自称天才軍師のチートハーレム主人公活用法 作:はごろも282
俺の拘束を爆速で解除したエニュミーは俺の腕をつかむと逃げるようにその場を離れた。信じられないその速さに腕が千切れるような幻覚を俺に与えて。いつかこのチビに通常の人間と言うものをレクチャーする必要があるな。エミリアスの擬態だってもう少しまともに力加減すると思うんだよね俺は。
そして今、人通りの少ない場所まで引きずり込まれた俺は雑に投げ捨てられて本日二度目となる地面との抱擁を交わしていた。どうやらコイツは大切な幼馴染のことを道具か何かだと勘違いしているらしい。*1倫理観が欠落している、きっと生まれついて異常者だったんだろう。
「……なにさ、その目は?」
「いや、なんでもない。それで、何がききたかったんだ?」
こういうときは突っかかるだけ無駄だ。俺は優秀だからこんなこといちいち気にしないんだ。寛大さは器の広さ、器の広さはモテる秘訣。そういう言葉を聞いたこともある。
「なーんか納得いかないけど……まあいいや。ストラグルゲームなんだけどさ」
「ストラグルゲームぅ?魔闘祭のアレがどうしたんだ?」
「いや、今年は出るのかな~って」
「ハァ?出るわけないだろあんな御遊戯会。大した景品も出ないし旨味がねーし。家賃滞納してるから稼がないとヤベーんだよ俺。てかソレが本題だったりする?ふざけんなよお前マジ」
「だよね~!!出るわけないよねルノが!」
「話聞けやコラ何だテメー喧嘩売ってんのか変色豆粒」
「変色豆粒!?」
「そこだけ聞き取っちゃうのかよ。自分の悪口許さないマンか」
というかお前が悪いだろ。先に仕掛けてきたのそっちじゃん。
ストラグルゲーム、確かにクラスの連中は盛り上がってたがコイツまで興味を示すとは思わなかった。去年だってそれほど興味も持ってなかったハズだが、心境に変化でもあったんだろうか。
「で、なんでそんなこと聞いてきたんだ?」
「いや、なんか出場するらしいって噂があったからさ」
「俺が?フーン、そっか。いやーしかし噂されるほど人気者なのはツラいな!期待に応えられなくて悪いな~!!」
「うん、さすがの人気だね。対戦カード予想で大盛り上がりだったよ」
「あれ?もしかしてだけど悪意ある?」
「人気はやっぱりブレイカーズだね。他にも上位勢との対戦ばっかり期待されてるね」
「よぉしもしかしなくても悪意があるなお前のその言い方も!!」
知ってたけどね!どうせそんなことだろうとは思ってたけどね!
……あれ、おかしいな。視界が滲んできたぞ?
「でも今のイメージを払拭するなら出るべきだとボクは思うけどね」
「知らねーよ。あんなもん出てたら学園周りで女の子ひっかけらんないだろ」
「やっぱり息をするように避けられる行動を決断するキミにも問題があるよね」
「うるせぇバ~カ!!お前だって出ないクセによ~!」
「ヤ、ボクは今回参加するよ?」
「ん……え?マジかよ出んのか。去年出なかったのに?」
「うーん、なんかね。気づいたら参加する流れになってた。というか去年はエミリアスの強襲で大会どころじゃなかったし」
去年、俺もエニュミーも魔闘祭に参加をすることはなかった。エニュミーの不参加の理由は知らない。俺は至ってシンプルで金がなさすぎて大至急稼ぐ必要があったからそんな余裕もなかったというだけだ。
「あのお騒がせ合成獣な。パガートルのお嬢様がお捕まりになられたおかげでまぁ大変だったアレ」
「言い方。しかも大変だったのボクね。おかげで魔闘戦も回れなかったし」
「バカ野郎お前俺だってそのせいでお前の妹の御守りさせられて身動きできなかったわ」
「仮にも兄貴の前でそんなこと言う?というかルノ途中でいなくなったって聞いてるんだけど」
「はっ!知らないなそんなエミリアス語」
「エミリアス語なんてないよ。あんな肉塊に言語は早すぎるから」
「お、おう……」
ちょっと思想強くない?ちょっとヤダどうしたのこの子怖いわ。うん、突っつくのヤメて早めに話を変えとこ。
それにしても、ちゃんと情報が回ってるなんて思っていなかった。だが仕方なかったんだ、このクソチビが何かに巻き込まれるときは総じて俺も色々巻き込まれてるんだ。あの時だってよく分かんねー集団が急に襲い掛かってきたし。
流石に遊びに来ただけのガキに大変な思いさせるわけにもいかないし、やむなく別行動という選択するしかなく……。
だいたいアレのせいで俺はお金稼ぎも満足にできなかったんだが?むしろ俺に謝罪してほしいところだ。
「とにかく、出ないってことでいいね?」
「ああ。絶対に出ないね」
「そっか。じゃあ今年もうちの妹の「断る」──妹の付き添いお願いね!じゃっ!」
「嘘だろ無理やり通しやがった!?あ、おい待て!クッソ足速すぎんだろ!!」
あのチビホントどうしてやろうか……!!
