準備期間をおいてから日本国召喚   作:レシプロ至上主義者

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 カンソウ……ナイ……。ダレカ、カンソウヲ……カンソウ、ヲッ!(感想乞食虫と化した作者の断末魔)

 ……冗談はさておき、この作品を書くモチベーションは8割は皆様からの感想です。
 感想をいただけると作者のやる気がアップしますので、宜しくお願い致します。


次へ向けて・二歩

 会談のため、クイラ王国に訪れた総理大臣。彼は到着早々、開かれた歓迎式典に参加していた。

 真夏の日本とは違う、乾燥した猛暑に汗を流しながらも総理は笑みを絶やさずクイラ王国政府関係者と対談していた。

 

 「続きましては、貴国より輸入したT-1戦車の行進です」

 

 日本製アスファルトで舗装された道を履帯で踏みつけながら総理の眼前を横切っていく戦車たち。

 丸っこい砲塔が特徴の、輸出品名T-1戦車。日本が鹵獲した戦車の1つで、複合装甲もない旧式だが、この世界では強力な主力戦車である。

 

 「あれらは皆、我が国の兵士が操縦しています」

 

 宰相の言葉のあと、戦車のハッチから獣の顔をした兵士――獣人兵が上半身を出し、総理達の居る席へ見事な敬礼をする。

 

 「我が国から派遣された教官からも聞いています。貴国の兵士は皆、優秀な兵士として育ちつつあると」

 「はい。おかげでもう間もなく我が国初の機甲師団が編成できます」

 

 これまでクイラ王国で近代兵器を使いこなせるのは、日本から派遣された教導団だけだった。

 だが今日、この場でクイラ王国人も機械兵器を使いこなせる。一人前の兵士になれると証明された。

 このことは新聞だけでなく、クイラ王国の教科書にも1ページ使って書かれることとなる。まさにクイラ人にとって歴史的快挙であったのだ。

 

 

 

 

 

 「これは…………?」

 

 会談場所に指定された、日本資本で建てられたホテル。

 総理は手渡された資料とクイラ王国宰相とで目線を行き来させる。

 そこには。

 

 ・クイラ王国は日本国が保管している戦闘機300機の購入を希望する。

 ・合わせてこれらを運用に必要な人材を日本から雇用する。

 ・有事の際にはこれらの部隊の指揮権を日本国に移管する。

 ・移管する部隊の規模は日本国と相談の上で決定する。

 

 と、あまりにも日本に有利すぎる提案が書かれていた。

 

 「そこに書かれているように、我が国は貴国から戦闘機を購入したいと考えております」

 「……貴国は既に我が国が供与した戦闘機があったはずでは?」

 

 クイラ王国はクワ・トイネ公国同様、Mig-21に近い鹵獲戦闘機が10機配備されている。

 まだ現地人が単独操縦することはないが、年内には単独飛行過程に入ると報告を受けていた。

 

 「たしかに。ですが、あの戦闘機は旧式の軽戦闘機。日本が想定している戦場では非力でしょう」

 「供与した型はその通りです。しかし今後、輸出する予定の近代化改修型――CF-1Bなら十分、活躍できます」

 

 総理の言っていることは事実だった。

 近代化改修型は、エンジンを原型からより強力なターボファンエンジンに換装し、電子機器は全て日本製に置き換わっている。その上、武装も試作ステルス戦闘機に搭載予定の25mm機関砲と各種日本製ミサイルが運用可能に改修された魔改造Mig-21モドキことCF-1B。

 仮にベトナム戦争時の米軍戦闘機と戦えば完封勝利できるだろう。

 だが欠点もある。これだけ魔改造を施しても、元が小さいゆえの内部容積の小ささは誤魔化しきれなかった。燃料タンクが増設できないので航続距離を伸ばせず、新たに電子機器を載せることもできない。

 電子機器なら主翼か胴体下にポッド式でぶら下げる、燃料は機体に貼り付ける形のコンフォーマルタンクという選択肢もあったが、いずれも武装搭載量の減少や予算の都合などの問題で実現していない。

 

 「それは重々承知しております。ですが……失礼を承知で言わせてもらえば、この戦闘機で古の魔法帝国――ラヴァーナル帝国の戦闘機相手に、互角に戦えるとは思えない」

 

