転生した私はコズミック・イラの立会人になろう。   作:ひきがやもとまち

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前話の終わり方が人によっては中途半端に感じられてしまったかもしれないと、気になりすぎてしまったため、急きょ【今作版アラスカその後】だけでも早めに投稿した次第。

尚、今作特有の世界観変更部分が混じるため早めの投稿は難しいのですけど、【DESTINY版】の1話目と【FREEDOM版】の2話目も書き進んでいるのですが……ネタバレする部分ありますけど見たい方おられます?


第28・5話

 宇宙世紀0087に行われた反地球連邦運動《エゥーゴ》による地球連邦軍の拠点《ジャブロー》への降下作戦は、連邦軍の治安維持部隊《ティターンズ》に察知されていたことから失敗に終わっている。

 これによりティターンズは、エゥーゴ主力部隊の殲滅までは至らなかったものの、『地球市民からの世論を獲得する』という目的は達成することには成功した。

 

 この出来事を、かつて一年戦争でジオンが行った『地球降下作戦』と結びつけたティターンズは『地球の敵からの防衛』という美名のもとに連邦正規軍を自らの指揮下に置く法案を可決させることができたのだ。

 

 もっとも、この法案は形式的な側面が強いもので、正規軍相手にティターンズが頭ごなしに命令できるようになった、という訳ではない。流石にこの段階でそれをやればエゥーゴへの参加者が増加するのは目に見えていたからでもある。

 

 だが形式的なればこそ、これで形式が整ったことを意味する。

 この法案によって宇宙空間や暗礁宙域を主たる担当区域だったティターンズは、地上の部隊や軍事施設の転属を許可してよいという権限を得たことになるからだ。

 

 その結果は諸君らも知っての通りだ。

 『ブラン・ブルターク』『ロザミア・バダム』そして『フォウ・ムラサメ』・・・・・・本来なら宇宙で覇を争うべきエゥーゴとティターンズの戦いで、死ぬべき理由をもっていなかった者たちが多く参戦して、その命を無為に散らせていく流れを形作り、ダカールでの法案提出への下地を築いていくことにもなるのだ。

 

 またティターンズ崩壊後、残党どもがハマーン軍へと寝返ることで、『強化人間』などニュータイプ研究所が有する技術とスタッフたちが流出する結末へと至らせていくことにも繋がっていく最初の一歩目を記すことになったのも、この作戦失敗による法案可決に端を発して結果でもあった。

 

 

 『ジオン残党狩り』を目的に結成された軍事組織であるティターンズが、印象操作と法的認可を与えられたことで戦火と混乱を世界中に拡大させてゆく戦乱の種火となっていく一連の流れ・・・・・・それは奇しくも現在、C.E.の地球上で起きている現象と酷似するものでもある。

 

 《真のオペレーション・スピットブレイク》によって本拠地深くまで迫ったかに思われたザフト地上攻撃軍は、だが作戦を事前に察知されていたことで罠を逆用され《サイクロプス》による自爆で壊滅的な大被害を被らされて敗退する結果に終わってしまった。

 

 この作戦がザフト軍の陽動に乗せられた地球連合軍がパナマ救援のため本隊を派遣した後、プラント議長パトリック・ザラの独断によって攻撃目標を変更されたものだったという背景から、自分たち自身が虐殺の主犯であることを疑われる恐れはほとんど無いと見てよい。

 

 彼らは今回の被害を、『ザフト軍が大量破壊兵器を使用して非人道的な虐殺をおこなった』と喧伝することでプラントを『地球の敵だ』と市民達の世論を煽り、未だ残る非加盟国を強制的に連合へと加盟させて指揮下に納めていく政略に利用するだろう。

 

 腐った連合軍高官どもにとって、我が世の春というべき状況が与えられたということだ。

 まさに、正義は我にあり。と言ったところか。

 

 

 ・・・・・・だが、どうだろう?

