自称天才軍師のチートハーレム主人公活用法   作:はごろも282

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ただチートハーレム主人公を見るモブに転生させようと思っただけなのに。


青年は大志を抱く

 転生した。どこにでもいるただの高校生でしかなかったオレこと如月刀刃の人生は、道に飛び出した少女をかばって車に轢かれあえなく散った。

 薄れゆく意識の中、泣き喚く幼馴染みの声が遠くなっていく。そして気がつけば目の前には自身を神という少女の姿。

 少女は目が合うなりオレに謝罪をした。曰く、オレの死は自身の不手際である、元の世界に蘇らせることはできない、償いにはならないが新たな人生を与えさせてほしい、その際は好きな能力を渡す、と。

 

 オレは願った。オレと関わった人がオレの死を引きずらないように生きてくれることを。オレの救った少女の今後の幸福を。

 

 そうしてなんやかんやあって、最終的に顔を赤らめた女神がオレについていくと宣言し、オレはめでたく転生を迎えることとなった。

 

 

 

 

 

 

 まあ嘘だが。

 

 

 

 

 

 

 確かに転生はした。いや転生と言っていいかは謎だが。だって目覚めたら知らない場所で知らない服、おまけに知らない顔だったわけだから。幼馴染みは泣き叫ばないし少女は飛び出さなかった。不手際で謝る神さまなんていなかったし能力も貰えなかった。

 

 悲しきかな、俺は生まれながらに敗北していたのだ。この場合は生まれ変わりながらにしてだろうか。いや前世が死んだなら若すぎるから敗北者で違いないな。

 

 そうしてわけもわからず見知らぬ地に放り出されたわけだが、なにかしら行動しなければならないことだけは自明だった。よって俺は至極冷静に階段を下り、身体の主の家族と会話をしようと決めた。

 

 結果、足を滑らせてすっころんだ。

 

 仕方なかったとは思う。いくら決意を固めていたとはいえ階段の途中で「おはよう!」とか言われたらびっくりするだろう誰だって。俺はそのまま頭を打ち付けて転げ落ちた。おそらくあれが人生最大の痛みだった。ちょっと泣きかけたもんな。

 

 そんなことが目の前で起これば当然両親は心配する。俺のもとにはすぐさま一組の男女が駆け付けた。空中を飛んで。

 ビックリした。体の痛さにプラスで腰が抜けた。

 

 起き上がろうとしていたのにまたひっくり返った俺をみて大慌ての男女を見て、俺のイルカ並みのIQは最適解をはじき出した。ここで記憶喪失ってことにしてやろうと。

 

 そこからはトントン拍子だった。いろんな記憶がごちゃごちゃになってるみたいなことをのたまい、俺の記憶がトんでることに違和感を覚えさせないことに成功した。当然、相手をちゃんと騙せるかという懸念点はあったが、そこはさすが俺といったところ。昔担任から「将来は詐欺師かマジシャン」と言われただけのことはあった。教え子に犯罪者になるとかいうのはどうかと思う。

 

 まあ、なんやかんやスムーズに情報を得られる土台を形成した俺はここでようやく世界の知識を掴むことになる。

 

 簡単に言ってしまえばここはなんちゃってファンタジー世界だった。突如として現れた異形の怪物エミリアスとか色々あって、それに対抗すべく今は巫女が残したとされる『イカイノシシャ』を全土の民が待ち望んでいるということ。俺は今年11歳で顔はお母さん似で髪質はお父さん似、性格は昔のお母さんそっくりだということ。半年前に勝手に一人で川に行き大きな魚を持ち帰り、その少し後に近所の子が俺よりでかい魚を取ったことを知り勝負を仕掛けボコられたこと。つい三か月前に近所の子にメイク力で勝負を仕掛けシバかれたということなど、それはもういろいろ聞いた。

 あと、記憶の混濁はこの世界では『愚者の聖痕(ユーフォリア・スティグマ)』と呼ばれるらしく、10歳になる頃に稀に起きるらしい。曰く、ソレを受けた者は風を齎すと言われ、過去そのほとんどが歴史に名を刻むような事をしでかしているようだった。別に俺の演技力がよかったからすんなり信じられたのではなかったことを知り悲しくなった。

 

 間違いなく世界とか常識よりも俺の情報の方が多かった。そんで近所の子にシバかれすぎだろ俺、ボコボコじゃねーか。なんてことを考えてた時にふと思った。

 

『イカイノシシャ』って『異界の使者』じゃね? そんでそれ俺じゃね? って。

 

 そうすると全て納得がいった。だって俺、異世界転生だから。もうそうとしか考えられなかった。そして俺はこう思った。

 

