体格:148cm、肩までのボリュームある癖毛、むっちりおっぱい、むっちりヒップ
種族:ドワーフ族
年齢:21歳
備考:国家認定の製錬技師
ドワーフの工房が多数並ぶ製錬特区の一角にある、少し洒落た外観の石造りの工房がダリア・マルティンの住処だ。
特徴的な赤い屋根に白い石壁は金属細工とレリーフで彩られ、軒先には金槌とインゴット、そして手袋を模した看板が掲げられている。
金槌は鍛冶技術。
インゴットは精錬技術。
手袋は魔道具製作。
それぞれが国認定の技術者にのみ看板に刻むことを許される一流の職人の証であり、ドワーフ族の誇りの象徴。
それが3つすべて揃えて掲げる工房は、ラ・ヴィンセルにおいてもそう数は多くなかった。
質実剛健を好む気質のドワーフ的感性において
そんなハイカラな工房の主であるダリアは、今まさに一つの魔道具を仕上げ終わったところだった。
ドワーフ族特有の小さくも力強さを感じさせる体躯。
ボリュームのある癖毛を頭の後ろで結わえた彼女は椅子に体を預けるとゆっくりと背中を伸ばした。
オーバーオールの野暮ったい作業着とそれを押し上げる豊満な胸が窮屈そうに揺れる。
若輩ながらこの国有数の職人を自認するダリアが、自身の技術の髄を注ぎこんだ最高傑作であった。
まさしく生も根も尽き果てたと形容するにふさわしい脱力具合が無言でそれを物語る。
暫くの間ぼーっと虚空を眺めていた彼女は、思いついたように筋肉のこりをほぐすように首を揺らす。
リビングデッドのような緩慢な動作で首を動かしていた彼女は、とある一点を見て目を見開いて動きを止めた。
日付表示機能付きの時計と、その横にでかでかとした字で書き加えた今日の日付と「デート!」の文字。
それを見つめて数秒後。
先ほどまでの死人もかくやという姿が嘘のように生気に満ちた顔で、うっひょーいと椅子から跳ね起きる彼女の姿があった。
手早く机の上を片付けて、出来たばかりの魔道具を彼女自作の掌サイズの宝石箱の中に入れて丁寧に梱包する。
作業に没頭し過ぎてろくに風呂にも入っていない。
お気に入りの入浴剤に香油で体を清めて、今日の為に用意した服に袖を通すのだ。
買い置きの高級賦活栄養剤を3本、蓋を開けて一気に飲み干して、高まる感情に従ってゴミ箱に叩き込む。
そして疲労など吹き飛んだとばかりに鼻歌を歌いながら、風呂と着替えと身支度と食事諸々の為に軽い足取りで工房を後にするのだった。
ダリア・マルティン21歳。
恋の季節である。
◆ー〇ー◆
入浴よし。
香水良し。
勝負服良し。
宝石箱良し。
髪も切って化粧もした。
見てくれもそう悪くないはずだ。
つまりは準備万端ってことだ。
私は時間通りに家を出て、約束通りの時間にラインバッハ家の門前に辿り着いた。
「よく来たなダリア、時間通りで感心するよ」
「は、はい。お久しぶりです、クラウディア様……」
そして門前で仁王立ちのラインバッハ家当主に遭遇した。
何でここにいるんだよ。
竜とタメ張る化け物が軽いフットワークでほいほい動くんじゃないよ。
門前で光り輝く白髪が目に入った瞬間に心臓が変に跳ねた所為か、まだ胸が痛い気がする。
普段なら応接間あたりに通されるはずが、わざわざ門前に足を運ぶとは。
愛息子のヘンリーに会う前に釘を刺しに来たのだろうか。
しかし妙な話だ。私はそういった不評を買うようなことは可能な限り避けてきた筈だ。
製錬技師となり、自分の店を持つようになってからも、私なりに謙虚な態度を貫いてきたと思う。
ヘンリー君への対応だって、クラウディア様にお伺いを立てた上で、時には舌を噛み切って彼の色気に耐え忍んできたのだ。
そうやってクラウディア様からの信頼を勝ち取ってきたからこその今日この時なのに、それなのに彼女の警戒心がやけに高い。
どこかのアホが何かやらかしたかとも思ったが、その場合は既に血祭りにあげているはずだ。
それとも身に思えがないだけで私が何かしてしまったのか。
クラウディア様が胸の下で組んでた腕をほどく。
竜を屠ったという噂のラインバッハ家の悪魔の構えだろうか。
違った、腕を組みかえただけだった。
一挙一動にビクつく私をよそに、彼女は口を開く。
「今日はヘンリーに製錬特区を案内する、その予定だったな?」
ウッス! そうっス!