 クイラ王国宰相の指摘に、総理は言葉を詰まらせる。

 異世界に転移してから、日本は情報収集を怠らず、荒唐無稽な内容でも法螺と切り捨てずに調査してきた。そのためラヴァーナル帝国がおとぎ話の存在ではないと確信している。

 それゆえに宰相の言葉を否定できなかった。最低でも魔法式のミサイルとジェット戦闘機、それも日本に十分通用すると思われるものを有している相手に、改造したとはいえ旧式機でしかないCF-1Bが勝てるかは非常に怪しい。

 

 「購入する戦闘機は一部に艦上戦闘機も含みます。空母の鉾である艦上戦闘機を扱う人員、費用ともに我が国が提供します。……さすがに部品と燃料はそちらで持っていただきたいですが」

 

 急拡大で人員不足で苦しむ国防軍。特に苦しみのあまりのたうち回っている海軍にとって、クイラ王国からの提案は福音となるだろう。

 空軍も海軍に引っ張られるパイロット候補の数が減るならもろ手を挙げて賛成するはずだ。

 

 「それと、地上兵力も少しだけなら出せます。最前線は無理でも、他国領土を占領したさいの駐留部隊ならば我が国の兵でもこなせます」

 

 航空兵力だけでも出血大サービスどころか失血死しそうだというのに、クイラ王国はさらに貢ぐと言ってきた。

 取り込んだ母数が大きい分、多少ダイエットしても陸軍はかなりの人員を確保できた。しかし守るべき範囲がそれ以上に増えたために、海軍、空軍よりはマシと言える状態でしかなかった。

クイラの部隊供出があれば、部隊のローテーションのやりくりがしやすくなり、敵地侵攻のハードルが下がる。

 

 「……いずれも、大変ありがたい提案です」

 

 総理は加齢で衰えつつも、悪辣さには磨きがかかってきた頭脳をフル回転させる。

 

 (クイラに張り巡らせた情報網からは今回の提案に関する情報は上がってない。情報が漏れなかったのは、宰相と国王含めた少人数で内々に決めたからだ。各大臣や軍部の説得しきれていないなら、そこに付け込める。それに国王回りへの諜報も強化しなければ……)

 「貴国が我が国とともに、同盟に所属する国家の安全に貢献してくださるならば日本、クイラ、クワ・トイネはともにさらなる発展を遂げていくでしょう」

 

 立ち上がり、握手を求める。

 宰相も立ち上がって総理の手を握り返した。

 

 「この条約が、我が国と貴国が真の友好国となる第一歩となることを願います」

 

 異世界国家もなかなか侮れない。

 胸にそう刻んだ総理は、笑顔を張り付けつつ握手した手に少しばかり力を込めた。

 

 

 

 

 

 日本とクイラ王国が新たに結んだ条約の内容は、大使館を通じて即座にクワ・トイネ公国政府へと伝わった。

 

 「駐クイラ大使からの連絡は確かだったようです。クイラは日本の関心を得ることに成功したようです」

 「オイルマネーで潤っている彼らだからこそのやり方だな……。ちなみに我が国に同じことは?」

 「無理ですな。我が国も食料の輸出で儲かっていますが、彼らほどではありませんので」

 

 活発な議論が行われる蓮の間。

 静かな、だが白熱したそこへカナタ首相が一石を投じる。

 

 「……ならば方向性を変えて売り込むとしましょう」

 「首相、それは経済的な方向ですか? 食料の値下げや関税率引き下げなどで関心を買うと?」

 「いえ、それは国内からの反発も強いでしょうし、わが国最大の収入源を削るのは避けたい。クイラは空軍をメインに売り込んだのでしょう? なら我々は海軍を売り込みます」

 

 蓮の間の面々は怪訝な顔をする。

 

 「首相、海軍は技術者集団であり、一朝一夕で育成できるものではありません。あれだけ手厚い支援を受け取っている空軍でさえ、まだ単独飛行できるパイロットがいないのですぞ」

 「分かっています。私も、何も今すぐ日本海軍のような大艦隊を用意しよう、などとは言いません。日本近海、最低でもロデニウス大陸近海の通商路防衛を担える海軍を創るのです」

 

 カナタの傍にいた議員の眉がピクリとはねる。

 カナタが言いたいことが分かったからだ。

 