 かつて赤い彗星は、『今日の都合で魂を売った人々の意見など、明日にも変わるものだ』と評していた言葉がある。

 

 原作におけるC.E.では残念なことに、この言が事実であると証明されるのは戦後になるのを待たねばならなかったが、私が望んでシロッコとして転生したこの世界でも、同じ未来が作戦終了後に果たして待っているのか否か・・・・・・フフフ、見物だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ザフト攻撃軍による陽動作戦と《真のオペレーション・スピットブレイク》を失敗に終わらせることに成功したと報告を受けた連合軍高官たちは浮かれ上がっていた。

 それは純粋に軍の勝利のため、兵達は必要とあれば死ぬのが役割なのだと信じて疑わぬ狂信的な軍隊至上主義者だけの話ではない。

 

 一抹の後ろめたさと罪悪感が些かもない、という程には至っていない者達にとっても、この作戦成功と戦果報告は自身の行為を正当化させ、『必要な犠牲だった。無駄ではなかった』という言い訳を自分自身に対してできるようになったことを同時に意味するものだったため、心地よく勝利の祝杯に酔える大義名分を得た形になってくれたからだった。

 

 所詮は大量殺戮者同士による、欺瞞と偽善と自己満足による仮面劇に過ぎぬ茶番じみた心理現象だったが、彼ら小人たちにとっては精神的健全さを保つためには必要な作業でもある。

 

 これにより気兼ねすることなく、未だ自分たちの指揮下にない国々への協力を強要することが出来る。

 この期に及んで拒否する者は『戦死した英霊に恥じよ!』と兵達の犠牲を称えることで、自分たちの立場の強化と相手への避難とを両立させることが可能となるのだ。

 

 その為の、他国にはない『手段』も先日完成したという報告もある。

 未来の栄光を思えば、その為の犠牲となった者達の犠牲を悼む想いも本心から沸こうというものだった。その犠牲が貴い犠牲なればこそ、自分たちの今後は光り輝くのだから――。

 

 

 ――だが、そんな彼らの自己陶酔に水を差される光景を目にするのは、作戦終了から僅か半日後のこととなる。

 

 

『小官は、大西洋連邦軍所属、アラン・タチ中尉です。

 アラスカ守備軍に所属していた一員として、私は地球上に生きる全ての人々にお伝えしたいことがあり、この場をお借りしました。

 先日ザフト軍の襲撃を受け、我ら地球連合軍の拠点たる統合最高司令部《JOSH-A》は、この地球上から消滅しました』

 

 

 泡を食ったように飛び込んできたオペレーターからの報告を聞かされ、グリーンランド地下深くに建設されていた新たな根拠地の広大な司令室へと慌てて参集した連合軍高官たちの見ている前で、巨大なモニター画面に連合軍士官の軍服をまとった男が映し出されている。

 

 すぐに誰かがデータ照合をするよう部下に指示して、慌てふためきながらコンピューターを操作していた一人からの報告で『所属と身分が正式なもの』と判明したことによって、彼らの顔色は一変させられる。

 

 

 ――マイクロ波の発生によって基地を含む、半径十キロ四方を溶鉱炉とする自爆装置『サイクロプス』

 その爆発に巻き込まれ、必要悪の犠牲として基地を守っていた守備軍は誰一人として生き残らず全滅する予定になっていた勝利のための生贄。

 

 すでに用済みとなっていたはずの者達に、生き残りがいたのである!

 野垂れ死にもせず生きていたのだッ!!

 

 

『――だが! これは陰謀だ! 大西洋連邦の陰謀によって我らアラスカ守備軍は殺されたのだ!

 アラスカは確かにザフト軍からの攻撃を受けたが、陥落したのは彼らの攻撃によってではないッ。事前に作戦を察知していた大西洋連邦の高官たちによって自爆させられ消滅したのだ!

 基地の地下深くに仕掛けられていた殺戮兵器《サイクロプス》によって、味方諸共に生贄として殺されたのである―――味方であるはずの大西洋連邦の欲望のためにッ!!』

 

 

 その叫びを聞かされた瞬間、司令室に集まっていた内の誰かが叫び声を上げた。

 あるいは複数の声が同時に異口同音の命令を出していたのかもしれないが、命じられた側は区別できなかった。

 

「何をしている!? 止めろ! あの放送を遮断させるのだ! 早くッ!!」

「だ、駄目ですッ! これは、ザフト軍の回線による映像らしく、我が軍からでは介入が・・・ッ!!」

『彼らは我ら兵士たちに「守れ」と命じながら、自分たちだけは事前に逃げ出して兵を見殺しに自爆させたのだ!

