ようこそ個人主義者のいる教室へ   作:ボロネーゼ

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今回は少しR要素あるかもです。


雨とハプニング

俺は堀北の質問ラッシュを終えて、下駄箱である人物を探す。すると、俺がこの前待っていた場所に一之瀬は立っていた。

 

「悪い。待たせたな」

 

「ううん。大丈夫。八剣くんこそ大丈夫だった?」

 

「何が?」

 

「何か用事あったんでしょ?」

 

「いや、大丈夫だ。もう終わった」

 

「そっか。じゃあ、行こっか」

 

俺は一之瀬に付いていくとそこはカラオケだった。

 

「……カラオケ」

 

「あ、もしかして、カラオケ嫌だった?」

 

「いや、初めて来たから少し新鮮なだけだ」

 

「え、迅くんってカラオケ今日が初めて?」

 

「ああ。だから全く勝手がわからないんだが……」

 

「大丈夫だよ!私がちゃんと教えるから!」

 

俺は一之瀬にカラオケのことや最近の曲を教えてもらい、三時間ほどカラオケで滞在した。俺は人生初のカラオケを体験したわけだが一言で感想を言うと、悪くない。いや、むしろよかった。音楽を聴くのは好きだが自分で歌うことはあまりなかったため新鮮で思いのほか楽しかった。

 

「楽しかった〜、どうだった初カラオケは?」

 

一之瀬は嬉しそうな顔をしながらそう言った。俺たちは夕食にレストランに来ていた。

 

「まあ、悪くなかったな」

 

「じゃあ、また行こうよ」

 

「そうだな。また誘ってくれ」

 

「うん!」

 

「そういえば、一之瀬、よかったのか?今日で」

 

「え?何が?」

 

「いや、クラスの中間テスト乗り越えた会みたいなのないのか?」

 

Dクラスでは今日の放課後、中間テストを乗り越えた記念の会を開いていた。俺も平田に誘われたが、一之瀬との約束があったので断った。

 

「うん。今日が用事ある人多かったから、後日になったの」

 

「そうか。一之瀬ならそういうクラスのイベントに参加するだろうと思ってな。」

 

「うん。クラスメイトは皆んないい人だから誘われたら出来るだけ参加したいと思ってるよ」

 

Bクラスを見に行ったことがないのでわからないが、一之瀬の性格は人望を集めるタイプだ。Bクラスの軸となっていてもおかしくない。そんな一之瀬が誘われないことがあるのだろうか。誘われるたびに行っていたらそれはそれで大変そうだ。

 

「そうだ!迅くんおめでとう!」

 

「ん?何が?」

 

「だって迅くん中間テストの成績学年一位でしょ?全教科満点なんてすごいよ!」

 

「まあな。でも一之瀬も二位だろ?充分じゃないか?」

 

「でも、結構差があったと思うけどな〜」

 

「そうだったか?」

 

「うん。思い出すなぁ。小学校の頃も迅くんはずっと一位だったもんね」

 

「小学校の頃の成績なんてあてにならないだろ」

 

「そうかもしれないけど、でも、思い出しちゃうんだよね。迅くん何やっても一位だったから」

 

「別に珍しくないと思うが」

 

「そうかなぁ」

 

「そうだと思うけどな」

 

「一位と言えばさ、迅くんと同率一位の人いたよね」

 

「……そうだな」

 

発表された中間テストの成績では俺とAクラスのある生徒が全教科満点で同率一位だった。

 

「Aクラスの坂柳さん。Aクラスのリーダー候補の一人なんだって」

 

「候補?Aクラスはまだリーダーが決まってないのか」

 

今は5月の下旬、各クラスリーダーのようなものが決まっていてもおかしくない。現にDクラスは平田を筆頭に櫛田、軽井沢がリーダー的存在になっている。

 

「うん。Aクラスは大きく二つの派閥があって、葛城くん率いる葛城派と坂柳さん率いる坂柳派。この二つで争ってるらしいね」

 

「なるほど、今のAクラスは内部抗争の真っ只中ってことか」

 

「うん。噂だと今は葛城くんが優勢みたい」

 

「……そうか」

 

