長編小説『絶叫学級with青鬼』   作:美和蘭 陽天

2 / 2
『あたしはただの高校生』

あたしがまだ高校生だった頃の話をしようかな。

 

2021年3月のこと。大阪府内某高校の、ホームルーム教室で。

「はぁ。もう、この高校にも来なくて良くなるのか………」

あたしは、ブレザー姿で花束を持ったまま、大きく溜め息をついた。

「何ぼさっとしてんのよ、陽天(そら)!」

教室がざわざわしてる中で俯いていたあたしに、声をかけてきた女の子がいた。

「別に………ぼさっとなんてしてないよ。」

あたしは元気の無い声で否定したが、

「いつもの元気がないぞ陽天(そら)〜。」

元気な声と共に、後ろから抱きつかれた。

あたしの名前は、美和蘭(みなぎし)陽天(そら)。高校三年生で、今日時は卒業式だった。

大方予想通りの内容で、来賓(らいひん)の言葉、卒業証書授与式など皆が想像する内容のことは全てやっていたと思う………まあ、普通の卒業式。特に感動もしなかった。

なのになんだと言うのだろう、この喪失感は。別に小中と大して変わらない内容のはず。

(小中は、友達居たっけな………高校では、親友と呼べるような友達は(とき)らいしかいなかった。)

陽天(そら)は、クラスのみんなのことが好きになったんじゃないのかな〜?」

否定はしない。静かに首を縦に振る。やっぱり悲しいものなんだ、1年暮らしたクラスと離れるのは。

松下(まつした)(とき)、あたしの親友。緑色の長い髪の毛が特徴で、今日は真面目にネックレス等もつけずブレザーを着てきている。緑色の毛は地毛らしい。あたしは姉を除いて黒髪だったから派手な色の実感が湧かないな。

「あ〜っ、なによその目は。もしかしてこんな真面目な格好して来てるのが珍しいと思ってるな!この〜!」

「ちょ、ぐりぐりしないで!いたたっ。」

あたしは(とき)にほっぺたをぐりぐりされた。痛いけどちょっとマッサージのツボ押しのような感じで気持ちいい。

「わたしだって、ちゃんと真面目な時は真面目だから!」

えっへん!と言わんばかりにポーズをとる。

(とき)は、学校では真面目な女の子という感じだけど、学校外ではネックレスや派手なファッションなど、ギャルと言った感じの格好をすることがよくある。

一時期は学校外で露出度高めの過激な格好をやり過ぎてそれに目をつけた男どもに絡まれ、のちに生徒指導を食らったことがあった。けど被害者の立場だったから「次からは襲われないような格好にしなさい!」と比較的軽く済んだ…と思う。

因みにその時あたしも、「こっちの子もかわいいね〜!」と、普通な格好をしてたのに絡まれた。どうやらあたしは見た目はいい方らしいが、別にそんなに褒められるものでもないと思ってる。

本人はその忠告を守ったが内心懲りていなかったようで、あたしを家に呼び出しては過激な格好を見せる奇行を繰り返してた。

まぁ、男子に見せて襲われては本人にとっても問題しかないので、あたしに見せるのは正しい選択だと言える。

「こんなとこであんな過激な格好されたら、騒ぎになって仕方がないよ。」

「えへへ。しばらくぶりに新しい服買ったから、また家に見に来てよ!」

(ほら懲りてない。)

「なら、今度はあたしの家に来てよ。あたしは一人暮らしだから家にお邪魔できるし、な〜んか移動するのもめんどくさいというか…」

「やった!じゃあそれでお願いね〜!うりうり!」

あたしはこちょこちょされた。

「ちょっやめ………きゃは…きゃははっ、ふふっ!!!」

教室にいた皆が一斉に振り向く。恥ずかしい。

またあたしは斎の過激な姿を見せられるのか。けど内心は、全然嫌気は差してない。むしろ親友を家に招けるのだから嬉しい。

あの後クラスで写真撮影だけして、(とき)を連れて帰ってきた。

「さ!どんどん見て!!穴が空くほど見て〜〜〜っ!!!」

変態のような奇行。それがあたしに対しての『いつも通り』だった。

(こうやって(とき)のファッションショーを見せられるのは久しぶりかな。)

