終末世界の救世主になりました!   作:雷神デス

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大分長めになっちゃった……


星を見る罪人

 

 

 不死にも近い呪いが解けた、朽ちた血肉を引きずって。

 太陽の光すらも消えた世界で、私は目を焦がすような星を見た。

 誰もかれもが疑わぬ、世界を救う星を見た。

 

 

「アハッ」

 

 

 それは随分と懐かしく、不条理で、非現実的で、化学の全てを否定するような光で。

 あの時見せてくれた、尊いそれによく似ていて。どうしようも無く嬉しくて。

 全てが朽ち果てたその場所で、本懐を果たした命の鼓動を止めながら。

 最後にぽつりと、言葉を出して。

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

「──綺麗」

 

 

 救世主と呼ばれる彼にとって、私は眼中に無い存在だ。

 明日もし私が死んだとしても、きっとそれが彼の耳に届くことは無いし。

 届いたとしても、さして感傷することも無く。

 

 ああ、そうなんだ、ご冥福をお祈りします。

 

 そんな言葉で終わるくらいの関係だ。

 別にそれが不当だとは思わないし、当たり前であると諦めはついていた。

 例え己がどれだけ救世主に感謝し、祈りを捧げたところで、それが一体何にななる?

 

 

 巨大な怪物が私達の居るビルを破壊する直前で、その人は現れた。

 当たり前のようにそれを消し飛ばして、私達を一瞥した後すぐに他のとこに飛んで行って、また別の怪物を消し飛ばしていた。

 

 何か月間の間過ごした、永遠とも言える暗闇はたった一瞬で片付いた。

 ただ『救世主』の目に入った所に、私達と怪物がいただけ。

 それだけの偶然で、私達は彼らに保護されて、比較的安全な場所に案内された。

 

 

 その後はもう、関わることなんて一生無い。

 だって私はまだ十歳で、両親も死んで、何も長所が無い一般市民その1だ。

 彼と関わる機会なんてあるはずも無く、救世主の活躍を聞いて崇めるだけだ。

 それで満足しておけば良いのに。それで幸福でいれたらいいのに。

 

 彼は知っているのだろうか?

 野生動物に人間の餌をあげると、そいつは人間の食べ物の味を覚えてしまう。

 もう森の食べ物が不味くしか思えず、やがて人間の食べ物を求めて害獣と化す。

 

 

 だからまあ、しょうがないことだ。

 たった一瞬目が合った、ただそれだけのことで動悸が止まなくなったのも。

 もう二度と彼の目が私に向けられないことを理解して、絶望してしまったのも。

 それを知った上で、まだ彼の綺麗な瞳を追い求めるのも。

 

 

「……綺麗だったなぁ」

 

 

 全部、仕方のないことだ。

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 

「おい。餌の時間だぞ」

 

 

 何かをできる人は、自然と上の地位で生きていく。

 何もできない人は、自然と地を這って生きていく。

 

 当たり前の現象は、フォーリナー(怪物達の名称らしい)により滅びかけた世界でも健在だ。

 何もできない出来損ないは、家畜のように配給される餌を待つことしかできない。

 それでも生かしてもらえるのは、救世主様が悲しむからだろうか?

 

 何にせよ、私達の居場所はこの掃きだめ地区だ。

 ドンドン大きくなっていった街の片隅、何もできない無能共の掃きだめ。

 殆どの人間は食事時以外は背を丸めて、何もせずに生きている。

 

 

「貴重な食料を、こんなロクデナシ共にくれてやっていいのかよ」

 

「しょうがねぇだろ。そうしないと、あのお姫さんに怒られるんだから」

 

 

 お姫様。

 聞いたことが無い言葉だった。

 

 

「あの」

 

「ああ?」

 

 

 この場所の住民が、能動的に何かを話すことは少ない。

 大抵は喋る気力も無く、惰眠を貪るか犬のように食糧を貪るからの二択だから。

 そんな場所で、わざわざ給仕役の人間に声をかける私は、さぞ奇妙に見えただろう。

 

 

「お姫様って、誰ですか?」

 

「……なんだよ、そんなことか。救世主様の恋人だよ、恋人」

 

「あの子が救世主様に何か頼めば、絶対引き受けてくれるのさ。たしか幼馴染なんだってな。まったく、羨ましいこった。あんな身内がいるなんて、前世でいったいどんな善行を重ねたんだかね」

 

 

 恋人?あの人に?

