異聞!決号作戦   作:シン・アルビレオ

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大変長らくお待たせいたしました。


11話 機雷掃海と各基地の撤退及び原爆疎開に関する会議

ー 佐世保地方総監部 ー

 急いでセッティング作業を進めていく中、平島型敷設艇5番艇・済州の山部(やまべ)艦長と第4号掃海艇の長井(ながい)艦長が最初に総監部にやってきた。

済州は1944年12月佐世保鎮守府部隊に編入されると以後は本土決戦のため温存され、第4号掃海艇は元々シンガポールに所在していたが、高雄と妙高と共に無事に内地帰投を果たした経歴がある。

 

応接間に案内した数分後、今度は集団登校のようにぞろぞろと海防艦娘が来たが先頭にいる教官のような艦娘とロシア感のある艦娘が誰なのか分からない。

「練習巡洋艦鹿島です。うふふ、よろしくお願いいたしますね」

緩めのウェーブがかかった銀髪のツインテールが特徴の彼女は対応している職員がごくりと唾をのんでしまうほどの魔性を感じていた。

「ひび……ヴェールヌイだ。ロシア語で信頼できるという意味なんだ」

鹿島の隣にいる小さい子は髪もセーラー服も白だが瞳がブルーグレイなので神秘さが感じられる。帽子には旧ソ連のマークが目につく。

海防艦娘は占守・国後・八丈・石垣・択捉・松輪・佐渡・対馬・平戸・福江・御蔵・屋代・日振・大東・昭南・第四号・第三〇号の17人が元気よく挨拶する光景にほっこりする

これで全員揃ったようなので、応接間で待機していた帝国海軍の艦長たちを呼び会議室に案内していく。

それぞれ席に座ると部屋の電気が落とされ、プロジェクタースクリーンに映像が入ると健軍駐屯地と三面海将達が会議している部屋と接続される。

 

 「お集まりいただきありがとうございます。早速ですが佐世保港の対機雷戦について説明します。まずどの場所に機雷が敷設されているのかお伝えします」

小勝2等海佐が音頭を取りカラー化された海図が画面上に映し出されると皆食い入るように見つめる。

特に山部艦長と長井艦長はこれほど精密な色付きのは初めて見た、と驚きの声を漏らす。

「資料と掃海艇、ヘリのソーナーを照らし合わせた結果、洗出シノ瀬灯浮標から佐世保港口第1号灯浮標及び第2灯浮標付近をα……ではなく、″い海域″とします。佐世保航路第3号灯標から第4号灯標付近を″ろ海域″。佐世保港エイノ鼻灯浮標から佐世保港本船沖灯浮標付近を″は海域″。佐世保港離レ灯標から佐世保港大曾根灯浮標付近を″に海域″におよそ10~15個の感応式と係維機雷があることが判明しました」

機雷が敷設されている場所を赤ペイントペンで囲んでいくと、まるで佐世保港から出さないと言わんばかりに封鎖されているのがはっきりと分かる。

ギリシア文字ではなく″いろはにほへ″と順にしたのは帝国海軍の艦長や艦娘になじみがあり分かりやすいだろうと配慮した。

「よってこれらの海域周辺を立ち入り禁止区域に設定します。また、沿岸部の道路通行止めや住民の避難措置もとらなくてはなりません。そのため佐世保警察と長崎警察署、佐世保市役所、長崎県庁に連絡をとりたいのですが……」

