モモンガさんが大好きな小さな守護神   作:紀野感無

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〜歌う林檎亭〜

「マジでどうなっちまうんだろうなこの国は」
「さあね。ま、国の形が変わろうが鮮血帝が生きてるなら何も変わらないと思うけど」

帝国のワーカーチーム『フォーサイト』はバハルス帝国とリ・エスティーゼ王国との戦争…もとい小競り合いについて考えていた。

先日()()()()()()()墳墓調査。その直後から天変地異だの突如出てきた魔導国だの、果てには帝国が魔導国を一つの国として認めるなど、寝耳に水だった。

「ヘッケラン!準備できたわよ!」
「おう。ま、ユーの言う通りわかんねぇことを考えても仕方ねえ。今日も一仕事行きますか」
「そういえばアルシェとロバーデイクは?」
「例の孤児院に顔を出してるぜ。依頼のことは伝えてあるからそのまま来るはずだ」
「わかった」




「(マジで何考えてんだあの骨。つか、エ・ランテルには酒カスいるし、王国にバーサーカーいたと思うけど、アイツ……いやいや、まさかな)」

金髪の女性ワーカー『エイ=ユー』は、何故か嫌な予感がし、身震いしていた。


13話 黒い仔山羊

「な、何が……」

 

「チッ、やっぱ慣れねえことしても無駄だったか。お嬢」

「分かってる。バーサーカー、時間稼ぎはお願いね」

「出来ればいいけどな。【アレ】全部を引き受けるとなると流石に俺でも無理だ」

 

貴族達は現実から目を必死に逸らしていた。

 

なんせ、帝国軍に見えていた魔法陣が強く光ったと思うと左翼に展開していた数万の兵士が突如倒れ、黒い泥のようなものが降ったと思うと巨大な黒い化物が5体も現れたのだから。

 

それら化け物は、「メェー」と家畜の鳴き声を大音量で響かせながら王国軍を蹂躙し始めた。

 

「みなさん、今すぐに王様を連れて逃げてくれない?」

 

「だっ、だが!あんな化け物相手に逃げても…」

 

「いいから動け。動かない奴らはケツを蹴り上げて走らせろ。でなけりゃ全員死ぬぞ。お嬢の決断を無駄にすんじゃねえカスども」

 

黒い偉丈夫な大男バーサーカーの言葉で、周りの貴族達はようやく動き出す。

ものの数分で周囲にはイリヤとバーサーカーのみになる。

 

「改めて聞くわよバーサーカー。アレ相手だと何体が限界?」

 

「アレの相手したことねえんだよなぁ。ま、できて2体ってところかね。横槍さえ無ければ…な」

 

 

 

「初めまして。先ほど槍を投げたのは貴方達でよろしいでしょうか?」

 

 

 

そんな2人の上空から声が響く。上空にいたのは熾天使の羽を顕現させた少女。鎧ドレスを纏い、左手には円盾を、右手には槍を持っていた。

 

魔導王アインズ・ウール・ゴウン及びナザリック地下大墳墓の守護神アテナ。

 

バーサーカーはその気配に気づいており、めんどくさそうに見上げる。

だが次の瞬間には顔一杯に疑問符を浮かべていた。

 

「んー?誰だアイツ」

「誰って、アインズなんとかのギルドメンバーじゃないの?」

()()()。酒カスからの情報にあんな奴いねえぞ」

 

「もしもし?質問は聞こえていましたか?」

 

無視されたことに若干イラつきの感情を滲ませながら、アテナは2人へ話しかける。

同じくバーサーカーも若干の苛立ちを含ませながら答える。

 

「聞こえてるっての。質問に答えると、投げたのは俺だ。んで何の用だ、ここで殺し合うって腹か?」

 

「もしそうだと言ったらどうします?」

 

「ヤダね。お前みたいなガキと、ましてや女と殺し合う趣味は無え」

 

「ガ、ガキ…。んんっ、そ、そうですか。では単刀直入に…」

 

「やだね。お前らと関わる気はない」

 

「ぐ…た、単刀直入にお聞きしますが、貴方達はクラン【英雄の集い】の一員、バーサーカーこと【ヘラクレス】とその付き人である【イリヤスフィール】ですよね?」

 

「俺たちの名前知ってんのか。聞いてた話とちと違うが……まいいわ。俺らのこと話したの誰だ?酒カスか?青タイツか?それとも……」

 

「それに関しては情報提供者との契約により話せません。さて、私たちは王国の未来は然程興味ありませんが、貴方達となると話は別です。簡単に言いますと、魔導王陛下は貴方がた【英雄の集い】と敵対する気はありません」

 

「そりゃ、お前らに従順だったら、の話だろ?なあ、隠れてないで出てこいよ」

 

ヘラクレスと呼ばれた大男は拳大の石を手に取り、アテナの背後目掛け--風圧でテントが壊れるほどの威力で--投げつける。

それは何かに当たったと思うと砕け散り…

 

