自称天才軍師のチートハーレム主人公活用法 作:はごろも282
「仮に、その説が正しいとして、キミはどうする?」
一見するとただの疑問であるはずのこの質問は、その実大きな意味を持つものとなる。俺の直感はそう示していた。
正直に言ってしまえば何なんだその質問案件ではあるわけだけど、目の前の女性にとって重要そうな話である以上は答えなければ男が廃る。
そんな理由で真剣に返答を考えた結果、俺は特に取り繕ったりせずに正直に返すことにした。
「どうするって、どーにかすると思います」
「それは、どうやって?」
「えーと、何が言いたいのか分かんないんですけど」
「簡単な話だろう?世界がそうあれと定めているなんて不可解な結論に至るほどの問題が、そう簡単に解決できるわけもない」
「じゃあ気のせいでしょう。確証もないただのガキの戯言です」
「ただのガキは世界に問題があるなんて思考はしないよ。それに、言い逃れできないことはもう分かってるだろう?」
「失礼ですがいい歳して陰謀論とか好きなのはイタいですよ。ちょうど医務室ですし俺が包帯とか巻いてあげましょうか?もちろん全身に」
「本当に失礼だね!?絶対に逃がしてやらないんだからな!?」
しまった。なんとかごまかせているはずだったんだけどつい本音がこぼれてしまった。
というかこのヒトほんとになんなの?もう色々通り越して怖いよ俺は。何?俺が暫定異世界転生だってバレてんの?なんで?バレる要素あった?
といっても、確証がない以上は踏み込んだ真似なんてできるわけもなく。俺にできるのは適度に話題をそらして情報を得ることだけだった。
「あーもう!俺がただのガキじゃないってのは認めますよ!これでいいですか!?」
まずは軽くジャブ程度で一発。これくらいの情報は大した問題にはならないし。
「そのただのガキじゃないっていうのは、天才だからとかしょうもないのではないよね?」
「ハハ、まさかそんな」
「だよね。じゃあどんな意味なんだい?」
──さて、万事休すか。まっずいぞぅ、どうしてバレたんだ……?
と、とにかくいい感じのごまかしを……!がんばれ!唸れ俺の脳細胞!
「あー、えーと、ほらアレですアレ。あー……そうだ!俺って刻印持ちなんですよね!」
よぅし完璧だ!嘘はついていないしこれならごまかせるぞ!なぜなら通常は刻印関連なんてタブー中のタブーで絶対に秘匿しなければならな……あれ?
待て俺、冷静に考えろ。一旦情報整理だ。まず、転生うんぬんに関しては俺自身明確な解答をはじき出せない以上最も隠すべき事案だろ?なんかバレてる雰囲気があってもそこで認めるのは普通に考えてありえない。もし相手に確固たる自信があったとしてもそれを証明する術なんてないし。
つまり、まだ今の段階では確信に迫った相手が少数派なわけで。一般人目線では異常なのはどっちかって話になればもうそこからは相手側をトチ狂ったヤベーヤツだって方向に持ってける。
それで、愚者の刻印はこの世界の最上級極秘事項だよな。これは俺の両親も絶対にバレるなと言っていた以上間違いないはずだ。こっちはこの世界の重要事項だからこそ隠していたことに大きな意義がありつつ俺の核心は覆い隠せるってわけだ。もちろんこの情報が公になろうもんなら俺の安寧は消え去ること間違いなし。
俺は今それを目の前のセンセーに話した。異世界関連をかき消すために。つまり──
コレやばくね?