 あり得ないと声を出そうとして、どうにか踏み止まった。

 あんなに恐ろしい瞳の人が、恋人なんてのを作るのか。

 

 

「ま、俺らには縁のない話だよ。そら、受け取ったらさっさと行きな」

 

「……ありがとうございます」

 

 

 もし本当に、彼にとって大切な人がいるのなら。

 その人はきっと、いつも彼に見てもらえるのだろう。

 

 

「……いいなぁ」

 

 

 ぽつりと零したその言葉に、反応してくれる人はいなかった。

 私を見てくれる人なんていないから、当たり前の話であるが。

 

 

 

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 夜の散歩は私の数少ない趣味なのだが、今日ばかりは少し趣味を改めようと思った。

 私を見てくれる人はいないが、私が見たくない物は平然と現れる。

 何故彼女が、あんなにあの人に見られている恋人の人が泣いているのだろう?

 

 月の下で一人涙を流す美しい大人の(とは言っても、高校生は世間一般的に見れば子供かもしれない)女性というのは実に絵になるが、こんな所でしないでほしい。

 ここは私のお気に入りの散歩コースで、星が綺麗な場所なのに。

 

 

「あの」

 

「うぇ!?」

 

 

 ぐすぐすと泣いていたあの人の恋人だという人に話しかける。

 別に興味が持ったわけでも、可哀想だというわけでも無い。

 ただ単純に、ここにいると邪魔なのでどいてほしかった。

 

 

「女性が一人で夜道を出歩くのは危ないし、肌を冷やしますよ」

 

「あ、あはは。ごめんなさい、ちょっと夜風に当たりたくて」

 

 

 咄嗟に涙を拭ってこちらを見返す救世主の恋人。

 最初は申し訳なさそうな顔だったが、私の背丈を見るとすぐに態度を変えた。

 

 

「……って、あなたも女の子じゃない。それに、一人で出歩いてるのも同じだし」

 

「私を襲う理由がある人がいません。身体も貧相ですし、食料も無いし、人質にしようにもその価値が無い。けどあなたは違うでしょう」

 

「価値って……。人をそんな風に見るのは良くないよ?」

 

「救世主の恋人さんと、役立たずの私では傍目から見ても分かりやすいくらいに価値に差があるのです。分かったら早く帰ってください。ここは私の場所です」

 

 

 少し言葉が強くなってる自覚はあった。

 多分私はこの人が気に入らないのだろう。

 私が欲しい物を持ってる癖に、何故か泣きべそをかいてるこの人が。

 

 

「ちょっと待って。私別にあいつと恋人なわけじゃないからね?」

 

「そうなんですか?皆さんからお姫様って言われてますよ」

 

「滅茶苦茶恥ずかしいからやめてくれないかなぁ……。あいつの幼馴染だからっていう理由でしょ、呼ばれてる理由」

 

「ええ、まあ。そうですね」

 

 

 溜息を吐く恋人さん、もとい幼馴染さん。

 意外なことに、まだ二人は男女の関係ではないようだ。

 

 

「……その。恥ずかしいところ、見ちゃった?」

 

「泣いてたことですか?」

 

「やっぱ見たよねぇ。あー、恥ずかしい……」

 

 

 顔を抑えて顔を真っ赤にする幼馴染さんは、とても可愛らしい。

 私と違って十分な食料と身だしなみに気を使う余裕もある上、元の素材も良い。

 その上私のような失礼な子供にも優しいようだ。

 

 

「言いふらしたりはしませんよ。私が言っても誰も信じません」

 

「そうなの?」

 

「はい。何せ私は何もできない無能ですので。救世主様と違って、何も」

 

「今のあいつと比べちゃったら、だいたいの人がそうなるんじゃないかな」

 

「他の人と比べても何もできないのです」

 

「子供だからそりゃそうだよ!……もしかして、他の人達からいじめられてるの?もしそうなら、私がその人達にガツンと──!」

 

「掃き溜め区について何も知らないのですか?普通なら耳に入っていると思いますけど。今更それについてとやかく言っても、街の人から不評を買うだけですよ」

 

 

 知らないはずも無い。

 救世主が守る地にも、当然優劣は存在するのだ。

 救世主をはじめとする有能な者には優遇を、出来損ないにはそれ相応の冷遇を。

 差別があるからこそ街の人々は一生懸命に働く。

 

 

「子供だからという理由で庇うなら、私が余計に周囲から厳しい目で見られるというリスクも込みでどうぞ」

 

「め、滅茶苦茶冷静……!」

 

 

 そう言うと、何故か彼女は再び身体を丸めていじけてしまった。

 言い過ぎてしまったのだろうか。まあ死刑になってもそれはそれで構わないが。

 

 

「なんでこんな何もできない奴のことを、姫様なんて呼ぶんだろうね」

 

「あなたが救世主からの寵愛を受けているからでは?あなたと親しくなれば、救世主からの覚えも良くなるでしょうし」

 

「変わりすぎだよ。ほんの一年程度で、何もかもが変わっちゃった」

 

 

 久しぶりにそんな嘆きを聞いた気がする。

 今生きている人達の中に、そんな嘆きを漏らす余裕がある人は殆ど居ない。

 

