突然ですが、お空の変態堕天司と一緒に呪いが蔓延る世界で目を覚ましました。 作:時長凜祢@二次創作主力垢
「こんなもんかな。」
「……わ〜お………。」
歯磨きを終わらせ、デート用の服装を着るために戻った自室。そこで行われたのは、ベリアルによる全身コーディネートとヘアアレンジ&メイクだった。
彼が私にと選んだ服は、ベージュのプリーツスカートとベージュのニット、ブラウンのバッグの3種アイテム。
肩辺りまである私の髪は、軽くふわりと巻かれており、化粧はそこまで派手でもないナチュラル寄りのものを施してきた。
あ、でもマスカラでちょっとまつ毛を長くしてるかな。口紅は複数あったんだけど、私の肌の色から濃い赤は似合わないとのことでベビーピンクのものをつけられた。
一応、18歳だったからそれなりに化粧とかはしていたけど、こんなにもしっくりくるメイクを施したことはなかった気がするから、ベリアルってすごいな。
なんで化粧に詳しかったのかは知らないけど。
で、お出かけ相手のベリアルは、チャコールグレーのカーディガンと白のシャツ、カーディガンと同色のパンツを履いており、普段上げている髪はワックスで固めることなく降ろしている。
髪上げてる奴が髪を下げてるのがあまりにも珍しくて、ポカンとしてしまったのは仕方ないと思いたい。
ま、そのあと「オレに見惚れちゃったかい?セイカ。」とか低めの色気を含む声音で話しかけられて顎クイされた時は「ひょえ……!?顔が近い!!」ってアッパーカットしちゃったけど、ヘラヘラ笑われただけで大したダメージが入らなかった。
むしろ自分の方がダメージを受けた。え?顎ってこんなに痛いの?それとも私の当て方がダメだったのか?
つか、ベリアルなら躱せるはずなのに食うって絶対わざとだろ。
「マジでメイクも服もバッチリ決めてきたよこの堕天司。」
「他人の服装とかメイクに関しては……まあ、あまり気にしてなかったし、正直言ってどうでもイイんだが、どうせ出かけるなら、キミだってオシャレしたいだろうし、個人的に似合いそうだと思ったのをチョイスしといたよ。ほら、審美眼にはそれなりに自信があるからさ。で、オレの服装だが、あっちで着ていた服はこっちにはなく、何の面白みもない衣服ばかりしかない場所だから、合いそうなモノを見繕ったよ。あのファーさんが作ってくれた完璧な顔とボディーだから、どんな格好でも他人を魅了する自信はあるけどね。ナンパや逆ナンよりめんどくさいモノに絡まれたくはないからさ。」
どうやら、めんどくさいことになるのを防止するために今の格好をしているようだ。
素肌にドレスシャツを着て、紫の羽ファーを一つのアクセントに使い、黒のパンツを履いているというかなり個性的で、だけどバッチリ決まっていたイケメンがまともな服のせいでさらにイケメンに見えて困りものである。
「なかなか似合ってるだろう?オレも、キミもさ。」
「……まあ、うん。確かに。」
本当によく似合ってるよなお互いにと思いながら、ベリアルの質問に同意すれば、当然だな、と小さな呟きが返ってきた。
「あとは、キミの格好に黄色いパンプスを合わせれば完成だ。歯磨きを終えたついでに玄関を軽く覗いた甲斐があったよ。」
「ちょっと待っててって言ったのそのためだったんかい。」
「当たり前じゃないか。コーディネートを任された以上、全体的に合ったものを選ばないとね。」
そうすれば変な目で見られることはまずない、と口にするベリアルに、それは言えていると頷く。
そして、改めて鏡に目を向けた私は、朝に見た体のイベントはまた違う異変に気づく。
それは、髪の色が黒で、瞳の色が赤になっていると言うことだ。
「よく見ると、私の目の色、赤になってんじゃん。体の紋様に気を取られて気づかなかったな。ていうか、色の濃さが明らかにベリアルと全く同じものなんだけど?」
「今更気がついたのか?抜けてるねぇ。」
「やかましい。」
「で、どうだ?オレとお揃いになった気分は。」
「……まあ、別に悪くないんじゃない?今まで黒黒だったから、慣れるまで時間がかかりそうだけど。」
お揃いのカラーリングになったことな対する素直な感想を口にすれば、ベリアルは小さく笑い声を漏らす。
「似合ってるぜ、その色。」
「どうも……。」
自分自身じゃ似合ってるか似合ってないかなんてわからない。ベリアルの似合ってる……って言葉も、多分お世辞なんだろう。
でも、一応は褒めてくれるので、短く感謝の言葉を述べる。
私の言葉を聞いたベリアルは、小さく笑みを浮かべたあと、よし、と小さく口にして、私の方に手を差し出してきた。
「それじゃあ行こうか。誘った以上は、ちゃんとエスコートしてあげるよ。満足できるデートにしてあげるから、楽しみにしておくといい。」
「ふぅん……。まあ、楽しみにしておく。」
楽しみにしておけと言う言葉に頷きながら、差し出されている大きな手に自身の手を重ねれば、優しく手を握り締められ、グイッと手を引っ張られる。
その勢いのまま立ち上がるが、少々ベリアルの力が強かったようで、そのまま彼の体に衝突してしまった。
「イテッ」
「おっと。ちょっと力加減間違ったかな?随分と軽いねぇ、セイカ。」
「平均はあると思うんだけどな……」
少しだけ拗ねながら、ベリアルの服に視線を落とす。大丈夫?化粧で汚しちゃったりしてないよね?