全身からドッと汗がにじみ出る感覚と共にゆっくりと視線をセンセーの顔へと向ける。すると、目をキラキラさせた美女と目が合った。
「な、な~んて……」
「刻印って、
「え、あの……おーい?」
「あ、ゴメン。ついつい我を忘れてしまった。安心してくれ、誰かに言ったりするようなことは絶対にないと誓うよ」
「は?あ、そうなんすか……」
ビックリした。超絶速い展開に全くついていけなかったせいでつい生返事を返してしまった。口約束で誓われてしまったけど拘束力を持たせるべきだったのに。クソっこの俺を陥れるとは彼女もなかなかの策士だ。うわ、マジでどうしよ……。
「ん?どうしたんだいそんな目で見て」
「え、あーいや……ホントに言わないでほしいからな~みたいな?」
「なんだ、疑ってるのかい?これほど美人で面白くて人気者な先生なのに?」
「センセーもしかしたら僕たち住む世界が違うかもしれないです」
「ハハハ、確かに先生は天上の存在の如き美しさではあるけれども」
「なんだ無敵かこの女?」
急にテンション上がりすぎてんのか分かんないけどすごいことになってる。きっと数時間後には枕に顔をうずめることになるだろう。
「心配しなくても言うことはないよ。なんならもしもに備えて契約でもするかい?」
「そうですね、じゃあもしものときは俺に服従って方向で」
「命に代えても守り抜くことを誓おう」
「そこまで嫌なの?」
泣いちゃうぞ?別にこの場で見苦しいガチ泣きを恥も醜聞もなく披露してやってもいいんだからな?
「さて、とりあえず刻印についてだ」
「急に真面目」
温度差おかしいだろ。いや、言わないけども。
「過去、刻印持ちの多くは歴史に名を残している。良い意味悪い意味は別でね」
「はいはい、存じてますよ」
「言い換えれば、刻印持ちの周りでは歴史が大きく動く何かが起きるということ。だから刻印を受けたものはソレを隠そうとする。どんな形であれ利用されることをよく思うわけもないからね」
確かに。刻印を受けたことが周知されればそれを確保しようと動く勢力が現れるのは容易に想像がつく。歴史に名を残すということはその時代の中心であるということ。もし、刻印を手中に収めることができたなら。確実にその勢力を中心として時代が動く。
「刻印は時代を動かす。そしてそんな大きな力を保護すべく王国は動く。そうして、保護を受けた末路は知っているかい?」
「知らないですね、田舎育ちなもので」
「徹底した拘束と教育さ。時代を変えるとわかっているからね。自分たちの不利益にならないように指導をする。まず自由はないだろうね」
「こっわ。刻印の確かな証拠なんて見えないのにそこまでするもんですか?」
「そう、見えないんだよ。幼少の記憶を失う、将来大きなナニカを起こす。でも、それだけしか情報がない。刻印とは名ばかりで身体に特有の痕があるわけでもなく、真実か確かめる術もない。ソレが
「……覚醒?」
「おや、知らないかい?覚醒した聖痕は光る。そしてその後、身体の一部に特異な紋様が浮き上がるんだ」
「そうなの!?」
バカな!知らなかったぞ!?聖痕が光るだって!?そんなの、そんなの──
「滅茶苦茶カッコいいじゃないか……!!」
「うんそうだねかっこいいねだから戻っておいで?」
「マジかマジかよマジなんですか!?そういや心なしか俺のナニカが燃え上がってくる感覚がするな!!!」
「気のせいだよ戻っといで?」
「もしかしたら見えないトコに紋様とかあんのかな!?ちょ、センセー背中とか見てくれないすか!?」
「うんいつでも見てあげるから一旦戻っといで?」
「見たいのは今なんですけど!?何考えてんすか!?」
「私が悪いのかコレ?」
流石に一気に夢が広がっていく世界にワクワクを感じざるを得ないな。これはもしかしたらカッコよく女の子を守る選手権にもレパートリーが増えるかもしれない。身を挺してかばった女の子を背に強敵と相対するときにボロボロの服から覗かれる紋様、最高にクールだな。控えめに言って採用です。
「いや、モテすぎてつら「グラシア」って冷たい!?何ごと!?」
「まったく、落ち着きなよ。話の途中だよ?」
「急な魔術は心臓に悪いのでヤメてくださいまったくなに考えてんすか?あとソレ教えてください」