 

「あいつは救世主なんて呼び名を付けられて。皆があいつを崇めて、担ぎ上げて」

 

「当然のことなのでは?彼はまさしく、人類を救う救世主なのですから」

 

「私は、あいつにずっと馬鹿な幼馴染でいてほしかったなぁ」

 

 

 贅沢な女だ。彼に己の理想を押し付けようとするなどと。

 はっきり言って耳障りだった。

 

 

「大変だろうし、あいつがそうしなきゃならないのは分かるけど。どこか遠い所に行っちゃいそうで、私はそれについていけそうに無くて。少し怖いや」

 

「なるほど。大変なんですね」

 

「反応薄いね」

 

「私が知ったところで意味も無いことですから」

 

 

 そう、本当に意味も無い。

 私が知って、それで何を思えと?

 救世主の想い人である自覚を持てなどと、この私が宣うのか?

 

 それこそ分不相応だろう。

 私は彼女となんら関係が無く、ましてや何か言う資格も無い。

 この通り、私は救世主から一瞥もされることは無い、路上の石程度の存在なのだから。

 

 

「あなたが何を言おうと、私には関係の無いことです」

 

「……」

 

 

 ただ事実を呟きながら、私はそろそろ痺れを切らしていた。

 もうどく気も無さそうだし、あきらめて帰ってしまおうか?

 そんなことを考えていると、彼女はようやく立ち上がった。

 

 

「……良ければでいいんだけどさ」

 

「はい」

 

 

 あんまり彼女のことを見たくはなかった、自分が惨めになるから。

 さっさと帰ってくれと願いながら、今日の星は特に綺麗だなと空を見上げ。

 そんな私の様子など露知らず、彼女はとんでもないことを口走る。

 

 

「私の、秘密の友達になってくれない?」

 

「……はい?」

 

 

 その日から、私はお姫様のお忍びの友人係に任命された。

 

 

 

★★★★★

 

 

 

「それでさ~!あんの馬鹿、さっさと挨拶だけしてどっか行ってさぁ……!」

 

「はいはい、悲しいですね」

 

「真面目に聞いてよ~!」

 

 

 私は何故、こんな誰も来ない家屋で彼女の愚痴を聞いているのだろうか。

 彼女は非常になれなれしく、結構な高頻度で私の住む場所に訪れた。

 手土産に美味しいお菓子や食料などを持ってきてなければさっさと追い出すところだ。

 

 

「こんなこと聞いてくれるの、あなただけだね」

 

「救世主様に話せばいいじゃないですか。親しい仲なのでしょう」

 

「そんなことをしてる間に、何人も人が死ぬかもしれないのに?」

 

 

 疲れたような笑みを浮かべる姫様の様子から察するに、救世主様はお忙しいようだ。

 大事な幼馴染とすら碌に話す機会が無いらしい。おいたわしいことだ。

 彼女が呆れ交じりに吐き出す愚痴すら、殺意を覚えるほど妬ましい。

 まあ、実際に殺すなんてことはできっこないのだけど。

 

 

「もう、完全に私とは違う世界に行っちゃったなぁ」

 

「名誉なことではないですか。それに、あの方の愛はずっとあなたのものでしょう?」

 

「……他の人はそういうけどさ。私はぜんっぜん実感が沸かないなぁ」

 

「何を馬鹿な。誰がどう見ても、彼が一番気に掛けているのはあなたでしょう」

 

 

 私は姫様の心にも、姫様の過去にも興味を抱かない。

 時折吐き出す過去への望郷も、両親に対する涙も、出来うる限り見ないようにしている。

 そんなことに流せる涙が残っていることこそが、彼女が誰よりも恵まれている証拠だから。

 

 

「時々、心配になるんだ。あいつはほんとに、私の知ってる幼馴染なのかって」

 

 

 けれど、その時の話だけは、どうにも印象に残っていた。

 

 

「だってあいつ、英雄なんて柄じゃなかったもん。頭はそんなに良く無いし、勉強は嫌いだし、体育も毎回手を抜くし、ドジだし。年の近い弟みたいな、手間のかかる幼馴染だった」

 

「そうなんですか?意外ですね、あの英雄様が」

 

「ほんとだよ。私の知ってるあいつは、そんな。英雄なんて言われるような高尚な人間じゃなくて。わざわざ手を伸ばさなくても、ふと気づけば隣にいるような。そんな、日常の象徴みたいな。安心できるような、バカだったのに」

 

 

 姫様はポツリポツリと、涙を流すようにかつての彼を教えてくれた。

 それこそが彼の真の姿で、今の姿はまるで彼ではないようだ、と。

 私には、どちらが英雄の真の姿かは分からないし、興味も無かったけれど。

 

 

「あなたは、彼と並んでいたかったんですね」

 