 異界の使者ぜってーモテるだろ、と。

 

 間違いない。だって世界が望んだ存在だもん。みんなよいしょするに決まってるもん。しかも聖痕持ちだと思われてるもん。俺は自身の大ハーレムを視た。思い込んだら止まらないことで有名な俺はすでにフルスロットルだった。

 

 まず、俺は勇者には剣という浅はかな考えで剣を手に入れようとした。適当な刃物を触ろうとして母にブチギレられてからビビり散らしていた俺はずっとそこら辺の木の棒で素振りをしていたから。この時すでに主人公の気持ちだった俺はコレもイベントだと割り切っていた。

 

 並列して魔術も覚えようとした。ぶっちゃけ母親が食事の支度に魔術多用してて羨ましかったし。俺も皿浮かせたりガスコンロとかなしで火使いたかった。というか軽率に空飛んだりするのはファンタジー色強めだよね。

 

 そして、俺をボコボコにしてくれた近所の子へ勝負を仕掛けるのも続けていた。もともと村には俺とその近所の子以外に年の近いのはいなかったのもあり、結構な頻度で物欲しそうな目で見ているガキ相手にやさしさの塊である俺はちょっと遊んでやろうと声をかけたわけだ。

 

 無茶苦茶ボコボコにされた。

 

 ビックリした。強すぎて。しかし負けっぱなしはムカつく。もともとボコって気持ちよくなろうとしていたこともあり、一度痛い目を合わせてやろうと俺はさらに意気込んだ。

 ちなみに後日決闘を申し込みに行ったその子の家には木の剣があった。俺はその子と仲良くなった。

 

 そうして5年ほど経ち、俺は晴れて高校生ほどの年齢となり、遂に王宮立のバカでかい学校に入学し、偶然同じ学校に入学した近所の子とパーティを組むようになり、一緒に主人公世代特有のトラブルを解決しまわって1年を過ごして──

 

「そして今に至る、と」

 

「ん? なんか言ったルノ?」

 

「いや、少し昔を思い出してたんだ。心配するな死ねエニュミー」

 

「なんで!?」

 

 今、俺を呼んだ人物こそがご近所さんことエニュミー・KK・ゼンノートであり、目下俺の障害になりつつある男。

 

 基本的に真面目で多少の悪ノリもよくついてくるような馴染みやすい性格で頭脳の方も悪くはない。身体能力はハチャメチャに高く俺の昔なじみ的な存在。

 最大の特徴としてチンチクリンの女顔。

 

 この男、依然として俺より強いままである。しかも本人によると『愚者の聖痕』を受けたっぽい疑惑もあるようで、身体能力もそれ由来かもしれないと。お揃いだとはにかみながら言ってきやがったからよく覚えてる。

 

 まあここまではいい。いやよくないが。このあんちくしょうの最大の問題点、それは──

 

「エーミィ! 今日こそはアンタに勝たせてもらうわ! それで私と──」

「エニュミー様! よろしければ次の遠征、私と組んでいただけますか──」

「エニュミー!」「エニュミーくん!」「エニュミ〜」

 

 俺の隣でたやすくハーレム形成しやがること。

 

「う、うるせぇ……!?」

 

「アハハ……ご、ごめんね?」

 

「謝られるとこの上なく惨めになっちゃうな」

 

 ……うん、ボコられまくってた頃から薄々思ってたけど。

 

 コイツ、主人公くんだ。

 

 

 

 思えばはじめからそうだったよ。何回挑んでもボッコボコにされて、生まれてそうそう聖痕があって。間違いなく主人公じゃねーか。なんで気が付かねーんだよ俺はバカなのか? 

 

「いやー、最近多いねこういうの。村が恋しいなー」

 

「村じゃジジババしかいねーからな。こんな惚れた腫れたの追っかけとかもババアどもの気色悪い捏造で聞くくらいか」

 

「びっくりするほど辛辣だ!? ホントかもしんないじゃん!」

 

 隣でワーキャー騒ぐチンチクリンは主人公らしからぬ観察力で女の子からの好意について把握している。したうえでなあなあで済ませている。それは決して許される行為ではない。半分くらい分けてほしい。

 

「なんでお前そんなモテるんだろうな?」

 

「んー、ボクが強いからじゃない? 去年はたくさん事件解決したし」

 

「清々しいくらい謙遜しないなお前」

 

「ボクの辞書に謙遜と嗜み、謙虚やその他諸々はないよ」

 

「その他諸々は欠落がすぎて辞書とは言えないのでは……?」

 

「いざとなったら世界の辞書ごと改変するからセーフセーフ」

 

「ウソだろお前固有魔力そんな使い方できんの?」

 

