陰鬱系魔法少女モノに、子供向けキラキラ魔法少女が落ちてきた話。   作:ヒオルカ

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第十一話

 

 

 

「サキが魔女に攫われた...?そんな...」

 

電話越しに、シオリの悲しそうな声が聞こえてくる。

 

「とにかくすぐに救助へ向かわないと...カナタ、彼女達を助けてあげて。きらり、あなたは...」

 

「わ、私も行く...大丈夫だから!」

 

「...分かったわ。あまり無茶はしないようにね。」

 

「うん...!」

 

ルビリンの気配を感じる場所は町にはずれであったから、少しの移動が必要だ。

 

魔法で加速してもいいけれど、何かの拍子に察知されるかもしれない。慎重に向かわなきゃ。

 

 

 

 

 

道中、先ほど戦いを繰り広げた魔女のことを考える。

どうして彼女はあのような振る舞いをするのだろう...?

 

 

「シオリはあの人のこと、知ってる...?」

 

「知っている、って程ではないわ。そうね...彼女が来たのは、カナタとコンビを組んでしばらくしてからよ。」

 

「来た...ってのは?」

 

少し間を置いて...カナタちゃんが口を開いた。

 

 

 

 

「彼女...香坂シズメはある日突然、この結界の外からやってきたんだ。」

 

 

 

 

 

この町の、外から...?

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「初めて会った時、彼女はすごく混乱していたけれど...その時にいくつか話を聞いたわ。」

 

「一つは、この町とは違う場所で、同じように魔法少女達が災禍と戦っていたこと。二つは、自分がブレスレットの魔力を貯めてそこから逃げてきたということだ。」

 

 

「逃げてきた...?やっぱり外にも災禍が居るってことなの!?っていうか、なんでそんな大事なことを隠してたのよ...!」

 

コトノちゃんが声を震わせる。

 

「...現状確認する方法はないし、証言はその混乱した魔法少女ただ一人だ。それに、発表しても何かできるわけではない。」

 

「逃げた道中には災禍の気配がないエリアもあった、とは言っていたわ。酷く取り乱していたから、どこまでが真実なのかわからないけど...」

 

「ああ...?つまり、どういうことだよ?」

 

 

「...彼女は一度逃げ出したが...運悪く別の結界に足を踏み入れてしまった、という可能性がある。」

 

 

命懸けで貯めた魔力でどうにか逃げ出せたと思ったら、もう一度振り出しに戻ってしまう。

本当だとしたら、それに気づいた時の彼女は一体どんな気持ちだったんだろうか。

 

 

「話を聞いた後、彼女は閉じこもってしまって...その後は行方をくらませたわ。彼女が災禍と戦っているところは見たことがない。それから...魔法少女を狩る魔女の噂が立ち始めた。」

 

 

 

沈黙が流れる。

 

 

 

「全く...結局どうなってんだ、この町の外は?」

 

「...過去に破ったものからの連絡は一切ない。私達がここにいる以上、知る術はないな。」

 

 

 

結界の外。

 

この町の魔法少女は大抵そこを目指しているとサキちゃんは言っていた。

 

では...あんなに魔力を溜め込んでいる彼女は、何を目指しているのだろう...?

 

 

 

「...っ!」

 

「...!きらり、大丈夫か?」

 

体が軋み、痛みが走る。

応急処置程度の回復魔法では、少し足りなかったみたい。

 

「...やっぱりその体で戦うのは無茶よ。場所だけ教えて、大人しくしていた方が良いんじゃない?」

 

「そうしとけ。ただえさえあんなバカでかい魔力を放ったんだからよ。アタシらはアレで結界のに気づいたんだぜ?」

 

ジュリちゃんとコトノちゃんが、何でもなさそうな顔で心配の言葉をかけてくれる。

 

「へ、平気...!じっとなんてしていられないから...!」

 

「...ってか、あんだけの出力だったらやれそうなもんだけどな...そんなにブレスレット五本分は固かったか?」

 

「それは...その...」

 

 

私は彼女達に、私の勇気と魔力の関係について話すことにした。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ?魔法少女を傷つける魔法が撃てない?」

 

「うん...」

 

「それが無制限に使える魔力の代償か。めんどくせぇ縛りだなぁ...」

 

彼女達は少し考え込んだが、コトノが口を開いた。

 

「それはあなたの魔法の特性なのよね?それだったらやりようはあるかもしれないわ。」

 

「え...?」

 

「魔法少女は妖精との同調率が高いほど得意な魔法が伸びていくのよ。だから同調率を下げれば、その魔力量が減る代わりに魔法少女相手でも...」

 

 

「......!皆下がれ!」

 

 

カナタさんがそう叫んだ瞬間、直線的な攻撃が私達の周囲から襲いくる!

 

「...はッ!」

 

カナタさんが剣を引き抜くと同時に、その攻撃は私達を傷つけることなく消失する。

 

「意志の感じない攻撃...自動人形か?随分と凝ったものを!」

 

「...!あっち!あの家だよ!」

 

すぐ近くの家。あそこにルビリンとサキちゃんがいるはずだ!