「えっ、そこまでやるのか?」

このご時世漁に出ていく漁船もめっきりいないことから、わざわざそんなことしなくても機雷掃海は可能なのではと山部艦長は考えていた。

しかし小勝2等海佐は首を横に振って反論していく。

「安全のためです。それに掃海中に機雷が突如爆発する可能性も否定できませんし、市民を巻き込むわけにはいかないので」

遠回しに野次馬は引っ込んでほしいと言いたげな雰囲気を小勝2等海佐から感じ取れた。

確かに見慣れない軍艦がいきなり港内に現れ、物珍しさから漁船などがうろうろしては掃海の邪魔になるだろう。

『分かった。″空襲演習″として付近住民を防空壕へ避難させ、付近一帯に憲兵や警察官、更に佐鎮の海兵団も動員し警戒態勢を引く措置を私から話を通しておこう』

杉山中将は石井参謀長に指示を出すと、佐鎮に向け伝令を出す。

その一言で小勝2等海佐をはじめ自衛官はほっとした顔を浮かべる。

 

「ありがとうございます。では、次にどのような機雷が確認されているのかこちらをご覧ください」

スクリーンには各機雷の性能がまとめられた表が出て小勝2等海佐はレーザーポインターを用いて説明する。

「飢餓作戦に使用されている主な機雷はまずMK25。これは3種類に分類されておりMod0は磁気誘導式、Mod1は音響感応式、Mod2は磁気水圧複合式まで分類されています。次にMK26は磁気誘導式。最後にMK36はMK25の小型版と言っても差し支えありません。これらは主に航空機から投下できる沈底機雷に分類されており、見つけづらいのが特徴です」

説明を聞いている間、長井艦長は悔しさと称賛と嫉妬が内心で渦巻いていた。

(ただでさえ沈底式は見つけるのが難しく、燃料不足やB-29の空襲に苦心しながらも見つけ出したのは数個程度。なのに向こうはその倍どころではない数を見つけ出している。くそっ……素晴らしいが我々の存在意義がなくなるではないか)

チラリと横目で山部艦長を見ると同じようなことを思っているようで、目が合うとほんの軽く頷く。

それでも平静を装って小勝2等海佐の話を聞き続ける。

 

「では海上自衛隊はどのように機雷を処理しているのか。こちらの動画をご覧いただきたい」

映像が切り替わり5分程度の動画が流れる。

山部艦長と長井艦長はプロパガンダだろうと半信半疑で見ていたが、やはりカラー化されてカクカクしていない映像を見るたびにどう見てもこの日本と向こうの日本とは技術の差は歴然としていると嫌でも思い知らされた。

しかもヘリコプターで捜索するという手際のよさだったり、無人潜水機とやらで海中探索して掃討するといった画期的な兵器には度肝を抜かれる。

こちらも掃海具を新たに作ったりするが新しい機雷に対しての有効な手立ては無いに等しく、残された手段は機雷源に向け誰かが船で先陣を切り、爆破する前に海に飛び込んで突破するしかなかった。

タイミングよく飛び込まないと無人となった船は機雷源から程遠いところまで行ってしまったり、かといって誤ると水から伝わる爆圧に巻き込まれ船と一緒に木っ端微塵となるチキンレース状態であった。

このままでは確実な掃海はできないと業を煮やした上層部は船から飛び込むことを禁止したり、未だ多数の欠陥が残っている伏龍で機雷掃海するというある意味原点に戻ったりした。

その分犠牲者も出て多くの若者が海へ散ってしまった。

そんな無茶な命令でも彼らは文句ひとつ言わず、むしろお国のため、天皇陛下のために死ぬのは本望だと自ら進んで行く者ばかりだった。

徹底した洗脳教育が実った成果に諸悪の根源である皇国血盟維新団、いや今は新政府として神国政府を樹立した彼らはマスメディアも使って大胆的に称えると、感化された国民は神風特別攻撃隊に加わりたいと懇願する者や、鬼畜米英を追い出そうと町内や学校ごとでより一層訓練に励む光景が各地で見られる。

帝国海軍もその勇敢さを称賛しさらなる掃海を命じるも、結局資源不足と果てしない物量に押され処理できた機雷は日々少なくなっていったので残った兵器や人員は本土決戦用へと回されている。

戦争というものはこうも人を変えるものかと山部艦長と長井艦長は心の中で重い溜息をつく。

 

