呪いのベルトでやれるわけねぇだろ!   作:かかむりょう

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一年以上経って久々の投稿です。

しばらく見ない間にとんでもないぐらいお気に入りの件数が増えており、非常に驚いています。こんなに本作を読んでくださっている皆様には感謝しかありません。たくさんの感想も頂き、そのすべてを読ませていただいています!本当にありがとうございます!

しかも驚くべきことに、今はサービス終了したシンフォギアのゲームでまさかの555コラボがあったという……。コラボの情報が出た時は本当にびっくりしました。

前書きが長くなったところで、雅人が命を懸けて変身したカイザの戦いをご覧ください!


戦いは死と恐怖と隣り合わせである

(もう、だめだ……)

 

 響は少女の手を掴みながら、少しでもノイズから距離を取ろうとする。それが何の意味もなさないことだとしても、もう響に残された足搔きはそれしかなかった。

 

「くっ、せめてこの子たち……だけでもっ……!」

 

 全裸の奏を抱えた翼もまた、一糸まとわぬ姿で満身創痍になりながらも再びシンフォギアを纏おうと試みる。しかし今の翼にシンフォギアを纏うだけの体力は残されておらず、力なく膝から崩れ落ちてしまう。

 

 そしてしばらく響たちを舌なめずりするように見ていたノイズは、戦う力を失った翼たちを見て好機と捉えたのか、勢いよく飛び上がって響たちに襲いかかる。

 

(……雅人さん、無事に逃げ切れたかな)

 

 襲いかかってくるノイズを前に響が最後に思い出したのは、家族の姿や親友の未来の姿。そして、さっきまで響の傍にいた雅人の姿だった。

 

(短い日々だったけど、楽しかったな)

 

 雅人と初めて出会った時のこと。雅人が持っていた珍しい携帯を見て驚いたこと。雅人と一緒に新しいスマホを買って、一緒に写真を撮った日のこと。

 

 自らがノイズによって炭素の塊になるまでのほんの数秒間で、雅人との色々な思い出が響の脳裏に流れていく。その思い出は響にとって、決して忘れられない大切なもの。

 

(もっと一緒に、雅人さんと過ごしたかったなぁ……)

 

「おねぇちゃん」

 

 気が付けば、響の手を握る少女の手の力は強くなっていた。まるで一人じゃないよと伝えるかのように。

 

「……ごめんね、こんな情けないお姉ちゃんで。君のこと、助けたかったのに……ごめんね……」

「……大丈夫だよ。おねぇちゃんは最後まで私の手を握ってくれた。だからもう怖くないよ」

 

 少女は涙を流しながらも響に笑顔を向ける。響もまた、泣きながら少しだけ笑顔を見せた。そこへ響たちを諸共に炭素に変えるべく、ノイズが迫りくる。

 

 響は死の恐怖を少しでも和らげようと、ゆっくりとその目を閉じる。そうして響は自らの運命を受け入れようとした──その時だった。

 

「おおおおぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 突如現れた何者かの拳によって、響たちの目の前にいたノイズが跡形もなく消し飛ぶ。さらに流れるようにその人物は十字の銃のような武器を構えて、次々と響の近くにいたノイズを撃ち抜いていった。

 

「……えっ?」

「下がっていろ!」

 

 響はいきなり目の前に現れた謎の仮面の戦士に目をパチクリさせていたが、その戦士から聞こえてきた声でとっさに我に返ると少女の手を掴んでその場から数歩後ずさる。

 

 仮面の戦士…………仮面ライダーカイザは一通り近くにいたノイズを片付けると、急いで響たちのもとに駆け寄る。

 

「怪我はないか?」

「は、はい……大丈夫です」

「おかげで助かったわ……。でも、貴方は一体誰なの……?」

 

 翼は助けてもらったお礼を言いつつも、目の前の仮面の戦士に疑問を投げかける。しかしカイザは特に語ることもなく、翼たちに怪我がないことを確認すると背を向けてノイズの方に向き直る。

 

「まだ動けるか?」

「え?」

「まだ動けるかって聞いてる。今の襲撃でノイズたちも少しばかり混乱してるみたいだ。今なら手薄になった出口から、会場を脱出できるかもしれない。脱出までの露払いは俺がしてやるから、何とか走り切ってくれ」

「で、でもそれじゃあなたが……」

「俺はいいから、自分たちが助かることだけを考えるんだ! この機を逃せば、今度こそ奴らに殺される!死にたくなかったら全力で走れ!いいな!」

 

