モンハンのキリンがウマ娘世界に転生したら   作:キサラギ職員

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ソウルどころか本物来ちゃってるけどままえやろ(ガバ三女神様)


幕間/猫の手も借りたい

 

 最近秋川やよい理事長の様子がおかしい。駿川たづな理事長秘書は思う。

 若くして理事長の座に収まった理事長は、善人である。自分を捨ててでもウマ娘のために行動する人格者であり、その思いやりの気持ちは、人間にも当て嵌められる。

 だがいくら人格者とて、彼女もウマもといヒトであるはずだ。仕事量には限界があるはずだが、最近、彼女に課せられた仕事の処理能力が飛躍的に向上しているのだ。

 

「業務命令ッ! たづな! 2時間ほど理事長室から出ていてはくれないか! 集中したいのだ!」

 

 と言ったかと思えばあっという間に仕事を終わらして生きがいとも言える学園の巡回にでかけるのだ。仕事をさぼっているわけでもなく、手を抜いているでもない。仕事がそのたづながいない間だけ妙に早いのだ。

 誰かを雇ったのだろうか。聞いても、

 

『否ッ! ええと、その、集中しているのだッ!』

 

 とはぐらかす。あとで書類やらを確認しても、正確に処理されている。さぼりでもなく誰かを雇ったのでもなく、しかし、集中しているからというには仕事量が多すぎる。学園を運営するための予算策定、施設の更新、人事、ときにはみずから面接に望む場合もある理事長の仕事量は膨大で、とてもたづな無しではたち行かないはずだが、なぜか数時間で済ましてしまう。

 

『テ、テレワークで助けてもらっているのだ!』

 

 などとは言うものの肝心の道具が見当たらないのも怪しい。

 ある日たづなはその秘密を暴こうと決心した。出ていってほしいと言われて外で雑務を一時間程こなして理事長室に戻ってくると、誰もいないことを確認し、帽子をずらし、耳を扉にピトりと当ててみた。

 

「感謝! 諸君らのお陰で事務仕事があっという間に終わるッ! 事務仕事以外に時間を割ける! 今日は新鮮な魚を用意したッ! あとで食べよう!」

「にゃ〜」

 

 「理事長、誰と話してるんでしょう……?」

 

 たづなはさらに耳に集中した。

 

「理事長さんは働きすぎなのにゃ。ボクたちに任せておくといいのにゃ」

「わーい! お魚大好きにゃ」

「ふとももだにゃ〜」

「それを言うなら太っ腹だにゃ」

 

 幼児だろうか。にゃんにゃんという猫みたいな鳴き声にまじって、舌足らずな会話が聞こえる。猫を連れ込んでいるのだろうか。一匹飼っているのに? しかし会話を聞いていると、まるで猫に仕事をやってもらっているような気がしてならない。猫の手も借りたいとでもいうのだろうか。

 たづなはいわゆるオカルトも信じるタチであった。ウマ娘がいるのだ、何がいてもおかしくないとは思う。

 これは業務命令とはいえ秘書として確認せねばなるまい。たづなは思い切ってノックをすると、返事を待たずに室内に入った。

 

「理事長! しつれいしま………????」

 

 たづなは宇宙の真理を垣間見た表情になってしまった。

 ある猫(?)はパソコンに齧りつく理事長の隣にもう一台パソコンを広げてキーを叩き、ある猫(??)は書類仕事をテキパキとこなし、ある猫(???)はお茶を運んでいる。

 否、猫なのだろうか。小学生くらいの身長に見えるし、第一直立しているし、そもそも猫は喋らないはずである。

 黒。白。グレーの猫三匹+頭の上に飼い猫を乗せた理事長が、パソコンのキーをかちかちと打っている。そして、扉が開いたのでびくっとして視線を向けてくる。

 

「た、たづな!? 迂闊ッ! 鍵をかけ忘れていたッ!」

「り、理事長………説明、して頂けますよね」

 

 たづなは、理事長のブレーキ役でもある。理事長は放っておくと土地を買い占めてそこに施設をバンバン建設し始めたりするくらいにはウマ娘愛が強いので、そういう時はブレーキを踏むわけだが。

 今回もなにやらべらぼうなことを始めたらしい。ため息を吐くと、後ろ手で鍵をかけたのであった。

 

 

 

 

「あいるー????」

「肯定ッ! なにやら気が付くとこの世界にやってきたらしく、ポケットマネーで養っていたのだが――――仕事をしたいとのことなので教えたらあら不思議! パソコンも普通に打てる。これは手伝ってもらうべきだと……」

「理事長!」

「めんぼくない………」

 

 しゅんとしょげる様はまるで子供だ。子供なのだが。

 

「一言相談していただければ、隠さないで済んだんですけどね」

「え? しかし喋る猫など………」

「ウマ娘がいるんですよ? 喋る猫くらい、私はいてもいいと思います。ロマンチックでいいじゃないですか」

「ボクは猫じゃないにゃ。アイルーだにゃ」

 

 アイルーがにゃあにゃあ言いつつ、口を挟む。

 

 ある日のことだ。理事長が巡回していると、草むらに何やら気配がある。覗き込んでみると、そこには猫ともヒトとも付かぬ謎の生物がいるではないか。しかも、ヒトの言葉を喋る上に、道具の扱いや加工もできるではないか。猫が好きな彼女である。こっそり連れ帰ると、家でこんなことを彼らは言い始めた。

 仕事がしたい。理事長には恩があるから、手伝いたい。

 そこで半信半疑で仕事を教えてみたところ――――。

 

 バッと『驚愕』と書かれた扇子を広げる理事長。にゃあと帽子の上に掴まっている猫が鳴いた。

 

「できてしまったのだ! エクセルもワードも教えたら使えるようになったのは驚いたぞ!」

「この猫ちゃんがですか……ごめんなさい、アイルーちゃんがですか」

「変な箱だったけど、そんなに難しくなかったにゃ。言葉も、ボクの故郷のとそっくりだったにゃ」

 

 ボス格らしい、一番体格のいい灰色のアイルーがにゃあにゃあと語ってくれる。アイルーはとても器用な生き物だ。なんなら不器用な人間よりも、はるかに手先が器用である。

 たづなは三匹を見て表情を緩めつつ、困ったように頬に手を置いた。

 

「でも困りましたね。表に出したら大騒ぎになっちゃいますし………」

「この世界のアイルーは喋らないみたいだにゃ。こうすればいいかにゃ」

 

 ボスが普通の猫のように四つん這いになる。猫にしては大きすぎるが、ロシアあたりのヤマネコなんだよと主張すればいけそうな気がする。

 

「懇願ッ! たづなよ、頼む! この子たちを捨てろなどとは言わんでくれ!」

「理事長、大丈夫ですよ。私はあなたの秘書なんですから、秘密は守ります。でも、ちゃんと世話はしてあげてくださいね」

 

 たづなはウィンクをすると、唇の前に人差し指を置いてみせたのだった。

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