自称天才軍師のチートハーレム主人公活用法 作:はごろも282
『まったく、奥の手は使わないように言ったろう?』
『バカ保険医!この状況でそんなこと言えるか!』
呑気にふざけたこと言いやがって!こっちは既にゲームオーバーがチラついてるっていうのに……!
「だいたい、殺意高すぎでしょ相手ぇ……!」
『それは私の関与するところじゃないんだよなぁ。彼女になんかした?試合前の握手も拒否されてたよね?』
言わないでほしい。わりと普通にショックだったんだから。さすがブレイカーズ。盤外戦術もお手の物ってことだろう。
『シンプルに握手したくなかっただけじゃないかい?』
『言わないようにしてたのに!』
なんでそう現実を直視させるんだこの人は!!
第一、対戦相手のナギ・スタートンとの関わりなんて──
「一回ナンパしたくらいしか──!」
『間違いなくそれが原因だよマヌケ』
そんなバカな!たったそれだけのことで!?
『ちなみに被弾増えてるっぽいけど大丈夫かな?』
「わかってるなら助けてっ!!」
この間も必死に弾幕を避け続ける。とはいえセンセーの言うように既に被弾も増えている。このままではジリ貧だろう。
「くそっ!もっと役に立つ奥の手があれば……!!」
『なんてこと言うんだキミ』
正直、今のところ会話相手くらいにしかなっていない現状では妥当な評価だと思う。
って、そろそろ本気でマズい!とりあえずこの弾幕をどうにかしないと!
「うおお!必殺《魔力大爆散》!!」
避けるのをやめて別の打開策を強行する。数ある必殺技の一つ《魔力大爆散》。こんな序盤で使わされるなんて。
『いや、ただの魔力の暴発だよねそれ。誰でも使えるヤツ』
パスの共有で聞こえてくる台詞は無視だ。これは魔力大爆散。相手の弾幕より濃密度な自身の魔力を周囲に放って相殺する大技なんだ。ちょっとデメリットはあるけどこうして危ないところも切り抜けられる。
『デメリットが致命的なんだよなぁ』
さも呆れたかのような声のセンセー。彼女の言う致命的っていうのは、ただ魔力を滅茶苦茶使うということ。
通常、魔法攻撃はいくつものプロセスを必要とする。魔力を元として出力する型を作って放つ事が必要な技術になるわけだ。
正しい魔力の運用に失敗するとき、魔力を流し込まれる型が作られない。そうなれば補填された魔力は行き場を失い暴発する。そうなれば当然、型がない分魔力は過剰に流れるわけで。結果凄く魔力が持っていかれる。
まあ、今のは暴発じゃないけど。なんせ狙ってやったからね!
『一応聞くけど、魔力残量は?』
『もちろんすっからかん』
『開始1分で魔力尽きてるのは無理ゲーじゃない?』
俺の総魔力は並以下だし、残当だろう。
でも待ってほしい。確かに魔力は底を尽きてるけど、視界は晴れた。そこもちゃんと評価してほしい。
『ちなみに、ここからのプランは?』
「……ふっ」
そんなもの、俺が知りたい。
『困った。先生はもしかしたらとんだ節穴なのかもしれない』
なんてこと言うんだこの教師!ここまで来たらもう信じるしかないはずなのにっ!
『と、とりあえず相手の動揺を誘います!魔力を回しておいてください!』
『了解。対話フェイズで時間稼ぎだね、決闘でやる人はまずいない姑息な手段だ』
もう本当に黙っていてほしい。
「あー、オホン!……開幕早々随分なご挨拶だね、スタートン」
試合開始からはじめて対戦相手と目が合う。不思議そうな目をしてこちらを見るスタートン。さて、返答は──ってちょい!?
「返答で魔力弾を撃つなっ!常識がないのか!?」
『多分スタートンくんもキミに言われたくはないと思うよ』
「……しぶとい」
ええい、ここに味方はいないのか!?
「くそっ!誤算だっ!対戦相手がコミュ障なんて!」
『流石だよ、見事な火に油だね』
「はぁ!?そんなこと言われても、今どきサルでももう少しまとも──」
シュンッ!←デカメの魔弾が頬をカスる音
ズギャギャ!!←地面を大きく抉る音
「……」←俺
「……」(スッ)←次の攻撃を構えるナギ
いけない、本気で殺されるかもしれない。
「……!!」
「ぬわぁ!!ゴメンって!!」
再び押し寄せる攻撃。逃げ惑う俺。少し前の焼き直しだ。
だけど、本当に多少の時間稼ぎはできた。魔力パスの共有。地味ながら恐ろしい効果だ。こうしてヒトの魔力が全身強化だってできる。
それにさっきよりは比較的弾幕も避けやすい。何故か分からないけど、今がチャンスだ!
