異聞!決号作戦   作:シン・アルビレオ

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艦これ11周年、おめでとうございます!
吹雪ちゃん可愛すぎだろ!!

しばふ村を燃やすことに定評があるしーちゃんさぁ…感謝、圧倒的感謝ッ


13話 フィンブルの冬

 鹿屋基地ではP-1がまず普段見られないような重装備で待機しており、ハードポイントにはこれでもかと思うほど空対艦(ASM)空対地誘導弾(AGM)と短魚雷、対潜爆弾をぎっしりと詰め込んでいる。

ここまで詰め込むと重量が増して離陸するのに影響が出てしまうが、しっかりと計算したおかげでそういった事態は避けられた。

載せきれなかった分は既にミサイル・弾薬運搬車に詰め込んでおり、いつでも出発できる体勢を整えている。

 

 新田原基地では救難隊の機体がまず先に飛び立つことになり、その次に操縦課程中であるパイロットと教官を乗せた第23飛行隊のF15DJ、最後に第305飛行隊が離陸する。

パイロット達はすでにF-15Jに乗っており異常がないか最終チェックを行っている最中だ。

整備員も燃料補給、兵装の最終チェックを急いでいる。

第305飛行隊長の鳥原2等空佐が横に目をやると数々の牽引車やローダー、トレーラー、フォークリフト、ミサイル・弾薬運搬車だけでなく消防車、救急車も万が一の事故に備えてすぐ動けるよう待機している。

持っていけない車両は残念ながらこの後来る施設科の隊員によって爆破処分されることになったのでそうなる前にしっかりと目に焼き付けておきたかった。

愛用のアナログタイプであるG-ショックに目をやると時刻は0420を指しており、あと10分もすれば事前に決められた暗号が西部方面総監部から来るはずだ。

たかが10分とはいえ永遠に感じ、誰もが固唾を飲み今か今かと待っていた。

そして作戦時刻の0430になった瞬間、秘匿された通信回線が九州の全部隊へ瞬時に駆け巡る。

『フィンブルの冬が始まった。繰り返す。フィンブルの冬が始まった』

 

暗号をどうしようかという会議で、神話好きのとある幹部の発言でこれは良いとすぐに採用された。

北欧神話から世界の終末であるラグナロクが差し迫る前に、前兆となる冬が来るという発想から得たそうだ。

レーダーから得られる情報を冬のように白くするということらしく、この暗号が出たということはF-35Aによる電子攻撃は成功したといえる。

 

 その瞬間、待機していた新田原救難隊の機体が滑走路から次々と飛び立ち春日基地へ向かっていく。

続けて第23飛行隊のF15-DJが滑走路へタキシングする。

たどたどしい英語で管制塔とやり取りしながら離陸位置に着くと、習った通りに垂直尾翼やフラップ、エンジンノズル等が操縦通りに動くか、計器類に異常はないかよく見て確かめる。

新人パイロット達の呼吸は荒く汗をかいている。

そうなるのも無理もないだろう。

なにせ彼らは入隊してからまだ6年ほどしか経っておらず、しかも地震からいきなり太平洋戦争の末期にタイムスリップして連合国軍の上陸が目の前に迫っているので逃げてください、と訳の分からないクソッタレな現実を突きつけられている。

教官たちもポルナレフ状態で頭がどうにかなりそうだったが、感情を押し殺しいつも通りに指示を出す。

焦りが向こうにも伝わったら飛ばせなくなるかもしれないからだ

離陸許可が管制塔から出されると、アフターバーナーの轟音を響かせながら1番機が離陸し安定した飛行になり新人パイロットはホッとしたような表情を浮かべる。

教官は後ろを振り向く。沖合は黒に塗りつぶされているが軍艦がいくつもいるかと思うとゾッとする。

それと同時に明日には連合国軍による鉄の暴風が吹き荒れると思うと、慣れ親しんだ新田原基地を忘れぬよう目に焼き付けた。

 

第23飛行隊のF15-DJとT-4が次々と離陸していくのを見守っているF15J/DJが全て飛び立ったら輸送機やら回転翼機が入れ替わるように来て第2作業隊と管制隊、気象隊、警務隊を回収していく算段となっている。