「ほう、当方の気配を感じ取るか。魔導王陛下が仰った通りのようだ」

「大丈夫?」

「問題ありませんマスター。それよりも…」

 

虚空から現れたのは仮面を着け、黒を基調としたフルアーマーを装備した男。その男は氷のように冷たく冷酷な印象を抱いてしまうような立ち振る舞いをしていた。

 

「んー…?」

「どうしたのバーサーカー」

「んにゃ…まさかとは思うが…お前、龍殺しの英雄『シグルド』とか言わねえか?」

 

「ほう、当方の名を知るか」

 

「…………。おい、ガキ」

 

ヘラクレスは軽く呆れながらアテナを見る。

ガキ呼ばわりにアテナはこめかみに血管を浮かべそうになるが、なんとか、本当になんとか我慢し、ヘラクレスに続きを促す。

 

「まさかとは思うが、ブリュンヒルデも居るとか言わねえよな?」

 

「それを貴方に教える義理はありません」

 

「いーや絶対いるね。ここまでシグルドを完璧に再現してるやつがブリュンヒルデを造らない訳がねえ。んで…ワルキューレも3体は造ってると見た」

 

「……」

「マスター、あの者は一体…」

 

「図星だな。いやぁ分かる、すっげえ分かるその気持ち」

「ねえバーサーカー、何の話?何でそこまで分かるの?」

「んにゃ、どうってことない、アイツは俺たちのようなバカと同類ってだけだ。なあ?いくらかけたよ」

「同類?」

 

 

そう、昔に流行った作品のキャラクターを真似て作っていた変人ばかり集まったクラン【英雄の集い】

見た目だけならまだしも、性能面すらどんなに金がかかろうとも極限まで再現することにこだわった変人の集まり。周りからは様々な意味を含んで【バカの集まり】と言われる始末。

 

 

それらと偶然とはいえ同じ考えの元、アテナもNPCを作成していた。それを指摘され、思わず恥ずかしくなっていたというのが現実だった。

 

「(いや確かに!そうだけど!物語を読んでて1番好きだった部分を再現したかっただけなんだけど!ていうかこの人らにバカとか言われたくないしそれとあの人はクランメンバーの能力は教えてくれなかったけどさ、バーサーカーのヘラクレスてことは()()()()もあるってことだよね⁉︎私、死ぬほど相性悪いんだけど⁉︎)」

 

アインズ達が情報を交換した【黄金】こと『エイ=ユー・オウ』の言葉を信じるならば、この大男はクラン内において唯一、ワールドチャンピオンである『宮本武蔵』に最も勝ちが取れそうだったプレイヤー。

 

つまり、アテナにとって格上であることは明らかだった。

 

「(と、とりあえず話を戻さなきゃ…)こ、こほん。話を戻しますが、私達は貴方がた【英雄の集い】と事を構える気はありません。単刀直入にいいますが、私たちと協力関係を結びませんか」

 

「はっ、もっかい言ってやろうクソガキ。お断りだ」

 

「そうですか。では無理矢理にでも頷いてもらうまでです」

 

アテナが手をパンと叩くと、はるか後方、右翼に展開していた王国軍を蹂躙していた巨大な化け物が2体、アテナの元へ近寄ってくる。

 

「へぇ…まさかとは思うが、あの魔法使ったのお前か?」

 

「さあ?どうでしょうね」

 

2体の巨大な黒い化け物はアテナの真後ろまで地響きを鳴らしながらきたと思うと、ピタと動きを止める。

 

「お嬢、手筈通りにいけ」

「本当に大丈夫なの?」

「さあな、何とかしてみるさ」

 

「こちらは2人がかりでも構いませんよ?」

 

「1人で十分だっつーのクソガキ」

 

「あのですね、いい加減、私はクソガキじゃ……ッ⁉︎」

 

瞬間、ヘラクレスはアテナやシグルドですら視認できない速度で跳躍し、いつの間にか装備していた背丈と同じくらいの斧剣を振り抜く。

 

目の前まで接近されようやく反応できたアテナは盾で防ぐも大きく吹き飛ばされてしまう。

 

「へぇ、あれガードするか。やるねぇ」

「貴様…!楽に死ねると思うなよ」

「そりゃこっちのセリフだ龍殺しの英雄。少しくらいは楽しませてくれよ?」

 

 

 

 

 

 

「〜〜……!ぶはぁ!」

 

危ない、本当に危なかった。

油断なんて微塵もしていなかった。

 

それでも気づいた時には目の前にいた。

なんとか攻撃を防げはしたけど、盾を装備していた左腕は骨折してしまって、軽く数百メートルは飛ばされてしまった。

 

「早く戻らないと…」

 

左腕を治癒し、シグルドの元へ向かう。

黒い仔山羊も一緒に攻撃をしているから、戦いが始まってるのは明白だ。

 

「……!」

 

ようやく見えた。

けれど、黒い仔山羊の攻撃をいなしながらシグルドを相手にしていたヘラクレスは、シグルドの攻撃すらも弾き、体勢を大きく崩していた。

 

「----!」

 