坂柳。この学校の理事長と同じ苗字を持つ生徒。偶然かそれとも…

 

「どうしたの?」

 

「なんでもない。それより色々詳しいな」

 

「へへ、まあね。これでもBクラスのリーダー的なことやらして貰ってるから」

 

「そうか。やっぱりBクラスは一之瀬がリーダーか」

 

「まあ、名目上はね。でも、私が偉いとかじゃないよ。あくまで代表的な感じで」

 

「人望がないとリーダーはやってけないだろ。問題なくやっていけてるってことは認められてるってことだ」

 

「そ、そうかなぁ」

 

一之瀬は少し照れたように顔を赤くする。

 

「迅くんのDクラスは誰がリーダーなの?平田くん?」

 

「流石だな」

 

「うん。平田くんの話はよく聞くから」

 

「そうなのか?」

 

「うん。うちのクラスの女の子にも人気なんだよね。イケメンランキング二位だし」

 

「イケメンランキング?」

 

「うん。女子の間でやってたんだよ。学年単位でやってるから結構な人数が投票してるみたい」

 

「へえー」

 

そういえば男子の間でも巨乳ランキングみたいなのがあったな。あれはうちのクラス限定っぽいけど。考えることは同じってことか。

 

「他にもいろんなランキングがあるんだけど。迅くんは見事4位だよ、おめでとう!」

 

「それは喜んでいいのか?」

 

「もちろん。皆んなあんまり人の目があるところじゃ話さないけど迅くんの話題になったこともあるんだよ?ちなみに私は迅くんに入れたよ」

 

「そ、そうか。えーっと、まあ、ありがとう」

 

「あれ?嬉しくない?」

 

一之瀬が俺をイケメンだと思ってくれているのは嬉しいが、正直モテている感じが全然ないからしっくりこない。

 

「まあ、モテてる実感がないからな」

 

「……迅くんもやっぱりモテたい?」

 

「んー、まあ、正直どっちでもいいけど、モテないよりはモテる方がいいな」

 

俺は誰でも同じことを言いそうなセリフを吐く。

 

「そ、そっか」

 

「……どうした?」

 

一之瀬の様子が少し硬い。その時、注文した料理が運ばれてくる。

 

「とりあえず、食べるか」

 

「…うん。そうだね」

 

 

♢♢♢♢

 

俺と一之瀬は夕食を食べ終わり、店の外に出ると外はすっかり暗くなっていた。

 

「今日は楽しかったー、やっぱり迅くんと遊ぶのは楽しいね」

 

「そうか。俺も一之瀬と遊ぶのは楽しいぞ」

 

「本当に!嬉しいなぁ。また、近いうちに遊ぼうね」

 

一之瀬はそんな風にご機嫌な様子だった。さっきの硬さは取れたようだ。

その時、俺の頬に冷たい水滴が落ちてきた。俺は空を見上げる。あいにくの曇り空だ。星の一つも見えやしない。

 

「どうしたの?」

 

俺が立ち止まり空を見上げている様子を見て、一之瀬が寄ってくる。

 

「いや…」

 

俺が次の言葉を発しようとした時、

 

ぽつ、ぽつ、っという音を立てて水滴が降ってきて、そしてそれはやがて、

 

ジャアアーーー

 

「うわぁ!?」

 

「……急に降ってきたな」

 

「は、走ろ!」

 

「ああ」

 

俺と一之瀬は急いで一気に寮まで走る。だが、ここから寮までまだ少し距離がある。着く頃にはびしょ濡れだろう。

それから少しして俺たちは寮にたどり着いた。

 

「はあ、はあ、」

 

一之瀬はずっと全力で走っていたようでかなり息を切らしている。俺は一之瀬にスピードを合わせていたので、息を切らすほどではなかった。

 

「一之瀬、大丈b……」

 

俺は一之瀬に大丈夫かと言いかけて止まってしまった。何故なら一之瀬の制服のシャツが透けて、中の青い下着が見えていた。さっきまでは暗い夜道な上に雨が降っている中、一之瀬の横を走っていたので一之瀬を注目して見ていなかったが、寮の電気に晒されて今の状態が急に現れた。

 

「はあ、はあ、うん。なんとか。でも結構濡れちゃったね」

 

はは、っと笑いながら俺を見る一之瀬。一之瀬のスタイルだと今の姿は計り知れない破壊力を持っていた。前屈みになっていていつも主張が強い胸がさらに強調されている。その上、濡れながら息が切れているのがかなり色っぽさを演出している。俺も簡単には目が離せない。

 

「迅くん?おーい、迅くーん」

 

一之瀬に呼ばれて、俺はふと我にかえる。様子から察するに一之瀬は自分の状況に気づいてないようだ。

 

(これは指摘した方がいいのか?)