一方で海防艦娘たちはキラキラした眼差しで見入り、時折子供らしく歓声を上げていた。

動画を見終えると海防艦の佐渡が感想を投げかける。

「潜るやつって潜水艦娘にもできそうだなぁ」

「いや、潜水艦というのは鉄の塊で磁気が強い。下手すれば感応式の機雷に反応してしまう可能性があり得るのではないかと」

もがみ艦長の桑川(くわがわ)2等海佐の指摘に周りの海上自衛隊員はもっともだと頷く。

第二次世界大戦期の潜水艦というのは現代のものと比べれば静粛性が低いのが多い。

もし哨戒機や護衛艦がこの時代の潜水艦を探し出すとなるといとも簡単に見つけ、まるで銅鑼を鳴らしまくっているかのようだと評価されるだろう。

「なら艤装を外せば問題ないのでは?」

君は何を言ってるんだと言わんばかりの視線が鹿島に集中する。

「例外ですが艤装を外しても潜水艦娘は潜れます。それにスク水を着ているので大丈夫かと」

スク水と聞いて飲み物を飲んでいた自衛隊員たちがむせたり漫画のように吹き出したりと

動揺がみられたが、鹿島は意に介さず妖精さんを通して深災対へ伝令していく。

 

ー 深災対 ー

吹雪から渡されたメモの内容に内容に目を疑ったが、人員が多いほうがいいのは理解できる。

早速執務室に伊58のことゴーヤを呼び出すと、すぐに来てくれた。

「単刀直入に言うが、佐世保港にある機雷を安全地まで運ぶことはできるか?」

ゴーヤは何言ってるんでちか、と冷めた目で見ていたが事情を話すとふーむ、と考え込む。

「機雷を見つけることはやったことないでちよ。そもそも機雷なんて激レアでち」

ぶっつけ本番なことに難色を示す。

ちなみに深海忌雷というのがいるがどういうわけかZ3(マックス・シュルツ)と一緒におり、しかも夏にしか確認されていない。

噂では磁気ならぬ児気に反応しているらしいが、いかせん個体が少ないので未だ調査中である。

「だよな……ちなみに艤装を外して潜航した場合どれくらいできる?」

「そうでちね……半日くらいはずっと潜れるでち。まさかそれをやれと……?」

純酸素を事前に吸い水中で息を止めた世界記録は24分3秒でギネス世界記録に認定されている。それよりも24倍も長く潜れる計算になる。

「下手すれば轟沈しまうかもしれん。前例もないし行けと強く言えないが……」

「艤装なしで潜航するのは遊びとかでしかやったことないでちが、やれと言われればやるでちよ。もとより覚悟の上でち」

「……分かった。潜水艦隊は隣の総監部に向かってくれ。鹿島には連絡を入れておく」

ゴーヤが敬礼して退室しようとすると、提督が呼び止める。

「おいちょっと待て。その恰好のまま行くつもりか? スク水とセーラー服だけでは流石にまずいぞ。せめて着替えよう」

「あ……そうでちね。危ないところだったでち」

そのあと部屋に戻るとゴーヤは皆を呼び、服やスカートを履いたりしてから総監部に向かった。

 

