自称天才軍師のチートハーレム主人公活用法 作:はごろも282
「もう我慢できない! はっきり言うけどアンタの存在は迷惑なの!!」
結構な頻度である課外実習的なノリの演習にて、気の強そうな赤髪の女が声を荒げてある男を詰めていた。
「ちょっと! 聞いてんの!? アンタよアンタ!」
赤髪の少女には発言力があるのか、それともその気品からなるカリスマ性によるものか、周囲の空気は張りつめていて多くの視線が少女と男に寄せられている。
「へ、へぇ~……私は眼中にないって、そういうこと? よわっちぃ癖に舐めた真似してくれんじゃない……!」
ろくに反応しない男に対して次第にヒートアップする少女、今にも手が出てきそうな形相だ。ぶっちゃけ怖すぎて泣いちゃいそう。
「ま、まあまあ落ち着きなって! パーティだって学園生活中は原則変更不可なんだからさ!」
「エーミィは優しすぎるの! 学園に言えば変更だって認められるわ! だいたい今までのトラブルのときだっていつもコイツだけいないじゃない! コソコソ隠れて評価だけかすめ取る姑息な奴! こんな寄生虫以下の蛆虫に優しくする価値ないわ!!」
「ひっどい悪口」
信じられないほど語彙力に富んだ罵られ方をする男、というか俺。察しの通り、少女に詰められているのはこの俺ルノクスだった。
うん、どうしようコレ。というか、いったいなぜこうなった?
確かに俺の計画ではヒロインに好かれる必要はない。というかチビのせいで好かれようがない。だから、それでもリカバリーがきくように回りくどい策をこうしてわざわざ講じているんだ。
でも、嫌われる必要はないよね? ろくに話したことないんだが?
これは非常にマズイ。好かれなくてもいい。ただ、なんとなく戦友だなコイツ的なポジションはキープしなければ計画が全て崩れてしまう。
というかホントになんでこんなに嫌われてる? 思いあたる節なんてひとつもないし、ここは次に繋げるために質問することにしよう。デキる男は聞ける男だと前世の担任も言っていたからな。まずは巧みな話術で相手に怒りを鎮めてからっと。
「えーと、少しは落ち着けよ……あー、マクルーガー?」
「ミドウォーターよ! エインズ・I・ミドウォーター!」
「……?」
「なんで分かんないのよ!?」
ニアピンか。おしかった、なんとなくは覚えていたんだけどな。なんか小うるさい女って印象が強すぎたのが敗因だろうか。それなら俺は悪くないはずだ。もっと個性を出して出直してほしい。
ただ、今のでちゃんと思い出した。アレだ、入学早々エニュミーとバトって即落ちした女。確か侯爵家のお嬢様だったっけ?
「まあいい。とにかく、俺が君の癇に障るようなことをしたことがあったか?」
「ええ、つい5秒前にね!」
「……?」
「だからなんで分かんないのよ!?」
「愉快な奴だなお前」
「──ッ!!」
「わっ顔と髪の毛同じ色じゃん。忘年会での定番だろ」
すごい、カラーチャート使ってもほぼ同じ色になるだろコレ。顔と髪の境がほぼないじゃないか。
「うん、カラットくんは時々すごくバカだよね」
「あ!?ンだとこのチビ踏みつぶすぞ!?」
「言動がチンピラすぎるなぁ!?」
「というか私を無視すんじゃないわよ!!」
「顕示欲が強すぎるなこの女は」
人前ではなぜか俺を家名で呼びたがるチビ助の煽りを華麗に受け流しつつ、顔面ザクロとも円滑なコミュニケーションを継続させる。これができる人間は世界広しといえどそうはいない。少々パフォーマンスじみてはいたが、俺の能力値の高さを知らしめるにはちょうどいいだろう。
こころなしか俺に向けられる視線が強くなった気もするが、まあ気のせいだろう。
「てか、結局なんだったっけ?」
「!! そうよ! いいルノクス・フォイ・カラット! いい加減エーミィに絡むのはやめなさい!」
「うん、それは無理だな」
「即答!? 少しは考えなさいよ!」
「考えても結論は同じだから。だいたいお前たちほど俺はコイツと絡んでないぞ? 絡むと言ってもこーゆー強制グループワークの時だけだ」
隣でヘラヘラしてるチンチクリンを指さしながらそう答えてみる。実際、俺たちはそれほど会話を頻繁にするというわけではない。俺のせいでヒロインとの交友タイムが削られてるなんてことはないだろうに。
「その強制グループワークのことを言ってるの! エーミィはとっても強いの! あなたみたいなのが足を引っ張るなんておこがましいと思わないの!?」
「何だコイツ暴論の化身じゃないか。というかよしんば俺がソレを承諾したとしても交換相手は誰だよ?」
