映画見てモチベ死ぬほど上がったから投稿
運がいいかと聞かれたら……私はちょっと悩んで普通かな、と答えるだろう。
別に宝くじを当てれるような運への自信なんて無いし、それこそチューインガムの当たりを偶に引き当てられるくらいの幸運しかない私だけど。
だけど、今はちょっと……事情がね。うん。
商店街にある仮設された建物の傍で私は立ちながら。
……今ばかりは、宝くじを引き当てるくらいの運を欲している私がいた。
少しの緊張を抱えながら、私は右手を前に差し伸ばす。
置いた手は、まるでドアノブのような形をしたものに落ち着く。
その先にあるのは6角形の木の箱。中心には固定器具が付けられていて、それが回せるようになっている構造だ。
そして、少しだけ時計周りに右腕を動かせば。
ガラガラガラガラ、と。軽い音が絶え間なく鳴り響いた。
「…………ふぅ」
一つだけ深呼吸。
良し、もう混ぜ終わった。後は運に身を任せて腕を反対時計に回せば結果が出るはず。
確率なんてわからないけど、とにかくすっごい低いモノだっていうのは分かる。まあ、狙ってるものがアレだから当然ったら当然なんだけどさ……。
「……いや、さっさと回せよ。ただのガラポンだろうが」
うるさい。トレーナーうるさい。
私が特等の温泉旅行のペア券を真面目に狙ってるのに呆れてるのは分かるけどさ!
……ああもう、どうにでもなれ!
突っ込む余力すら無くした私はやけくそに目の前のガラポンを反時計回りに回す。
運に自信がないとはいえ、今の私が運任せに求めるのは一つ。
――トレーナーと2人で温泉旅行に行きたい!
「だからよ、あんなん普通当たるわけないだろ。商店街で出来るおまけのガラポンだぞ? 逆に当たった方が怖えぇっての」
「分かってるよ……分かってるけどさぁ……?」
「おい、当たんなかったからって不機嫌そうにすな。……尾っぽを俺に背中に
隣同士、公園のベンチに座りながら、私は尻尾をトレーナーの背中に向けて何度もペシペシッと叩き続ける。
うるさい。分かり切ってることだけどさ。追及しなくてもいいじゃん……。
今日は商店街で『ウマ小屋』の仕入れを手伝っている最中だった。
証拠に、トレーナーのすぐ傍には大量に積み上げられた段ボールの数々がある。
さっきまでコレを運んで……はいないんだけど。
怪我人に重いもんを運ばせるのは気が乗らん、とか言ってさ。たまに来るトレーナーの謎気遣いが働いたんだよ。
……少しだけ嬉しいと思ったのは内緒。
で、商店街の仕入れで会計とかするんだけどね。荷物を重ねていくうちに、よくあるガラポンのくじが溜まってさ。1回だけ回せるようになったんだよ。
それで景品を見に行ったら、温泉旅行のペア券があってさ。
トレーナーと2人きりで旅行に行けるチャンス!? って気合入れて回してさ……。
…………で、後はお察しの通りってわけ。
……結局、あのガラポンから出てきたのは特等に程遠い3等の色をした球だったよ。因みに景品はたったのにんじん1本。今はそれをポリポリとかじりながら拗ねている最中だ。……素朴な味が虚しく感じるよ。
悲しみに暮れつつ、尻尾叩きをやめてあげるとトレーナーが怪訝な顔をして私に言う。
「ったく、そんな旅行でもしたかったのか? なんだったら俺が用意するってのに」
……そうだけどそうじゃない。
トレーナーの疑問に私はジト目を返す。
確かに旅行には行きたいよ? やっと来た年末前だし、壊した脚も殆ど治りかかってるとはいえまだまだ激しい動きが出来なくて暇してるから。
だから旅行して羽休みをしたいかなー、なんてことは考えてたけどさ。
……でもせっかくならさ。
「……私はトレーナーと2人で旅行に行きたいんだってば」
せっかくなら、好きな人と行きたいっていう我儘くらいあってくらいあってもいいでしょ。
「俺と? 別にお前ひとりでも行けるだろうに。もう脚ちょっと走れるくらいには治ってんだろ」
「良いでしょ。一緒に行きたいと思ったからペア券取るのに必死だったの!」
拗ねるように言った言葉に、トレーナーは疑問を持って語りかけてくる。
……今の台詞、サラッと言ったけど正直すっごい心拍バックバクなんだよね。
汗かいてないかな。顔赤くなってないかな!? いやなってるね!だってすっごく熱いし!冬なのに体中熱いし!