「この間、クソ雑魚ドラゴンが……まあ良い。
諸事情でヘンリーを一人だけ、というのも少々避けたくてな。護衛と一緒に動いてもらう」
エスターライヒ家のクソザコドラゴンめ。
なんてことをしてくれたんだ。
この日の為に生きてきたんだぞ。
許せねえよ。
私は落胆と憤懣を抑え込むことに努めた。
これは良くない流れだ。このままではツアーコンダクターの真似事をするだけで終わってしまう。
深く息を吸って、ゆっくり吐いて、私は懐の宝石箱を意識する。
ヘンリー君、私に目の前の人の形をした化け物に立ち向かう勇気をくれ。
「クラウディア様」
紅色の瞳を見据えて私は言う。
白髪紅眼、2本の角。多少の親しみやすさを感じた彼女の顔が、私の覚悟に感じ取ってラインバッハ当主としてのそれに変わる。
彼女はゆっくりと組んでいた腕をほどき、体の横で軽く拳を握った。
たったそれだけで私は地面に体を投げ出したくなった。
怖い。
跪いて、平伏し、許しを求めて懇願したくてたまらない。
心臓が泣き喚き、流れる血の音で耳がうるさい。
だけど、
私は
「ヘンリー君に、
手の震えを抑えて、宝石箱を取り出して中身が見えるように開く。
眼光がさらに鋭くなる。
「私は」
喉が震える。
舌が固まった石のようだ。
それでもめを逸らさずに。
「贈りたいのです」
一秒か。
十秒か。
目を合わせてどれだけ時間が経ったのか。
紅の瞳が細まり、やがて瞼を閉じた。
「良いだろう」
今まで以上の圧が体を縛り付ける。
あまりの重みに体が軋むようだった。
呼吸が抑えきれない。
「ヘンリーがそれを受け入れたのなら
ラインバッハ家当主として、許可しようじゃないかダリア・マルティン」
そしてもう一度、開いた紅眼が私を見据えた。
いまにも襲い掛かってきそうな、恐ろしい瞳が
それが、私を──
「節度は、守れよ。くれぐれもな」
◆―〇―◆
──という訳で親公認のデートとなったわけだ。
やったあ。
まあ条件付きでの許可なんだけど。
本当なら二人っきりのデートだったけど、こうなった以上は仕方がないよね。
案内という体で雰囲気の良さげな場所を巡る予定だったから、予約のいくらかはキャンセルするしかなかったけど、そこは次の機会ということにしておこう。
そう、次があるのだ。
私はあの恐ろしい悪魔からチャンスを勝ち取ったのだ。
私は得も言われぬ高揚感のまま隣に立つ女獣人を見上げる。
彼女は獣人族の【傷なし】のタチアナ。
めっぽう強い元傭兵で、今回のデートにあたってクラウディア様の出した条件が彼女を護衛に付けることだった。
単純な腕っぷしでは私程度では相手にならないし、仮にうまく隙をついて彼女を撒いたとしても獣人族は鼻が利くからいずれ痕跡を辿って追いつかれる。
取引を持ち掛けたとしても真面目で誇り高い彼女のことだ、所謂
……間違いかあ。
「途中で酒場に行きたくなったらいつでも言ってね」
「ヘンリー坊の護衛なのに行くわけねえだろ」
「そこをなんとか」
「ならねえって」
ならないかあ。
そっかあ。
畜生め。
そりゃ未成年の、さらにいえば婚姻前のヘンリー君に無体な真似なんてしないけど、「しない」と「出来ない」の間には大きな溝があると思うんだ。
「……そういえば、クラウディア様がやけに機嫌が悪かったけど、何かあったの?」
ずっと気になってたんだけど、結局怖くて聞きそびれちゃったんだよね。
確かに戦闘力的には怖い人ではあるのは事実だけど、いつもはあんなに刺々しくはなかった。
あからさまに高圧的な態度ってあまりしない方だから、びっくりしちゃったよ。
予想の数倍くらい怖かった。
「あたしも詳しくは知らねえんだが、エスターライヒ家の令嬢が来てたらしくてな」
「うん」
「そんで坊とそいつとお付きのメイドの4人で応接間でお茶会して」
「うんうん」
「ヘンリー坊に膝枕されたまま爆睡してるところを御屋形様に目撃されたらしい」
「なんで???」
お茶会は椅子に座ってお菓子とお茶を楽しみながら談笑するものじゃないのか。
どうやったらそこから膝枕の状態まで持っていけるんだよ。
それともお貴族様の言うお茶会というものは実は卑猥な意味の単語だったりするのか。
「そういう訳で御屋形様も神経質になってんだよ」
「そういうことだったのか……」
それならあの態度も納得がいく。
自分の家の中で可愛い愛息子が他所の女に粉かけられたのなら荒れるというものだ。
しかもやった相手と婚約などしているわけではないときた。
それなのに膝枕だと……?
