空が徐々に白くなりゆく頃、後方にいたB-29がエンジントラブルという名の偽装でわざと速度を落として飛行することになり、宝島上空をゆっくりと飛んでいた。
通常通り飛行している機体は奄美大島付近に差し掛かったことで二手に分かれている状態となっている。
もちろん深災対も同じように分かれて監視を続けている。
B-29のエンジンは火災事故が多い持病を抱えていることは知られていたので疑う妖精さんはいなかった。
だが、紫電改(三四三空)エースパイロット妖精の菅野は違和感を感じていた。
そのため部下に偵察を命じ、いくつかの防空陣地を発見できたものの連合国軍は発砲することはなかった。
(奄美大島はすでに連合国軍の手に落ちているはず。もし俺たちを狙うならここだが対空砲ならB-29らも巻き添えしてしまう。それに偵察機にも撃つことはなかった。まるで何かを隠している……?)
『全機に告ぐ。どうも嫌な予感がする』
菅野っぽい妖精さんが無線で警告を呼びかける。
『同じく。なにか仕掛けてくるならそろそろ来てもおかしくはない』
すると奄美大島の至る所からキラっと光ったような気がして岩本っぽい妖精さんは目を凝らす。
雲でよく見えず正体は不明だが驚異的な視力でいやな予感を感じ取り、無線で怒鳴りつける。
だが突然無線の調子が悪くなり途切れ途切れになる。
「くそ、肝心なところで!」
岩本っぽい妖精さんは舌打ちしつつも、ハンドサインやバンクで意思の疎通を図る。
だが数百機以上の味方機に伝えるのは時間がかかってしまう。
爆撃集団の中にはまるでヤマアラシのようにあらゆるところにアンテナがにょっきりと突き出していたECM専用の機体がいた。
深災対の無線を受信及び分析し、ここぞというタイミングで最適な妨害電波を発していた。
妖精パイロットが悪戦苦闘している隙に、P-51Hが急上昇し、B-29は急降下し速度を稼ぐ。
上昇するか、それとも散開し追うかで一瞬迷ってしまう。
『彗星隊、今すぐ爆弾投下し戦闘空域から離脱せよ……って無線が使えないんだった!』
彗星隊は無線が使えなくなった異常事態にもかかわらず異常事態を察知し、ハンドサインで三号爆弾を投下する。
遠隔操作とアナログコンピューターの組み合わせをもってしても彗星から投下された爆弾を機銃で破壊することはできず、次々と炸裂し爆撃集団の編成は乱れ始めいくつかのB-29は火を噴いて落下していく。
(先にヴァルハラに行くことになりそうだ……さらば愛しいワイフ)
ウェスト大尉は頭から血を流し薄れゆく意識の中で必死に操縦桿を操作するが、主翼や尾翼はズダズダで機体をコントロールするのはもはや不可能な状況だった。
奮闘むなしく機体は海面に強く叩きつけられ衝撃でバラバラになる。
機体が軽くなり上昇し突き上げを試みるP-51Hをギリギリまで引き付けるとひらりとかわし一斉に急降下する。
急降下によって防御火器と迫りくるB-29にぶつからないよう巧みに操縦し高度を下げていく。
エンジンだけでなく急降下にも耐えられるよう機体を改装し、急降下速度が最大で700㎞/h越えをだせるとはいえ所詮爆撃機。
洗練された空力設計をもつP-51Hは最大速度750㎞/hを優に超えるためあっという間に追いつかれる。
彗星妖精たちは急降下のGとそれに伴う大気を切り裂く機体から出る独特の音に耐えながら13㎜後方旋回機銃でP-51Hの進路を妨害する。
喰われてしまった彗星もいたが、逆に13㎜後方旋回機銃の銃弾がエンジンに命中しきりもみ回転して墜落する機体もいた。
「1機落としやした!」
「よくやった! このまま逃げるんだよぉ!」
彗星の妖精たちは必死に操縦し放たれる凶弾から躱し続け、高度計の針が3000、2500,2000とグルグルと回り海面が眼下に迫ってくる。
だがP-51Hは追うのをやめると高度を稼いでいく。
低空での戦いに引き込もうとしたが深追いはするなと共有されているのだろう。
「ふぅ……味方の戦闘機はまだ来れないのか?」
「どうやらマスタングの野郎はこっちを追う部隊と戦闘機部隊を妨害している部隊と2つに分かれている模様です」
「そうか。暫くはこのまま低空で飛ぼう。一撃離脱戦法をとるはずだからしっかりと監視しろ」
妖精隊長は散り散りになった彗星隊を再編しようとするも、無線がまだ使えない状況であり視認できる範囲で集まり始める。
謎の新兵器が炸裂したあと、P-51Hが2つの部隊に分かれこちらへ襲撃し生きのこったB-29の防御火器が一斉に降りかかったことでバタバタと撃ち落とされてしまう深災対の機体が続出する。
(くそっ……なんだったんだあれは。三式弾みたいなもんか?)