 そうでなければ、ニュートロンジャマーに影響される地球上で、あれほどの破壊が起こせるはずがない!!』

 

 モニターの中でアラン・タチを名乗る連合軍人が、声高に叫んでいる声が響き渡る。

 核分裂を阻害する《ニュートロンジャマー》も、コーディネイターが開発した新兵器だった。

 だからジャマーが散布された状況下でもコーディネイターであれば無効化させ、大破壊をもたらす兵器の開発も可能だと説明付けする予定でいたところに先手を取られてしまう。

 

 二番煎じでは、印象による効果が薄い。

 相手の主張に対して、ただ反発して言い訳をしているように見る者が多く出過ぎる。

 

『ことの真相を知った我が隊の隊長は、大西洋連邦の手で暗殺された。

 そして連邦は、隊長から遺言を託された私までも生き証人として殺そうとしたところを、ザフト軍のラウ・ル・クルーゼ隊長による人道的配慮によって投降することを許され、世界中に真実を伝えるための場をお借りすることを許可してまで頂いたのです』

「なにを言うか恥知らずの裏切り者め! 要は敵に味方を売って命乞いをしただけではないか!」

 

 再び誰かが言って、賛同する声が幾つも周囲から続く。

 その評価は盗人猛々しいものではあったが、少なくともアラン・タチ中尉の行為に対しては正当なもので、味方を裏切って敵の走狗に成り下がった恥知らずへの糾弾は正論でもあったのだが――反面、正当性に意味のない発言だったのも事実ではあった。

 

 憎むべき裏切り者の離反兵の行為を、幾らなじったところで粛正することも懲罰を与えることも不可能な立場にあるのが現在の彼らだったからだ。

 自軍から逃亡した軍紀違反の兵士といえど、敵であるザフト軍に身を保護されてしまった者に連合軍の規則違反者を罰させる手段などあるわけがない。

 

 まして現状は、自分たち連合が不利な状況にあるのだ。

 負けている敵国側の言い分を真に受けて、求められる通りに敵国の法律を尊重してやる理由などあるわけがない。

 戦争とは畢竟、自国と同じ法律と倫理に力ずくで合せることを受け入れさせる為に行われる行為なのだから。

 

 勝てば正義とはよく言ったものだが、逆に言えば勝てない限り自国の言い分は不当なのだ。

 ・・・・・・もっとも、今日からは風向きが大きく変わるのは確実だが・・・・・・

 

「身の程知らずな卑怯者めが。自分がやった行為の罪深さを思い知らせてやる。裁きの場で後悔するがいい」

 

 歯軋りせんばかりの思いで連合軍高官は罵ったが、一方で彼の声には微かながら余裕が感じられてもいた。

 それは不遜なものだったが、当然の反応でもあったろう。

 

 

 ――たかが『中尉ごときの中級幹部』の証言を、しかも『敵軍の捕虜という立場』で言っているだけの言葉など、一体どれだけの者が信じるのか?

 

 確かに当初の予定より信憑性が薄れさせられたのは事実だが、その程度は幾らでもプロパガンダで補填できる。

 証拠も証人も、世界最大の強国同士が手を組んだ今となっては、幾らでも作るのは簡単なこと。

 

 証言者自身の不正や汚職、プライベートでの不祥事があった事実を“不倫相手ごと創る”という手もある。一個人の告発者から信頼性を奪いさり、社会から抹殺することなど容易くできるようになるのが絶対的な権力というものなのだから。

 

 彼らは自分たちが、法の解釈権を独占し得たと信じ切っていた。

 だからこそ余裕があったし、現時点で裁けぬ『金で能力を買った不正が産んだ種族』にも正しい判決を下すことを確定事項として考えていた。

 

 不正は正されるべきであり、存在すべからぬものは元の塵へと帰されるもの。

 今までの誤った戦局は覆され、予定された正しき判決たる『死刑』が、過って産まれた全ての者に下される日は近い―――そう思っていた。その言葉を聞かされる時までは。

 

 

『この放送を見ている、アラスカからの脱出に成功した全ての連合軍兵士たちは聞いて欲しい!

 大西洋連邦の原隊に復帰してはいけない!! なぜなら我々アラスカ守備軍は、大西洋連邦軍に謀殺されたからだ!

 その目的は、プラント内の反乱勢力と手を組んだ彼らが、地球全ての国を支配することにある! 

 生き残った我々の全ては、彼らにとって陰謀の真相を知る生き証人なのだ! 戻れば抹殺以外の待遇を奴らが用意してくれることは決してないと断言する!』

 

 

 ザワッ――!!

 新たな地球連合軍拠点グリーンランド地下の司令室に緊張が走った。

 

 ――アラスカから脱出に成功した“全ての”連合軍兵士“たち”―――!?

 

 

『あの惨劇から逃げ延び、生き延びることに成功した者達は武器を捨ててザフト軍へと投降するのだ! それ以外に我々が生き延びれる道はない!!

