モンハンのキリンがウマ娘世界に転生したら   作:キサラギ職員

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悪天候 (出場するだけで天候が悪化する)
肉質(硬) 体が硬い


10、銀色の矜持

 

 

 練習中のことである。

 前屈をするわしにターボが伸し掛かって来ていた。

 

「あいだだだだだだだ!!」

「痛がってるよトレーナー」

「ターボ。やれ」

「はーい! えーい!」

「この! 手加減をあだだだだだ!」

 

 何をしているのかって? 柔軟体操である。

 はっきり言おう。わしは体が硬いのだ。柔軟体操は嫌いである。おなごは体が柔らかいというが、そんなことはなく、前屈が苦行に等しいほどだ。座り前屈に至ってはターボが『お人形さんみたいだー!』と直球の罵声(?)を浴びせかけてくるほどである。曲がらんのだもん。

 一方ターボはごく普通に曲がるし、ケルビに至っては足を開脚して胸を地面にくっつけ始める始末である。わしは……足は九十度が限界である。

 ということもあってストレッチを念入りにしているわけだが、ターボが全体重をかけて伸し掛かってくるので痛いのなんの。

 

「………もしかしてキリン時代の体が“硬かった”のを引きずっているのか……? この硬さでストライド走法だったんだろ? よく関節がイカれなかったな」

「体だけは頑丈なのでな。も、もうこの辺で勘弁してもらえべべべべ!?」

 

 わしの体は硬かった。生半可な刃で挑んで来ようものなら、その武器を刃こぼれさせるほどの毛皮の硬さを誇った。まあ目の前の男の場合腕力で無理矢理毛皮に傷をつけてこよったのだがな。恐ろしい。

 でも人間の体になったのであればここはカチカチの皮膚というわけにはいかんかったのか? 人間の皮膚は柔らかい。なまくらの包丁ですら出血するくらいだ。せっかくなので包丁を刃こぼれさせる皮膚が欲しかった。この、カチカチ関節ではなくて!

 

「今更走り方を変えるわけにはいかんのだ! 無理じゃあ!」

「よし、ケルビも乗れ」

「えええ!? 痛がってますけどぉ、えへ、じゃ、遠慮せずぅ……」

「遠慮せぇ! うがー!?」

 

 

 芝2500m。すていやーの才能があるわしにとって不足のない戦場である。とある地方にやってきていたわしは、OP級? というレースに出場することになった。まだ一勝しかしていないので、まずは低い階級で実績を積む必要があるらしい。

 角の生えたウマ娘(ウマじゃないのだが)は珍しく、わしが出場するとどっと会場が沸くのが聞こえてくる。

 一緒に入るウマ娘もわしのことを見つめてきているのが見える。ええい、そんなに珍しいか!? たかが角であろう。

 わしは空を見上げた。あんなに晴れていたのに、今にも泣きだしそうだ。練習で走ろうとするといつもこれである。曇り女か、わしは。

 

「使うなよ。前振りじゃないぞ」

「安心せえ、使わんよ。親に貰った足だけで走り抜けてくれよう」

 

 ゲートまでははんたーが同伴である。いいところを見せなくては。

 

「お前を信じる。信じた姿を裏切らないでくれ」

「任せよ。わしに追いつけるものなどいない」

 

 わしは映画でみたさむずあっぷをしてみせる。はんたーは頷くと、観客席に戻って行った。

 ゲートイン。

 

 スタート。

 

 がしゃんと開くと同時にわしは駆けだした。芝に足が沈み込むのがわかる。関節が硬いのがなんだ。一足で先頭まで持って行ってくれるわ!

 

『さあ始まりました。やはり注目は一番人気のウマ娘、キリンでしょう。各バ一斉にスタート。いきなりキリンが抜け出した。彼女はステイヤー、逃げだそうですが、速い! この調子が続けばいいのですが』

 

 解説がわんわんと何か言っておるが、あまり頭に入ってこない。

 追いつけるものなら、追いついてみせよ。

 わしはレイヨウみたいなと言われた大股の走法で駆け抜けていく。背後に一人ついているのがわかる。わしを風よけに使おうという魂胆、ならば………。

 ターボ風に言うならば、ギアを上げる!

 

「我が、銀色の矜持を見るがよい!」

「はっや………!? むーりー!!」

 

 半分来た。つまり、えーっと………せん……にひゃく……いいのだ、大体でこんなものは!

 まだ、まだ全速を出すにはちと遠い。

 ちらりと後ろを見ると、何バ身か離れた位置で必死の形相でくらいついてくるウマ娘が見えた。この娘さえ突き放せば、あとは独走である。

 四分の一を過ぎた。ここじゃ!

 

「うおおおおおっ! 追いつけるかぁぁぁ!」

 

 溜めていた体力を解放する。これが正真正銘の今出せる全力疾走である。

 

「もっと、もっと大きく! もっと! 飛ぶように!」

 

 足の回転数を上げると同時に、さらに歩幅を大きくする。空でも飛ぶように。

 

『速い! 一番人気は伊達ではないっ! 一番人気のキリン、二番手を突き放してゴール!』

 

 ゴールイン。わしは観客席、おもにはんたーに向かって大きく手を振りながら、くーるだうんとして、しばらく走っていたのであった。

 

 

「帰っちゃだめか?」

「ああ」

 

 そして、地方でしかも小さい会場ながらウイニングライブがあるらしい。

 まだ練習途中なので帰りたかったが、生徒会長曰く『ウイニングライブをおろそかにしてはならない』とのことなので、やらずにハイ帰りますは許されない。

 良いだろうやってやろう。わしはへその出した衣装に着替えると、踊った。

 しかし、うまぴょいってなんなのじゃ?

 

『硬いダンス』とか翌日の新聞に書かれたわけだがな! うるさい! うるさい! じゃあお前が踊って見せろ!

『歌は見事なものであったというコメントが』などとも書かれた。歌はいいんじゃ、歌は………練習するまでもないわ。

 

 

 

 

 

 

「ふふふっ………あーいいよいいよ……いい電磁波だよ………」

 

 踊っている最中謎の悪寒を覚えたわけだが、あれはなんだったのやら。

 

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