歌と踊りって実はヒトの一番古いコミュニケーション手段なんですよね
曰く、言語よりも古いとか
キリンさんは、狩りの成功や葬儀などの儀式で歌われるそれを聞いていたようです
「くっどうして………」
わしは挫折していた。ここまでの屈辱を与えられるなど、前世でもなかったのだ……。
「すごく、その………個性的な………ひいいいいいいすいませんすいません!」
「へただったね!」
「ターボ! 直球過ぎるからやめてあげろ」
ついんどらいぶの情け容赦ないツッコミが胸に突き刺さる。お前遠慮というものは知らんのか! はんたーですら遠慮したというのに!
そう、メイクデビューを無事(?)勝利で飾ったわしだが、そのあとに待ち受けるウイニングライブでは求められるダンスができずずれまくったのだ。なぜかって、ダンスの練習をほとんどしてこなかったからだ。
はんたーが、頭を掻きつつ謝罪してくる。
「すまなかった。俺の責任でもある。あんなに歌がうまいから、てっきり踊れるものだと……」
わしは、実は歌に関しては前世の時点で知っていた。弱き、短き生のヒトたちは、勝利に、敗北に、生命に、死に、大地に、空に、歌を紡いでいたのだ。それをわしは聞いていた。もっとも詳しい言葉まではわからんかったが、意味合いはなんとなくわかっていた。
喰うものと喰われるもの。
生命は循環し、すべてのものに意味があって、意味などないのだと、そう歌っていたように思える。
同時に踊りもしていたとは思うのだが、わしは基本的に人に姿を見せぬものなのだ。草むらから、岩陰から、歌を聞いていたにすぎない。今思えばよく見ておけばよかった。焚火を囲んで、踊っていたような気配はたしかにあったのだ。
歌の起源は願いや祈りから、踊りの起源はコミュニケーションから。思えば遠いところに来てしまったが、違う世界まで来て、ヒトになり、ある意味でヒトの原始的な表現方法をやっているのだから運命的なものを感じる。
と感傷に浸るのはどうでもいいのだ。歌は好きでからおけにもよく行くのだが、肝心の踊りはお察しなのだ、わしは。
わしは二人に食って掛かった。
「ええい、ではケルビとツインコアはどうなのだ!」
「ターボ! 前しか合ってないじゃん!」
「ええっ!? わた、わたしぃですかぁ!? う、歌は苦手なんですけどぉ、踊りなら、えへ、えへへへへへ、ひひひっ」
あっ、これはわしだけ踊れないパターンじゃな?
わしは試しに、二人に踊らせてみた。
「~~~~♪」
かわいらしいステップを踏みつつ踊るケルビ。動きに若干の迷いは見えるものの、なるほど様になっている。
一方ターボ。いきなりとんでもない動きをし始める。そう、これは……。
倒れ込んだかと思えば、くるくると体を回転させる動き。手だけで上体を回転させ、足をばたつかせるダイナミックな踊り。
「ぶ、ぶれいくだんす!? ターボにこんな特技があったとは!?」
この曲がいいとか言ってノリノリなゆーろびーと?を流し始めたかと思うと、ノリノリでブレイクダンスを決め始めたではないか。本人がこんな勝負服を発注したいんだと見せてくれた落書きに『車っぽいの!』『レーサー!』って書いてあったのを見たことがあったので、車が好きで音楽もそうなんだろうというのはわかっていたが……しかしこんな高度なテクを持つとは。
わしは悔しくなってターボの前で腕を組んだ。
「くっ、普通のはどうなのだっ!」
「ターボできるもん! 見てて!」
と、ケルビと比べてキレキレのダンスを披露してくれる。こんなところでこのちんちくりんに差を付けられるとは!?
ま、まぁ! 肝心の歌はちょっとアレだったが! なんだ、わしのことをそんな目で見るでない。踊りがアレなだけで歌はピカイチだぞ! ………たぶん。
「はんたー」
「ああ」
「まず勝たないといけないことは承知しているがライブが無惨に終わるのはちと………練習させてはもらえんか」
「いいぞ」
こうしてわしのダンス特訓が始まったのだが。
「わんつーわんつー」
「うぐぐぐ」
「キリン! ターボの動きよーく見ててね!」
「おぐぐ」
「俺の動きに合わせろとは言わん。それっぽく動いてみるんだ」
「…………」
ちーん。
だめだったよ………どうせ、どうせわしに踊りなんて無理なのだ……。
というかはんたーよ、はんたーも踊れるのか。さすがはトレーナーである。歌も踊りもできないと指導などできんわけで。練習したのか元々踊れたのかは知らんが、わしのコレと比べて圧倒的な力量を感じる。振付自体は女性の動きだが、こう、せくしーさを感じるのだ。
「くそう……」
とわしが隅っこでいじけていると、底抜けに明るい笑顔でついんどらいぶがわしの隣にやってきて肩を叩いてきた。
「大丈夫だよ! ターボだって最初はうまくできなかったもん! 練習すればできるようになるもん! 一緒にやろ!」
「ツインターボ………」
いいやつだなぁ………ただの単純かと思っていたが、単純というより純粋らしい。いじけているわしがバカのようではないか。腐ってる場合ではない。
わしは立ち上がると、ターボの手を握った。うまくなってやろうと決心したのだった。
「これは忙しくなるな……」
とはんたーが言っているのが聞こえた。上等よ。やってやろうではないか。