 カイザは半ば怒鳴りつけるように響たちに言い放つ。カイザの言葉通り、ノイズたちは突然襲いかかってきたカイザによって混乱状態に陥っていた。そして近くの出口を塞いでいたノイズが消滅したことによって、幸運にも退路が確保されたのである。

 

 カイザが来たことによって活路が見えたことに喜びの表情を浮かべる響たち。しかし響にはどうしてもこの仮面の戦士に聞かなければならないことがあった。

 

「あ、あの! 雅人さんは無事ですか!? ちょうど背が高めの男の人で、私と一緒にこのライブ会場に来た人なんですけど……」

 

 そう、一緒にライブ会場に来ていた雅人の安否である。響が最後に雅人の姿を見たのはノイズから逃げる人々の波にのまれる所までだった。もしかしたら逃げ遅れたり、最悪死んでしまっているかもしれない。

 

 恐る恐るカイザに問いかける響。カイザは一瞬息を飲むが、すぐに何ともないように仮面の下の口を開く。

 

「……そいつは俺がここに来る前、会場の外で会った。会場の中にまだ人がいる、助けてやってくれと言っていたぞ。それから先のことはわからない。怪我をしているようにも見えたから、もしかしたら……」

「そんな……」

「でも心配しなくていい。もうじき自衛隊や救急車も来るだろう。もしかしたら生きている可能性だってあるかもしれないんだ。だから再会したいなら、何としてでもここから生きて帰れ」

「……はい!」

 

 カイザの言葉を聞いて一瞬絶望しかけた響だったが、会場の外に逃げることができたことを知って表情を明るくした。ここから生きて帰れれば、また雅人に会える。

 

(そのためにもまずは私が生き残らないと! もう一度、あの人に会うために!)

 

 僅かな希望を信じて、最後の力を振り絞って立ち上がる響。

 

「よし、いくぞみんな!」

 

 そしてカイザの掛け声とともに、一斉に走り出す。出口までの距離はそう遠くない。まっすぐ走り抜ければすぐにたどり着ける。

 

 しかし案の定、多くのノイズが響たちの行く手を阻むべく立ちはだかる。丸腰の響たちではどうしようもない。それでも響たちは決して立ち止まることはなく、むしろ全速力でノイズへと向かっていった。

 

「いいぞみんな! そのまままっすぐ進め!」

 

 何故なら今の響たちにはカイザがいる。仮面を被って素顔こそ見えないものの、その仮面の下から発せられているであろう言葉で自分たちを励まし、その手に持った武器や拳でノイズから全力で守ってくれる仮面の戦士が。

 

 そして懸命に走り続けた結果、遂に響たちはライブ会場の出口へとたどり着いた。

 

「はぁ、はぁ……や、やった!」

「おねぇちゃん! 私たち、生きて帰れるのっ!?」

「うんっ! そうだよ! 私たち、生きて家に帰れるんだよっ!」

 

 あの絶望のノイズの群れの中から脱出し、死の結末を乗り越えた響たちは涙を流して喜んだ。しかしまだ完全に危機を脱したわけではない。会場内にはまだ無数のノイズが蔓延っている。このまま突っ立っていればまた窮地へ逆戻りだ。

 

 するとカイザは出口の扉を開け、響たちを急いで外へ出す。しかしカイザだけは外へは出ず、後ろを振り返ってノイズたちに向き直った。

 

「え? な、なにしてるんですか?」

「ここは俺が食い止める。お前たちは早くここから逃げろ。時間は俺が稼いでやる」

「そんなの駄目です! あなたも一緒にっ!」

 

 自分がここで食い止めると言って残ろうとするカイザに思わず反論してしまう響。響からすれば絶体絶命の状況から自分たちを助けてくれた存在なのに、そのうえさらに自分たちを逃がすために犠牲になろうとするのは到底耐えられるものではなかったのだ。

 

 しかしカイザは響の方に振り向くと、不安にさせないように明るい口調で話しかける。

 

「大丈夫だ。ここで死ぬつもりなんてない。少しだけ時間を稼いだら、後は自衛隊の人達に任せてとっとと逃げる」

「で、でも……!」

「……行きましょう。ここに残っていても、私たちにできることは何もないわ」

 

 尚も迷っている響に、隣にいた翼が声を掛ける。翼もまた、内心ではカイザをここに一人置いていくことに後ろめたさを感じていた。もし自分に戦う力が残っていれば彼と共にノイズと戦えるのに……と。