 

「突破する!ついてこい!」

 

人形達の攻撃を迎撃しながら前進する。

 

「どいてな...オラッ!」

 

ジュリちゃんがハルバードで家のドアを一思いに破壊する。

 

「気をつけて。自動人形なんてコストの高いもの置いているくらいだし、何があるか分からないわ。」

 

「ああ...油断すんなよ。」

 

 

 

 

人気のないその家に突入する。

中はなんの変哲もない、ちょっと古びた一軒家の内装だ。

 

ルビリンやサキちゃんの姿は見当たらない。

 

 

「待って...!あそこ...!」

 

リビングを覗くと、奥のソファには一人の女性が横たわっている。

ここの住人...?

 

 

女性に近寄るためリビングに足を踏み入れた瞬間、光と共に鋭い糸と人形が大量に湧いて出てくる。

 

しかもその人形達はそこにいる人間を無差別に襲い始めた..!

 

 

「罠ね...!ふっ!」

 

コトノちゃんが即座に矢を射出し、女性のそばにいた人形を撃ち落とす。

 

その隙に彼女へと駆け寄るが...

 

「...きゃあっ!?」

 

「きらりっ!」

 

 

 

気づいた時には...ソファ周辺の床が、糸がほつれるかのように崩れ落ちていく。

 

私とあの女性は重力に引かれて真っ逆さまに落ちる...!

 

カナタが魔力を放出して手を伸ばすけれど、二人を助けるのは間に合わない。

 

 

「私は大丈夫だから...!その人をお願い!」

 

「くっ...分かった!すぐに向かう!」

 

カナタが人形を切り伏せながら、女性を抱え離脱する。

 

 

「クロ、来て!」

 

「おウ!」

 

飛び込んだクロの手を取り、抵抗をやめて地下へと降りていく...

 

 

 

 

 

 

落ちた場所は光も届かない暗い部屋。

ここにも人形がいて、ひっきりなしにこちらを狙ってくる。

 

どうにか人形を掻い潜って感覚を頼りに前に進む。

 

上手くできるかどうかは分からないけど、ここでやるしかない!

 

 

 

「...クロ!いくよ!」

 

「ぶっつけ本番ダ!」

 

クロの手を取り、ポリッシュリングに力を込める...!

 

 

 

「マジカルジュエルチェンジ!」

 

 

 

ポリッシュリングは普段と同じように起動して、私の周囲に粒子を撒き散らす。

 

いつものピンク色に、一部黒色のラインを混ぜ込んだ衣装が私の体に構成された。

 

 

 

 

「きらめく光で、闇を切り裂く!マジカルルビー・インクル!」

 

魔法のパワーで、私の力がみなぎっていくのを感じる...!

 

 

 

 

「ジェムライトワンド!ってうわ!」

 

魔法を放つ杖として使っていたジェムライトワンドは、持ち手が短くなって杖の先から薄い刃を伸ばしていた。

 

「えっと...!こう!」

 

サキちゃんの真似をして刀身に魔力を流す...すると、魔力が溢れ出して刀が勝手に暴れ出してしまう。

 

「おイ!同調率低いんだからもうちょっと加減しロ!」

 

「ご、ごめん!こ...こんな感じ!」

 

少し魔力を抑えて刀を振り、人形達を退ける。

 

少しずつ暗闇を進むと、感覚はどんどん強くなってきた。

 

感じる...!見えないけど、この気配を辿ればそこに二人がいるはず!

 

 

 

私はどうにか人形を押し退けて、感じるままに暗闇の中を駆け出した。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

微睡の中、私は魔法少女になった時のことを思い出す。

 

お父さんとお母さんが動かなくなって、クロと出会って。

 

きらりにはあんな態度をとったけれど、今思えば私も軽度ではあるが魔法少女フリークのような考えを持っていたのかもしれない。

 

魔法少女フリークは、ただ夢見がちな少女のものだけでなく...ショックな出来事を背景に魔法少女になった人の、精神安定のために発症することだってある。

 

ともかく私は、魔法少女になって世界を守るために戦おうとした時期だってあったということだ。

 

今やそのような姿は見る影もなく、そして隣には...

 

 

 

「あらぁ?お目覚めかしら。」

 

 

 

...そうか、私は攫われてしまったのか。

 

キツく縛り付けられ、魔法陣の描かれた床に座り込むような状況になっている。

 

あいにく魔法陣を扱うことはなかったのでどんな構造だとかはさっぱりだが、ロクなものじゃないはずだ。

 

 

魔法陣が淡く光る。

 

 

「...ッ!」

 

 

一瞬の苦しさと脱力感が全身を襲う。

 

これは...彼女の発言通り魔力を吸収されていると見て間違いないだろう。

 

こちらをニヤついた笑みで見下ろす彼女を睨みつける。

 

「ここがあなたの隠れ家...?」

 

「そぉよ。まあいくつかあるけどぉ...ここが一番かな?変なのが入ってきたら、ブレスレット四個分の操り人形達で一網打尽よぉ?まあそもそもちゃんと撒いてきたから来れないだろうけどねぇ。」