 数分が経過しおしゃれした潜水艦娘らがぞろぞろと会議室へ入室すると余裕のあった会議室が今や満員御礼の幕が上がりそうなほど混みあう。

次々と女性が増えていく様子に山部艦長と長井艦長は目を丸くしている。

伊58・168・8・19・401・13・203・47・400・504・まるゆ・呂501の計12人がそれぞれ自己紹介をしていき会議が再開される。

ちなみにガトー級潜水艦のスキャンプはお留守番しているが、提督の許可を取りスキャンプにそっくりな妖精さんを通じて盗聴している。

そしてもう一度動画を流し潜水艦娘にも説明していく。

「……というわけで君たちは潜水艦と聞いている。よって水中処分員と共に超音波を使って機雷を映像化できるゴーグルとハンドソーナーを使って機雷を探し出してほしい」

初めて見るハイテクそうな機械に潜水艦娘から歓声があがり、海防艦娘は羨ましそうな声を漏らす。

それを見た鹿島はここに明石と夕張がいなくて良かったと思っていた。

あの二人ならガンギマリした目で涎垂らしながら質問攻めしまくって果てには解析しようとするだろう。

「まずは人海戦術で見つけ出すのですね」

指で眼鏡を押し上げた伊8が尋ねる。

「その通りだ。人数はできるだけ多いほうがいい。君たちは水中処分員と共にまずは港から近い″は海域″に行ってもらいたい。機雷を見つけたらすぐ報告し、近づかずゴムボートや掃海艇まで退避してくれ」

潜水艦娘たちは真剣な面持ちで頷く。

「そして我々は港から遠い機雷源、つまり″い海域″と″に海域″まで2機の掃海ヘリで水中処分員を輸送しへローキャスティングで機雷を処分します」

第111航空隊司令の白瀬(しろせ)1等海佐が続けて説明すると、イムヤのこと伊168が確認をとる。

「この海域の水深は15mくらい?」

「えぇ。先ほどのヘリによる調査で沖合まで行くと一番深いところで40mくらいの深さになっています」

ここでも水深がほぼ変わらないことに潜水艦娘はホッと胸をなでおろす。

「ただ、先ほどまで台風の影響で大雨が降っていたため、河川からの濁流で海中視界が悪化している可能性が高いです」

「なるほど……夜が明けてからも水中ライトは必須ですね。潮流はどうですか?」と水中処分隊隊長の稲鯨(いなくじら)3等海佐が挙手して質問する。

潮流が速いと更に視界が悪くなるだけでなく、漂流してしまったりする恐れがあるために命に係わってくるためだ。

すると山部艦長がポケットから手帳を取り出しページをめくりだす。

「今日は下弦の三日月で小潮であるから、潮の流れが穏やかだそうだ」と月齢表を見ながら答える。

まさか彼が答えるとは思いもよらず誰もがポカーンと口を開けてしまう。

「実は私は釣りが好きで、釣島(初島型電纜敷設艇2番艦)の艦長とは気が合ってよく釣りの話をしていたんだ。また南方では息抜きの時に部下とF作業をしていたこともある」

F作業というワードが出てきて色めきだったのは艦娘達だった。

確か海自にもF作業をするときはたまにあるが、あそこまで盛り上がるのは驚いた。

聞くとどうやら一大イベントのようで秋になると秋刀魚祭りまでやっているそうだ。

果てには横浜の臨港パークや富士スピードウェイでリアル秋刀魚祭を開催し釣った秋刀を市民に振舞ったり、大根すりおろしイベントや音頭を踊ったりと艦娘の間ではF作業=祭りという認識が根付いている。

海自でも過去に護衛艦カレーナンバー1グランプリを開催した経緯もあるから違和感がない。

話が脱線したので小勝2等海佐が咳払いして軌道修正する。

「おほん。他に質問はないか?……よし、では命令がでたらすぐ出れるよう準備に取り掛かれ」

解散しそれぞれの持ち場へと戻る。

あとは許可と周辺住民の避難、道路封鎖さえできれば第84条の2″機雷などの除去″により出動できるようにしておくが、その時間がもどかしく感じられた。

 

 

ー西部方面総監部ー

 ひとまず機雷除去の件はめどが立ちそうなので次の話題に移る。

「次に第16方面軍の横山中将からお話があるそうです」

古間空将が声をかけると、やっと出番が来たかと一歩前に出てくる。

50代半ばくらいの男性で彼の身体からは年相応の衰えを感じ取ることができ、体型もややメタボ気味だが、スキンヘッドに精悍な顔つきと口ひげは歴戦の猛将を思わせる。

 