「婚約してるわけでもないのに、それはちょっとひどすぎるね」
「そうだよな、膝枕なんて良くねえ」
「まだ未成年の男の子だよ? いくらヘンリー君が魅力的だからって、普通なら我慢するものでしょう」
「……ああ、まあそうだな、我慢するもんだよな、うん」
「分別のつく大人の女が、相手の知識のなさに付け入って劣情を満たそうとするなんて許せない。
人として恥ずかしいことだよ」
「………そう、だな。全く持ってその通りだ…」
私がくどくどと性欲ドラゴンへの不満を垂れ流していると、タチアナの顔が苦々しく歪んでいることに気が付いた。
タチアナがヘンリー君を気に入っていることは知っている。
あんなに真面目で直向きな男の子を良いように弄ばれたのだ、彼女だって相当の怒りがあるはずだ。
ヘンリー君に浅ましい劣情を向けられたのに、彼を守ることが出来なかったのだ。
護衛役を兼任する彼女がどれほどの屈辱を嚙み締めたのかは想像に難くない。
それでも彼女は口を濁すように私の言葉に相槌を打つだけで、決して怒りや不満を表に出そうとしていない。
そうか、直接文句を言うわけでもなく陰で貶す行為を好ましいとは思わないのだ。
いくら当人へ不満があったとしても、それを良しとせずに自分を律しているのだ。
なんて誇り高いのだろうか。
これで3つも年下なんだから、私は頭が下がる思いだった。
「ごめんね、タチアナ。
陰口を聞かされて気分が悪かったでしょう?」
「……えっ、いやそんなことは……」
「いくら力では敵わない相手だからって、陰で貶すのは良くないよね。
正面からガツンと言ってやらないと、”未成年にそんなことして恥ずかしくないんですか”って」
「………うん」
タチアナは耳をぺたんと伏せて、まるで我が事のように恥じ入るかのようだった。
そんな誇り高い彼女を見て決意を新たにした私は、ヘンリー君の用意が出来るのを今か今かと待つのだった。
◆―〇―◆
デートは上手くいったと思う。
他に経験はないから断言はできないけどヘンリー君は退屈そうには見えなかった。
有名どころの工房を回って、見学者用の研究ブースで鍛冶や魔道具の体験をして、ドワーフ名物の屋台を食べ歩いた。
紹介してまわる場所はまだいくらでもあるのだけど、時間的には次で最後になるだろう。
そうして私はヘンリー君を連れて、とある広場にやってきたのだ。
少し高台にあり製錬特区を一望できるこの場所は、見晴らしもよく風が通るのだが、その見栄えに反して人気はあまりない。
多分ドワーフ的には景色を楽しむことよりも作業台で何かを弄っている方が好みだからなのだろう。
ヘンリー君は柵を握って目を輝かせて景色を眺めている
そんな彼を見つめて、私は懐の宝石箱と、その中に入れたものを意識する。
タチアナは少し離れた場所で周囲を警戒している。
多分チャンスは今だけだ。
クラウディア様に直談判した時以上に心臓が苦しい。
いけ。
言うんだダリア・マルティン。
「ヘンリー君」
彼が振り向いて、すごにその黒い瞳が驚きに見開かれる。
目の前の女が急に片膝をついているのだからそれも当然だろう。
宝石そのものを散りばめているわけではない、ドワーフ族の伝統である金属細工で飾りつけた小さな入れ物だ。
ドワーフ族の女が自分一人で作り上げる、決して店で売られることはないものだ。
震えを押し殺して、何度も練習したようにふたを開く。
箱の中には2つ。
1つは装飾のないシンプルな指輪。
もう1つはそれと対になる指輪を通したチェーンネックレス。
「君に受け取って欲しいんだ」
言葉を重ねる。
これに結婚だとか婚約だとかいったような意味はない。