ありったけの物理防御のバフを掛けれるだけ掛け、強引に2人の間に入り込みヘラクレスの一撃を盾で受け止める。

 

「へぇ、やるじゃねぇかクソガキ」

「だぁっ!」

 

斧剣を弾き飛ばし、シールドバッシュを繰り出して距離を引き離す。

シグルドをちらっと横目で見ると、いくらかダメージを負っていた。

 

 

それを見て、頭の中がスッと、どこか冷静になれた。

 

 

「マスター、申し訳ありません。このような失態を…」

「大丈夫。私こそごめんね油断した。ここは…持てる全てを使おう」

 

シグルドの傷ついた姿を見て、頭がものすごく冷静になった気がする。

アイテムボックスから色々なバフアイテムを取り出し、使っていく。

 

その間は黒い仔山羊がヘラクレスに猛攻を仕掛け、少しでも時間を稼いでくれていた。

 

「クソッ、ダリィな…。……ん?おん、おん……」

「--フッ!」

 

一気に距離を縮め、槍を振り降ろす。が、斧剣で易々と受け止められる。それはいい。

 

「(『シールドアタック』『シールドスタン』『メガインパクト』。どうせだ。スキル発動『守護神の導き』)」

「お、お?なんだ、ヘイトタンクかお前。やるねぇ」

 

ぶくぶく茶釜さん直伝のヘイトコンボを叩き込み、守護神のクラススキルを発動させて更にヘイト値を高める。

ヘラクレスはシグルドや黒い仔山羊にも目を向けようとしていたが、頑なに私の方を見つめていたから効果はあるかな。

 

「シグルド、黒い仔山羊たち、好きなように暴れてください。私は貴方達の盾と成りましょう」

「(口調が変わった?雰囲気も…。……………。ああ、もしかするとコイツ……)」

 

もう一度接近し、更に猛攻を仕掛ける。ヘラクレスは全てを捌いて来ながら、黒い仔山羊の触手やシグルドの剣戟すら弾いてくる。

 

「(嘘でしょ、何なのこの人)」

「(流石にキチィな。適当に…)」

 

シグルドが短剣を飛ばし、黒い仔山羊は逃げ道を無くすように触手で攻撃を仕掛け、私は更にヘイトを高めるスキルを使って攻撃を仕掛ける。

 

「「⁉︎」」

 

だがその全ては空振りに終わった。目の前からヘラクレスは居なくなっていて、辺りを探すと地面に降り立っていた。

 

「残念だが時間切れだ。すまねぇな」

「このまま逃がすとでも?」

「できっこねえ癖に強がるなよ。じゃあなクソガキ。魔導王とやらに伝えといてくれ。『個人的な喧嘩なら喜んで買うぞ』ってな」

 

懐からアイテムを取り出した瞬間、私もシグルドも逃がすまいと攻撃を仕掛けたが間に合わず、その場からヘラクレスは消えてしまった。

 

「〜〜……っ!クソッ!しくじった!」

 

「マスター、申し訳ありません。当方がいながらこのような失態を…」

 

「いや私こそごめん。それと問題ないよ。今回は相手が悪かったし、何より私が足手纏いだったから」

 

「なっ!そのような事は……」

 

「その辺りの責任の所在は、今は考えなくていい。それよりも私はアインズさんの方に合流するから、シグルドはナザリックに戻ってデミウルゴス達に今回で得た情報を伝えておいて。黒い仔山羊達は…アインズさんの指示を待って」

 

「承知致しました」

『『----』』

 

「それじゃあ、みんな気をつけてね」

 

「マスターも、アインズ様がおられるので万が一は無いと思われますが、お気をつけください」

 

シグルドが転移したのを確認し、私もアインズさんの元へ飛んで行く。

ものの数分でアインズさんの元に到着でき、そこにいたのは--

 

「おや、貴方は確か……」

 

「ッ、やはり貴女もおられましたか」

 

そこにいたのは、嘗てカルネ村を救うべく奔走した王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ。

それに加えてもう2人の人間がいた。

 

「アテナさん、あちらはどうでしたか?」

「……失敗しました。ごめんなさい」

「大丈夫ですよ。無事なので何も問題はありません。…と、申し訳ないな、なんだったか」

 

どうやら何かを話していたらしく、アインズさんは戦士長に続きを促していた。

 

「アインズ・ウール・ゴウン魔導王!」

 

そうして剣をアインズさんに向け…

 

 

「汝に一騎討ちを申し込む!」

 

 

高らかに宣言した。




〜???〜

「どうなると思う?」
「魔導王がどのような存在かまだ不明瞭だが……国を滅ぼそうとしない限り、僕は手を出さないよ」
「そうか。…悪いが、私からは金輪際、奴らに関わる気はない」
「大丈夫だよ。ようやく見つけた居心地の良い場所から無理やり引き摺り出すなんて、そんな無粋なことはしない」
「ならいい。それと、戦って分かったが私1人じゃ手に負えん。喧嘩を売るならそれを踏まえてやることだ」
「忠告感謝するよ」






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