輸送機なら15分程度、MV-22(オスプレイ)なら25分程度、回転翼機なら40分〜50分程度で新田原基地に到着する。

空輸の利点は基地警備用の軽装甲機動車も載せられるし、武器類や機密書類等は出来る限り463L貨物パレットに詰め込むこともできる。

ただ、火薬類の危険物を空輸するのは爆発物等の空輸に関する基準があるためその手続きや書類作成、梱包等がかなり手間がかかるのが難点である。

時間も限られているので出来る限り車両を用いたいが、築城基地と春日基地まではだいぶ離れている。

それにそこまで行くのに最低6時間近くかかり、沿岸部の道路は空襲やら艦砲射撃で穴ぼこだらけだそうだ。

高速道路も一緒に転移していれば問題は解決したが、残念ながら高速道路は来なかったようだ。

どっちをとっても地獄だが上層部は空中輸送員を生贄に空輸を選択した。

引っ張りだこになった陸と空の空中輸送員達はデスマーチで作業を進めてなんとかここまでこぎ着けた。

「ちくしょう、無事に元の日本に帰れたら給料アップを上に訴えてやる!」

「転属願を俺は出してやるぞ!」

「転移なんてフィクションだけでいい!」

悲痛な叫びが空中輸送員達の間で広がっていった。

 

 

 輸送ヘリのパイロット達はJAVN-V6を装着するとローターの回転数が一気に上がり、次々と滑走路から離陸して南九州へ向かっていき、陸自の駐屯地では一斉に車両のエンジンが吹かされる。

運転手は個人用暗視装置であるJGVS-V3を装着しヘッドライトはできるだけ最低限の灯りで走行する。

それと同時刻に深災対では空母艦娘から烈風を中心とした戦闘機を、基地ではB-29及びP-51対策として一式戦隼Ⅲ型甲や疾風、雷電、屠龍丙型を南九州に向けて18機ごと発艦させていく。

防空網をすり抜けたB-29に対しては秋水とMe163Bを滑走路脇にある防空壕に待機させておいた。

勿論空中衝突しないよう事前に自衛隊側と協議し転移する前の国土交通省が定めている航空法に基づいた結果、自衛隊側は1000フィートの偶数倍の高度を、深災対側は1000フィートの奇数倍の高度を飛行する。

つまり輸送機は20,000ft(約6000m)、F-15は13,200ft(約4000m)の新田原西回廊(コリドー)を通り、さつま町上空で旋回し築城西回廊へ向かう。

回転翼機は上限を9800ft(約3000m)に設定し深災対の戦闘機はこの間の高度を飛行することになった。

 

 佐世保鎮守府では一航戦(赤城・加賀・大鳳・雲龍・天城・葛城)と二航戦(蒼龍・飛龍・隼鷹・飛鷹・龍鳳)は吹上浜方面へ艦載機を飛ばす。

付近にはスプルーアンス大将が率いる第5艦隊がおり、歴史の転換となったあのミッドウェー海戦の指揮官である。

リベンジマッチになると彼女の闘志は心の中で燃えていた。

三航戦(鳳翔・瑞鳳・千歳・千代田)と四航戦(龍驤・祥鳳)の戦闘機は志布志湾方面へ飛ばし、五航戦(翔鶴・瑞鶴)と大鷹・雲鷹・神鷹の護衛空母の艦載機は宮崎方面へと振り分けられた。

放たれた戦闘機は夜空に溶け込みあっという間に見えなくなる。

連合国軍の艦娘たちはその光景を見守る他なく、その様子を見かねたアイオワがボーっとしている暇はないと発破を掛ける。

「さぁ、私たちにしかできない仕事があるわ。もう一度作戦会議するわよ」

連合国軍との交渉や呉で大破着底した艦艇の攻撃に対する艦娘の影響の確認等とやらなければならないことは多々あるのだ。

 

 