横山中将と稲田参謀長は30分前にUH-2でここに到着した。

第2総軍等に事情を説明する件で幹部たちを引き連れ春日基地に寄ったら、向こうからちょうどいいタイミングに来てくれて良かったと言われた。

どういうことかと詳しい説明を求めるとこちらでは大将に当たる位の方々から名指しで話し合いたいことがある、と要望が来たそうだ。

直接会って話し合いたいということは相当切羽詰まっている状況なのだろう。

それに未来から来たらしいとはいえ大将という位からの要望は軍人たるもの無視できるわけがない。

しかし福岡から熊本まではだいぶ離れており、車で飛ばしても2時間はかかる。

かといって九州に集められた航空機は本土決戦用に回されているしどうするのかと思ったら、春日基地の滑走路に案内され見たこともないオートジャイロに乗らされ気づいたらここに連れてこられた。

頭がどうにかなりそうだったがさらに追い討ちをかけるように目の前に広がる光景は現実味がなく脳みそが爆発しそうになる。

ヘリ内で事前に説明を聞き眉唾物だと思ったが、いざ目の当たりにすると言葉が出ない。

洗練された建物の内部は昼のように明るく照され、港には見たこともない軍艦が係留していたり果てには女性の軍人もちらほらと見かけられた。

夢でも見ているのではないかと思ってしまうが、こっそりと自分の手のひらをつねっても痛いので夢ではなく現実だと再認識させられる。

 

「横山勇と申す。第2総軍司令部及び中国軍管区司令部に我々と出向き、貴方たちのことや原爆の件について説明してほしい。特に後者は人命、国益に関わることであるから早急をお願いしたい。具体的には市民を疎開したり司令部や官庁を別の場所に移すことを考えている」

疎開と聞いて関川陸将はあることが頭に浮かぶ。

 

(なるほど、原爆疎開か)

 

史実では原爆投下の後に新潟県知事が国に逆らうように緊急疎開を発令した。

実際にはその前日から疎開の噂があり、パニックになった市民が避難して市内はあっという間にゴーストタウン化していったことがある。

『広島市に向かって説得をすることに佐鎮も賛成である。司令部が壊滅してしまったら作戦そのものに支障がでるためだ』

杉山中将も彼の意見に同意する。

 

しかし大本営が納得してくれるのか、それが最大の懸念点であることを西部方面総監部に集っている自衛隊幹部たちは分かっていた。

「なら自衛隊のことを隠して伝えるのはどうでしょうか? 例えば陸軍の諜報部に情報を渡して流してもらえば……」と幕僚副長である丸潟陸将補が隣にいる幕僚長兼健軍駐屯地司令である曽木 陸将補に耳打ちする。

「いや、確か広島や長崎の原爆投下の時部下の報告を上官が握りつぶしてしまった例がある。いまいち信用できん」

そんなことが、と彼は小さく驚く。

 

原爆疎開は広島市・長崎市の原爆投下があったからこそ新潟市では疎開できたが、ここではまだ原爆は投下されていない。

訳の分からない未来人から映像を見せられ″このように原爆が投下される可能性がありますので逃げてください″と信じてもらえるのだろうか。

杉山中将たちにはなんとか信じてもらえたがそれ以外が連合国軍のスパイだ、お国のために逃げるのは恥だ、と言われればそれまでである。

 

すると鵠提督が挙手し提案をする。

『もし疎開してくれたら、その見返りとして我々の基地航空隊を広島に派遣するとちらつかせるのはどうでしょうか?』

(基地航空隊?)