だが三式弾にしては細長い形状が生きているかのように恐るべし速度でこちらへ向かってきた。
一撃離脱を試みるP-51Hから回避しつつ眼下には黒煙を吐いて墜落する僚機がいくつも見える。
「やろぉ……よくも仲間をやりやがったな」
菅野っぽい妖精さんはこめかみに青筋を浮かべる。
すると無線が復活したようで鬱陶しいノイズも無い。
『遅くなってすまない。これでそちらの無線が使えるはずだ』
『空自さんありがとう助かった! よし、新撰組、殺るぞ』
「よぉし! お返しに鉛弾をプレゼントするぜぇ!」
妖精パイロットたちは舌なめずりしながら狙いをつけ、機銃が乱射されいくつかのP-51Hが撃墜される。
空は防御火器を乱射しながら逃げるB-29を追う深災対の機体、それを追うP-51Hが乱舞する激しい空戦と化した。
「あの黄色いストライプの
ベテランエースパイロットのドーゴン大尉が菅野と殺りあうために狙いをつけた。
「弾幕が薄いぞ! 次々と撃ち落されているではないか!」
「それに電子妨害もできません! こんな強力なECMがジャップに実戦配備されていたなんて……」
“ハリネズミ”のリーダ機では必死にECMの機械を再起動しているがうんともすんとも動かなくなり、ただのガラクタと化した。
実はF-35Aがカウンターシギントを行いB-29による電子妨害を無効化させたおかげで深災対の無線が復活できた。
空戦を支援するために無線で深災対の妖精パイロットに指示を出していた。
また爆撃集団に対して偽りの情報を無線で伝えることで混乱を生むよう仕向ける。
そのおかげでP-51H同士のヘッドオンや、B-29の防御火器がP-51Hに命中したりと同士討ちが多発。
局地戦闘機の烈風改と雷電は上昇した後急降下で孤立しているB-29の弱点である主翼の付け根を機銃で打つと、面白いようにぽっきりと折れて墜落していく
B-29のリーダ機を引き続いたトラーニャ大尉はその様子を見て戦慄する。
「またやられている! なんだあの
「
副機長のチャップル中尉は20㎜機銃を4丁を装備した
「くそ、ちょこまかと避けやがって!」
一離離脱を仕掛けるもまるで闘牛士のようにひらりと回避するジャップのファイターにドーゴン大尉はイラつく。
とくにイエローファイターの
(ジャップファイターの土俵に乗るな! 一撃離脱を厳守しろとブリーフィングであれほど言ったのに!)
今までならP-51Hのおもちゃになるだけの餌だったが、これはどうだ。
ジャップファイターは機体の性能を最大限に生かしP-51Hと互角の戦いを繰り広げられているではないか。
(おもしれぇ……こういうヒリつく戦いを望んでいたんだ! まだまだ……ここだっ!)
6丁のブローニング12.7㎜機銃が火を噴くが、まるで後ろに目が付いているかのようにすんでのところで躱される。
(これも躱した!なんてやつだ)
ドーゴン大尉は舌を巻く。
エースパイロット同士の日本刀のような鍔迫り合いで攻守が目まぐるしく変わる。
ドーゴン大尉の部下たちも苦戦しているようでなかなか落せず、新撰組も同じようで時間だけが過ぎていく。
遅れて旧日本軍の戦闘機が戦場にやってくる。
深災対の腕前は見事なもので、しっかりと連携をとって連合国軍と互角以上に戦っている。
この空戦で対空特攻は戦闘機相手では意味がなく、九七式戦闘機と九八式直協ではあっという間に蹂躙されるだろう。
だがおめおめと帰れば鉄拳制裁コースは間違いない。
非情だが隊長はハンドサインで突っ込め、と命令する。
「ちっ、
「だが時代遅れのファイターもいやがるぜ」
連合国軍のパイロットは口笛を吹きながら自分たちより時代遅れの戦闘機を嘲笑う。
早々と片づけて深災対のファイターを叩き潰してやろうと考えていた。
旧日本軍の戦闘機も到着したことで空はさらに混沌となる。
振武隊の九七式戦闘機と九八式直協の若いパイロットは八九式固定機関銃をなんとか撃つも防弾が当たり前となっている連合国軍の戦闘機ではむなしく弾かれた。
それに速度も遅いためあっという間に引き離される。
だが利点もあった。
特に九八式直協は速度が遅いため高速化が当たり前となっている連合国軍の戦闘機を失速ギリギリまで引き付けることができた。
P-51Hが失速手間となっている隙に疾風などが襲いかかって撃墜する。