「よっ、ほっ……あぶなっ!」
『すごい。まるで曲芸師だ』
念話越しの感嘆に気を良くしつつ避けながら距離を縮める。
「……すばしっこい!」
「そりゃどうもっ!」
苛立ったようなスタートンの声を皮切りに攻撃に苛烈さが増す。けれど、当たることはない。理由は簡単で、攻撃がどこか単調だからだ。最初のどこに逃げても追撃が飛んでくる状況とは全然違う。
『おそらく、キミの発言が影響してるね。さっきの罵倒以降、攻撃がかなり大味になっている』
と、疑問を解消するように呟くセンセー。なるほど、怒りで攻撃が単調になる。ありがちなミスだ。
なるほどなるほど、俺の台詞で怒って単調に……。
「け、計画通りー!」
相手の思考を奪う高レベルの策略だ。事実、こうして動きやすい盤面ができている。
「……いい加減、あたれ……!」
「当たるか下手くそ!射的で的当て練習してろバーカ!」
「──!」
うーん、できたらもっと怒らせて意識を反らしたいんだけど咄嗟のことでいい煽り文句が思い浮かばない。
こんなときエニュミーならもっといい台詞が出るんだろうけどな。アイツの虫酸が走るようなヘドロにも劣るの人間性を羨むときがくるなんて。
『どうにかより怒らせる言葉はないですかねっ?』
『安心してくれ。もうクリティカルだよ』
「はぇ?」
もはや聞き慣れたため息混じりの声。見ればスタートンは確かに先程よりも怒りの増した様子だった。
「好都合だけど、あんなバケモノみたいな顔する程のことあった!?もう関係修復できそうもなくない!?」
「……しねっ!!」
おかしい、まさか怒りが増すなんて。
「ま、まあいい!この距離なら攻撃が届く!覚悟しろスタートン!」
色々あったが既に射程圏内。この勝負、貰った──!!
「……くっ《停止》っ!」
「あっ」
わ、忘れてた……!スタートンには、固有魔力がある!!
振りかぶった刀が空中で静止してうんともすんとも動かなくなる。刀は俺のメイン武装で特注の木刀タイプ。
「……ばーか」
突然のことで一瞬思考を止めたのが痛かった。スタートンの小さな罵声が聞こえたと同時に、俺の視界は光に包まれ、身体に衝撃が走った。
☆
激痛とともに意識が覚醒する。今の状況は──スタートンの攻撃に直撃したんだったっけ?それならまだ試合中じゃないか。ならさっさと起き上がらないと。
いやでも、身体が痛すぎるなぁ。まずい、立ち上がるのも億劫だ。このままじゃ負けてしまう。
『──!』
誰かがなにか言っている。そこまでは把握できてもなんて言ってるのかも聞き取れない。
なんか、もう負けてもいい気がしてきたな。命がかかってるわけでもないし、こんな事で痛い思いするのもバカらしい話だ。俺は打たれ弱いんだ。フィジカル面に難アリってね。
『くっ……どう……か……を……!』
そもそもどうしてこんなことしてるんだっけ?あ、確かイメージ払拭みたいな名目だったような。後はまあ、保険医のダメなヒトのワガママもあった。
そう考えると、やっぱり俺がここで頑張る理由も見えない。うん。ここは諦めることにしよう。大丈夫さ!相手はブレイカーズなんだ!きっと粘ったことを皆も認めてくれ──
『い、一撃で負けるとか所詮はお荷物か〜!ダサーい!体が豆腐よりもよわよわ〜!なんで生まれてきたのこんな欠陥動物!』
瞬間、確かに耳に入ってきたそんな台詞に、モヤついていた思考が一気に晴れた。
「……試合終──」
「だらっしゃぁぁあ!!!」
「「「!?」」」
あっぶねぇ……!!あと少しでも遅かったら判定負けだった!にしても──
「誰が腑抜けのブサイク小判鮫だゴラァ!!」
「か、カラット君!そんなことは誰も言っていないしそもそも審判への妨害は禁止事項ですよ!!」
しまった。係の人に怒られてしまった。確かに審判に向かって瓦礫を投げたのは良くなかったかもしれない。
だけど、あれ以上喋らせていたら負けていたかもしれないし大目に見てほしい。
『よしよし、よく立ち上がったね。大丈夫かい?』
『ええ、どこからかとんでもない悪口が聞こえてきて』
『ふむ、潜在意識と言うやつか』
潜在意識で罵詈雑言を察知するヤツは多分相当な変態だ。
って、そんなことは後だ。今は目の前の試合に集中しなければ!