 固有魔力とは、自身に備わった正真正銘ソイツだけの能力。研究者によれば、自身の魂の色と魔力の色が完璧に一致している場合のみ発現するらしく、後天的に会得することは不可能。しかも、魔力色は生後間もなく意思もほぼない赤子本人が無意識で決定するらしい。要するに、マジで才能のある一握りだけが持ってる奥の手的な代物。

 

 目の前のチビスケはそんな固有魔力の中でも反則級の魔力持ちだった。こんなとこも主人公感丸出しで不快な限りだ。

 

「えーと、ルノはモテたいのかい?」

 

「は? そりゃモテるに越したことはないだろ」

 

「えー、でも結構面倒だぜ? ヘイト管理とか色々」

 

「うーん、漂うこの作業感」

 

「ぶっちゃけゲーム感覚だよね」

 

「エミリアスより醜悪で虫唾が走るな」

 

「言い方やばくない!? 仮にも友人だよ!?」

 

「うし、じゃあ友人辞めるか」

 

「まさかの即決!? ちょっ本気!? やーめーてーよー!!」

 

「うるせーなぁ。じゃあさ、あのハーレム半分くれよ」

 

「……ナチュラルにあの子たちをモノ感覚で喋る君がボクに意見する資格はあるだろうか?」

 

 このチビ、ああ言えばこういいやがって。昔はもっと簡単に言いくるめられたのに、いつの間にこんな口達者になったんだ? 

 

「あー、なんで俺じゃなくてお前ばっかー!」

 

「そりゃ月1の模擬戦で毎月瞬殺でボコられてたら百年の恋も冷めるでしょ。最長5分だっけ? それも必死に逃げ回ってチクチクする陰湿戦法で」

 

「あ!? 5分と13秒だボケが! それとアレはあらゆる場面を想定した合理的戦術だバーカバーカ!!」

 

「必死だなぁ!? そーゆーとこでしょ!?」

 

「そもそもお前が1年間ずっと全力で捻りつぶすからだろ!? 俺が全然成長してないみたいじゃん! 先月なんて30秒持たなかったじゃん! 日に日に短くなってくじゃん!! 優しくして! 手加減してッ! 俺に勝たせてッ!!」

 

「いや、接戦にしようとすると舐めプが過ぎるなって……。ホントにままごとになっちゃうよ」

 

 なんだコイツ? そんな低レベルの煽りでこの冷静沈着を地で行く俺が反応するとでも? やってやろうじゃねーか。

 

「いっぺん痛い目みねーとわかんないようだなァ……?」

 

「うん、悪いことは言わないから一発でも攻撃当ててから言おう?」

 

「──ッ!!!」

 

「わっ顔真っ赤。前世はチンパンジーかい?」

 

「しゃあ今月の決闘の時間だコラー!!!」

 

「今日は2分にしよっかなー」

 

 ギタンギタンにしてやらぁっ!! 

 

 

 

「毎度思うけどなんでこんなギャラリーいる?」

 

「ボク人気だからねー」

 

「同じ学園生なのにこのアウェー感……」

 

「女の子の声援が全部ボク宛だね」

 

「耳まで優れてらっしゃるようで、男は?」

 

「だいたい1/4くらいかな……」

 

「ハッ! 所詮お前は女の子人気だk「君向けのが」──」

 

 始まる前からボコボコじゃねーか。せめて男は嫉妬で俺を応援しろ。まるで公開処刑じゃないか。どう考えても魔王に立ち向かう勇者枠は俺だろうに。

 

「エニュミー! かっこいいよー!!」

「今日は何分で沈めてくれるんだー!?」

「そんなコバンザメコテンパンにしちゃえー!!」

「そーだそーだ! 甘い蜜だけすすりやがって!」

「身の程を知ってわきまえなさい! 凡人のくせにエニュミーの足引っ張って!」

 

 耳をすませば、なんとか俺の耳にも届くほどのドでかい声なら聞き取れた。ふむ……

 

「おい、さすがに泣きそうだ」

 

「逆に聞くけどなんでそんなに嫌われてる?」

 

「あれじゃん、俺たちパーティ以外であんま話さないじゃん?」

 

「あー、ボクがモテすぎてすぐ囲まれちゃうからね」

 

「黙れ死ね。……でも最初は結構話してたじゃん?」

 

「お互い知り合いも少なかったしね。最初は周りから距離置かれてたから助かったよ」

 

「歴代最高得点でビビられてたからな。でさ、俺たちの会話って傍から見るとどうよ?」

 

「うーん、僕は君と違ってちょっと外面意識するからなー。君が突っかかってるように見えなくもないね」

 