聞きなれない言葉にほとんどの自衛隊員は首をかしげたが、杉山中将達はその意味が分かった。

『なるほど基地航空隊による航空戦力の提供か……。いい案だがそちらにはどんな機体があるのだ?』

『零戦はもちろん陸軍戦闘機や局地戦闘機、ドイツやイタリアの海外戦闘機、ジェット戦闘機の試製秋水やコメートもあります。それだけでなく偵察機や飛行艇もあります』

おぉ、と周りから感嘆の声が漏れる。

『更に可動率はほぼ100%を維持しているので問題ありません』

可動率100%というあり得ない数値に誰もが耳を疑い驚いた。

 

旧日本軍はジェット戦闘機やロケット戦闘機、高性能レシプロ機を九州防衛のために優先的配備しているも、お世辞にもいいとは言えない。

そもそも連日の空爆に加え潜水艦による通商破壊、機雷の封鎖で燃料や資材は入ってこない。

おまけに腕利きの職人や整備員は前線で駆り出されたので今は素人が殆どで、不良品が多いため騙し騙しで整備しているのが現状である。

そこまで落ちぶれているのにクーデターで政権をひっくり返して決号作戦を実行する新政権に笑い話にもならない。

しかし上がやれと言われたら否応なしにやるしかないのが軍国主義のつらいところだ。

そんな現状にため息をつきつつも横山中将と稲田参謀長は深災対が羨ましくも、本当にそんな航空戦力を所持しているのかと疑問に感じていた。

 

空自ですら全体の可動率は50%くらいで可動率の低下や共食い整備による現場の声が近年やっと大手メディアなどを通じて取り上げてもらえるようになった。

世界最強の軍隊である米軍ですら達成していない数値にいったいどんな手品を使ったらこうなるんだ、と疑念のまなざしを向けられる。

が、彼はどこ吹く風かのように話を続ける。

『後ほど基地航空隊の資料をお渡ししますのでご心配なく。また、広島だけでなく鹿屋や宮崎等に配備しようと思います』

『鹿屋と……』

「宮崎に?」

三面海将と古間空将は少しわざとらしく聞き返す。

『はい。自衛隊機はハイテクと聞きましたが法律的な観点から動かすのに手間がかかるみたいですよね。申し訳ありませんが邪魔なので九州北部へ行っていただきたいのです。攻撃すらできない自衛隊は現時点でお荷物なんです』

『その通りだ。やはり自衛隊というのは軟弱者の集まりらしいな』

『深災対が協力してくれるのならありがたい』と杉山中将と横山中将はうんうんとうなずく。

邪魔だのお荷物、軟弱者という辛辣な発言を聞いて一部の幹部たちはムッとした表情になったり、ピクっと眉を動かす者もいた。

法治国家だからと聞こえはいいが、他国と比べ制約が多いのがつらいところだ。

そもそも内閣総理大臣どころか官僚や国会議員、都道府県知事などがいないなんて誰が想定しているのか。

そのようなタイムスリップを前提とした法律を作りましょう、なんて言う人がいたら申し訳ないが頭の中を疑ってしまうか病院に通院することを進めるだろう。

「お待ちください! それは聞き捨てなりません。我々だって出来る範囲で模索中なんです!」

関川陸将が立ち上がって抗議するも、杉山中将はやれやれといった様子で冷たく答える。

『ではなぜ大日本帝国の未曾有の危機に対してすぐに協力しないのだ?  我々は鬼畜米英共を倒し国を守護らなければならない。貴様らがすぐ動かぬのであれば彼の言う通り大人しく逃げ我々や深災対に任せればよいのだ。それかそちらの兵器を我々に譲渡し情けない自衛隊の代わりに戦ってやってもいいのだぞ? さぁどうするのだ?』

関川陸将はぐぬぬ、と歯ぎしりしながらそれ以上何も言えず勢いよく椅子に座り込む。

少しイラついたように机を指でコンコンと叩いていた。

実はそれが合図であらかじめ事前に話し合っていたものだった。

合図に気づいた三面海将が鵠提督にアイコンタクトすると、彼は軽く頷く。

『しかし彼らはとても貴重な戦力です。それにあのような兵器は我々も扱いにくいものばかりです。前線から引いてくれるだけでも我々の負担は軽減されます』と少し同調するように鵠提督も発言する。