俺は怒りを胸に、いつか必ず報復すると誓った。具体的には明日の朝とかに。
明日はストラグルゲームの対戦カードが貼り出される日のはず。
エニュミーがこんなの寝てても一位取れるとか言ってたって吹聴してやるんだ……!片脚だけ縛りしようかなって言ってたって言いふらしてやるんだ……!
そして翌日の朝
『……ルノクス・フォイ・カラットvsナギ・スタートン』
対戦カードの中に、そんな一文があることを確かに俺は目撃した。俺は脇目もふらず駆け出した!
「ここにシオンという女はいるかっ!?」
「うわなんだい朝から!?救急か!?……ってキミか。まったく、こんな時間に会いに来るなんて先生のこと大好きか」
「キミか、じゃないんですが!?一応確認なんですけどストラグルゲームに関して知ってることは!?」
「あー、対戦相手は誰になったんだい?」
「やっぱりおまえかー!!」
そうだと思った!
だってもう参加要請済んでるのにぶち込まれてたし。絶対教員の方で無理やりねじ込んだに決まってるじゃん。
「いやね、教員推薦っていうのがあってね。誰でもいいらしいからとりあえずキミを……」
「とりあえずでテロ起こすのやめてくれません?」
「コレでキミは公の舞台に立つのが確定した。私も今年はちゃんと推薦したから怒られなくて良い。win-winだね」
「本人が望んでなさすぎる点を除けばですけどね」
せめて確認くらいとってくれないかなホントに。そしたらちゃんと理由を聞いた上で断ったというのに。
「まあ、流石に多少は悪いと思っているよ。でもね、聞いてほしいんだ」
「言い訳ですか?どんな戯言か楽しみですね」
「今、私が年下好きで生徒が恋愛対象だという噂が流れてるんだ」
「……」
「おかしいよねぇ。先生は生徒とは至って普通に話しているはずだし、多少本音が飛び出してくるのも問題児でよく医務室を使う少年に対してだけなんだよ」
「せ、センセーは美人だからそんな噂が流れるのも不思議じゃないかなってボクは思いますけどね!」
「……」
「……で、出来心でした」
顔にでっかい紅葉ができた。
「で、どうするんですかこの対戦カード」
結局、話し合いをしたところで敗色濃厚なことが判明した俺は即座に論点をずらした。勝ち目のない討論ほど無駄なものはないのだ。
「どうするっていうのはどういう意味?」
「いやだから!俺の存在を周知させたいんでしょ分かんないけど!!イヤだよ瞬殺された雑魚で認知されるの!!」
出なきゃいけないのならもう仕方がない。考えるべきは先のことだ。その先のことが直視できないほど悲惨になっていることは本当にどうしたらいいんだろう。
ナギ・スタートン。
学園の中でもトップの実力を持つ集団ブレイカーズの一人として扱われている女。なんかこういうトップ集団みたいなイタイノリはどこの世界でも共通なんだなって思ったりしたこともあったが、こいつらの実力は普通にマジだ。
奴らは学生という括りで強いとかじゃなくて国中でも上から数えられるくらいには強かったりするとかいう話を聞いたりもした。盗み聞きだが。
スタートンが扱うのは『停止』。動けなくなったりとかそんな感じ。普通に反則です。
「だからとって!責任取って!無様に負けるのを回避する裏技出してハリー!!」
「えぇ……。キミ襲撃のとき敵に使ってたアレでどうにかなるだろ」
「あんな平面クソマップで立ち回れるわけ無いだろ!!」
「えぇ……、なんて堂々とした情けない発言なんだ」