「ふっ……!流石はブレイカーズといったところか!俺じゃなかったら既に敗退していたところだろう!」
「……めんどくさい」
「なにおぅ!?」
仮にも敵対してる相手にそんなこと言う!?対戦相手へのリスペクトがまるで感じられない!
「こうなったら意地でも俺しか見えないようにしてやる……!」
「……気持ち悪い!」
ぶっ飛ばす!
決意を新たにして駆け出す俺に、スタートンの攻撃が追いすがる。だけど、もう簡単に当たってやるものか!
「……!」
「読めてるよっ」
思えば最初からスタートンは遠距離攻撃ばかり仕掛けてきていた。ぶっちゃけそれでも物量で倒せるし、俺自身避けるので精一杯で頭が回らなかったけど、これは攻め入るチャンスだ。
多少無理な体勢にはなるが走ることで得た加速力を利用してスライディングの容量で滑り込む。グリッ!なんてイヤな音も聞こえたがこの際気にしない。
右手に持った木刀は、既にスタートンに当たる距離だ。
「……学ばない」
「学ぶわ阿呆っ」
そう。分かっている。ここまではさっきと同じだ。このままでは《停止》の固有魔力でカウンターを食らうだけ。だから変えるのはここから。
木刀を思いっきり振り抜く。呆れたような顔をして停止を仕掛けるスタートン。するとやっぱり、先程のように木刀が宙で停止する。
「よ、み……どおりィ!」
「──!?」
木刀はダミー。早々に獲物を手放して俺は深くしゃがみ込んでいる。そしてスタートンの反応が追いついていないうちに、相手の足を払って大勢を崩す。これぞ秘技《ジャスト足払い》だ。
完全に虚を突かれたようで足元を崩され後ろへ倒れゆく中、目を白黒させるスタートン。
ここまでやってようやくスタートンに完全な隙ができた……ハズだ。出来てなかったら敗北。ええい!気にしてられるか!
「くらえ!必殺《めっちゃ痛いパンチ》!」
「……っ!」
握った拳を振り抜く。パンチはスタートンの腹部に当たって確かな手応え。
よし!今度は停止されないで完璧にクリーンヒットだ!だけど、肝心のダメージがいまいちっぽい。当然だ。学友をぶん殴れるほど俺は覚悟ができていない。そう、だから──
「今だっセンセー!……ショナル!!」
『はいはい。まあ、及第点かな。ネーミングセンス以外』
声を聞き取った直後、俺の拳とスタートンの接着点で大量の魔力が発生した。
☆
あっぶねぇ……。咄嗟過ぎて大声でセンセーの名前を叫んでしまった。コレ、バレてないよな?
『まぁ、ギリギリだろうね。《センセーショナル》までが技名だと思われないこともない』
なんだそれ。イヤだなぁそんなダサい名前だと思われるのは。
『そんなふざけた名前、怪しまれたりしないかな』
『安心したまえ。《めっちゃ痛いパンチ》から相当ふざけてると思われてるよ』
心外だ。我ながら渾身の必殺技なのに。シンプルかつ分かりやすくて最適だろう。
「って、それより!スタートンはどうなってるんだ……」
耐久面はそれほどっぽい雰囲気だったけど、果たして──?
恐る恐る確認してみると、フィールドの端で倒れるスタートンの姿があった。体をうちつけたのだろう。障壁に大きな跡が残っている。あれなら大ダメージは免れられないはずだ。
『お、おい……やったのか?』
『なにかの間違いじゃないのか?イカサマとか』
『いや、確かにカラットがクズなのは明白だが、仮にもブレイカーズがそんなこと承諾するか?』
『ああ。カスのカラットは置いといて、ブレイカーズに限ってそれはない。スタートンさんにも失礼だろう』
「そこっ!聞こえてるぞ!!失礼だと思わないのか俺にっ!!」
共通認識からおかしいだろ!というかもっとヒソヒソ話せよ!客席の声って案外聞こえるんだぞっ!あと、学園の仲間をクズ扱いするお前らこそクズだ!!このクズ!
「……勝者、ルノク──」
ゾクッ!!
審判が判定を下そうとした瞬間だった。背筋が凍るような感覚が俺を通り抜けた。
「……負けられない、負けちゃダメ。勝たなきゃ!」
ボソボソと呟きながら、まるで幽鬼のようにユラぁ……と立ち上がるスタートン。どこか常軌を逸したかのようなその動きに、思わず数歩後ずさる。
『マズいぞ。今すぐ棄権するんだ』
「はぁ!?」
唐突なセンセーの台詞に声を荒げてしまう。確かにヤバそうだけど、ここまできて!?