 

 聞き役に徹しているつもりだったのに、無意識に言葉を漏らす。

 彼女はそんな言葉を聞いて、頬を少し掻いた後、小さい声で言った。

 

 

「……そう、かもね」

 

 

 彼女が掃き溜め区に行くと言い出したのは、その次の日からだった。

 

 

 

★★★★★

 

 

 

「はーい、並んでね~!」

 

 

 彼女は急に、英雄から余分に貰っていた食料を掃き溜め区の子供達に配り出した。

 何もできず、労働力になりえない彼ら彼女らに、お菓子という貴重な資源を差し出した。

 それは到底合理的な判断とは言えず、私は当然疑問を漏らした。

 

 

「何故このようなことを?あなたが何かやったところで、救える子供なんていませんよ。どちらにせよあの子達は私と同じように、上に行くことも無く野垂れ死ぬだけです」

 

「けど、ほんの一時だけでも、幸せに過ごすことはできるでしょ?」

 

 

 姫様は笑顔で礼をする子供達に、満足気に手を振り返した。

 たしかに一時は笑顔になれるかもしれない、しかしそれだけだ。

 根本的な解決にはならないし、施しにしかなりはしない。

 

 

「ありがとぉ、お姫様!」

 

「……フフッ、あんまり急いで食べると体に悪いよ?ゆっくり食べていいからね~」

 

「うんっ!」

 

 

 私はその行いを、暇を潰すだけのただの気まぐれだと判断した。

 人が増え、元医療関係者だった者が現れるにつれ、彼女の役割は無くなっていった。

 わざわざ菌が蔓延る医療現場に英雄の姫を置く理由も無いし、腕もさほど立たない。

 今の彼女の役割は、英雄の心の拠り所になるだけだ。

 

 

「明日また、あの子たちは飢えますよ」

 

「なら明日もここに行かなくちゃね!もっと沢山、お菓子を用意しないとなぁ」

 

「何がしたいんですか?あなたは」

 

 

 そんな役割を、私はただ羨ましいとだけ思ったし、周りもそんな程度だった。

 彼女が何を思っているのか、どれだけの重荷を背負っているのか。

 そんなことを考える人間は、英雄を含めて誰もいなかった。

 

 

「……何がしたいんだろうね」

 

 

 そうして彼女は腐って行ったのだろう。

 救世主と呼ばれた彼に倣うように、彼女はやがて聖女と呼ばれ。

 彼女の役割は、貧民達に少しの餌をやるだけの、希望の印となっていた。

 

 きっと彼女は、また彼と並びたかったんだろう。

 あの頃の日々を取り戻して、笑い合いたかったのだろう。

 それを願うには今の状況はクソッたれ過ぎて。

 けれどそれを願うなと言うには、彼女は子供のままで居すぎたのだろう。

 

 

 

★★★★★

 

 

 

「ありがとうございます、聖女様!」

 

「フフ、元気だねぇ。妹さんのも合わせて、ちょっとおまけしてあげる!妹さんによろしくね!」

 

 

 聖女様が今日の配給を終えると、貧民達は次々とその場を後にする。

 最近はますます事務的になってきた配給作業だが、子供達は純粋だ。

 素直に礼をして、聖女様の心を癒してくれる。

 

 

「今日もつかれたね~」

 

「そうですね。無駄な仕事でした」

 

「もう、無駄ってことは無いでしょ?皆喜んでたよ」

 

 

 あれからどれほど経っただろうか。

 掃き溜め区の問題解決なんて行われないまま、街はドンドンと大きくなった。

 彼女は聖女として、餌をやるだけの飼育員の役目を果たし、私はそれを手伝った。

 ゴミAから聖女のお付きAになれたのは、なかなかに凄い出世かもしれない。

 

 

「ねぇ、君も今度あいつに会いなよ。大事な友達って紹介したいんだ」

 

「嫌です。恐れ多いです。何よりあなたの友人なんて紹介されたくありません」

 

「えー。なんで?」

 

「なんでもです。そういえば、あの子また持ち帰っていきましたね、配給品」

 

「妹さんと一緒に食べたいらしいよ。健気だなぁ、ほんと。親を失くして、何の助けも無く今まで兄妹二人で生きてたんだって。妹さんは最近、病気で寝込んでるらしいけど……あの二人ならきっと、幸せになれるよ」

 

「だといいですね」

 

 

 彼女の行為は多分、偽善なのだろう。

 相手のためではなく、自分の自尊心のためにやっているだけなのだろう。

 それでも彼女に感謝する人間はいるし、彼女も楽しそうだ。

 だから止める必要はない、そう考えていた。

 

 

 それから暫くの配給に、双子の兄は来なかった。

 元気で声の目立つ子だったから、すぐに分かった。

 三日ほど経った頃に、彼女は心配そうに言う。

 