 

「貴方、名前は?」

 

 翼に名前を聞かれたカイザは少し考えるそぶりを見せるも、すぐに決心したかのように自身の名を告げた。

 

「…………カイザだ」

「……カイザ、少しだけ時間稼ぎをお願い。態勢を立て直したらすぐに援護に向かうから」

「それはありがたい。できるだけ早めに頼むよ」

 

 カイザはそう言って扉を閉めようとする。

 

「カイザさんっ!」

 

 扉が完全に閉まる直前、響が口を開いて叫んだ。それを見たカイザは一瞬躊躇するかのように動きを止める。しかしすぐに気を取り直して扉を閉め、直後にカイザは仮面の下で静かに呟いた。

 

「……………………さようなら、響」

 

 どこか震える口調で呟かれたその言葉は、響の耳に届くことはなかった。

 

 

 

 ~~~~~~~

 

 

 

 響たちを会場の外へ出したところで、俺は後ろを振り返る。そして俺は目の前のノイズを睨みながら、仮面の下で笑みを浮かべる。

 

「…………ははっ」

 

 何が死ぬつもりはないだ。何が生きている可能性があるだ。

 

 もう俺は響には会えない。二度とその笑顔を見ることは叶わない。そしてこの戦いを乗り越えた先の未来を生きていくこともない。何故なら俺はカイザという名の呪いの仮面を被るという、絶対に引き返すことができない選択をしてしまったのだから。

 

「…………いっちょやるか」

 

 だけどその選択に後悔はない。俺はもうすでに死ぬ覚悟はできていた。会場に乗りこむ前はあんなに恐怖におびえていたのに、変身した今となっては嘘みたいに恐怖心が消え去っている。

 

 代わりに今の俺を支配しているのは、どうしようもないほどの闘争心だ。まるでデルタギアに備わっている『デモンズ・スレート』の効果でもあるんじゃないかってぐらい、今の俺は戦いたくてうずうずしている。

 

 それはきっと、本心からくる戦闘欲ではないんだろう。多分今の俺の状態は、死に対する恐怖心を別の何かに置き換えて誤魔化しているに過ぎない。それでも今は、その偽物の闘争心のおかげで立っていられる。

 

『Ready』

 

「おおおおおぉぉぉぉ!」

 

 俺はカイザブレイガンにミッションメモリーを挿入し、ブレードモードでノイズに斬りかかる。ブレードの出力は最初からアルティメットにしてあり、斬撃範囲はかなり広い。おかげでノイズがバッサバッサと斬れていく。ヤバい、ちょっと楽しいかも。

 

 とはいえ、今の俺はどれだけ持つかわからない。何せ今俺が変身しているのはあの仮面ライダーカイザなのだ。突然俺の体が持たなくなっていきなり変身解除されるなんてことも十分あり得る。だからこそ、あまり時間をかけることはできない。不測の事態で戦えなくなる前に決着をつけなければ。

 

(短期決戦でいくなら、出し惜しみは無しだよな!)

 

 俺はカイザブレイガンでノイズを倒しながら、もう片方の手でカイザフォンを操作する。

 

『Side Basshar.Come closer』

 

 カイザフォンに『9821』のテンキーが入力されると同時に、サイドバッシャーが会場の壁を破壊して突入してきた。豪快に突っ込んできた俺の相棒が近くまでやってくるのを確認すると、俺はさらにカイザフォンの『9826』のテンキーを入力してエンターキーを押す。

 

『Side Basshar.Battle mode』

 

 次の瞬間、コードが入力されたサイドバッシャーが変形して二足歩行戦車型のバトルモードへと変化した。バイクモード時に本体だった部分はそのまま胴体となり、横に取り付けられているサイドカーが脚部となっている。それぞれ両側に武装が存在し、左腕にはサイドバッシャーの主力兵装である6連装ミサイルランチャー『エグザップバスター』が、右腕には二対四門のガトリング砲『フォトンバルカン』に加え、ソルメタルと呼ばれる超金属で出来た近接用の四本爪『グランドマニピュレーター』が備わっている。総じて遠近両用の機能が備わった戦闘用兵器に相応しい性能である相棒に、俺はジャンプで飛び乗る。

 

「さぁ相棒、お前の力を見せてくれ!」

 

 俺の声に呼応するかのように、サイドバッシャーはエンジンを拭かせてノイズたちへと向かっていく。ノイズたちは群れを成して一斉に襲いかかってくるが、そんなものではサイドバッシャーは止められない。

 

「挨拶代わりだ! エグザップバスター、斉射!」

 