 そんな中、最初に異変に気づいたのは吹上浜に留まっている第5艦隊のレーダーピケット任務に就いていたギアリング級駆逐艦フランクス・ノックスのレーダー員だった。

いきなりレーダー画面が真っ白になりなにも見えなくなったので故障かと疑い、機器をチェックするも異常は見られない。

怪しんだレーダー員は艦長を呼び一緒に確認をとるが、やはり同じである。

トーマス・コープ艦長は無線で他のレーダーピケット艦に異常はないのか呼びかけるも、なぜか雑音ばかりが聞こえ使い物にならない。

これも故障なのか、と疑うが機器は壊れておらず、それどころかほんの数十分前まではちゃんと使えていたのだ。

すると近くにいたギアリング級駆逐艦サザーランドからだけでなく、他のレーダーピケット艦からサーチライトによる発光信号があちこちここにめがけて入ってきたと見張り員から報告があがった。

その内容はやはりレーダー不調の件でどの艦も同じような状況であった

トーマス・コープ艦長とレーダー員との間で静寂な時間が流れ、中には冷や汗が出るのもいた。

これが何を意味するのか。

そもそもレーダーピケット任務とは日本軍の航空攻撃、特に神風特攻隊の攻撃阻止を目的にアメリカ海軍の駆逐艦が任務に就いていた。

正規空母を中心とし周りには軽空母や戦艦、重巡洋艦と軽巡洋艦で円のように固めた。

その円の外側、50マイル外(約80㎞)にレーダーピケット任務の駆逐艦をいくつか配置するのが基本陣形であった。

レーダー探知ができなくなった、ということは目を潰されたのも当然だ。

この状態でカミカゼアタックを仕掛けてきたら艦隊に多大な被害が出るのは想像に難くない。

トーマス・コープ艦長が非常ベルのボタンを叩くように押すと艦内に甲高いサイレン音が響き渡り、寝ていた乗組員達は眠気が吹っ飛び何事かとお互い顔を見合わせた。

「総員戦闘配置! これは訓練ではない! 繰り返すこれは訓練ではない!!」とトーマス・コープ艦長が艦内放送で叫ぶと乗組員は狭い寝台から飛び降り毛布をきれいに素早く畳みバームクーヘンのようにする。

靴やヘルメット、そして救命胴衣のメイ・ウエストを装着しドアを開けると乗組員たちがそれぞれの配置場所へ向かうためドタバタと走っていた。

 

 ミッドウェー海戦の前に急病となったハルゼー大将の代わりに指揮をとり日本空母を4隻撃破する等目覚ましい活躍を見せたスプルーアンス大将は、このダウンフォール作戦において第5艦隊の大将に任命された。

いよいよ日本の運命をかけた一大決戦が始まろうとした矢先、いきなり躓いた。

スプルーアンス大将は戦艦ニュージャージーの司令部からまずどれくらいの艦艇のレーダーが使用不可になっているのか情報を集めることに専念するよう指示を出した。

数十分後、第5艦隊全てのレーダーと無線が使い物にならないことが分かるとこれはまずいな、と眉間に皺を寄せる。

カミカゼアタックが来る可能性が高まったため、こちらも見張り員を通常より増やしサーチライトも点灯させることでいつでも射撃できるよう指示した。

遠距離用に38口径5インチ砲、中距離用にボフォース40mm、短距離用の20mmに射撃指揮装置による隙の無い防空網を各艦に敷いていた。

「第21爆撃集団はどうするんだ?」

「作戦中止を伝えるしかないかと。航空機か駆逐艦で照明弾を打ち上げるのはどうです?」

参謀のバーナンド・ローリングス小将が提言する。

「しかしその前にハルゼー大将とフレーザー大将にもこの件を伝えなければならないかと。独断で動くと後で何を言われるか分かりません」

参謀長のアーネスト・カポンスキー中将の意見に対しスプルーアンス大将は同意するもどうやって伝えるのか悩み、話し合っていく。

すぐ動かせるのは駆逐艦、足が速いのは航空機とどちらも一長一短であるが結局航空機を飛ばすことにし、近くにいた58.4任務部隊のヨークタウンとイントレピッドに向けて発光信号で伝えていく。

ひと段落すると参謀長たちとなぜこうなっているのかと議論を交える。

「ドイツから技術を手に入れた線もあり得るかと。潜水艦を使って独まで派遣し往復した事例があります」と参謀のスミス大佐の発言にスプルーアンス大将は同意しつつ、「しかし44年6月下旬を最後に遣独潜水艦作戦はやっていないと聞いている。その前だったとしても、一年そこそこでできるわけがないと思うが」と否定的な意見を述べる。