 

「……何かあったのかな」

 

「心配なら、見に行きますか?」

 

「うん、そうよっか。もしかしたら、妹さんの病気が移っちゃったのかもしれないし。薬と一緒に、看病しにあげに行こう!」

 

 

 双子の兄の方は、道端で死んでいた。

 多分殺人だったのだろう、支給品は全て奪われていた。

 まず間違いなく、支給品が足りなくなった人間の犯行だ。

 聖女様は彼を贔屓にして、支給品の量を他の大人に比べて少しだけ多くしていた。

 それを知っていたどこかのバカが、それを目当てに殺人に及んだのだろう。

 すぐにバレるだろうに。

 

 双子の妹の方は、薬が届かずに死んでいた。

 もう少し早く気付ければ助けられたかもしれないが、まあ仕方のないことだろう。

 あの双子にずっと構っていられるほどの時間も無いし、犯人もすぐ捕まった。

 聖女様がそれを気負う必要は無い。

 

 

「私のせいだ」

 

 

 もし彼女が、平等に支給品を配っていたら?

 もし彼女が、もう少し早く双子の様子を見に行けば?

 もし彼女が、何か違う行動を起こしていれば?

 

 たらればの話に意味は無い。

 意味は無いのに、彼女は意味の無いことが好きだった。

 罪の意識を無駄に背負って、ずっと双子の幻聴を聞いていた。

 

 それからすぐに、また人が死んだ。

 救世主が米国からの通信を受け、事態の解決策を求め遠征に出発したのだ。

 そのせいで掃き溜め区の食料の配達は余計に困難になり、飢えた奴らが食料を奪い合った。

 いや、違うな、多分これは飢えじゃないか?

 

 つまらないことに、彼らは飢えではなく、欲望のために人を殺した。

 もっと食べたい、もっと上等な服が欲しい、もっと楽したい。

 食料自体は足りていた、我慢すれば事足りるのに、彼らはそれさえ忘れていた。

 まあつまり、ダメ人間達に贅沢をさせ過ぎて、枷を外してしまったのだろう。

 彼女は彼らを甘やかしすぎた。

 

 で、そうなると誰が狙われるかというと、力の無い子供達なわけで。

 面白いくらい最悪な方向に、ドンドンと話は転がって。

 笑っちゃうくらい簡単に、彼女の心は壊れて行って。

 

 

 

★★★★★

 

 

 

「ごめん、もう無理みたい」

 

「そうですか」

 

 

 私には彼女の弱音を注する権利は無く、それをしたところで何の意味も無いと知っていた。

 むしろよく頑張ったと言うべきかもしれない。この世界は、彼女にはあまりにも厳しい。

 彼女はどうやっても平和な世界でしか生きられぬ人間で、どうやっても普通の人だ。

 そんな彼女だからこそ、救世主は惹かれたのかもしれないが……。

 

 

「お母さんに会いたい。お父さんに会いたい。友達に会いたいよ。人の死ぬところなんて見たくない。慣れるなんて無理だよ」

 

「でしょうね」

 

 

 理解するつもりも無かったが、長く居れば気づいてしまう。

 彼女はただ凄い人の幼馴染だっただけで、他に特別なことなど何もない。

 例え周りの人間がそんなことは無いと否定したところで、本人が気づいてしまった。

 自分にその名は重すぎる、分不相応に過ぎたのだと。

 

 

「人が死ぬところを、何度も見た。人の死ぬ音を、何度も聞いた。あいつも沢山見たし聞いてるはずなのに、なんであいつはまともでいられるんだろう。私の方がおかしいのかな。私が弱いからいけないのかな」

 

「落ち着いてください。暫くは、ゆっくり休んで」

 

「休んでも、聞こえるの。聖女様、聖女様って。死んだ子達の声が、来なくなった子達の声が聞こえるの。私が助けられなかった子達の声が聞こえるの」

 

 

 ああ、もう本当にダメなのだろう。

 長く持った方かもしれない。

 

 

「では、どうしましょうか。私は何をすればいいですか?」

 

「……相変わらず、何も言わないんだね」

 

「言ったところで、どうにかなるものでも無いですし」

 

「アハハ……そういうところ、好きだなぁ」

 

「変な人ですね、相変わらず」

 

 

 彼女は暫く目を瞑った後、深く息を吐きだして。

 

 

「ねぇ。最悪な提案、していいかな」

 

「……どうぞ」

 

「もう全部投げ出して、逃げちゃわない?」

 

 

 それは多分、冗談ではないのだろう。

 冗談にしようとしている笑顔は、私の返答で如何様にも変わるのだろう。

 その言葉が意味することも、ちゃんと理解した上で。

 

 

「救世主様を捨てるんですね」

 