ていうか! 私こんなになってるのに、トレーナーってば!
「お、おう。つか、お前俺のこと大好きかよ」
「……っ/// 悪い!?」
「いや悪くはねぇが」
何事も無いようにサラッとこんな言葉返すの流石にずるくない!?
ねえ! 遠回しだけど、好意を伝えたんだよ!?ちょっとはさ、動揺とか?戸惑いとか見せてくれてもいいでしょ!
トレーナーへの恋愛感情自覚してからさぁ、結構猛アプローチしてるつもりなんだけどさ! もうずっとこんな感じなんだよ?
なんでこう、受け取った好意を恥ずかしげもなく認めたり反応したりできるかなぁ!?いい加減照れるぐらいはしてほしいよね!?
鈍感……じゃないのが余計腹立たしい!
こんなヒト、好きになっちゃった私も大概だけどさ!
はぁ、ふぅ……。
荒げた声を収めて一度深呼吸をする私。
高ぶった感情は一応落ち着いて、ポリポリとかじっていたにんじんも無くなったところで。
「ん、すまん電話だ」
唐突にトレーナーの携帯から着信音が鳴り響いた。
私に断りを入れベンチから立ち上がり少し離れるトレーナー。
「っ」
その瞬間、雰囲気が一変……なんて言い過ぎだけど。
トレーナーがいつも
代わりに絡っているのは、大人っぽいちゃんとした感じの人が放つような雰囲気。
もう見慣れたものだけど、トレーナーは意識の切り替えって言うか、ちゃんとする場面と子供っぽく振舞う場面を分けるのがすごい上手いんだよね。
ゲームやってるときなんかもさ。急に仕事のメールとか来たら、眼つきがキリって変わるの。
トレーナー曰く「真面目に不真面目に生きてりゃこんなもんできるようになる」って話だったけど。……正直意味が分からなかった。
真面目に不真面目って何……? 一言で矛盾が生まれちゃってるんだけど。
あの瞬間のトレーナーはカッコいいとは思うけど、ちょっと不気味な感じもあるんだよね。
真面目なのはいいんだけど、ちょっと怖いかなぁ……。
「もしもし……って親父か。どうした? 珍しいじゃねぇかこんな昼頃に電話なんてよ」
……ってあれ?
なんか大人の雰囲気無くなった。いつもの子供っぽい雰囲気に戻ってる。
聞き耳を立てては無いけど、携帯に耳を付けて話すトレーナーから『親』っていう言葉が聞こえた。どうやらご両親と会話をしているようだ。
……因みに聞こえたのはあれだから。ウマ娘の聴覚って鋭くてね?だから意図せず聞こえちゃうんだよ。不可抗力って奴。うん、仕方ない仕方ない。
だからこの先の会話も聞こえても仕方ない。そう言うこと、うん。
「元気にしてるかって? そりゃま元気だよ。俺含めウィングも……いや、アイツはちょっと療養中の身だけどな」
「あー、ウィングってのはあれだ。前に話したろ、俺の担当。ちょいとレースで故障しちまってな」
電話の先の相手の声は聞こえないけど、トレーナーの声は聞こえてくる。
角張ったり、緩い感じの声色じゃなくて、何処か砕けた口調と優しい声色だ。
私の事に対する説明の会話が所々耳に入る。
そうして一区切りついたのか、別の話題の内容を喋り始めた。
「今年の帰省予定? ああ、まあ一応帰る気ではいるよ。ウィングの怪我の経過も見たいが、様子を見た限り大丈夫そうだしな。……随分大事にしてるんだな? 余計だボケ、電話切るぞ」
……ていうか、あはは。トレーナーって家族相手だとあんな感じなんだ。
サラッと大事にされてること扱いされたことに少し赤面しながら、トレーナーとその両親との軽いやり取りを見て苦笑する。
後トレーナーが実家に帰る件は私も一応聞かされてはいるよ。
ちょっと寂しくはなるけど、3日程度間が開くだけだし。……寂しくはなるけどね。
強引に電話を切ろうとするトレーナーだったけど、大声で待て待てと携帯から引き留めの声。
「んだよ、からかいなら実家帰ってからにしてくれ」
心底うんざりした表情で耳に携帯を当てなおす。
あれだけ表情歪めるトレーナーも珍しいな、と思いながら会話に耳を傾けていると。
「ウィングの予定か? 知らんが……ああでも、俺が実家帰る頃の予定はがら空きって聞いてるぞ。丁度休日だしな」
急に私あての話になったことにびっくり。
え、何で私の予定の話になってるの? まあ確かに休日で予定は無いんだけどさ。
