女はやはり音が濁る。

 濁点だらけの彼女の声はやはりアンチョビそのものだ。

 ファンだというだけでこれほど似せられるものなのだろうか。

 

 あぁ、ひょっとして声優の卵だったりするのだろうか?

 

「仕事は何をされてるんですか?」

 

「わたしは学生だ! アンツィオ高校で戦車道をやってるぞ!」

 

 どこまでもアンチョビになりきるつもりらしい。

 確かに、アンチョビが現実にいたらこんな風だろうという出で立ちだし、演じたくなるのも無理はない。

 

 年の方も――カマをかけて訊いてはみたが、働いているような年齢ではないだろう。

 せいぜい20歳くらいかと思う。

 

 俺が疑いの眼差しを向けているのに気付いたのだろう、彼女は少し棘をおさめ、座椅子に尻をつけた。

 

「なんとなく、嘘をついてる感じじゃないな」

 

 むしろ嘘をついているのはそちらなのでは、と言いたくなる気持ちをおさえ、「ホントのことしか言ってないですよ」と答える。

 

 彼女は、大きなため息と共に、

 

「何が起きているのかはわからないが、事態は複雑そうだ。冬の大会も終わって、わたしももう引退。あの子たちに戦車道の訓練をつけているところだったんだけどなあ」

 

 しみじみと、漏らすように口にする。

 

 大した演技力だ。

 全身に纏ったその空気は、声優はもちろん、女優にもなれるレベルだと思う。

 

 ――――。

 まさかとは思うが、本当に?

 

「……あの子たちって? 誰のことですか?」

 

 確かめるように、俺は質問を投げかけた。

 

「戦車道の後輩だ。ペパロニ、カルパッチョ、アマレット、ジェラート、パネトーネ――」

 

「アマレット……?」

 

 馴染みのある名前のなかに、聞き覚えのないものが並ぶ。

 

「ん? 知り合いだったのか?」

 

「いえその逆です。まぁそれは置いといて、じゃあ、アンツィオ高校ってどういうところなんですか?」

 

「おおっ! うちに興味があるのか! そうだな! まずアンツィオ高校は十九世紀にイタリア商人が――」

 

 ◇ ◆ ◇

 

 彼女はアンチョビだ。認めるしかない。

 

 一体何が起きているのか俺には理解できないが――特徴的な髪の色、声質、語り口、姿形、知識。全てが全て、彼女がアンチョビであると示している。一片の曇りもない。

 

 試しに「ちょっとそのウィッグ取ってくださいよ」と言ってみたらノータイムで「地毛だ!」と返された。感動した。

 

「アンチョビさん。ファンです。握手してもらって良いですか」

 

「え、ええっ!? 今更か! し、仕方ないなあ~」

 

 俺の言葉に応じて握手してくれるアンチョビは、とてもサービス精神旺盛だ。嬉しい。

 

「アンチョビさん、そこに座って待っててください。とりあえず飲み物買ってきますから。部屋のものにはあんまり触れないでくださいね。あぁ、漫画ならいくらでも読んでてくれて構わないですよ」

 

「飲み物を買ってくる? わざわざ買わなくても、わたしは何でも構わないぞ」

 

「この家には酒とチェイサー用の水しかないんですよ」

 

「そうか……生活習慣を改めた方が良いと思うぞ」

 

 自宅から徒歩1分のコンビニで適当なペットボトル飲料を五種類ほど購入して戻る。

 アンチョビは座椅子に座って『私の少年』を読んでいた。

 

「どうぞ、選んでください」

 

「買いすぎじゃないか? ありがとう」

 

 コンビニ袋の中から、彼女はボトルコーヒーを取り出す。

 

 俺はアンチョビの対面に座ると話を切り出した。

 

「まず、アンチョビさんに発表があります」

 

「と、突然どうした。やっぱりこれ、ドッキリか何かなのか?」

 

「驚かずに聞いてください」

 