 サイドバッシャーのコントロールバーを操作すると、左腕に備わった六門の砲口からミサイルが一斉に発射される。放たれたミサイルは空中で無数に分散してノイズたちに襲いかかり、あっという間にノイズの群れを跡形もなく殲滅してしまった。

 

 圧倒的な火力に驚く俺だったが、そこへさっきのノイズよりもサイズが大きめの個体が複数やってきた。俺は慌てずに右腕のフォトンバルカンを撃ちまくって奴らの足を止めると、その隙に一気に距離を詰めてグランドマニピュレーターで粉砕する。

 

(すげぇ! ノイズがまるでゴミみたいに消えていく! これなら負ける気がしない!)

 

 内心でウキウキしながらサイドバッシャーを走らせる俺。ミサイルの嵐やフォトンブラッドの光弾を撃ちまくっていると、いつの間にか会場内にいたノイズはほとんど殲滅できていた。このままいけば、あの青髪の女の人がやってくる前に終わらせることができるかもしれない。

 

「……って思ってたけど、なんだかヤバそうな奴がいるな」

 

 しかし俺の目の前に、これまでとは比較にならないほどの巨大なノイズが姿を現す。その巨大ノイズはもはや巨人だろと突っ込みたくなるほどデカく、明らかにこの会場内にいたどのノイズよりも危険な雰囲気を出している。どうやら奴が、ライブ会場を襲ったノイズたちの親玉らしい。体の色が紫色であることも相まって、気持ち悪さも段違いだ。

 

「おいデカブツ。お前の可愛い子分はもう全部始末したぞ。お前が最後の一体だ」

「…………」

「お仲間がやられてご立腹か? けどそれはこっちも同じなんだよ。お前らのせいで多くの命が消えていったんだ。覚悟しやがれ」

 

 体の奥底から湧き上がるノイズへの怒りを胸に、俺はカイザブレイガンを構えて巨大ノイズ目掛けて突撃する。フォトンバルカンを放ちながら距離を詰めるも、巨大ノイズはそれを躱して腕を振りかざしてきた。

 

 その攻撃を横に躱して懐に入り、グランドマニピュレーターで巨大ノイズの足を掴んで力の限りぶん投げる。巨大ノイズは空中に投げ飛ばされ、勢いよく地面に落ちる。

 

 ここを勝機と捉えた俺は巨大ノイズが体勢を立て直す前に倒すべく、再びサイドバッシャーを加速させて一気に距離を詰める。その途中、ベルトの後部に備えられたカイザポインターを取り出し、カイザブレイガンからミッションメモリーを外してポインターに付け替える。

 

『Ready』

 

「こいつで仕舞いだ!!」

 

『Exceed charge』

 

 カイザポインターを右足のホルスターに装着してカイザフォンを開き、エンターキーを押してエネルギーをチャージする。しかしノイズも最後の足掻きと言わんばかりに腕を横薙ぎに振るってくる。

 

「ふっ!!」

 

 俺は薙ぎ払われる直前でジャンプで躱し、その勢いのまま回転する。そして右足を巨大ノイズに突き出すと、カイザポインターから二本の黄色いフォトンブラッドの光線がねじれながら放出され、やがてギザギザの円錐状に展開されたポインティングマーカーとなって巨大ノイズを拘束する。

 

「でぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 そして雄叫びと共に、俺は全力の両脚蹴り……カイザの必殺技たる『ゴルドスマッシュ』を繰り出した。その一撃は寸分違わず巨大ノイズの体を貫き、通り抜けると同時に大爆発を起こす。

 

 その直後、『χ』のマークが浮かび上がるとともに巨大ノイズの体は灰化して崩れ落ちた。

 

「……終わったか」

 

 なんとかノイズたちに勝てたことに安堵する俺の耳に、こちらに近づいてくる複数の足音とヘリのプロペラ音がかすかに聞こえてきた。恐らくライブ会場の惨状を聞いた自衛隊が駆けつけてきたのだろう。

 

(自衛隊の人たちの目の前で灰化消滅したら、驚かれるどころじゃすまないだろうな)

 

 死ぬのならば、人が誰もいないところで死にたい。そう考えた俺は自衛隊が来ないうちにサイドバッシャーをビークルモードに変形させてその場から走り去った。

 

 

 

 

 

 それからしばらくサイドバッシャーを走らせた俺は、人の気配が一切ない郊外の工場跡地までやってきた。

 

「……ここなら、誰にも見られないだろ」

 

 できるだけ人目に付かない場所にサイドバッシャーを止め、工場の奥まで向かう。

 