だがそれもつかの間、一撃離脱戦法をとられると次々と若い命が空へ散っていく。
(あぁ、これで靖国へいける……)
若いパイロットは薄れゆく意識の中、家族や大分前に戦死した戦友の顔を思い出しながら海面へ激突する。
お互い弾切れや燃料がギリギリになった機体が相次ぎ、1時間もしないうちに東シナ海航空戦は終えた。
特に被害が大きかったのは旧日本軍の戦闘機で損失率と被弾率は95%、深災対も無傷で生還した機体は少なく、損室率と被弾率を合わせると25%であった。
B-29やP-51Hもかなりの機体を失い無事に沖縄までたどり着いたのは66%であったため、カタリナによる救助隊派遣を検討している。
ドイツが史実より早い1944年5月に無条件降伏したため、連合国軍はドイツ軍の兵器をこぞって研究した。
特にアメリカはペーパークリップ作戦によりドイツの優秀な科学者及び技術者を連行し、ジェット戦闘機やロケット兵器、レーダー類の開発を加速させていた。
その結果DH100シーバンパイアはFwフィッツアーを参考にして改良されたものを量産化に成功。
AZON誘導爆弾及び改良型のRAZON誘導弾、ASM-N-2 BATやフリッツX対艦ミサイルやHs293をもとに“ガーゴイル”、“VB-6フェリックス”、“GB-1シリーズ”の量産に成功。
またHs117やヴァッサーマファル地対空ミサイルをコピーしたものを沖縄本島やトカラ列島に配備し、Hs117HをもとにAAMA-2ファルコン空対空ミサイルを双発爆撃機などに搭載。
一方で艦対空ミサイルについてであるがドイツは開発をしていなかったため、一からの開発となるもイギリスの“ストゥッジ”とアメリカの“ラーク”を実戦配備を間に合わせた。
V2ロケットは“バンパー”と命名され当初は甑島列島や五島列島、種子島、屋久島に配備される予定だった。
なぜなら射程は320㎞になり九州を丸々とおさめるからだ。
だが九州から目の鼻の先であり特攻による被害が予想されることから中之島と宝島に配備され、射程を400㎞に伸ばした改良版は奄美大島へ配備された。
V1飛行爆弾はJB-2、海軍版のJB-2はKGW-1と呼ばれ第3艦隊の護衛空母と戦車揚陸艦、哨戒機から発射される対地ミサイルを実戦配備している。
来る日まで無線封鎖をしており第442連隊戦闘団から新たに独立した砲兵大隊は暗号を受信した瞬間、
隊長であるジェイク・J・オカザキ中佐が部下へ檄を飛ばす。
「諸君、いよいよこの日が来た! 各員持ち場へとつけ!」
部下たちは雄たけびを上げながら統制された動きで各持ち場につき、巧妙に隠された偽装網を一斉に外した。
すでに燃料は入れてあるのであとは目標諸元入力して発射ボタンを押すだけだ。
「全て発射準備完了しました。あとは隊長のご命令があればすぐにでも発射できます」
「よし……これより我が大隊は任命を受けた通り九州をこの新兵器をもって全力で破壊する。我々は黙示録のラッパ吹きである。まずは第一のラッパを鳴らそうではないか!」
再び雄たけびが響き、各発射装置のボタンが押される。
すると轟音と共に弾道ミサイル“バンパー”が車両から打ちあがり天高く登っていく。
弾道ミサイル基地はF-35Aのレーダ探知距離よりもほんのわずかに遠かったため、それがあることは気づけなかった。
旧日本軍による百式司偵による決死の偵察も気づけず、沖縄戦で生きのこった日本兵も日を追うごとに次々と殲滅され、あるいは捕虜になるのは恥だと自殺したため本土に脅威を伝えることはできなかった。
決戦が間近となり一旦集められ、合同リモート会議が再開されると向こうにも交渉が決裂したことが伝わっており、ほれ見たことかと鼻につく態度を見せていた。
それに旧日本陸軍の幹部たちは異口同音に特攻せよ、とのたまうだけで具体的な案は1つとして示していない。
本来なら反論をしたいところだが、関川陸将はグッとこらえる。
「自衛隊としては、再編を経たのちに独立部隊として運用をしたい」
「それはこちらの命令を聞かず好き勝手に動くということか?」
横山中将がぎろりと睨みつける。
「いえ、そうではありません。情報ネットワークによってリアルタイムで変化する状況に対応することができます。自衛隊の現代的な装備と知識を駆使し、得た情報をお互いに共有し戦えば大きな成果を上げることができるでしょう」と関川陸将は言い切る。