 

事が事なだけに言いづらい。その上、指摘すれば俺に見られたという事実が一之瀬の中で確定してしまう。いや、しかしこのままにしておくのも危険といえば危険だ。他の男子が今の一之瀬を見たら…

 

(っ!?)

 

まずい。今の一之瀬を他の男子に見せるのは結構まずい。場合によっては一之瀬が大変な目に合うかもしれない。俺は覚悟を決めて一之瀬にそのことを指摘しようとすると、

 

「クッソ、急に降ってきたな」

 

そんな男子の声が外から聞こえてくる。人影は3つほどある。

 

「迅くん?きゃっ!」

 

俺は一之瀬とエントランスの端の隙間に隠れる。ここなら普通は通らないし死角になる筈だ。

 

「じ、迅くん?むぐっ!?」

 

「悪い。一之瀬」

 

一之瀬が声を出しそうになったので急いで一之瀬の口元を手で抑える。そして俺はとても声を小さくしてそう言った。俺と一之瀬の距離はほぼ0だ。流石に聞こえるだろう。はたから見れば俺が一之瀬を壁ドンしている状態に見えるだろう。一之瀬は目を見開いて、顔を赤くしている。

 

「くそ、エレベーター来ねぇな」

 

「もう階段で行こうぜ」

 

まずい。階段となると俺たちと一気に距離が近くなる。走る靴音が聞こえてくる。

 

(こっちくるなよ……)

 

そして靴音がほぼ真横からの聞こえ、ガチャッという音がした後、足音と話し声は消えた。俺はそれを確認して一之瀬との状態を解いた。

 

「ぷはぁ〜、はあ、はあ」

 

「悪い。大丈夫か?」

 

「うん。平気だよ。でも、なんで隠れなきゃいけなかったの?」

 

「ふぅー」

 

「迅くん?」

 

俺は深呼吸をして、覚悟を決め指摘することにした。

 

「一之瀬」

 

「な、何?」

 

「す、す、」

 

「す?……っ!?、迅くん、もしかして…… ど、どうしよう…」

 

「?」

 

一之瀬は両手を顔に当てて何故かすでに恥ずかしがっている。まだ、すっと言っただけなんだが。

 

「す、透けてるんだ…」

 

「へ?」

 

「しゃ、シャツが…」

 

「シャツ?………っ!?」

 

一之瀬は俺の指摘に自分の状態を見て、全てを察したようだった。一之瀬は赤くなっていた顔がさらに赤くなり、りんごのようだった。

 

「う〜、迅くんのバカ!!」

 

「わ、悪い……指摘するかどうか迷ったんだがな」

 

やはり怒っているようだ。指摘しないほうがよかったか?いや、一之瀬の為を考えれば指摘した方が良いと俺は判断した。自分を信じるべきだろう。

 

そういうことじゃないんだけど……

 

「ん?なんて?」

 

「なんでもないよ!」

 

一之瀬はフンっとそっぽを向く。こんな状況なのに少し可愛いと思った。

 

「でも、ありがとう。私を守ってくれたんだよね…」

 

一之瀬は俺の方を向き直りそう言う。

 

「ま、まあ、そうなるかもな」

 

「うん。ありがとう」

 

もう一度お礼を言った一之瀬の顔は笑顔だった。コロコロ変わる彼女の心情を読むのは相当難易度が高そうだ。

 

「それでどうしよっか」

 

「とりあえず、一之瀬の階まで送ろうか?」

 

「………いいの?」

 

「俺は全然」

 