その様子を見た陸空海の将たちは内心してやったり、と笑みを浮かべる。

事前に彼からあえて帝国陸海軍側に立ち、わざと自衛隊を追い出す演技をすると聞かされていた。

深海棲艦が出現する前までは自衛隊も存在しており彼らの苦労がよく分かっているからだ。

 

するとタイミングを見計らった部下達が各部隊からのアンケート集計結果が書かれた紙を持ってきたので、受け取った陸空海の将官たちは速読する。

 

内容は川内・国分・都城駐屯地の陸自幹部達は全部隊をえびの駐屯地まで撤退するか、戦闘部隊はとある地点に留まって時間稼ぎをするかで意見が分かれたそうだ。ちなみに降伏する意見はほんのごく僅かしかいなかった。

自衛隊法に照らし合わせるなら、奥まで引きこもるよりある程度引き付け戦い、我々に被害が出れば反撃の口実ができてより動きやすくなるだろうと腹を括ってのことだ。

 

沿岸配備師団を見捨てるのかという批判の声も第12普通科連隊と第43普通科連隊、第8施設大隊内、第1航空群では当然上がった。

彼らの気持ちはわかるが、南九州だけの戦力ではとてもではないが勝ち目はない。

武器は強力だが駐屯地内の備蓄だけではあっという間に弾薬が尽きてしまい、以後は足手まといになる可能性が高いと幹部たちは必死になって説得した。

だったら銃剣を装着し突撃してまでもやります、と一部の隊員が血気盛んな意見が出るとそれだったら降伏して保護してもらったほうがマシだ、さらに一緒に撤退するべきだという意見がまた出てヒートアップし果てには殴り合いの喧嘩まで発展してしまう。

慌てた幹部たちが仲裁に入りなんとか引き離して場を収める。

第12普通科連隊と第43普通科連隊、第8施設大隊は地元である九州出身者が多く、ご先祖様がここにいるかもしれず守護りたいという気持ちが多かった。

確かにそうだよな、と各幹部たちの気持ちは揺れ動いていた。

3つの部隊の幹部たちが暗号化された無線で暫く意見交換をし、元の日本に無事に帰れる確率を少しでも上げるため今は無謀な犠牲者は出すわけにはいかないと改めて決断した。

前線にいる帝国陸軍に関しては各司令官と再度接触し、我々と後方に″転進″し態勢を立て直す案を打診する。

それでも反対するものは部隊から脱退してもいいし自衛用の武器や食糧などは渡すから後は好きにしろ、降伏するなりこの時代を生き抜くなり頑張ってくれと隊員たちに通達するとようやく引き下がってくれた。

 

こういった紆余曲折を経て、彼らは主力部隊が到着するまで各隊が障害物の構築をしながら小林市や都城市に集い、第25師団と共に遅延戦術をとるのはどうかと意見具申した。

健軍駐屯地にいる第8師団長にもこれが我らの総意だと伝えると、″君たちの覚悟はよく分かった。私達も最善を尽くして上と交渉する″と意を決してくれたそうだ。

『ふん、最初からそうすればいいものをわざわざ時間かけおって』と杉山中将はいやみったらしく呟くが反論したい気持ちをグッと抑える。

 

まとめると南九州に存在する全部隊は都城駐屯地を除き撤退。

そして横山中将とともに第2総軍司令部に出向く時間を調整し、疎開の見返りとして深災対の基地航空隊を派遣する案を出す。

異議は出なかったため同意したとみなし、ひとまず切りのいいところまで会議が進んだので帝国陸海軍の幹部達には応接間に案内して15分程度の休憩を設けることにした。

 

 さて、向こうも覚悟は決めたようだ。あとはこちら次第である。

バタフライ効果によってこの世界がどんな歴史を歩むことになるのかもはや誰にも分からない。

米大統領が別の人になるかもしれないし、どこかの国が政権交代で政党が変わるかもしれないし、有名な大手企業ができないかもしれないし、それどころか国際関係や国力などがガラリと変わるかもしれない。