しばらくの間沈黙が続いた後、横山中将がゆっくりと口を開く。
「言い分は分かった。確かに君たちには大きな可能性があるようだが、戦いを始める前から逃げたくせによくもそんなことが言えるもんだな」
「その通りだ。後方まで逃げた軍隊など信用できん! そんな腑抜けと連携など取れるか!」
旧日本陸軍幹部たちから罵詈雑言を浴びるが何とかこらえる。
ここで激昂してしまえば火に油を注いでしまい、収束がつかなくなりかねないからだ。
さらに第16方面軍高級参謀の穐田大佐からダメ押しのように言い放つ。
「自衛隊は戦力を温存させているから、このような考えを持てるのだ。おめおめと撤退をしたくせに余裕ぶっていて羨ましい限りだ。だが我々帝国陸軍は違うぞ、どんな状況でも引き下がらずに前進あるのみだ」
そうだそうだと周りも騒ぎ立てる。
熱狂は誰にも止められなくなりかけるが、冷水を浴びさせる事態が発生する。
まず最初に複数の弾道ミサイルを探知したのはF-35Aに搭載されているDASとAPG-81レーダーが弾道ミサイルを発見し、追跡とターゲティングを開始。
コンマ数秒後には近代化改修された第43警戒隊のJ/FPS-3改が探知し、空自の
「Jアラート発動! だ、弾道ミサイル発射情報……です。弾道ミサイルの数は8、九州に落下する模様! 予測のブレが大きい……」
北か中国、それかロシアがこの世界に来てしまったのかと自衛隊全員が思った。
だがF-35Aの分析のおかげで弾道ミサイルの形状が現代とは異なることと、トカラ列島の中之島十島村と宝島、奄美大島から発射されたと判明した。
安堵したのもつかの間、最悪のパターンを頭に浮かべる。
核弾道ミサイルなら終わりだ、と。
すると横山中将が大声をあげ参謀長たちに命じる。
「大本営と第2総軍、第1総軍、海軍総隊司令部に訣別電報と辞世を送れ。そして全軍に通達! お国のために命を捧げろ! 大和魂をもってして鬼畜米英を皆殺しにせよ。なんでもいい、どんな卑怯な手を使ってもいい。特攻こそ我が軍人の最も名誉の高い戦い方だ! この九州に足を踏み入れた鬼畜米英の軍勢を我ら第16方面軍で追い返し、最後には打ち破ってみせ再び大東亜共栄圏を復活させようぞ!」
部下たちが大盛り上がりをしている光景を見て横山中将は満足気に頷く。
「まずは弾道ミサイルとやらを撃ち落とすのだ! 諸君、靖国で会おう!」
高高度から音速を超える速度の弾道ミサイルを撃ち落とせるわけがないと自衛隊員は誰もが思うも、口には出さない。
関川陸将は破壊措置命令に基づいて対応しようとするも、横山中将が横槍を入れ脅すように言う。
「おい、あんなもの神風が吹いて大和魂の精神をもって対空兵器で撃ち落とせるから邪魔をするな」
「……分かりました。ただ、自衛隊の敷地内に落下する場合のみとします」
「自分のところは自分で守るのは当たり前だろう。そんな当たり前のことすらわからんのか未来の日本軍は」
稲田中将も呆れたように悪態をつく。
弾道ミサイルの半数は不調により空中で爆発四散したりそのまま海に落下したものの、残りはトラブルなく飛翔していく。
結論として第16方面軍は弾道ミサイルを撃ち落とすことはできなかった。
核弾頭ではなく通常弾頭であったのは不幸中の幸いだが弾道ミサイルが予想していた数よりも少ないと判明すると、本当に神風が吹いたのだとどんちゃん騒ぎしていた。
自衛隊どころか深災対の艦娘ですらリモート上で呆れた様子で冷ややかに見つめる。
そんなことにも気づかない第16方面軍の幹部は、今度はこちらの番だと言わんばかりに猛威を振るうことを確信している。
弾道ミサイルの1つは偶然にも撤退済みの川内駐屯地に落下し、時限式プラスチック爆弾で破壊しておいた駐屯地を跡形もなく更地にした。
1d100のダイス判定で空戦の損失を判定してみました。
連合国軍:66
旧日本軍:95
深災対応:25
0から20は艦これでいうカスダメあたりになります。20から40は小破、40から60は中破、60から80は大破、80から100は全員大破か轟沈。
ダイスの神様いい仕事してるな。
4/23で艦これは13周年、最近始めたニケも3.5周年とまさかの被り……すごい偶然だ。
嫁艦の吹雪ちゃんがいよいよ改三になると思うと心が躍りますね。
吹雪ちゃんを称えよ(どんどこどんどこ)