ゼロファイターとか恐ろしい戦闘機などを作り上げた実績は認めるが、それが上手く行き過ぎて後続機の開発に難航したり無理な設計で拡張性に乏しかったり、更には物質不足なども相まって坂を転げ落ちるかのように没落している。

それでも注意深い性格の彼は各艦に怪しい者がいないか、特に日系人部隊を中心に調査せよと命令を出す。

あの部隊は星条旗に忠誠を誓っているとはいえ根っこは日本が起源だ。

「となると第442連隊戦闘団かMIS(アメリカ陸軍情報部)の日系人、あとは日系人通訳兵辺りですかね」とアーネスト・カポンスキー中将が脳内に叩きこんである情報を思い返すように答える。

「MISとなると……厄介だな」

考えたくもないが、そこから裏切り者が出たとなれば非常にまずい事態だ。

そもそもMISとは対外戦のため設立された陸軍情報部であり、日系人部隊は対日戦のため2世を中心に集められた。

彼らの任務は情報収集は勿論、捕虜への尋問、暗号の解読、サイパン島や沖縄戦では投降の呼びかけや説得等と多々にわたって活動している。

すでにダウンフォール作戦のために九州と関東を中心に日系人のMIS隊員や非MIS隊員の翻訳員を事前に派遣しているが、彼らが裏切って現地民と協力して秘密情報を日本軍に横流しをして、レーダーや無線が使えなくなる事態を引き起こすことは十分にできる。

もしくは艦内に潜む裏切り者が何かしらの工作をして妨害している可能性もあり得るが、

あくまでこれは可能性の一つだとスプルーアンス大将は心を落ち着かせようとマグカップに淹れてある冷めたブラックコーヒーを一気に飲み干した。

 

 

 種子島の喜志鹿﨑灯台から北東へ45km先に留まっているイギリス海軍太平洋艦隊総司令官のブルース・フレーザー大将は戦艦キング・ジョージ5世の司令部におり、イギリス海軍だけでなくオーストラリア海軍とニュージーランド海軍、カナダ海軍、南アフリカ海軍の各艦艇から情報を集めている最中であった。

まず電子妨害の線も考えたがそれはありえないだろうと判断した。

バトル・オブ・ブリテンでは空戦だけでなく互いに電子戦を展開し、いたちごっことなったが、結果としてイギリスの勝利に終わった。

しかしここまでの広範囲の電子妨害となるとイギリスでさえまだ研究途中だ。

参謀長や部下達と議論をしていくにつれ、こうなっている原因は太陽嵐によるものではないかと推測していた。

1859年にイギリスの天文学者によって観測された太陽嵐は歴史上をみても大規模であり、電波障害や電信機器が壊れてしまった事例があるし、ここまで広範囲に影響が出ているなら尚更説得力は上がる。

信書を書いているときも、このことを米艦隊にどう伝えようかと悩んだ。

足の速い駆逐艦でも各艦隊に到着するのはおよそ二時間半後である。

夜間戦闘機タイプのファイヤフライを載せているインプラカブルの第1771飛行隊を飛ばす案も出たが、向こうの状況が分からない以上おいそれと着艦はできない。

空母の甲板が満席だったらグルグルと上空を飛んでるしいかなく悪戯に燃料を消費するだけなので、ならいっそ信書を投下する手も出たが上手くいかないと海に落ちたり人に当たって怪我したり、待機している艦載機に穴が開くかもしれない。

結局U級駆逐艦のグレンヴィル・ユリシーズと駆逐艦の護衛担当である軽巡洋艦ニューファンランド・ガンビアを向かわせ艦隊に横づけし手紙を渡すことにした。

 

 

 日向灘に留まっていた第3艦隊(第38任務部隊)総司令官ハルゼー大将は戦艦ミズーリの司令部で各艦から集められた報告を聞いていた。

レーダーだけでなく無線もダメになったらしく、今はサーチライトでの発光信号でなんとかコミュニケーションをとれてるが、このままでは連携をとることは難しいことを意味してした。

本当は日の出と沖縄本島や硫黄島、フィリピン、マリアナ諸島から第21爆撃集団を出撃させ空爆させあの真珠湾のように奇襲を仕掛けるつもりだったがいきなり計画が頓挫してしまった。