学校では全然さらけ出すことのない性格、はたまたさらけ出してはいけないような上下の場所まで遠慮なくさらけ出してくる。

さすがに服だから局部はかくされてるけど、わざと変な着方をするのがいつもの(とき)

「………ぷふっ。男に絡まれた時より酷くなってるじゃん。」

思わず吹き出してしまった。それを見逃す(とき)じゃあない。

「今笑った!笑ったよね!!!やっぱりあたしの格好は陽天(そら)にとってすごくいいんでしょ!」

期待の目を寄せてくる。

「………悪くないと思う。すごく綺麗な形が見えるし、あふっ……………すごい。」

あまりの綺麗さに語彙力を失ってしまった。

あたしは(とき)のことを可愛いと思ってる。親友がこんなに可愛い子でよかったって思えるくらい。

(とき)とは高校からの付き合いだったけど、ひょんなことから仲良くなって今に至る。

部活は3年間通して『マルチメディア部』という部活にいた。RPGツクールやScratchでゲームを作ったりしてた。今でも、(とき)との思い出のひとつになった。

「大学行くまでさ…どうしよう?」

あたしが問いかけると、

「わたしは大学から一人暮らしするから、それまではここにいる!!!」

なんと、そうきたか。

「えぇ!!!?そんな2人分の食費とか寝床とか無いんですけど!」

「大丈夫よ。金ならあるし、陽天(そら)と一緒に暮らしたいな!一緒の大学に行くんだから問題ないわよ!」

その通り、あたしたちは同じ大学に通うことになった。とりあえず適当にいい大学入っとけば将来有利という考えであたしの行く大学についてきた。

当のあたしはと言うと、医療系の大学を諦めて普通の大学に行くことになった。そのことは………また次の機会に話そうと思う。

「そうだ。あたしさ、今年の8月に開催されるゲーム大会に出ようと思ってる。見に来る?」

「行く!」

(嬉しいな………見に来てくれるんだ。)

なんて考えてたこの時、あたしは笑顔だったんだろうな。

「あ、今にこにこしてたね。可愛かった〜!」

「ん…ありがと。」

その時、あたしの腹が大きく鳴った。

普段あたしは三食を非常に軽く済ませる。高校から一人暮らしを始めたけどバイトはしてなかったから、仕送りでなんとかやってもらってたという状況だった。

でも今日はせっかく来てくれたんだし、いいところに連れてってあげよう。

 

あたしの奢りでくら寿司に連れてったあとは、久しぶりにたらふく食ったので昼寝をして、夜は他愛もない話と、トランプゲームとかSwitchのスマブラとかをして過ごした。

トランプゲームに関して、大富豪はあまり詳しくないから大富豪以外をやった。スマブラは、あたしはいつもヨッシーを使ってる。ヨッシーを使ってる理由は『かわいいから』ただそれだけ。

あたしは医者の道を諦めた今はプロゲーマーを目指すことにしていたから、余裕で勝ってしまった。大人げなかったって後悔してる。

辺りに、夜のとばりがおりた………

あたしたちは、ひとつのベッドに二人で潜った。

「あ、暑い………」

あたしは、机の下とか狭〜いところが大好きな人間関係だったけど、流石にこれは暑苦しい。

「でも、金は節約しなきゃいけないから今日はつけない日………ぐええ。」

「大丈夫だって言ったでしょ。わたし金あるから。」

そう言うと、(とき)はクーラーをつけた。

しばらくして部屋が冷えると、距離が近くなる。抱きつくような体勢になり、互いの胸がぎゅうっと押しつけあう。

(ん。柔らかい………)

(とき)の胸は、柔らかい。

「すぅ〜───」

(もう寝たのか。そんで、吐息が顔にかかる………可愛い。)

こんな幸せな時間が、ずっと続けばいいのに───

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。