「それは勿論私よ。当然でしょ?」
「あー違ったただの欲望の化身だった」
「とにかくそういうわけよ! いい!?」
「いいわけあるかポンコツ」
「なんでなのよ!」
「おいゼンノートこいつ面白いぞ」
「あ、あはは……実は叩けばもっと鳴るよ」
「ホォー……?」
「あの、私が言うのもアレだけどもうちょっと真面目に対応してくんない?」
自覚があったことに驚いてしまった。いったい最初の張りつめた空気は何だったんだろう。カリスマとか考えちゃった少し前の俺をぶん殴りたい。
「で、でもよ!? 建前とはいえ私の言ったことは間違ってないわ!」
「ついに建前って自白しちゃったぞこの娘」
「うるさいわ。冷静に考えてごらんなさい。エーミィの力は強大よ? 貴方が邪魔しなければきっともっと強くなって名を轟かせているわ。エミリアスの動きだって今よりも抑制されていたかもしれない。知ってる? 王宮ではね、エーミィを時期巫女専属の騎士に祭り上げようとする勢力があるんだって。今は学園長の力で抑えてるけど、それも限界がくる。だからもっともっと実績が必要で──」
「おい今のは俺の討伐数に入れていいだろ」
「……? 君は剣先がかすっただけで討伐というのかい?」
「あ!? 食い込んでただろうが4㎝くらい!!」
「ボクは首切り落としたけどね」
「死体のだろ? とどめは俺だったね」
「必死だなぁ。じゃあいいよソレあげるから。……ハイ3匹っと」
「嘘だろお前!? クソっお前といると俺の取り分が減る! すぐ奥に開けた場所があったからお前はソコ担当な!」
「開けた場所はエミリアス居ないんだよなぁ……ま、ハンデにはなるか」
「ぶちのめしてやっからなー!」
「聞きなさいよ!」
うわビックリした~。まったく、急に大声を出すのは驚くから禁止にしてほしい。というか話が長いんだよな。要はエニュミーを活躍させるからお前みたいな足手まといは邪魔ってことだろ? 回りくどいってのまったく。
「なんと言われようが答えは変わんないよ」
「っあのね! コレは冗談とかじゃなくてー「そもそも」──!」
「そもそも、俺が弱いだのなんだの見下してるが。お前が俺より強いと言える理由はなんだ? 成績順なら俺はお前より上だぞ?」
瞬間、緩んでいた空間が一気に張りつめる感覚がした。
「何が言いたいのかしら?」
「分からないか? こんないい席、わざわざ雑魚に譲るつもりはないってことさ」
ふふん、やはりさすがの演技力。剣呑な雰囲気も今後のコミュニケーションにおけるいいアクセントだ。会話は緩急が重要。これがいつか思い出として語られる日が来る。最初は不仲なんて、なんともロマンチックじゃないか。*1天才軍師はいつだって先読みをしているものだ。
「それは……私への挑戦状と捉えても?」
「まさか。だって、戦いにもならないからね。ま、どーしてもってなら君から動くことを勧めるよ。俺が受諾するかは別だけどね~?」
完璧な煽り文句だ。実際嘘は言ってないし。台詞の肝はどちらが勝つとは一言も言っていないことだ。実際戦えば俺はちゃんと負けるだろう。
「へぇ~……どうやらよほど自信があるようで。毎度エーミィに手も足も出ず無様にやられてるクセに良いご身分だこと。ほんと、性懲りもなく挑んでエーミィの時間を無駄にして……ってあら? 毎回瞬殺だから時間はとってないのねごめんなさい」
「瞬じゃねーよ5分13秒だ。というか自分だって入学早々秒殺されたくせによく言えたな」
「秒じゃないわ7分と32秒よ。フフン、これだけでもう私の方が上じゃない」
「7分間いなされ続けて魔力切れで負けたのダサかったな~、手加減されまくりで」
「はぁ!? アンタだって5分間逃げ回ってただけじゃない! あんな姑息なこと大衆の前でよくできるわね!? ねぇエーミィ! ってあれ?」
エニュミーに同意を求めようとして、エインズはようやくこの場にエニュミーがいないことを把握したらしい。イノシシ並みの視野の狭さだ。脳細胞の一本一本が筋肉なのだろう。彼女の両親が不憫で仕方ない。
「今失礼なこと考えなかった?」
「いーや別に?」
「ふーん、まあいいわ。それで、エーミィはどこなの?」
「あー、アイツならその先を進んでひらけた空間に 「GYAAAAAAA!!!!!!!!!」──またか」
会話の途中で、轟音が響いた。クソでかい咆哮の余波で木々が揺れ、大地が震える。そしてそれが乱入者の大きさと実力を知らせる良い指標になった。
「!? なに!? なんなの!?」
「襲撃だよ。エミリアスの、方角的に勇者様のいるとこだろうな」