ちなみに第20爆撃集団に関して当初マッターホルン作戦を策定し司令部をインドのカラグプールに、前進基地を中国の成都市に置いて日本や占領地の空襲をする算段であった。

しかしこの作戦は問題点が山積みであったのだ。

簡単に言えば前進基地の設立遅れやB-29の開発遅れ、ヒマラヤ山脈を飛び越える過酷な環境、C-87輸送機の能力不足、空路に頼らざる得なかった備蓄燃料の不足、そして日本まで遠すぎることもあってサイパンを占領した後は日本の占領地を中心をした空爆に移行した。

こういった経緯もあってマッターホルン作戦は中止され、生産体制が確立し軌道に乗ったB-29は第21爆撃集団に編入されることになる。

 

一先ず彼はまずカミカゼアタックを警戒しつつAN/APS-6レーダーを搭載している夜間戦闘機を発艦させ偵察を行うように働きかけるも、航空無線も使い物にならないことが整備員によって分かると苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべる。

連携が物をいう航空無線が使えないとなると、パイロット同士によるハンドサインか信号弾による意思疎通しかない。

沖縄の地上司令部もおそらく艦隊との連絡がいきなり取れなくなったことを怪しんでいるだろう。

「どうにかして第21爆撃集団にこの件を伝えなければジャップに不意打ちされ、損害が大きくなってしまうぞ。0430時点でどこにいたか分かるか?」

0400の定期連絡から速度が変わっていないと計算すると、第21爆撃集団は南大東島周辺にいることが判明した。

「ふむ、ではどこに降ろすのが適任かね?」

第21爆撃集団がいる地点からテニアン島のウエストフィールド基地、グアム島のマリアナ基地、硫黄島飛行場までどれくらい距離があるのか地図に定規と鉛筆を使って距離を図っていくと、ウエストフィールド基地は2310㎞、マリアナ基地は2400㎞、硫黄島まで1190㎞と判明した。

硫黄島基地はこの中では近いほうだが、あそこは緊急着陸や補給用途として使われておりそれほど大きくない。

中国の前線基地に一番近い所は桂林基地と柳州基地であるが2200㎞以上離れている。北マリアナ諸島から離陸しているので実に4000㎞以上となり、B-29の戦闘行動半径でもたどり着けない。

となると沖縄の各滑走路に降ろし、トラブルがあった機体は硫黄島に降ろすという結論に至った。

「それと、スプルーアンス大将とフレーザー大将のところも我々と同じような事態になっている可能性が高い。事態を解決するために航空機を使って情報を共有していきたいがどうかね?」

カーニー参謀長の提案に反対する者はいなかった。

それを伝える航空機は空母インディペンデンスに載せてある夜間戦闘機が適任かと思われたが、今すぐ動かすとなると艦隊ごと動かすしかない。

機関は動いているが夜間でなおかつ無線が使えない以上、艦隊運動をするのは難易度が跳ね上がるため避けたい。

それにカタパルトを持たず他の空母と比べ小ぶりのインディペンデンスとなると、合成風速を得なければ発艦は難しい。

「カタパルトを装備しているエセックス級が適任か。よし、発光信号で各エセックス級に向けて伝えろ。そちらの夜間戦闘機で第21爆撃集団と沖縄の各基地に向けて飛び立ち爆撃中止とB-29の受け入れ準備を進めろ、と」

ハルゼー大将が命令を出しサーチライトの担当者が近くにいたイントレピッドに向けて発光信号をしていくのを横目に見つつ、イラつくようにテーブルに向け拳で殴り下ろす。

「ちっ、もうすぐ一大作戦が始まるというのにレーダーも無線を使えなくなるとは……見張り員は増やしているか?」

「えぇ、ご心配なく配置はすでに完了し警戒態勢をとっています」

カーニー参謀長が自信満々に答えるとよろしい、とハルゼー大将は少し機嫌がよくなったのか小さく頷く。

チラリと外に目を向けるとサーチライトの道が上空だけでなく海面にもハリネズミのように幾つか伸びている。

それに空母よりも頑丈で対空砲が充実している戦艦にいるので気が楽だ。

「ジャップの新兵器ですかね?」と参謀のベンジャミン大佐は問いかける。

「ありえん。第一、艦隊全てのレーダーや無線を無力化するなんてジャップの工業力では起こせるとは思えんがね」とハルゼー大将は彼の意見を一蹴する。

「でも一斉に使用不可になるのもおかしな話です。故障だとしても、こうなるのは天文学的な確率です」と参謀のカールー少将が反論する。

第3艦隊は今回の作戦で57隻有しており、それぞれ任務部隊ごとに分かれているがそのすべてが全くの同タイミングでレーダーや無線が故障するのはどう考えても不可能であり、何者かによる工作と考えてもおかしくはない。