 アンチョビが喉を鳴らす。

 

「ここは、アンチョビさんがいたのとは、別の世界です」

 

 俺は画面の向こうで何度も目にした「なあにぃいいいいっ!?」という反応を期待していたのだが、実際の彼女はぽかんと口を開けるばかりだった。

 

「別の世界? どういう意味なんだ?」

 

 なるほど、確かにこの言葉だけでは何一つ伝わらないだろう。

 

「本棚の、『私の少年』が並んでいる二つ下の段を見てください。そこに『ガールズ&パンツァー劇場版ハートフル・タンク・アンソロジー』という本がありますね」

 

「うん、あるな」

 

「手にとってみてください」

 

 俺の言葉通り、素直に本を手に取ったアンチョビは、表紙を見て「これって」と呟いた。

 

「西住みほさんです。あぁ、継続のミカさんなんかもいますね」

 

「……西住、漫画になるほど人気があったのか?」

 

「主人公ですからね。たぶん中を見るとアンチョビさんも描かれてますよ。この世界では、貴女がたの物語は『ガールズ&パンツァー』と呼ばれており、絶大な人気を誇っています。原作はアニメですね」

 

「……な」

 

 驚愕の表情を浮かべた彼女は、声を震わせて続きを口にした。

 

「な"あ"に"ぃ""い"い"い"っ!?」

 

 ありがとうドゥーチェ。

 

 ◇ ◆ ◇

 

 一つ一つ、探り合うように互いの認識を共有していった。

 

 ガールズ&パンツァーとは。

 戦車道とは。学園艦とは。大洗とは。

 アンツィオ高校とは。アンチョビとは。

 

 俺の見た世界と彼女の見た世界は同じだった。

 けれど、彼女はその世界の渦中にいて、俺は外側にいた。

 

 彼女はアンチョビ。

 アンツィオ高校のドゥーチェ、アンチョビなのだ。

 

 話が一息つくと、彼女はばったりとこたつ机へと倒れ込んだ。

 

「朝もそうやって寝てましたけど、机拭いてないから汚いですよ」

 

「ショックを受けてるんだ……そっとしておいてくれえ……」

 

「まぁ、気持ちはわかります」

 

 自分は物語の中の、創られた存在だと判明したのだ。 

 そりゃあしんどいだろうと思う。

 

 俺だって、今いるこの世界が小説の中の1ページだと言われれば、きっと自分の存在意義に苦しむ。

 

「夢か? 夢なのか? ちょっとほっぺたつねってくれないか」

 

「自分でやってください」

 

 彼女は右頬を自分で引っ張る。

 が、「痛い」とすぐにやめてしまった。

 

「ドゥーチェ、うどん好きですか」

 

「嫌いじゃない……」

 

「ひとまず、お昼ご飯にしませんか。近くにうまいうどん屋があるんです」

 

 俺が誘うと、彼女は低く「行く」と言葉を返した。

 

 ◇ ◆ ◇

 

「いらっしゃ――」

 

 うどん屋の主人は、俺の背後に目を向けた途端に声をつまらせた。

 が、無理矢理に「いませー」と言葉を繋げると、俺たちを二人がけの席へと案内する。プロだ。

 

 注文を取りに来たおばちゃんは「コスプレ? コスプレ?」と楽しそうに訊いてくるので、「いやまぁそんなところかもしれないですねー」と適当に返しておいた。

 

 おそらくおばちゃんは、アンチョビの着ているアンツィオ高校の制服のことを指しているのだろう。

 確かにこれは、我々の世界では高校の制服と言うには苦しいところがある。

 

「服、買わなきゃいけないですね」

 

「ああ、そうだな。……て、そういえばわたし、お金も持ってないんだが」

 

「良いですよ、出しますよ。それなりに収入はありますし」

 

「すまん。落ち着いたら、わたしのできる限りのお礼をするからな」

 

