多種族世界で繫栄を謳歌せよ   作:片道ころり

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名前:シルヴィア・ラインバッハ
体格:168cm、ふわふわおっぱい、金髪金目、ロングヘア、長い耳
種族:エルフ族
年齢:16歳
備考:リオーシス魔法学校主席


5話 シルヴィア・ラインバッハと闇夜の試練

 深い水底へ潜るように

 夜闇と一つになるように

 息を殺して

 鼓動を殺して

 私はそこを目指して進む

 

 

 ◆ー〇ー◆

 

 

 噴水、庭園、芝生に競技場。

 昼間は何の変哲もない金持ちの邸宅だが、夜のラインバッハ家の顔は全くの別物だ。

 敷石から草木の一本に至るまで、敷地内の全てが侵入者を捕縛する何かに化けるのだ。

 それらの変貌は邸宅そのものにも及ぶ。

 門に詰めた守衛は見せ札であって、生半可な腕前では半歩進むうちに無力化されるだろう数多の罠こそが侵入者対策の本命だ。

 なにしろラインバッハ家の当主は悪魔族。

 悪魔の根城が生半可なもののはずがない。

 

(ひとつ……ふたつ……よし、解除)

 

 今解除したのは接触型の警報術式。

 それと隠蔽されていたが吐いた息に反応して起動する捕縛術式だ。

 これには先日ひどい目に遭ったからな。

 一つ目の警報解除して息を吐いた瞬間、突然壁が動いてそこから出てきた魔導機械が猛スピードで突っ込んで来た時は本当に死ぬかと思った。

 呼吸一つが命取りだと思うんだ私。

 一時たりとも警戒は緩めてはならない。

 

 私はナメクジのような速度で暗い廊下を進む。

 例え明かり一つない暗闇であろうが、私にとっては何の障害になりもしない。

 足音を殺し、周囲の気配に気を配りながら一歩──踏み出す前に再度確認。

 これは転移罠か、危なかった。

 おそらく行先は家の地下牢だろう。

 あそこジメジメしてて嫌いなんだよね。

 飛ばされるのは御免被るので迂回する。

 解除は前にミスったからしない*1

 

 目を皿のようにして床の模様を観察する。

 わずかなオゾンの匂いを感知──床が放電している。

 念のため頭上を確認する。

 一定の高さから上は警報術式が刻まれているから飛び上がることはできない。

 いつも通りの天井で安心感すら沸くね。

 

 足裏に絶縁術式を張り付けて放電エリアを歩く。

 床に刻まれた絶縁破壊術式を一歩ごとに無効化しつつ、右、左、右、ジャンプして飛び越える。

 感圧式のトラップくらい見ればわかるんだよ。

 トラップ床を踏まないように足を上げて、さらにその奥に張られた黒糸を跨いで超える。

 こんな見え見えの2重のトラップには引っかかりはしない*2

 

 よし次だ。

 何もない空間に走る不可視の警戒網を体を捻じって潜り抜ける。

 一定時間で不規則に変化する線に触れると碌なことにならないだろう。

 這いずり、時には片手で支えつつ軽業師さながらの動きで回避しながら、当たり前のように床や壁に設置された罠を解除する。

 順調だ。

 と忌諱が緩みかけたその時だった。

(……あっぶなッ!)

 驚きすぎて心臓が止まるかと思った。

 魔法術式に紛れて機械式のトラップまで仕掛けてあるとは思わなかった。

 だが誇りあるエルフ族ともあろう者が、ドワーフの小癪な技術なんぞに引っかかるわけにはいかない。

 音と振動で感知するタイプと判断して、対応できる独自魔法をこの場で組み上げる。

 不味い。

 もうじき警戒網が切り替わるタイミングだ。

 手間取れば潜入がバレてしまう。

 頭に血が上るのを感じる。

 術式の難度もそうだが、片手逆立ち状態では流石に苦しい。

 ここを突破すれば目的の場所までもう一息なんだ。

(急げ)

 これを仕掛けた女の憎たらしい顔が目に浮かぶ。

(早く)

 なんという悪魔族らしい悪辣さ。

(もう少し)

 流石はラインバッハ家の当主だ。

 だがこの程度で私の情熱が止められるものかよ! 

 オラッ! 隠蔽偽装術式をくらえ! 

 そしてすかさず体を捻じって無効化した空間に身を投げる! 

 伸ばした手から床に触れ──圧力感知式のトラップが──読み切ったァ! 

 もう片方の手で偽造術式を叩きつけて渾身の身体制御で衝撃を殺す。

 

 時間が止まったかのような一瞬の静寂。

 警報は──鳴らない。

 よし。

 よおし。

 よおっしゃああ! 

 私は勝鬨を堪えてゆっくりと息を吐く。

 この先は罠はないセーフティーエリアだ。

 万が一にでも部屋の主を罠にかけるわけにはいかない為、こうした処置がとられている。

 我知らず高まりそうな鼓動を抑えて、廊下に佇む魔導機械に3つ目の偽装術式を叩きつけて一時的に無力化する。

 

 はい、私の勝ち。

 何で負けたか明日までに考えておいてくださいね。

 高まるテンションのままに廊下を進み、目的の部屋の前に立つ。

 もちろん音を立てるような無作法な真似はしない。

 そっとドアを開ける。

 

 ここが私の目的の場所。

 数多の艱難辛苦を乗り越えて辿り着いた理想郷。

 私の可愛い可愛い弟の寝室だ。

 どんなにアホみたいな量のトラップを設置しようとも、私の添い寝を阻めると思うなよ。

 

 ヘンリーちゃーん! お姉ちゃんですよー! 