「……フフッ。好きだなぁ」

 

「私は、私のこう言うところが嫌いですけどね」

 

 まあつまるところは、そういうことだろう。

 救世主と呼ばれた彼は普通じゃなくて、彼女は普通であったということだ。

 彼にとっては貫ける永遠の愛は、彼女にとっては己を地獄に縛り付ける鎖でしかなく。

 だから彼女は、ほんの一抹の希望を込めて、私のことを見上げるのだろう。

 

 

「申し訳ありません。私は行けません」

 

「……どう、して?」

 

「私は、救世主様の行く末を。最後まで、眺めていたいんです」

 

 

 私が今を生きている理由なんて、突き詰めてしまえばそこに行きあたる。

 今からでも死にそうな路地裏の子達とは違う、恵まれた立場の彼女。

 私なんかでは及びもつかない、ただ救世主様に愛されたというだけで特別になった彼女。

 なのに、私が生きようともがいて、彼女が死にたいと嘆くのは、それだけの理由だ。

 

 

「あなたのように、縋りたい過去なんて無いのです」

 

 

 私にとっての希望は、この世界の未来にあるけれど。

 彼女にとっての幸せは、この世界の過去にあったから。

 それ以外の環境なんて、さほどその結果を変える理由になんてならないのだ。

 

 

「……そっか」

 

 

 彼女はがっかりするでもなく、まるで分っていたかのように、静かにナイフを取り出して。

 細い息を吐いて、自分の手首を傷つけようとして、震えた手からナイフが零れ落ちる。

 泣きそうな眼で、私を見上げる彼女の姿は、まったくもって情けなく。

 

 

「なにやってるんですか、もう」

 

「ごめんね。何も出来なくて」

 

「いいですよ。殺してあげるから、ちゃんと姿勢正してください」

 

「あ。待って、ダメ。それじゃ、あなたが勘違いされちゃうから」

 

 

 この期に及んで、自分が死んだ後の私の心配などをしているらしい。

 死ぬ間際だというのに、私のために遺書を書いている彼女の姿は、落ち着いていた。

 自分が耐えきれなくなったこと、自分では死ねないので、殺してもらうこと。

 そして──救世主様への愛が、腐り落ちてしまったこと。

 彼女が言いたいことが全部、その手紙に記されていた。

 

 

「……うん。これで、よし。私が死んだ後も、きっと。あなたは、幸せに暮らせるはずだよ。ちゃんと、あなたが私によくしてくれたこと、書いておいたから。彼ならきっと、叶えてくれる、はずだから」

 

「そうですか。ありがとうございます」

 

 

 多分、死の間際で自分が救世主様に頼ってしまったことを自己嫌悪してるのだろう。

 自分は彼から逃げるのに、その彼に死後まで助けてもらうことを恥じてるのだろう。

 それでも彼女は、遺書を最後まで書き切った。

 その文の大半は、私について言及したものだった。

 

 

「無駄な文が多いですね。消しません?ここらへん全部」

 

「わー!?ダメダメ、そこ消しちゃダメだよ!大事なんだから、一番!」

 

「はぁ、そうですか。私、たかが一年程度あなたと一緒にいただけなんですけどね」

 

「うん。一年の間、私の傍に居てくれたね。一緒に歩いて、同じ景色を見てくれた」

 

「背は違いません?」

 

「いいの、細かいところは!……最後に、ちょっとだけ我儘言っていい?」

 

「はい。どうぞ」

 

「あなたと会った場所で死にたいな」

 

「そうですか」

 

 

 手を繋いで、さっさと歩く。

 夜空には思っていたより星が多くて、最初に会った時よりも綺麗に思えた。

 彼女は懐かしむように、星々を見上げながら、月の下で微笑んで。

 

 

「ここでいいよ。ありがとね」

 

「はい。首をスパッと一刀両断できれば、痛がらずに済んだんでしょうけど。残念ながら、そこまでの力はないので。心臓を一突きする、って流れで行きますね。なるべく苦しませないよう、努力はしますけど」

 

「アハハ、お願いね」

 

 

 腕を軽く広げる彼女に、刃を向けて。

 確かな力を込めながら、思い切りナイフを振り上げて。

 

 

「ね。最後に、聞いてくれる?」

 

「はい。なんでしょう」

 

「私。この世界が、大嫌いだけど」

 

 

 彼女は普通の女の子だ。

 されど。

 

 

「あなたと会えたことだけは、ちょっとだけ嬉しいって。今思えたかも」

 

「そうですか」

 

 

 救世主様が愛した理由が、少しだけ分かった気がした。

 

 

 

 

「私の分だけ、幸せになってね」

 

 

 

 

 ナイフは案外と、簡単に命を奪ってくれた。

 

 

 

「……さて」

 

 

 

 あとはもう、簡単だ。

 この遺書を持って行って。

 救世主様に遺書を読んでもらえばいい。

 そうすれば、私はこのことに関して罪に問われることは無く。

 きっと、彼女に最後まで寄り添った、よき友人として。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アハッ」

 

 

 

 ああ、そんなの。

 

 そんなつまらない生き方で、この世界を生きるって?