「あんまりそういうこと言わない方が良いと思いますよ」

 

 うどんが届き、互いに箸へ手を付ける。

 薬味をからめた透き通るような麺が美味だ。

 

「アンチョビさん、これからどうするんですか」

 

「帰る方法を探す。それしかないからな」

 

「具体的に、どうやって?」

 

「……うーん、すぐには思いつかないが、まぁ、何とかなるだろう」

 

 ごにょごにょとアンチョビは語尾を弱める。

 

 彼女もわかっているのだと思う。

 身よりも何もない、お金も持ち合わせていない彼女が、この世界でたった一人で生きていく術はない。

 帰る方法を探す以前の問題だ。

 

 今の彼女は、何もできない。彼女には助けが必要なのだ。

 

 そして、彼女の事情を理解し、助けになれる人間など、俺をおいて他にない。

 

 その事実は、俺にとって大層嬉しかった。

 

「アンチョビさん。なんでしたら、うちを拠点にしてくれても構わないですよ」

 

「え?」

 

 アンチョビの顔に生気が増す。

 良かった、嫌悪感を示されたらどうしようかと思った。

 

「アンチョビさんさえ宜しければですけど。一人暮らしにしては広めの物件を借りてますし」

 

 物持ちなので漫画と小説を押し込めただけの部屋が一つ余っている。

 中身を整理すればなんとかあの部屋は空けられるはずだ。

 

 アンチョビは「うーん」と唸り、返事をかえす。

 

「それは助かるが。迷惑じゃないのか」

 

「いえいえそんな。迷惑というかむしろなんというか」

 

 これ以上言葉を続けるのはやぶ蛇だろうからやめておく。

 

「――まぁ、助かるなら、決まりですね」

 

 悩んだところできっとアンチョビの答えは変わらない。

 だからさっさとそう言ってしまうと、彼女もすぐに言葉をかえした。

 

「……うう、なにからなにまで世話になって申し訳ない。絶対にお礼はするからな!」

 

「いえ、ホントお礼とか良いんですけど」

 

「あ、それだ。そろそろ、それをやめよう」

 

「はい?」

 

「敬語だ敬語ー。わたしの方が年下なのに敬語とかおかしいだろー?」

 

 あぁ、まぁ確かに。

 こちらとしては全国的な有名人と接してる感覚なのだからそりゃあ敬語になろうものだが、向こうからすれば違和感もあるのか。

 

「じゃあ、はい。ここからはタメ口で。これで良い?」

 

「うん、良いぞ」

 

 アンチョビは笑顔で答える。

 

「じゃ、そうと決まれば時間もない。とりあえず日用品を揃えなきゃいけないよな。俺が買うのも何だから安斎さんの方で見繕ってきてよ」

 

「安斎じゃない! アンチョビだ!」

 

「あぁ、そこはアンチョビで通すんだ。了解です。はい。アンチョビさんで」

 

 器はお互い空になっている。そろそろ席を立とう。

 

「行きますか」

 

 アンチョビに声をかけると、店主に伝票を渡し金を払う。

 

 店を出る前に、うどん屋までの道程でなんとなくアンチョビが寒そうにしていたのを思いだし、彼女へコートを手渡した。

 目立つ制服も少なからず隠せるだろう。

 

「店を出て右手へずっと歩いて行くと――ええっと、でっかいショッピングモールがあるから。アンチョビさんはそこで必要そうなものを買ってきて。俺はその間に部屋を片付けとくから」

 

「お、おう」

 

「まぁまずはお金を卸しにいきますか。あんまり手持ちもないので」

 

 生活のためのあれこれを揃えるには――とりあえず十万円くらいは彼女へ渡しておく必要があるだろう。

 郵便局のATMはすぐ近くだ。

 

 うどん屋を出て「こっち」と短く声をかけて歩き出す。

 

「なんかこれって、よく考えてみたら、ど、ど、ど、どうせ、同棲――」

 