ただ思い当たる節もなくああでもない、こうでもないと白熱した議論が続けられている中、司令官であるバーナード中将はなにか思い出した様子で発言する。

「無線まで使えなくなった理由は現時点では思い付かないが、レーダーの不調ならチャフによる妨害は考えられるのでは? たしかオスカー(一式戦闘機隼)といった戦闘機がチャフを搭載しているということがオキナワであった」

沖縄戦では少数であるが尾翼の部隊マークから65戦隊が艦船や対地攻撃を散発的に仕掛けてきたり、チャフを撒いて後続の攻撃機を支援したりとかなり手を焼いたが多勢に無勢であり戦況を覆すには至らなかった。

「チャフか……そういやブーケンビル島でジャップのファイターがそれをばら撒いて混乱させた隙にべディー(一式陸攻)が襲来して軽巡洋艦のデンバーがやられかけたな」

レーダーと連動した対空砲がチャフのせいで散らばってしまい効果的な射撃が出来ず、陸攻の雷撃を許してしまったことにその時の指揮官であったハルゼー大将は忌まわしそうに吐き捨てる。

「しかしチャフを撒くとしても1機では到底無理です。かなりの数の機体を動員し天候も計算しつつ上手くばら撒かなくてはなりません。更に撒くとしても我が艦隊のレーダー波長が合わないとチャフの意味がありませんし、かなりの低空で飛行して艦隊の目の前で急上昇してからチャフを撒いたのでは? レーダーの弱点を突いた可能性もあると思います」

もう一人の当直のレーダー員が口をはさむ。

レーダーの弱点は遠距離における低高度の目標探知である。

電波は水平線上をまっすぐに飛ぶ性質があるが、地球は曲面を描いているので電波の下に入り込んでしまえばどんな優秀なレーダーも探知できない。

カミカゼアタック対策でもあるが、それを出来るだけ防ぐためにレーダーピケット艦を配備しているのだが、現に起こってしまった以上レーダーピケット艦は寝ていたのだろうか。

「なるほど一理あるな。とりあえずレーダーピケット担当の艦長を呼び出して真偽を確かめなくては」

「待ってください。レーダーピケット艦が離れた隙にカミカゼアタックが来たらどうするんですか?」

バーナード中将が懸念事項をあげた理由は、ジャップはそれを狙っているかもしれないのだ。

「今は動かさない。動くのは0700だ。防空巡洋艦をレーダーピケットにするなら問題なかろう。そうだ、それと同時に艦載機を発艦させよう。地上のどこかに妨害する機器があるはずだ」

するとカーニー参謀長が提言する。

「これほど大規模な出力をするとなると、大量の電力と大きい機器が必要なはずです。更に遠くに送るなら山頂にあるでしょうな。怪しいものを見つけたら攻撃しましょう」

「うむ、無線が使えない以上現場の判断になるが構わん。爆撃でも機銃射撃でもなんでもしろ」

連日の空爆や機雷封鎖で確実にやせ細っているはずだ。

なのにここにきてこのような妨害を仕掛けるとはなんとも不気味に感じられた。

 

 各空母の甲板では作業員が大慌てで作業を進めていた。

奇襲に向けて事前に爆装は終えていたが艦載機のエンジンはまだ動かしてなかったし、カタパルトの蒸気もまだ溜まっておらず吊光弾は急いで装填作業中だ。

本来なら5時15分頃に作業を始めるつもりが、例の騒動のせいで早めに叩き起こされたので作業員達は若干恨み言を呟きつつも統制された動きでこなしていく。

 




吹雪ちゃんを讃えよ(ドンドコドンドコ
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