「いい加減母さんが顔見せてくれって駄々こねてる? いやそれ、俺がアイツと担当組んでからずっとこねてるじゃねぇか。まだ収まってないのかよ」
「ドロップキックぅ? 知らん知らん、親父と母さんの戯れだろそれ。黙って耐えてくれよ。俺の代わりに」
……一体どんな話をしているんだろうか。
なんか、駄々とかドロップキックだとか不穏な言葉ばかり出てきてるんだけど……。
「うっせぇなぁ。分かった分かった、今度ビデオ通話に顔出してみてくれって頼んでみるかr……あ? んなことしなくてもいい?」
途端、急に流れが変わった気がした。
ん? と眉をひそめるトレーナー。私も同様に何となく嫌な予感がした。
上手く言葉にはできないんだけど、何か。うん、アレだ。
トレーナーの身勝手ぶりが発揮する時のような。
無茶で自由気ままな事をする時みたいな感じに近い……。
「は!? 今さっき飛行機のチケット送りつけただぁ!?」
急に。
トレーナーの方から大声で動揺する台詞が聞こえてきた。
飛行機のチケット……流れ的にもしかしてトレーナーの実家までの……?
「しっかり2枚分送ったから安心しろ……じゃねぇんだよ! ウィングが行くこと前提に話を進めんな! つか全体的になに勝手してくれてんだクソ親父!!」
え、私の分もあるの!?
いきなりの大声に体がビクッてなった私。お目目もガン開き。トレーナーにしては珍しい動揺する声色だったけど、珍しさに浸る間もなく私はトレーナーの電話内容に聞き耳を立てる。
え、ちょ。もしかしてトレーナの実家に挨拶しに行けるチャンスが……!?
なんて考える私は卑しいのだろうか。
「つかそもそも、俺は良いがウィングが付いてくるつもりが無かったら……説得しろ!?ざけんな、親父らの無茶苦茶に俺はともかくウィングを突き合わせんなよ! てか、今傍に当の本人がいるって……説明省けたな、じゃねぇよボケ!背負い投げすんぞ!」
お、おお。トレーナーが結構本気で怒ってる。
初めて見た気がする。あれだけ大声荒げてるトレーナーの姿見るの。
……ていうか勝手してるのはトレーナーも言えたきりじゃないよね? 私普段から振り回されてるし(怒)
んー、でもそうか。トレーナーのお父さんもあんな感じなのかぁ……。身勝手ていうか事情知らずでも特攻気味っていうか……。
この親にしてこの子在りってことわざあるけど……。なんか納得。
「慰安旅行……つか俺にとっちゃ帰省旅行なんだが……いやいやそうじゃなくてだな。あーでもアイツ温泉旅行行きたいって言ってたような……クソ」
思い返すのはさっきの商店街で願った想い。
……うん。確かに、トレーナーと2人で温泉旅行に行きたい!とは言ったけどさ。
なんていうかその……こんな形で行くっていうのはなんかドラマチック感無いな―って。
「あ、おい!? 後は頼んだじゃねぇ!?
……マジで切りやがったあのクソ親父」
一方的な話にキリがついたらしく、電話を終えたトレーナーの姿が見える。
なんか……虚脱感と怒りが同時に湧き上がってるような。表情もヒクついてるし。
気のせいじゃないね、うん。オーラすごい。
そこから数秒。
ようやく落ち着いたのか、さっきのオーラを閉まって私に近づいてくるトレーナー。
どこか疲れてるトレーナーを見て私は一言。こう言ってあげた。
「……えっと、いこっか? トレーナーの実家」
「…………すまん」
こうして私の、初恋の人と行く慰安旅行は決まったのだった。
ドラマチックさも何もない感じの導入だったけど、まあうん。私には無駄に期待するのもアレだしね。
せっかくの温泉旅行なんだし。楽しんでいこうかな。なんて。
この時の私は気楽に、トレーナーみたくそう思っていた。
他ウマ娘との絡みもっと欲しい?
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くれ
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いらん
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どうでもいいからイチャイチャ見せろ