 ごにょごにょと呟く彼女の顔を振り返るのは、どうにも気恥ずかしくてできなかった。

 

 ◇ ◆ ◇

 

 アンチョビが我が家へ戻ってきたのは4時間後――16時頃のことだった。

 

 部屋の整理も初めは2時間もあれば終わるだろうとたかをくくっていたのだが、漫画を段ボール5箱ほど詰めたところで時間切れとなった。

 処分する漫画の選別をしたり、懐かしくて読み返したりなどしていたせいである。

 つくづく駄目人間だ。

 

「ごめん。片付け終わってない」

 

「大丈夫だ! 二人でやれば早いぞ!」

 

 笑顔で応えるアンチョビが眩しくて見ていられなかったが、手伝ってくれるというのは助かった。

 

「これはいるか」「どうかなー読むかもなー」

「保留だな。じゃあこれは?」「あ、読むかなーどうかなー」

 

 というやり取りを幾度か繰り返したところで、アンチョビが「ふあああぁ! 保留のやつ全部処分で決定だあぁああっ!」と叫んだ。

 段ボールは計12箱となった。

 

 残った空の本棚は部屋の隅に寄せ、廃品回収を依頼。

 段ボールの中身は某古書店に電話した。

 

 さて、これで居住空間は確保できた。衣食住の、『住』だ。

 

 寝具についてはあいにく寝袋と毛布くらいしかなかったので、注文した布団が届くまではこれで我慢してもらう。

 俺のベッドは同人誌や脱ぎ散らかした衣類だらけの寝室にある。申し訳ないけれど貸すことはできなかった。

 

「『衣』は、とりあえず買ってきてもらったし、残るは『食』か。まぁこれもどうにでもなるだろ」

 

「あ、食といえば、ついでに夕飯の食材を買ってきたぞ」

 

「え? アンチョビさん、料理するの?」

 

「んー。なんだその言い方は。これでも料理は得意だぞ」

 

「でもうち、調理道具とかないけど」

 

「包丁とまな板くらいあるだろう」

 

「ないよ」

 

「これまでどうやって料理をしていたんだ!?」

 

「料理をしないので」

 

「しょ、食事はどうしていたんだ?」

 

「外食か、総菜か、コンビニ飯」

 

「今日から節約だ!」

 

 節約だ節約だ、と騒ぐアンチョビを見て、そういえばアンツィオ高校は気が遠くなるような時間をかけて貯めたお金でP40を購入したんだったな、と思い出した。

 まぁこれからのことを考えると、アンチョビの言う通り、可能な限り節約をした方が良いだろう。

 

「そんなら俺、ちょっと調理道具買ってくるよ。そういえば食器もないし食器も。何がいるの?」

 

「おー、それが良い。ひとまずお皿にフォークに、包丁とまな板、フライパン、あとは鍋だな」

「あ、それと調味料もないよな? まず塩とコショウと――」

 

 アンチョビの並べる名詞が思いのほか多いので慌ててメモる。

 

「終わり! これで全部だ!」

 

「了解。ちなみに何作るの?」

 

「牛肉のラグーソースとサラダ、あとはトマトスープだな」

 

「赤ワイン買ってこよ」

 

「節約するって言っただろ!」

 

 自転車でららぽーとへ。

 言われたものを購入して家へ戻ると、19時すぎだ。

 

「急いで作るからな」と言うアンチョビは30分ほどで調理を終える。

 

「いやー、アンチョビさんの手料理が食えるとか感動しかないなあ」

 

 パスタを口にいれると外食と遜色ないほど美味で、堪らずワインへ手が伸びる。

 

 そして「幸せだなあ最高だなあ」とぐびぐびワインを飲みながらアンチョビと向こうの世界の話をしていると、いつの間にか日付が変わっているのに気付く。

 彼女へ「寝まーす」と告げて俺は寝室のベッドへ倒れ込んだ。

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