「いままでありがとうな、相棒」

 

 去り際、今まで俺を背に乗せて走り続けてくれた相棒に感謝を告げる。こんなところに置いていくのは悪いとは思うけど、俺が灰化消滅したとしてもサイドバッシャーは灰にならずに残り続ける。もし他の誰かの物になるのであれば、どうか大事にしてもらいたい。

 

(………………)

 

 工場の奥へと向かう途中、俺の頭の中で様々な記憶が走馬灯のように浮かび上がってきた。呪いのベルトを特典として寄越したクソみたいな神様に向かって文句を言ったこと。それでも何とかベルトを使うことなく過ごしていく中で、カイザギアはしっかり俺の生活の助けになってくれていたこと。なんだかんだ言ってカイザフォンを気に入っていたこと。サイドバッシャーに乗って街を走ったこと。なんかカイザギアのことばかり思い出すけど、とにかく呪いのベルトを使うことがないように生きてきた。

 

 けれどもそんな俺の人生の中で、俺と仲良くしてくれた人達との思い出は決して忘れることのない宝物だった。

 

 通っていた学校で出来た気の合う友人。怖いところはあっても友達想いで優しい未来。そして……いつも明るい笑顔を見せてくれたお人好しの響。響は短い間だったけどすごく楽しい思い出を一緒に作ってくれた。一緒にスマホを買いに行った時とかはと特に……。

 

「……って、そういえばスマホがない。どっかで落としたか?」

 

 いくらポケットを探ってみても見つからない。最後にスマホの写真を見て思い出に浸りたかったが、おそらくさっきの会場に落としてきてしまったんだろう。ないものは仕方ないので、頭の中にある思い出で我慢する。

 

(なんだかんだ、楽しい人生だったな)

 

 転生してから数年、本当に色々なことがあった。もう二度と会えない人たちの顔を思い浮かべると、自然と俺の目からは熱い何かが流れていた。

 

「……………………死にたくない」

 

 それが涙だと気づいた俺は、今更ながら自分に待ち受ける未来を嘆く。何故俺は生きていけない? 何故響たちにもう会えない? 何故俺はこんなところで一人ぼっちで死ななきゃいけないんだ? 

 

 一度溢れ出した涙はとどまることを知らず、俺は体を震わせながら泣き続ける。だけどそれも数分後には落ち着いていた。自分で納得して決めたことだから。自分で納得して受け入れた結末だから。その選択をしたことで、大切な友達を助けられたのだから。一度は自分が助かるためにその場から逃げ出そうとした情けない俺にしては、少しはマシな死に様だろう。

 

 覚悟を決めた俺は、変身を解除するためにカイザフォンをドライバーから外そうとする。しかし次の瞬間──

 

「ぎっ!? がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 突如としてカイザドライバーから発生した凄まじい電流が、俺の全身を襲った。あまりに激しい痛みに耐えきれずその場に倒れてしまった俺だが、しばらく激痛にのたうち回っていると変身が強制的に解除され、それと同時に視界が()()()()()()()()()()()意識が急速に遠のいていく。

 

(な、なんだよこれ! カイザの変身を解除するときってこんなに強烈な電流って流れてなかったよな!? 変身解除すらまともにできないって、やっぱり呪いのベルトじゃねぇか!)

 

 最期まで呪いのベルトの名に恥じない仕組みっぷりに内心呆れながら、俺はどこか安心したような気持ちになっていた。何故ならこのまま意識を失ってしまえば、自分の体が灰になっていくのを見ずに済むのだから。

 

(なんだか、急に眠くなってきた……)

 

 そうして俺の意識は、ゆっくりと落ちていく。それと同時に、自分の体がふわふわと浮いていくような感覚に包まれる。きっともう俺の体は灰になり始めているのだろう。意識がなくなる寸前、俺は頭の中で響の笑顔を思い浮かべながら口を開く。

 

「…………幸せになってくれ、響。自分の心を壊そうとする呪いなんかに、負けるんじゃねぇ……ぞ」

 

 その言葉を最後に目の前が真っ白になり、俺の意識は完全に消滅した。




これにて本作は完結です。ありがとうございました…………とはなりません。まだこの作品は続きます。

次回は惨劇と化したライブからなんとか生き延びた響のその後の話です。
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