なんでそっちが呆れた顔してるんだよ。俺とエニュミーのバトル見たことあるだろアンタも。俺はアリーナでのバトルはいつだって全力なんだ。バカにしてくれるなかれ。俺はスタートンと戦えば30秒と持たない自信があった。
「とは言ってもなぁ……。魔闘大会での教師の介入なんてルール違反だし」
「正直センセーがどんな罰を受けても俺は大丈夫です!」
「今キミは人に助けてもらおうとしてるんだよね??」
「モンペの如く俺を甘やかしてください」
「嫌だなぁモンペに寛容な息子は」
まるでどうしようもないものを見るような眼で俺を見るのはやめてほしい。俺だってドーピングは気が進まないが、正直に言ってそんなこと言ってられるほどの余裕もないんだ。
「んー……キミってフィジカルはどうなんだっけ?」
「驚かないでくださいね。なんとクソカスです」
「その前置きは落胆させる前に使うものじゃないよ?」
「だってラミナムじゃ殴り合いとかなかったし……」
「うーん……でも実習でもゼンノートくんとの決闘でもボロボロになって──ラミナム?」
あ、やっべ。勢いあまってルノクス以前にいた場所のことがでちゃったぜ。まあ出たところでなんだって話ではあるけど。
「あー、気にしないでください。持病の発作です」
「──そうか、ならいい。そして朗報だ。キミにちょうどいい裏ワザも思いついた」
「マジで!?ひゃっほーいやっぱセンセーなんだよなぁ!!ぶっちゃけ生まれる前からセンセーのこと好きでした!!」
「手のひらにターボエンジンついてたりする?」
急にセンセーの様子が変わったのは少し気がかりではあるけど、そんなことはどうでもいい。今の俺は裏ワザのことでいっぱいであった。
「いいかい?今から教えるのはあくまで奥の手だからね?」
「奥の手ッ!かーっ!俺にも遂に禁断の技ってやつが手に入るのか!」
「ヤダこの子テンション振り切れちゃった」
滅茶苦茶に楽しみだ。ひそかに『禁じ手中の禁じ手だ』とかいって暴れまわるのやってみたかったんだよな。正直このセンセー訳アリっぽいしなんかトンデモなものが貰えそうだ。もしかしたらここにきて本当にチートができるかもしれない。俺は久々にウキウキしていた。
「んんっ!いいかい?これから教えるのは厳密にはキミに使えるかはまだ分からない」
「えっじゃあいらないんですけど」
「だけど私はキミなら使えるだろうと確信している」
「あ、完全に無視の流れに入ってるなコレ」
おくちにチャックの時間だ。俺は空気の読めるナイスガイの天才軍師。
「もしも、キミが満足にコレを使いこなせるとしたら。私は、キミに色々な話をする必要があるわけだけど」
どうしよう。それって結婚とかそういうことですか!?って滅茶苦茶聞きたいな。当然、絶対に怒られるからそんなことできないんだけど。
「今、少しだけ伝えるのなら。コレはキミの過去につながる話だよ」
「……過去?失った記憶のことですか?」
「いや、ラミナムサルティスに関することだ」
「──は?」
待て、待ってくれ。この人は今、なんて言った?なぜ、この王国の人間がソレを知っている?
「いいね。急に真剣な顔になった」
「……」
「よし、話を聞く覚悟はできたかな?」
これはマズイぞ。完全に主導権を握られた。自分より上からマウントを取られるのがここまで屈辱的だなんて。まあいいだろう。今は甘んじて受け入れてやる。
俺は無言で目の前の女性が口を開くのを待った。
「いいかい?裏ワザっていうのは──」
時間ができたから定期的に書いていこうと――
第一章、魔闘決戦ビートの開幕なのかもしれないな