ただそれを恐れてこのまま傍観すれば、自衛隊どころか日本そのものが消滅する可能性は高い。

かといって武器の世代差はあるも量に関しては向こうが圧倒的だ。戦傷者無しの完勝は難しい。

そして各国の歴史書には『軍事政権が戦争継続をしたため連合国軍により民族が消滅したアジアの国があります。それは日本国です』と以後に渡り長く語り継がれるだろう。

そうならないために関川陸将と三面海将、古間空将はクビ覚悟で全ての責任を背負うことにした。

すでに辞表は自室の机の上に叩きつけてある。

まず帝国陸海軍には極秘に無線で連合国軍の上官、できたら司令官クラスと交渉をする。

表向きは中立宣をし連合国軍とは交戦しない立場をとり、万が一交戦した場合降伏し武装解除する。

それを信じてくれないのならば佐世保港に来てもらい直接交渉していくが、実際は中立派と降伏派に戦争の現実を教えることであった。

話し合いでそう簡単に戦争が終わるなら軍隊なんてとっくに無くなっている。

そもそもこういった交渉は本来政治家がするものだが我々の時代の政治家はいないし、この日本を牛耳っている政権はイカれた戦争を継続している狂った政治家だ。

中枢に中立宣言します、とうっかり言ったら非国民と烙印を押され連合国軍だけでなく旧日本軍と国民義勇隊を相手しなければならなくなるだろう。

より地獄の光景になることは間違いない。

 

まだ戦闘どころか上陸してもないのに、いきなり敵国の一部の軍隊が中立宣言を出すのは連合国軍に罠ではないかと怪しまれるのではないか?という声が上がった。

 

「いや、これは抑止力になり攻勢することを躊躇するのでは? 未確認の軍隊がいきなり無線に入り込んで未来の武器を持っているし我々は歴史を知っている、なんて話したら不気味ですよ。それか秘密裏に特殊部隊でも作ったのか、と疑心暗鬼にさせることもできるかも」と西部方面システム通信群長の袋津1等陸佐が希望的観測を述べると、西部方面通信情報隊長の明田(あけた)2等陸佐が別の案を出す。

「連合国軍が上陸したあと、夜襲を仕掛け指揮所に入り込んで連合国軍の無線を分捕るのはどうでしょうか? こちらには文明の利器である暗視装置がありますし。それか連合国軍の指揮戦車、もしくは無線手を拉致するとか」

さらっと恐ろしいことを言い出したことに他の幹部はギョッとするが、かなり合理的だと納得する。

どちらの言い分も理解できるだけにどの案を採用するか誰もが頭を抱え唸るも、ひとまず第95条の″自衛隊の武器等の防護のための武器の使用″を発令し撤退作戦を最優先しつつ、いつどのタイミングで交渉をするのかを協議していく。

 

万が一であるが、もし交渉が決裂したら緊密な連携をとる為に統合任務部隊、″JTF-鎮西″を6年ぶりに復活させ、西部方面総監(関川陸将)を長とし西部方面隊を主力に置き、佐世保地方隊や西部方面航空隊等を組み込ませる。

更に超法規的措置として武力攻撃予測事態において第77条の″防衛出動待機命令″を発令することを決めると、幹部や隊員達の間に緊張が走り、身震いする。

 

 




推敲したり分割したり色々とこねくり回してしまった結果、前回の投稿から5か月が経とうとしている……!?

夏イベ→南瓜→秋刀魚
資源が足りないわしーちゃん! けど報酬は魅力的すぎるわ!!
飛龍(熟練)+イ号誘導弾☆1と64戦隊無事にゲットできました。
しかし秋刀魚がこれになるってどんな仕組みなんだろうか。南瓜と言い節分の豆といい謎が多いが解明しなければ。


おや、こんな時間に誰だろう?
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