「本当にどんな神経してたらそこまで清々しい責任転嫁ができるんだろうね。絶対に教えないよ?」
「チッ……ケチ臭い生娘が」
「死にたいならそう言いなよもう。『check-chrono-mis「わーウソウソ!!わー!!!」──まったく、学びたまえよクソガキ」
「は、ハハ……」
危なかった……!エニュミーを本気で怒らせたときに出てくる固有魔力の完全顕現詠唱と同じ雰囲気だった。何度もくらった俺は詳しいんだ。多分あれはマジの奥義的なヤツだ、なんで保険医なんかやってるんだこのヒト。世界トップレベルだろあれもう。いけない、そうそうにこの会話を断つべきだろう。
「は、話を戻しましょうか。えーと、俺の嫌われ方が異常でしたっけ?もしかして刻印が関係してたり?」
「強引だなぁ……。まあいいけど。とはいっても、キミの刻印とその問題は別だと思うけどね」
「結局違うんすか」
「過去の聖痕保持者が異様に嫌われてたなんて情報はないし、その線は薄そうだろ?」
た、確かに……。エニュミーも嫌われるどころか大ハーレム作ってるし……。じゃあ今までの時間何だったんだよコラ。
というか俺自体聖痕持ちって言ってるだけで実際聖痕があるとかではないんだよな多分。は、つまり光らないってことか?うわ、萎えた……。
なんて俺の心の内をくみ取ってか、センセーは神妙な顔で俺を見て口を開いた。
「結論から言えば、分からないということがわかったね」
「この役立たずが」
「なんでそんな酷いこと言うんだ?」
「むしろなんで言われないと思った?」
あそこまで露骨な尋問みたいなことしといてそれが通用するわけがないだろバカめ。男だったら身包み剥いで縛って外に棄ててたよ。
「そうは言ってもね?キミだって確証のない論は興味ないだろう?だいたいキミが煙を巻こうとするからここまで長引いてるんじゃないか。全部キリキリ話してくれたら早いのに」
「いやいや、ちゃんと話したでしょうに」
「まだ全てじゃないだろ?甘いぜ少年、先生はまるっとお見通しさ」
「年季の差を見せたいのか若作りしたいのかはっきりさせてから出直してください」
「おっとよく考えて発言したまえ。いい大人のギャン泣きが御所望かい?」
「考えられる限り最弱で最悪の脅し文句だ……」
ここまで堂々と情けない宣言できる人間そうそういない。逆にすごいぞ。
そんな俺の内心を読んだのか、センセーは軽く咳払いをして身を整える。まあそんなことしても既に評価は変わらないんだけど。
「いいかい?大人になることは現実を直視するのが困難になるってことと同義だ」
「みたいですね。文字通りセンセーを見て肌で実感しました」
「フフ、そうだろう?教師たるもの言動で示さなければ!」
「あの、コレ……俺のでよければ使ってください」
「うぅ……ありがとう……」
居た堪れなくなって手ぬぐいを渡す。まさか本気で泣くとは思わなかった。俺の罪悪感がとんでもないことになってる。
そして結構な時間を使い泣き止んだ目の前の成人女性はようやく俺の方を向き、色んな液体でグチャグチャになった手ぬぐいを指して言った。
「やあ、すまないね。ところでコレ、どうしたらいい?」
「気にしなくていいですよ。差し上げます」
そんなに汚していいとは言ってない。
☆
なんやかんやバタバタしていたのも落ち着き、この場で脱線しまくっていた会話も最初の話題に戻りつつあった。
「──一旦、世界に意思があって、それがキミを邪魔しているという前提で話そうか」
「まずその前提が納得いかないんですが。なんで世界が俺の大志を邪魔してくるの?何なの世界、ぶっ壊すよ世界?」
「よしよし落ち着いて?また脱線しちゃうから。あとその汚い欲望を大志と称すのはあまりに無礼だ」
そうやって宥められつつ、提示された問いについて思考を回す。なんだかんだで脳内は大忙しだった。
「理由も分からないまま、理不尽に嫌われる未来。それがキミに待っている未来になるわけだけど」
「まあ、その前提ならそうでしょうね。世界なんて概念が原因なら、世界に中心核でもなければ打破は不可能だ」
こんな妄想のような話に大真面目に付き合っているのも、それ相応の理由があるから。
シオン・G・リグレスタは知りすぎている。
それが、目の前の女性に対しての俺の最終結論だった。
大規模なら今後のハーレムも容易(慢心)