 我らから銃口を向けぬ限り、ザフト軍は我々を討ちはしない!

 ザフト軍へと逃げ込み、全ての真相を隠すことなく証言し、ザフト軍とともに大西洋連邦の野望を協力して阻止するのだ!!』

 

 

 そこまでの演説を聴かされた時点で、連合の高官たちの動揺は勢いの激しさを増しつつあった。

 不味い!――と彼らは思っていた。

 

 彼らは今回の謀略によって、地球の市民層に『コーディネイター憎し』の世論を形成させる算段でいた。

 それを背景として、未だ連合に加盟していない非加盟国をも糾合させ、自分たちの指揮下に否応なく加わらざるを得ない情勢を形作らせる予定でいたのである。

 

 そういう情勢になっても尚、独立自主に固執する国や勢力もあるだろうが、そういう者達がいるからこそ、コーディネイターの悪行を憎む市民達からの賛同者――ブルーコスモスのシンパを増やすのが有効な手となり得る。

 

 都市ゲリラや自爆テロすら厭わない、過激な市民達の存在は、合法的手段でも非合法にでも非協力的な国の政府や政治家たちの去就を選ばせるには役に立つ。

 

 だが逆に『祖国防衛のため』という理由で、プラントに味方する者として同じ手を使われてしまった時には・・・・・・たとえば、あの悪名高い砂漠のゲリラ《朱の砂漠》のように。

 

 

『自らの愛する祖国と守るべき国民達のため、自らの意思と判断のもと、地球連合の兵士たちよ、立て! 立てよ、地球に産まれしナチュラルの兵士たち!

 正当なる地球連合軍の兵士として、裏切り者の大西洋連邦から自らの守るべき母国を守るために!!

 青き母なる地球は、諸君らの力を欲している!!!』

 

 

 画面の中で、独裁者の扇動演説さながらに右手を高く掲げて叫びを上げたタチ中尉の言葉を、連合軍の高官たちは最後まで聞き終えることなく、既にそれぞれの部署へと急ぎ駆けつけさせ、怒鳴り声での命令をやつぎはやに発していた。

 

 そうする必要性があったのだ。

 一刻の猶予もなく、今すぐに動き出さざるを得ない必要性が。

 

「アラスカへのザフト軍奇襲に関する公式会見を急ぎ発表する! マスコミを集めさせろ! 台本も先の映像で語っていた部分は被さるように書き直させるのだ!」

「はっ!? で、ですが早すぎる対応は疑いを招きやすい恐れがあると、しばしの間を置いてから行う予定だったのでは・・・・・・」

 

「そんな余裕があるとでも思っているのか馬鹿が!? 世論の態勢を占められてからでは遅いのだ! 急げ! 大至急だ!」

「加盟国へ要請していたパナマ救援のための援軍派兵と、非加盟国への加盟打診について返答を急がせろ! 場合によっては完成したばかりのMSを数機チラつかせて恫喝しても構わん!

 強引にでも既成事実化してしまえば、奴らも共犯。ザフトを倒す以外に免罪で済ませる道はなくなるはずだ!!」

 

 顔色を赤と青の二色を交互に入れ替えさせながら、彼らは今更になって計算違いの“幅”が、自分たちの予測を大きく超えていたかもしれない危険性に気付かされ、慌てて消火作業のため躍起にならざるを得ない危機感に突き動かされていた。

 

 単に逃げ延びた者らが、地球各国へと落ち延びて真相を広めただけならば、彼らはさほど気にはしなくて良いと思っていた。

 今までは配慮せざるを得なかったが、今の自分たちには『力』がある。宇宙のバケモノ共が造り出した新兵器は奴らの専売特許ではなくなって、地球国家内では大西洋連邦軍のみが有する最強の軍事力として地上全てを席巻するだろう。

 

 今さら既存兵器しか持たぬ各国が刃向かってきたところで、何程のこともない。そう思っていたが故の余裕だったのだが―――彼らが『ザフト軍と結託できる』という道が示されてしまえば、自ずと選択は変化せざるを得なくなる。

 

 無論ザフトも今回の計画で大きな痛手を被ったはず。

 仮に地球各国が彼らと協力関係を求めて手を組もうとしたところで、支援する余裕は今のプラントには無い。

 

 だが、《サイクロプス》によって戦力が激減され、今までのように親プラント国を支援する余裕すら失ってしまった窮状にあるからこそ、奴らは彼らと同盟して自分たちと敵対する恐れが高すぎる状況に今はなってしまっている。

 

 

 ザフト軍にしてみれば、ナチュラルによる地球国家同士がかみつき合って数を減らし合うだけでも、柔らかい脇腹をつかれる恐れなく態勢を整え直す余裕が得られて万々歳という状況が今なのだから―――

 

 

「アラスカ守備軍に属した全ての兵達のデータを調べ上げて全軍に配布させるのだ!