これはそんな綺麗なものではない。
ドワーフ族の身勝手さそのものを表すような行為だ。
それでも贈りたくて仕方がなかった。
もしも、
もしも君が、私が君に抱くこの感情を嫌いではないと思ってくれるのなら。
「どうかこの指輪を、私の指に嵌めてくれませんか」
男性の前で
長い、長い沈黙だった。
もはや時間の感覚がおかしくなった私にとっては、永遠に見紛うような沈黙。
彼は指輪を手に取った。
「薬指で良い?」
そう言って、私と同じように片膝をついた彼は、言葉を忘れた私の右手に手を添えた。
手袋を挟まない生の手指の感触。
返事さえままならない私の指に、ヘンリー君は指輪を通してくれた。
そして残ったもう一つのチェーンネックレスを手に取ると、私の手を取って、掌にそれを握らせた。
……駄目だったか。
そうだよね、指輪以上は高望みが過ぎるよね。
上々すぎる結果だというのに、私は思わず掌の上に目を落とした。
「着けてくれる?」
そしてすぐに顔を跳ね上げた。
いつの間にか彼は私の左手から宝石箱を取り上げていた。
まるで私の両手を自由にするような。
着けるというのは、つまりそういうことなのか。
彼の首に手を回して、私の手で直接ネックレスをつけるということなのか。
そんなえっちなことが許されるのか。
私はもはや手の震えを隠せられないまま、覚束ない思考でヘンリー君の首へ手を回す。
手が届かない。
体を近づける。
それでもまだ届かない。
ネックレスが着けられる距離に体を寄せる、そうするとヘンリー君の顔に自然と近づいて──
「ふふっ」
「ごっ、ごめ、ごめんねっ! 嫌だったかな!?」
「くすぐったくて、つい」
ごめんごめん、そう言って笑う彼の声に正気を取り戻した私は、何とか彼の首にネックレスを通すことに成功した。
危なかった。
あの瞬間、ヘンリー君の顔しか見えなかった。
未成年の男の子を相手に、なんてことをしそうになっていたのか。
彼が不意に笑うことがなければ、今頃は……。
今更ながら早鐘を打つ心臓に気付いて胸を抑える私を余所に、ヘンリー君はネックレスと、それを通した指輪をしげしげと見つめている。
受け取って貰えた。
受け入れてもらえた。
何度となく夢にさえ見たものは、もう夢ではなくなったのだ。
私の利き腕の薬指。
そこで日の光を浴びて輝く指輪を目に焼き付けた後、いつもの手袋で上から隠して。
背後から突っ込んでくるタチアナの気配を感じながら、私は今のこの幸福を甘受するのだった。
これが恋愛強者というものだ。
クソ雑魚ドラゴンとタチアナちゃんの脳破壊が楽しくて、ついつい長くなっちゃったけど許してくれ
モチベを上げるためにも至急感想くれや
≪TIPS≫
ドワーフ族にとって手指をとはものをつくりだす象徴であり、半ば神聖視されている部位でもある。
そのため、日常的に特殊な魔道具である手袋を着用している。
手を褒めることはドワーフ的には最上級の称賛であり、異性に対しての場合は過激な口説き文句となる。
また、手袋のない手を衆目の前に晒すことは少々はしたない行為とされ、そのまま異性に触れようものなら相当にえっちな意味を伴う行為として扱われる。
異性に対して指輪を贈ることはプロポーズではなく、「私は貴方を好ましいと思っています」程度の意味であり、受け取った側が、相手の指に指輪をつけてあげる<贈られた自分用の指輪を受け取る<指輪を実際に身に着ける、の順で好意の段階が分かれる。
生まれた初めて聞いた「着けてくれる?」発言で軽く脳がバグった。
性感帯は手袋で隠れる手と指と掌。
どんなに汗をかいても繋いだ手を離さない。