 その通り。このチビ、庇護欲そそる女顔で人前で良い子ちゃん演技なんてする。俺はあんまり気にしないし知り合いなのもあり特にコイツの成績には関心なくいつも通り話しかけた。そう、いつも通り罵倒まじりで。

 

「うん、なんか突っかかるカマセ野郎の完成だね」

 

「本人の前でよくそんな堂々と言えるなお前。心死んでんのか?」

 

「おまけに事件解決するパーティの一員だから成績だけよくなってく乞食野郎でもあると」

 

「なんだ? 戦う前から精神攻撃か? 随分と姑息だな、その程度にしておかないとギブアップするぞ?」

 

「あれそんな感じー!? まじ凹みなの!?」

 

「俺だって頑張ってるのに……」

 

「嘘じゃんガチじゃないか……。え、えーと……ぼ、ボクはルノが強いこと知ってるよ!! ボクが強すぎるだけでルノだって他と比べたら──」

 

「今だ隙をついてオラァッ!!」

 

「──だからってあぶなぁ!? 周りの評価下がる理由明白じゃないか!!」

 

「知るかー! 今更下がった評価なんか気にしてられるかー!! お前に勝てばどうせ評価も上がるだろ!?」

 

「それは確かにその通りだ! くそぅ! ムカつくから本気で行くぞー!?」

 

「上等だかかってこイヤ待て少しは加減しろっ!?」

 

 2分で決着がついた。

 

 

 

 全身がいてー。コレで通算251戦251敗である。いったいどうやったらあの化け物をぶん殴れるのだろうか。ノサれてゴミのように捨てられていた俺は日が暮れかける今、ようやく目が覚めていた。

 敗者とはいえ俺への当たりが強すぎやしないだろうか。

 

 フッ、イイ男は僻まれるもんだぜ。

 

 だがいい。賢しさにおいて他の追随を許さない俺はコレすら想定内。コレはあの最凶のチンチクリンにも告げていないことではあるが、この敗北にもレッキとした意味があるのだ。

 

 エニュミー・KK・ゼンノートを真正面から叩き潰す、コレが第一プラン。実力で制してやれば俺の評価も鰻登り、俺もストレスフリーで気持ちいい。現状達成のビジョンが見えないが対戦の回数を重ねるにつれて俺の実力も上がっている。このまま頑張ればワンチャンあるはずだ。

 問題はエニュミーもなぜか強くなってることだ。それも俺より早く。成長チートがよぉ……。

 ま、最終的に勝つから問題ない。俺は自己肯定感が異常に高かった。

 

 そして、エニュミーとの仲を決闘を通して継続させることが第2、3プランの要。

 

 ご存知、エニュミーはぶっ壊れ野郎。今では崇拝の域に達しているがやはり恐れられていることに変わりない。

 だからこそ、俺がエニュミーと親交を深める。

 

 エニュミーを俺の配下に堕とすのだ。

 

 エニュミーは死ぬほどモテる。女の子が寄ってくる。つまり、沢山の女の子はエニュミーのモノということだ。

 

 なら、逆説的に考えてエニュミーをオトせば女の子もついてくるのでは? 

 

 俺のイルカ並みのIQは依然として絶好調だった。エニュミーの孤独を癒やすのはこの俺、ヤツとて人間。孤独から救った存在に依存するはず。その地位を俺は確立すればいい。

 

 そして3つ目、俺がエニュミーと関わっていることで得られる最大のメリット。ソレこそが現在俺が狙ってる本命だ。

 

 あのチビスケは確かにモテる。それは認めよう。イカイノシシャ様も多分アイツだろう。きっと今後も世界中からひっぱりダコだ。

 

 ならば、ヤツはいつか一人の伴侶を作らなければならないに違いない。

 

 では、残った者は、選ばれなかった余りものはどうなる? 漫画やゲームじゃないこの世界では、いわゆる負けヒロイン達は主人公のハッピーエンド後も生きていかなければならない。

 

 そこをこの俺がかすめ取るんだ。*1そのために今までこの屈辱も耐え忍んできたといっても過言ではない。

 

 フハハ、まさに一石二鳥、いや五鳥くらいはいけるか。どう転んでもリターンを得られるに違いない天才的策略、世界広しといえど俺ぐらいしか思いつきまい。

 

 今は雌伏のときだ。コバンザメと言われようがカマセ野郎と言われようが甘んじて受け入れてやろう。

 

 狙うは勇者の相棒ポジ! 視界はオールクリア!! 天才軍師とはこの俺、ルノクス・フォイ・カラットのことだッ!!!

*1
大嘘、基本全て偶然。こじつけだけが異常に得意




果たしてどっちが主人公なのか。ダブル主人公なのか。
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