 今日も一緒に寝ましょうねー! 

 一晩中なでなでしてあげるよー! 

 私は達成感にステップを踏みながらヘンリーの眠るベッドに近づく。

 だが、夢心地の気分はそこまでだった。

 

 ベッドの上。

 1人で使うには大きく余るベットの真ん中で寝息を立てている愛しいヘンリーの横に、私とヘンリー以外の不純物が紛れ込んでいた。

 銀の髪、褐色の肌、そして私と同じ長い耳。

 私の妹のミレーヌ・ラインバッハがヘンリーに添い寝をしていたのだ。

 私の接近に気付いていたのだろう、起きていたミレーヌは添い寝したままこちらを横目で見る。

 お互い声は出さない。

 今日も訓練と勉強を頑張っただろう、すやすやヘンリーが起きてしまうからな。

 

 何故そこにいるとも問わない。

 彼女もまた私と同じものを求めて、あの試練を突破してきたのだ。

 

 目を合わせて数秒、どちらからでもなく息をついてヘンリーに視線を向け直す。

 出遅れたものは仕方がない。

 左側は妹にくれてやろう。

 ミレーヌと私の求めるものは同じだ。

 私は決して譲りはしないが邪魔もしないよ。

 淑女協定って奴だね。

 

 私はヘンリーの空いている右側の空間に潜り込んだ。

 体をぴったり寄せて、彼の耳と私の耳を触れ合わせる。

 耳先を当てて、耳の輪郭をなぞり、ゆっくり根元を擦りつける。

 ヘンリーの体温と私の熱が混ざり、一つになったような錯覚。

 溢れだす幸福感に溺れてしまいそうだ。

 ダメだよこれは。もう麻薬そのものだよヘンリー。

 ご禁制だよ。

 半分以上茹った脳みそがこのまま眠るのは最高じゃないかと囁いた。

 それも悪くはない。

 悪くはないどころかむしろ最高だが、まだまだ夜は長いんだぞ。

 

 名残惜しみつつもそっと体を起こした。

 ヘンリーは相変わらずすやすやと眠っている。

 反対側のミレーヌの様子をうかがうと、彼女はヘンリーの寝顔をじっと見つめていた。

 瞬きぐらいしろ。

 まあいいや、ベッドをきしませないように注意しつつ、仰向けからうつ伏せに体制を変更。

 ヘンリーの顔を見ながら覆いかぶさるように胸に耳を当てる。

 とくん、とくんと心臓の音がする。

 ヘンリーの匂い、ヘンリーの体温、ヘンリーの心音。

 耳と頬ごしにじんわりと感じる生命の鼓動。

 そしてヘンリーの胸。

 堪らねえぜ。

 もうこれ最高の子守歌じゃん。

 一生こうして生きていたい。

 脳みそが段々働かなくなってきたのを感じる。ダメだこのまま寝るな私。

 寝るな、寝るなよ……起きろって言ってんだよ! 

 気合を入れて強まっていく眠気に抗って体を元居た位置に戻す。

 極度の緊張と疲労の直後に多幸感を味わった所為か、脳が休息を強く求めていた。

 

 仰向けでミレーヌのようにヘンリーの横顔をじっと見てから、もぞもぞと動いてもう一度最初の体勢に戻る。

 やはりここがベストポジションだ。

 耳をくっつけたまま寝るのが王道にして最高なんだよ。

 少し物足りなさを感じたのでヘンリーの腕をとって抱き枕のように腕を回す。

 最高が整った。

 強まる眠気で瞼が重い。

 名残惜しいが私はここまでのようだ。

 力を振り絞った私はヘンリーの腕と絡めた逆の腕を持ち上げて、ヘンリーへ手を伸ばす。

 髪を優しく撫でて、柔らかいほっぺたをさすり、鼻先を擽った後ぷにぷに唇にタッチ、首元から鎖骨をなぞる。

 胸をさすって、おなかに手を当てて堪能した後、もう一度手をヘンリーの胸に戻してそのままキープした。

 ついでに顔を寄せてほっぺたに唇を落とす。

 よしっ! 

 満足したから寝よう。

 おやすみヘンリー。あとついでにミレーヌも。

 一通りセクハラして満足した私は、ゆっくりと深呼吸して心地よい微睡に身を任せた。

*1
2敗した

*2
1敗した




名前:ミレーヌ・ラインバッハ
体格:166cm、むちむちおっぱい、銀髪褐色、ショートヘア、長い耳
種族:ダークエルフ族
年齢:16歳
備考:リオーシス魔法学校次席

≪TIPS≫
過去に耳人族という呼び方もされたが「響きが格好悪い」という意見が多く現在の表記になった。
エルフとダークエルフは別種ではなく、肌の色と主な活動時間が異なるだけの同種族。
種族的にパーソナルスペースを強く意識する傾向があり、耳が触れるほどの距離を許されることは好意を示すのと同じ意味。
身内にはあまあまだがそれ以外には塩対応するものが多く、無自覚に知識量でマウントを取りたがるという悪癖がある。
性感帯は特徴的な長い耳。
そのため耳同士を触れ合わせることはかなりえっちな行為である。
触れる位置が根元に近づくほどに意味合いは重くなる。
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