 

 お姫様の付属品として、終わるって?

 

 そんな人生、あんまりにも無価値じゃないか。

 

 

 

「さようなら。お姫様」

 

 

 

 びりびりに破って遺書が、風に流されて消えていくのを眺めて。

 私は、これから先の未来を、待ちわびるように血を浴びる。

 ようやく巡ってきてくれた、星を掴むためのチャンスを離さぬように。

 

 

 

「初めまして、世界最悪の私」

 

 

 

 救世主様にとって、一番大切なものが貴女なら。

 私は、彼にとって、一番憎むべき存在へと成り下がろう。

 

 

 世界で二番目に綺麗な花よりも。

 世界一汚い花の方が、ずっと特別なのだから。

 

 

 

「私、今最高に幸せ!」

 

 

 

 

★★★★★

 

 

 

 

「これっぽっちの、ものを奪うために?」

 

 

 ああ、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、嬉しい。

 嬉しい、嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい、幸せだ!

 痛みに悲鳴を上げるより、彼のその目を見る方がずっと重要なことだったから。

 

 

「そのために、あいつを、殺したのか?」

 

 

 四肢を虫に食われてる。

 痛みは今まで味わったことが無くて、けれどそんな物はどうでもよくて。

 

 

「こんな奴に。あいつは殺されたのか!!」

 

 

 ああ、初めてあなたの眼が、私を捉えてくれている。

 初めてあなたが、その綺麗な星が、私の色に染め上がっていく。

 痛いのに、辛いのに、それ以上にそれが、どうしようも無く愛おしくて。

 

 

「死ぬことなど、許すものか」

 

 

 ええ、どうか私を生かしてください。

 

 

「苦しみ以外を、許すものか」

 

 

 ええ、どうか私を永遠に苦しめて。

 

 

「お前には、如何なる安息も許さない」

 

 

 血の涙を流すあなたの姿は、どんな星より綺麗で。

 

 

「お前を絶対に、許さない」

 

 

 それは、永遠の愛よりも。

 ずっとずっと、価値があるものだから。

 

 

「アハッ」

 

 

 光すら通さない、食事すら摂れない日々のはずなのに、私はまだ生きている。

 それはきっと、彼が私達凡人には理解できぬ、特別な力を使っているからなのだろう。

 それをお姫様に使わなかったのは、きっと、彼女がそれを望まないと理解していたから。

 

 

「救世主様。私は、幸せです」

 

 

 憎悪に塗れた彼の責め苦を、私は笑って受け入れた。

 私が彼の支えになれることを実感できる、私に価値があると思える時間だったから。

 彼女は彼を殺すために死んで、私は彼を生かすために生きるのだ。

 

 

「あなたが目を逸らし続けたものは、もうありません。あなたが再びそれを見つけられることは、もうありません。私が、あなたにとっての唯一の罪人が、それを奪ってしまったのですから」

 

 

 あの手紙に綴られた文字は、彼を殺すための毒だから。

 彼をこの世界に引き留め続けた鎖を腐食させるための錆だから。

 光無いこの世界に縛り付けられた太陽は、もう逃げることは出来なくなった。

 彼女の願いを、彼女の愛の行方を知るチャンスは、もう存在しないから。

 

 

「ですから、どうか、お願いします。私を憎んでください。私を信じてください。私の話した彼女の末路が、私が話した私の悪意が、あなたにとっての真実であると信じてください」

 

 

 あなたはきっと、知ろうと思えば知れるのだろう。

 隠された真実を暴くことなど、あなたにとっては容易いのだろう。

 それを出来る力も、権力も、今のあなたにはあるというのに。

 それでもあなたは、私の真実に甘えてくれた。

 その事実が、これ以上なく、嬉しいのです。

 

 

「私は、あなたの愛しの彼女を殺した、罪人ですから」

 

 

 その愛の所在は、最後まであなたにあったのだと。

 あなた達は最後まで、相思相愛であったのだと。

 どうか、そう信じてください、救世主様。

 

 

「彼女の愛した世界のために、どうかまだこの世界を救ってください」

 

 

 あなたが背負った苦しみの分、あなたは私に苦痛を与えてください。

 あなたが感じた理不尽を、どうかこの私にも味合わせてください。

 汚い欲望も、醜悪な加虐も、誰にも見せられないあなたの弱さも。

 

 

「お星様。どうか。ずっと、ずぅっと。輝いていてください」

 

 