……うん、問題はなさそうだ。
そんなことを思いながら、ベリアルに目を向けてみれば、笑みを浮かべたまま首を傾げた。うわイケメン。
「さて、準備もできたし、外に行こうか。」
「うん。」
ベリアルの見た目の良さを改めて認識していると、外に行こうと告げられる。
すぐに同意する言葉を紡ぎ、ベリアルと一緒に自室の外に出る。
流れのままに下へと降りれば、母さんが顔をひょっこりと出しては、私とベリアルの姿に「まあ……!」と声を漏らした。
「あらあらあらあら。2人とも良く似合ってるわ!織部君、ヘアメイクさんになれるんじゃない?」
「はは。アリガトウ。そうだねぇ……そっちの道に入ることも考えてみようか。」
「絶対いけるわよ!あ、もし、そう言った資格を取りたい時は言ってちょうだいね?私も宗吾さんも全力で応援するわ!」
「それは助かるね。その気になった時に知らせるよ。」
先程まで浮かべていた色気ある余裕な笑みから一転、どこか穏やかな好青年のような笑みを浮かべながら、母さんに言葉を返す。
あまりにも彼のイメージからかけ離れた表情に、軽く引いてしまう。だってどう考えてもベリアルがするような表情じゃない。
なんなんだこの爽やか好青年ムーブ。アンタ、そんな顔をするような輩じゃないでしょーが……。
内心でマジかよと吐き捨てながら、しかし、表情は変えることなく、ベリアルに目を向ける。
織部明彦って、こんな爽やか青年な訳?なんか違うような気がするんだけど。
「それじゃあ行こうか、セイカちゃん。」
「そうだね。」
そんなことを思っていると、ベリアルが出かけることを促してきた。すぐに同意する言葉を紡げば、そっと肩に手を回される。
背後から「若いって良いわねぇ」とか言う母さんの声が聞こえてきたけど、とりあえずスルーで。
そう言えば、母さんの年齢っていくつなんだ……?兄さんを産んだのが20代前半くらいなら、20年たった今だと40代かな?
まあ、今はそんなのどうでもいいか。
玄関にたどり着けば、黄色のパンプスと、チャコールグレーのシューズが準備されている。
おそらく、玄関に靴を見に行った際、ベリアルが先に準備していたのだろう。
出されているパンプスを履き、玄関にある姿見に全身を移してみる。
綺麗にまとまっている服装とメイクのせいか、どことなく大人びた雰囲気を感じた。
「行ってきます。」
「行ってくるよ。ちゃんと茜瑠さんの娘さんは大切にエスコートさせてもらうから安心して欲しい。」
「は〜い、行ってらっしゃい。」
笑顔で私とベリアルを見送る母さんの声を聞きながら、玄関の外に出る。
広がる景色は見慣れているようで見慣れない景色。同じ東京であっても、どこか違う場所。
心なしか、空気も少し違う気がする。なんだろう……澱んだ空気が混ざっているような……?
「全くと言ってイイ程に四大元素もエーテルもないな。」
「そりゃ別の世界ですから。」
「これが別の世界ねぇ……。まあ、退屈しないで済むなら構わないけどね。」
外に出た瞬間、四大元素もエーテルもないと言ってきたベリアルに対して当たり前だろと返す。
この世界には呪力や呪霊と呼ばれるモノが存在しており、魔法や魔術ではなく呪術が主力となっている。
だから、魔物とか魔術が存在している空の世界と同じであるはずがない。
「おい。」
内心でそんな風に呆れていると、私達を呼び止める声が聞こえてきた。
すぐに振り返ってみれば、そこには私の兄がいて、母さんの前で見せていた以上の鋭い視線をベリアルに向けていた。
星歌
ベリアルの手によりヘアアレンジ、メイク、コーディネートを施された転生者。なんでこんなにしっくりくるものを選べるんだこいつと疑問を浮かべていた。
メイク中、じっくりと自分の顔を眺めていた結果、自身の瞳の色の変化に気づいた。
ベリアル
星歌にヘアアレンジ、メイク、コーディネートを施した空の世界の堕天司。審美眼は確かなので、星歌によく似合うものを完璧に選んで見せた。
ようやく体以外の変化に気づいた星歌に対して軽く笑っていたが、似合ってると言う言葉は珍しく本物である。
茜瑠(40歳)
星歌とベリアルがデートに行くのを内心キャーキャー騒ぎながら見送っていた人。
あの2人、お似合いだと思ったのよ!
京助
デートに出かけようとしていた星歌とベリアルを呼び止めたのは、邪魔をするためというよりは、あることを聞き出すためである。