 「日本の海における軍事負担。その一部を肩代わりすると?」

 「そうです。まあ技術と信頼からして10年単位でかかるでしょう。ですが、やる価値は大いにある」

 

 力強く言い切ったカナタは海軍卿に顔を向ける。

 

 「海軍卿に聞きたいのですが、私の言った海軍を目指すならどのような装備を日本に求めるべきですか?」

 「通商路防衛だけならば、水上艦艇は駆逐艦とフリゲート、ミサイル艇で十分でしょう。航空機は対潜哨戒機・ヘリを拡充ですな」

 「潜水艦は? 話に聞く限り、いろいろと使い道がありそうですが……」

 「潜水艦は特殊な船です。水上艦艇とは勝手が違いますし、日本側も潜水艦保有には神経をとがらせているようなので……」

 「なるほど……では、潜水艦に関してはいずれにしましょう」

 

 トントン拍子に進むカナタと海軍卿の相談。そこに予算を取り合う陸軍と空軍の責任者が口をはさみ、議論は深まっていく。

 後日、この会議で出た結論は“クワ・トイネ公国海軍戦備計画”としてまとめられ、日本に提出されることとなる。

 

 

 

 

 

 「やれやれ……。2国そろって媚び売り合戦だ」

 「まあいいではありませんか。彼らが自腹で、かつ国家成長に悪影響を及ぼさない範囲で手伝うと言っているのですから」

 

 国防装備研究庁。転移後の日本の変化と拡大に合わせて規模が大きくなった防衛装備庁を母体とする組織だ。

 数ある研究室の1つで若手職員2人が休憩がてら、コーヒーを手に駄弁っていた。

 

 「これからは兵器開発の目白押しですからね。ラヴァーナル帝国という十分な脅威の存在が確定していますし」

 「核に加えてBC兵器が追加され、地上配備型ミサイル迎撃システム。航空機投下型機雷、さらには未完成の鹵獲空母の建造再開にそのコピーの建造。そしてそれと、これまで日本が蓄積した空母技術を基に10万t級の空母の研究、建造までもか……」

 「その代償として純国産のF-3戦闘機開発は凍結。戦略兵器も爆撃機は新規の製造は中止、弾道ミサイルも以降はSLBMのみ開発を続行して他は研究に止める。艦艇も空母と航空揚陸艦、駆逐艦にフリゲート、それに原子力潜水艦以外は軒並み建造中止というわけですか」

 「それと新型地上車両もだ。まあ工場ごと分捕った兵器を改良して配備したほうが安いしな」

 

 使える金と資源には限りがある。全てにまんべんなく配っていたら、雀の涙ほどしか行き渡らない。ゆえに取捨選択をし、必要なところへ集中させる必要があるのだ。

 余談だが、航空揚陸艦とは軽空母と強襲揚陸艦の機能を併せ持つ軍艦である。

 最低でも排水量6万t以上の規模にして軽空母と揚陸艦、どちらの機能も十分に持たせる設計となっている。

 

 「昨日も今日も、そして明日も残業ですねー……。新内地の人が入って人手不足は解消されたのに仕事はまったく減らないなんて……」

 「だが、リストラの心配も、食いっぱぐれることもないんだ。ぼやかず仕事するぞ……おっと」

 

 コーヒーを飲み終え、紙コップを捨てようと立った時、机に置いてある資料が崩れる。崩れたことで下から出てきた、一番新しい資料に目についた。

 

 「そういえば……こいつは完成間近だったな。どこかと戦争になったら、そこで実戦テストか」

 

 輸送機投下型巡航ミサイルパレット。

 真新しい資料には、近日中に試験場へと運ばれる兵器の名が記されていた。




 T-1戦車

 日本の輸出での主力戦車。
 本来は別の名があったが、輸出にあたって日本が新たに輸出兵器に型番を振ることを決めたためT-1と名付けられた。
 初めて輸出する戦車(Tank)なのでT-1。

 モデルはT-55だが、主砲は日本製105mm砲に換装されている。
 ちなみに爆発反応装甲キットがあるが、必要になる相手がまだいないのでクイラ王国も購入していない。

 ちなみにCF-1Bは

 コモン・ファイター(Common Fighter)  輸出一号  改良型

 となります。
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