『瘴気が漏れ出してる。控えめに言ってヤバい』
『ちょ、ちょっとまった!瘴気ってなんスかっ?』
『課外授業でキミを襲ったヤツが使ってただろ!アレだよ!』
「うそぉ!?」
それって情緒がおかしい男のことだよな?えぇ!?てことはスタートンってワルモノなの!?
いや待て。学園に敵がずっと潜んでいたなんて普通ありえるか?それって内通者的なことになるし、誰にも怪しまれずにブレイカーズに名を数えられる程度に認知されるなんて可能なのか?
いや、だからクラスでひとりだったのか!?凛とした姿が人気な孤高の美少女扱いされていたのはフェイク。確かにスタートンはうちのクラスには珍しく(うちのクラスに限らず)エニュミーに靡いていない美少女だった。もちろん俺も彼女の清涼さとかエニュミーに群がらないことで勝手に好感度をすこぶる上げていた。そんなこと、冷静に考えればまずありえないのに。
もしも、もしもスタートンがワルモノなら。悪と露見した彼女が学園から消えてしまえば。うちのクラスの野郎どもはたちまち暴徒と化し、モテなさのあまり気が狂った野郎どもは女の子を諦め男に走るようになり、あれよあれよという間にソレが蔓延し──
『おい!急に呆けてどうしたんだ!?』
「センセー、俺が女の子になっても好きでいてくれますか?」
『何を言ってるのこの状況で!?』
おそらく、これが現実になったとき最初に襲われるのはスタートンがいなくなる元凶を作った俺だろう。
『とにかく、おとなしく棄権しておくんだ!』
と、ここで焦りを感じさせる苛立ったような声で正気の戻る。
『んなこと言っても、アレ恐慌状態だし。それにヤバいなら審判も止めるはずじゃ――』
『公にはされてないが瘴気はエミリアスよりの力だ。そもそも瘴気は負の感情から溢れるものだし、今は暴走状態だけど自在に操れるとなればソレこそ悪とみなされる!』
「……?」
『あんまり人に見られちゃマズイんだよ!』
な、なるほど!これ以上ない簡潔な説明だ!つまり――
「スタートンは悪い奴じゃない!?」
『現状はね!多分危険因子扱いではあるけど!』
「……吹き飛べ!」
「うわぁ攻撃してきた!?」
小さな叫びとともに切羽詰まった顔をしたスタートンが腕を向ける。瞬間、さっきまでの弾幕とは違う砲弾サイズの一撃が俺を襲う。こっちはまだ話してる最中なのに!会話中は攻撃しちゃダメなんだぞ!
でも、そうか。詳しく理解はできてないけど、スタートンは敵組織確定ではないらしい。ただ長時間今の状況が続けばそう見なされる可能性もあって、そのために試合を終わらせる必要がある、と。
「よし、棄権しよう」
『やっとか!』
ようやく理解が追いついてきて、迅速に審判に声をかける。
「えっと!この試合俺のまけ──」
──棄権したら、そのあとってどうなる?
スタートンは恐慌状態だ。いくら棄権したからと言って攻撃をやめるとは思えない。万が一そうなったら彼女は制御不能の烙印を押され教師たちに制圧されるだろう。制圧された後、危険分子として幽閉されちゃったりなんかも──ま、まずい!そうなったら元も子もない!!一旦棄権はなしだ!敵じゃないなら彼女は希少すぎるエニュミーに靡かない美少女なんだ!
と、とりあえず今はなんとか誤魔化さなくては!
「──魔剣による一撃で終わらせてやるからな!」
最悪だ!とりあえず台詞を続けようと必死すぎてクソみたいな煽りになった!
突然の勝利宣言にぽかんとする審判。知らねぇよ、とでも言いたそうな顔だ。客席からも『なんで審判に宣言したんだ?』という心無い声が聞こえる。
ち、ちくしょう!こうなったらもうヤケだ!
「それがキミの切り札かスタートン!随分見かけは禍々しいが、そんなので俺に敵うかな!」
自分でも何言ってるか分からない。俺は今勢いのまま突っ走っている。
「まぁ、腰巾着で有名の俺に負けるようなコケ脅しなら!まったくもって全然!これっぽっちも!恐れるに足りない奥の手だけどねっ!」
「……うるさい!」
「図星かな?怒っちゃってかわいいね!」
こうして、難易度急上昇の第二ラウンドが幕を開ける。
戦闘、分からなすぎてグチャグチャになったな。
大変申し訳ないですが感想評価をいただけるとモチベになります