 

自動人形...?中々見ることのない魔法だ。

そもそも設置型の魔法を使う場面が少ない上に魔力の消費は高いから使い手は少ない。

 

「っ...うぅ...!」

 

魔力を奪われ、一瞬瞼が落ちそうになる。きっと、一度眠れば起きた頃には吸い尽くされてミイラになっているだろう。

 

横目で隣を見るとルビリンも縛られており、まだ目を覚ましていない。

 

その時、彼女はハッとして明後日の方向を向いた。

 

「...!自動人形が動いたぁ...?まさか...」

 

深いため息をついて、 こちらに背を向ける。

 

「撒いたと思ったんだけどぉ...しつこすぎなぁい?あんたのお仲間。まああの三人だったら平気だろうけどぉ...」

 

...きらり達が来てしまったのだろうか?

 

 

 

彼女は近くの棚から...ブレスレットを六本取り出した。

 

「まだそんなに持っていたの...!」

 

彼女はそれを全て腕に嵌め込む。

 

「予備用のヤツよぉ。でも自動人形結構動いてるし、今日で九本も使っちゃった...あんたはとっととそれ補填してちょうだぁい?」

 

頭を足蹴にされる。

衝撃で意識がそのまま飛びそうになるが、どうにか耐える。

 

 

「っ......!そんなに...力があるなら、災禍と戦えばいいじゃない...!」

 

精一杯彼女を睨みつける。とにかく意識だけは保たなければ。

 

「言わなかったっけぇ?勝手に溜め込んでくれる魔力タンクを回収する方が楽だからよぉ。」

 

「そんなことをしていれば魔法少女は居なくなる...!後はあなた一人だけ!」

 

「そしたらこの町を出てくわぁ。それでまた他の町で魔法少女を食べるの。」

 

「他の町?何の話をしているの...?」

 

「ああ...知らないんだっけ?他の町にも結界があって、そこで魔法少女が戦っているのよぉ。あたしは一度そこから脱出したの。」

 

脱出...!?それなのに...彼女はまだ戦っているというのか?

 

「だからぁ...無駄なの。この町を出たって、いつかまた結界ができてその繰り返しよぉ。」

 

それは...

 

 

 

 

部屋が揺れる。

 

 

「...そろそろ死んだかしら?リングくらいは回収しないとねぇ?」

 

きらり達は...いっそ諦めて逃げてくれればと思うが、少なくともきらりは来てしまうだろう。

 

彼女はそんな人間だと、確信を持って言える。

 

 

「......」

 

「...諦めたらぁ?ここの防衛はどんな災禍だって跳ね除けるし、この部屋に辿り着くこともできないようになってるのよぉ。」

 

この人は...災禍と戦わない割には、随分と災禍の対策に力を入れているようだ。

それは...彼女の経歴と何か関係があるのだろうか?

 

 

魔法陣が再度淡い光をたたえ、一段と意識が薄れていくのを感じる。まだ...落ちるわけには...!

 

 

「...分かった。あなた、災禍が怖いんだ。」

 

 

 

「......は?」

 

 

 

彼女の表情が消える。

 

「一度逃げて、それでまた戦うことになって心が折れたの...?それで人間相手ばかり...!」

 

「ふざけないでくれるかしらぁ...?そんな訳ないでしょう?」

 

ルビリンの様子を横目で見る。

 

「見なさいよこのブレスレットの数。Aクラスだって余裕よぉ?怖い訳ないじゃない!」

 

「だったら戦えばいいでしょう...!あなたのやり方ではいずれ限界が来る!」

 

「うるさいなぁ!どうせ災禍との戦いは終わることはないんだ!あたしはどの魔法少女よりも長く生きるんだよ!」

 

激昂して近づいてきた彼女の襟を噛んで引き寄せる!

彼女は少しバランスを崩して、足先を魔法陣へと触れさせた。

 

 

「...!なぁ...!?」

 

その隙に、残り僅かな体力を振り絞って横へと飛び込む。

 

「ルビリン!」

 

「ルビ!」

 

いつのまにか目を覚ましていたルビリンと触れ、魔力をどうにか回す。

 

 

 

 

「...はぁ、ほんとムカつく。無駄なことばっかりするんだからさぁ。」

 

前の戦闘とあの魔法陣によって魔力はもうほとんど残っていないが、それでも立ち上がらなければ。

 

 

コイツはここで止めなければいけない...!

 

 

私の中にもあるはずの勇気を呼び起こそうと、誰かが変身のたびに声高に叫んだ言葉を思い出す。

 

 

 

「「マジカルジュエルチェンジ...!」」

 

 

 

薄い赤色が差し込まれた衣装が形作られ、ちっぽけな魔力をどうにか全身に張り巡らせる。

 

 

「魔女!あなたの蛮行は、ここで食い止める...!」

 

 

いつもとは違う獲物、深い紫色の拳銃を二丁構え...彼女に狙いを定めて、引き金を引いた。

 

 

 





違う方向のニチアサ的ロマンを感じる.,.
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