「なっ!? じゃ、じゃあ早く助けに行かないと──っていない!? 嘘でしょアイツもう逃げやがった!!??」
よし、エインズはちゃんとチビの元に向かったか。危なかった、咄嗟に木の上にジャンプして隠れてみたが、うまくやり過ごせたようで一安心だ。
周囲に人の気配がないことを確認して、俺は颯爽と木から飛び降りた俺は優雅に地面に着地する。……とてもジンジンする。2度とやらない。
「よくもまぁ、あんなデカいのに立ち向かえること。足手まといになるの分かってるだろうに」
エミリアスの強弱はその姿によって決定される。一般に知られている情報としては弱い順に人型、獣、合成獣、異形という扱いであり、それぞれに大中小の個体差がある。当然大の方が脅威度は増す。
今回は合成獣の大。コレは並みの騎士団ひとつが壊滅しかねないほどの脅威と言われていて、その評価からわかるように決して学生が相手していいモノではないのは明白。
例外があるとしたら学生の中でも飛びぬけて優れた7人、もしくは異常個体であるエニュミーくらいのものだろう。
そんなやばいヤツ相手にお荷物抱えて戦わせることになるなんて、あれで思慮深いところもあるエインズなら分かってるはずなのに。
「まあ、分かってたんですけどね?」
じゃなきゃわざわざ隠れたりしないだろう。なんとなく読めてたよ応援に行くことは。あのまま突っ立ってたら間違いなく俺まで巻き込まれてたからな。ナイス判断だと言えるだろう。
「うわ、というかこれで俺が隠れてるっての否定できなくなっちゃったな~」
今までは決定的瞬間は誰も見てなかったからどうにかなってたというのに。しかも別に隠れてるわけじゃないんだから余計に不快感が増す。
俺が事件の時エニュミーといないのは大きく3つ理由がある。
1つは、単純に力量の問題。エニュミーだけの方が明らかに戦いやすいだろうからな。というか、俺といるとエニュミーは弱体化する。
知っての通り、エニュミーはただでさえぶっ壊れているが、その最たるは固有魔力だ。事象改変という常識破りの能力はエミリアスに絶大な効果を発揮する。
そんな固有魔力は人前で安易に使ってはならないという厳しめのルールがあったりする。というか、持ってることを知られちゃマズイ的なこと。
ただでさえ希少性の高い固有魔力を持ってることがばれてしまえば秒速でモルモット行間違いなし! 魔術の歴史はまだ浅いのだ。
よって、エインズの登場であのチビ助はフィジカル勝負を仕掛ける羽目になってることだろう。ざまーみろ。
まあソレと俺といて弱体化は無関係だが、そこらへんは置いとくとしよう。
2つ目、これも単純。基本的に俺たちがセットだと襲撃されない。基本的にまったく別の場所にいるとき、2人でいてちょうど別れたりしたタイミングってときによく事が起きる。
このせいで俺たちはほぼ協力できないというわけだ。
そして最後、俺が一緒に戦っていてはいけない理由筆頭にして俺を悩ませる問題。
「うひゃ~、また読まれてるぜ。一体全体どーいうことなんだい知将殿?」
「こっちのセリフなんだよなぁ。頼むから俺の前以外に登場してくれない?」
それは、明らかに別動隊っぽいのが毎回俺の前に現れるということ。
「俺っちたちはさ~、目的があるの。でも~サブクエっつーの? なんか固有魔力持った異分子拉致って来いっていわれてんの」
「えーっと、それは紫髪のチビ助では? 間違えてますよ?」
エニュミーにとって固有魔力のことが知られちゃまずいということは分かってはいるが、そんなことは俺には関係なかった。
「もちろんあのチビ助は対象だよ~ん。でも、俺っち的には君も怪しーのよね」
「ハハハ何言ってっか分かんねーや」
そう、ぶっちゃけた話俺も固有魔力っぽいのは持っている。誰にも言ってないのになんでバレてるか教えてもらっていいだろうか?
「あの紫チビが壊れてるのは分かってるからな~!! 毎回リサーチして誰もいないルートも把握して、紫チビ用の極上の餌を用意して作戦を決行するってのにな~!! ──テメェはいつもいつも邪魔しやがって、クソがッ!!」
「その豹変怖いからやめて? あと間違いなくそのサーチざるだぜ。学校で言われたろ? 見直しはしっかりしましょーってな」
「減らず口が……ムカつくなァ!!!」
「くそぅ! 俺の青春こんなんばっかり!! チビの方は戦いながら女の子助けてんだろどうせっ!!」
謎の男率いる小型エミリアスの集団が勝負を仕掛けてきた!!
ハーレムむっず。登場人物多すぎるとバグっちゃうな…?
エニュミー……ハーレムフラグ←継続
ルノクス……○○フラグ←new!