 とめどなく涙を流す目を、笑う。

 憎悪を忘れぬように、悲しみを忘れぬように、私の罪を見る彼に微笑む。

 私は、世界一幸せな罪人だ。

 

 

 

★★★★★

 

 

 

「疑問には思ってたんですよね」

 

 

 ふと目を覚ますと、私の体は珍しく、四肢が無い以外はまともな形をしていた。

 おそらくは不老となった身体は、相変わらずちんちくりんな十歳の姿のままだ。

 先ほどまでは、無限に続くような暗闇の中で、彼の憎悪を感じていたはずだが。

 

 

「あの人は、本当に珍しい暇が出来た時。本当に何もすることがない日が出来た時。決まって、とある場所に向かっていました。私たちは、きっとより力を研鑽するために修業をしてるんだ、とか。素性を隠して愛した人と逢引きしてるのかも、とか。そういう予想をしてたのですが」

 

 

 目の前にいたのは、十五、六歳程の、私より少し背が高い女の人だった。

 何処となく、その笑顔がお姫様に似ているような気がした。

 

 

「まさか、こんな場所に行っていたとは。あの人も、人間ではあったんですね」

 

「……誰ですか?あなた」

 

「あ、ご紹介が遅れました。私は……あー。なんと呼べばいいのやら。とりあえずは、この壊れた楽園に残った、最後の住人と言ったところですかね?」

 

「楽園……フフッ」

 

 

 地下にあるはずのこの場所から、空に昇っていく光が見えたあたりで察してはいたが。

 救世主は、愛しのお星様は、最後の最期までやり遂げたようだ。

 最後までこの世界を見捨てずに、その全てを背負ったまま、生き抜いたのだ。

 ああ、けど、この様子だと。

 

 

「私、最後の最期に、忘れられてしまったみたいですね」

 

「そうでも無いんじゃないですか?私、残されたお父様の日記から、貴女がここにいることを知ったのですけれど。わざわざ事細かに、あなたのいる牢屋の場所を描いていてくれたんですよね。自分が死んだ後、誰かに見つけてほしい、なんて。そんな意図があるみたいに」

 

「……そうですか」

 

 

 全ての憎悪を引き受けることは、出来なかったようだ。

 とはいえ、多分そのままであろうとも、私は問題なく彼らと同じ世界に行けたのだろうが。

 

 

「銃とか、毒薬とかはありますか」

 

「死ぬんですか?」

 

「もう生きている意味もありませんから。私を知る人も、私が知る人も、もうこの世にはいないでしょう」

 

 

 彼の為に生きて、彼の憎悪の為に苦痛を受け入れ、そして彼は世界を救った。

 その功績は、自分がいたからこそだ、などと嘯くつもりはないが。

 それはそれとして、やっぱり、感動は覚えてしまうものだ。

 

 

「私を縛っていてくれた彼の憎悪も、今は存在しません。今なら、簡単に死ねるはずです。ですので」

 

 

 感動を抱いたままに死にたい。

 そう言おうとしたところ、彼女は呆れたように息を吐いて。

 

 

「なーんだ。お父様を影ながら支えてくれていた、献身的な人なのかと期待してたんですけど。まあ所詮はただの人間、これ以上を期待するのは酷ですか」

 

「……聞き捨てなりませんね?」

 

 

 救世主様をお父様と呼ぶ彼女をギロリ、と睨む。

 まあ、私程度の存在が凄んだところで大した意味も無いのだろうけれど。

 彼女はニヤリと笑って、空を指さした。

 

 

「お父様は、自分がやるべきことを全て果たしました。であれば、唯一生き残った娘である私も、やるべきことをやらねばなりません。その為に、あなたの力が必要だ。あなたの意思が必要だ」

 

「あなたのやるべきこと?」

 

「ええ。とても単純で、とても壮大な目標です」

 

 

 彼女は、何処か、彼を思わせるような。

 輝く瞳を、金色の色に輝かせて。

 

 

「お父様を苦しめた神を、ぶん殴る」

 

「……荒唐無稽なお話ですね」

 

「発端からしてそうじゃないですか。なら、今更でしょう?」

 

 

 それは確かに、そうかもしれない。

 そのまま死ぬことで、私がやるべきことは終わりかと思ったけれど。

 彼の意思が、彼の為に働くことが、まだできるのであれば。

 

 

「やりましょうか」

 

「話が早くて助かります!それじゃあ、この壊れた世界を元に戻すところから始めましょうか!……けど、案外とあっさり受け入れてくれましたね。何か、思うところでもありました?」

 

「なんてことの無い話ですよ」

 

 

 ふと、風に乗ってきた古い紙の切れ端が、地面に転がった。

 それを拾い上げて、それに書いてあった文字に、少し苦笑して。

 

 

「友達の頼みです」

 

 

 そう言って、歩き出すことにした。

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