 ザフトのスパイだった『アラスカ虐殺の共犯者』として見つけ次第に殺せと!! 一人も生かすな! 皆殺しにしろ!!」

 

 

 切羽詰まった表情と口調で、大西洋連邦軍出身の高官は、命がけで本拠地を守るため戦った自軍兵士たちへの処遇を、そう厳命させた。

 同じような作戦を実行しながらも、ティターンズと地球連合軍は、この点が大きく異なっている部分だった。

 

 なぜなら彼らの時代、エゥーゴは『地球を侵略した敵国』ではなく、地球は戦禍に包まれてもいなかったからだ。

 それは一年戦争でのジオン公国であり、エゥーゴは地球連邦の内部から生じた反政府勢力ではあっても、対等な外国勢力に属する外敵とは地球市民たちは考えていない状況にあった。

 

 だからティターンズにとって、エゥーゴを『ジオン残党という外敵だ』と、地球から宇宙を見上げることしかしない人々に思わせることさえ出来れば充分だったのである。

 それだけでも新興の軍事勢力だったティターンズには、正規軍を取りこんで勢力を拡大させるための階梯を一段飛ばしで昇ることが可能になる。

 たかが民間軍需企業の支援でなり立つ反乱軍ごときと、敵を侮る思考もあっただろう。

 

 

 だが地球連合軍は、そうではなかった。

 C.E.の地球は、人類国家すべてを統合させた統一政権を樹立していなかったし、現在進行形で敵対国家との戦争状態にある真っ最中でもある。

 自分たちの統治に否定的な武装勢力も各地に点在し、支配に対して強硬に抵抗し続けている地域も少なくはない。

 

 敵が多いのである。

 地球連合の中核を担う大西洋連邦という“国家”と敵対する恐れをもった“敵国”が。

 

 

「クソッ! 今少しの時間さえあれば、各地にMSの量産ラインを敷くことが可能だったはずが・・・・・・おのれ!

 恥知らずの裏切り者め! 非国民め!! 担当部署すら守れなかった若造が言えることか! アラスカは奴らのような卑劣漢のせいで落とされたのだ!

 宇宙のバケモノ共々いずれ思い知らせてくれる! 絶対にだッ!!!」

 

 

 《サイクロプス》によるプロパガンダを目的とした謀略の結果は、仮面の男の計略によって予期せぬ方向へと進みつつある。

 プラント・ザフト軍VS地球連合という明確な対立構造に乱れが生じ、反コーディネイター感情によって統一されるかに見えた地上のパワーバランスは、微妙に歪みを内包した姿へと変化していくことになる。

 

 

 そんな混乱し始めた情勢へと変化した中で、『アスラン・ザラ』はプラント本国へと帰国して、『キラ・ヤマト』とアークエンジェルはオーブ連合首長国へと身を寄せる道を選ぶことになる。

 

 それはC.E.の世界が、新たなカタチへと至る階梯に成り得る兆しなのか?

 それとも―――

 

 

 

つづく




【今話の説明補足】

誤解なきよう念のため書いておきますと、今話でのクルーゼの謀略目的は、【自分の独断撤退を許させること】です。

また、敗北による失敗責任をなすりつけられないための防衛策としての側面もありました。
ザラ議長やジャガンナートは保身的な人物ではないですけど、【理想社会実現のため今は地位と権力が必要】という理由でならやりかねないと、彼は考えた設定のため何かする必要があった。

原作アラスカと違って違反行為をしてますのでね。今後も活躍するためには整合性を取るためヘリオポリス同様に口実が欲しかったんです。だからスポークスマンを利用した。

ザフト軍と地球軍が共同して戦う~とかの展開は全く予定になく、ありえないと断じてますし、結局は敵同士になる前提でいますので、そこはご心配なさいませんように。


第三勢力が生まれる場合でも、【ザフト・クルーゼ編】です。
ナチュラルを管理運営する気はあっても、仲良く同盟する気はないからこそ悪役シロッコです故に。
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