その時、ピコンっという音が鳴り、エレベーターの扉が開く。さっきの男子達が呼んでいたエレベーターが今頃来たようだ。

 

「どうする?」

 

エレベーターに乗り込むか、階段で上がるか、それを一之瀬に尋ねる。

 

エレベーターのメリットは当然、階段よりも早く、疲労も少ないことだ。デメリットはほとんどの人がエレベーターを使うため途中で生徒が乗り込んで来る可能性が高いことだ。その上、エレベーターに設置されているカメラの映像、つまりエレベーター内の様子はエントランスの監視モニターから見ることが出来る。一階のエントランスで誰かもわからない人が見ている可能性がある。一方、階段はエレベーターより、時間がかかるし疲労もかかるが、普段階段を使う生徒は少ない。さっきの生徒が例外だっただけだ。しかし、階段を使っているのはほとんどが男子だろう。何故なら女子の部屋は高層にあるため待ってでもエレベーターを使う。だから階段で遭遇するのは十中八九男子だ。つまりどちらにもメリットとデメリットがある。

 

「私の階は結構上だから、エレベーター使った方がいいかも…」

 

「そうか」

 

俺たちはエレベーターに乗り込む。人が入ってこないことを祈りながら。

 

「っ!?……一之瀬?」

 

その時、俺の背中に柔らかい感触が走る。明らかに一之瀬の大きなアレが当たっている。

 

「ご、ごめん、でもカメラが…」

 

「…………」

 

一之瀬も動揺しながらそう言う。確かにこの位置ならカメラの視覚的にもモニターでは俺の体で一之瀬は顔ぐらいしか見えないだろう。だが、その代わり俺の背中にはアレが押し付けられる様な形になっている。

 

(っ!!…まずいな)

 

その時、エレベーターのスピードが落ちていくのを感じた。一之瀬もそれを感じたのか表情が歪み。俺の手をギュッと握り、さらに俺の背中にアレが強く押しつけられる。そして、ピーンっという音が鳴ってエレベーターは5階で止まる。間違いなく誰かが乗り込んでくる。一之瀬の姿を隠せるのもここまでかと思った時にその男は乗り込んできた。俺と一之瀬に一切の目線を送ることもなくただ手鏡だけを見て自分の髪の手入れをしながら、

 

「エレベーターボーイ、最上階を頼むよ」

 

運がいいか悪いか、乗り込んできた男はうちのクラスの自由人、高円寺だった。色々ツッコミたいことはあるが黙って従うのが吉と判断し、疑問は一旦捨て置き、最上階のボタンを押す。そしてエレベーターは再び上昇を始める。しかし、高円寺は俺のことすら気づいていないのだろうか。それとも、こちらに興味がなさすぎて視界にすら入っていないのか。一之瀬も高円寺の様子に唖然としている。そして、それ以外のハプニングもなく一之瀬の階に到着し、俺たちは素早くエレベーターを降りた。

 

「はあ、ギリギリセーフかな?」

 

「どうだろうな」

 

俺たちは廊下にいても仕方ないので、とりあえず一之瀬の部屋の前まで行く。

 

「迅くん……」

 

「ん?」

 

「私の部屋……寄っていく?」

 

「っ!!い、いや、一之瀬にも色々あると思うし、俺も濡れてるから今日は遠慮しとく」

 

一体、一之瀬は何を思ってこの状況で部屋に誘ったんだろうか。

 

「そっか。でも今日のお礼今度絶対させてね」

 

「別にお礼なんて……」

 

「させて?」

 

一之瀬が上目遣いで俺にそう言う。

 

「……わかった。楽しみにしてる」

 

「ありがとう。じゃあ、またね」

 

そう言って一之瀬は部屋に入っていった。俺はそのあと、自分の部屋に戻りすぐに風呂に入ってベットに潜った。まだ柔らかい感触の余韻のようなものが背中に残っており眠れない。今だから言うが、途中から理性を働かせるので精一杯だった。俺はいろんなことに耐性があると自信があったが、まだまだの部分も多いと柄にもなく反省してしまった。俺はその日一晩、理性を鍛えるトレーニングをしようかと割と本気で考えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 




次回から原作2巻に突入します。
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