異聞!決号作戦   作:シン・アルビレオ

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我らの道


18話 弾道ミサイルにはミサイルを

 連合国軍による第一波の弾道ミサイルは8発のうち3発が退避済みの川内駐屯地、鹿児島湾にある無人島、宮崎市を流れる大淀川に弾着した。

残りの1つは再突入時の衝撃に耐えきれず天草諸島の上空でバラバラになって四散した。

幸い精度は低く人里から離れたところに落ちたため人的被害は少なかったが、小規模な火災も発生したため横山中将や幹部たちは対応のため数名の部下を残し防空指揮所へ軍用乗用車でとんぼ返りし、警防団に消火の命令を下す。

だが再稼働している川内原子力発電所、火力発電所や石油備蓄基地が一緒にタイムスリップしていたと思うと自衛隊幹部たちはゾッとする。

それらが破壊されてしまえばチェルノブイリや福島と同様のレベル7、深刻な事故になりかねず南九州は放射能汚染や有害物質の飛散で死の土地と化していただろう。

破壊されなくても連合国軍に原子炉があると判明すれば確保・分析され、核兵器開発が加速するに違いない。

最悪の事態がなくホッとするも、電力不足という時限爆弾がある。

非常用発電機やその分の燃料を備えているとはいえ無補給では1週間ほどしか保てない。

ソーラーパネルもいくつか備えているとはいえなるべく節電しなければならなかった。

つかの間、またJアラートが発令される。

「弾道ミサイル発射情報。数は増えて10。鹿児島県・宮崎県・熊本県・長崎県の領域内に弾着する模様」

残された第16方面軍の部下が無線機を片手にこちらへ駆け寄ってくる。

「横山中将殿から無線による伝言です。あれを撃ち落とすことはできるのか、と」

「えぇ、もちろんです。そのために我々は訓練を何度もしていましたから」

『今動かしているこんごうとちょうかいは弾道ミサイル迎撃システムとSM-3を搭載しています。命令があればいつでも撃ち落とせます。なお掃海は一時中断し退避させます』

関川陸将と三面海将は自信に満ちた様子で答える。

部下が無線機で横山中将と一言二言交わすと「……ではやってみろ。お手並み拝見とでもいこうか」と三面海将らに向かって答えた。

「分かりました。第2高射特科大隊第3高射特科群、第2高射特科団、第4高射特科大隊、西部高射群も展開は終えているか?」

関川陸将はそれぞれの高射部隊に確認をとる。

ちなみに鎮西演習に参加しタイムスリップに巻き込まれた北海道の第2師団は、日出生演習場から近い湯布院と玖珠で待機していた。

87式自走高射機関砲の配備完了報告を皮切りに中SAMと近SAM、PAC-3も敷地内に配備が完了したと報告が入る。

「では自衛隊法第82の3に伴い、破壊措置命令を発令する。弾道ミサイルを全て撃ち落とせ」

 

 (あとは防衛出動……か)

破壊措置命令を発令した関川陸将は再度冷静になって思考する。

渋る訳は戦後初というのもあるし、辞表を机の上に置いたとはいえ本当に発令してもいいのかという自問自答に駆られている。

自衛隊が持つ装備なら鎧袖一触は間違いないが、どこまで介入するか。

百人力の活躍をすれば大本営は鬱憤を晴らすため大胆的な大本営発表をするパターンが考えられる。

負け続けで希望も見えない中では間違いなく一望の光となり、国民感情はとんでもない熱狂と化すだろう。

完全アウェーの雰囲気の中で大本営から呼び出されて沖縄や硫黄島だけでなくフィリピンやサイパン、ガダルカナル島などを奪還せよと命令されるに違いない。

東南アジアまで前線を伸びきるのは愚策と言わざるえざないし、工業生産能力が桁違いの米国と真っ正面からやり合うのは無謀だ。

自衛隊がロジックを交えて丁寧に断り艦娘ができないと脅しても、数々の戦争を潜り抜けクーデターをしてまで本土決戦を決行し中枢から日本を巣くう皇国血盟維新団とそれに賛同する軍部に軍閥が一致団結して我々を潰す方向をとってもおかしくはない。

そのため深災対の米国へ秘密裏に潜入する案や、大本営及びに対しての斬首作戦は秘匿無線で海将と空将ともう一度すり合わせたいと関川陸将は考えていた。

だが弾道ミサイルが迫っている以上後回しにするしかないし、第16方面軍幹部が監視のため残っているこの場においてリモート会議で発言するのは危うい。

また全員を無事に元の日本へ帰るという使命もあるが、介入してしまえばタイムパラドックスやらで時間軸がおかしくなり歴史が書き換えられてしまい元の日本に戻れるという保障はない。

なんならこの時代に永遠留まる可能性もあり得る。

運よく元の日本戻ったとしても政府や遺族になんと説明すればいいのか分からない。

太平洋戦争末期にタイムスリップしてしまいアメリカを筆頭とする連合国軍と戦争に巻き込まれ私は後方から悠々と指揮を執り尊い犠牲を出しながらもなんとか撃退しました、とどんな顔をして説明すればいいのだ。

一生をかけて土下座の謝罪行脚をしなければならないだろう。

まぁ、もう少しましな嘘をつけと罵倒され徹底的に取り調べられ、精神病院へ直行されるに違いない。

正当防衛と判断されようとも越権行為を大幅に超えており自衛隊の命を預ける立場が一気に重くなったため、先ほどからずっと胃がキリキリと痛むし、吐き気もしてくる。

かといって何もせずに見守るのは飯や水、燃料をただ消費するだけの酷潰しである。

それが無くなったらプライドなんかクソ喰らえとばかりに第16方面軍と深災対に頭を下げて最低限の物資を分けてもらうか、連合国軍から略奪せざるを得ない。

前者はこちらに血は流れない代わりに白い目で見られるのは間違いないし、ただでさえシーレーンが崩壊していてカツカツな状況で自衛隊に分けてもらう余裕はないだろう。

後者はお互い血が流れるだけでなく、略奪行為は国際法で禁じられており戦争犯罪として告発される可能性が高いのでこれらも気乗りしない案だ。

「全く……進むも地獄退くも地獄ってやつか」

誰にも聞こえないような小声で毒づきながらコップに入ったコーヒーを飲んで喉を潤し頭をスッキリさせる。

(そういやこれもいずれ飲めなくなるな……殆どはコーヒーベルトと呼ばれる国々からの輸入に頼っている)

関川陸将は空になったコップについているコーヒー跡を見つめたあと、リモート用マイクに向き直る。

 

 「えびの駐屯地の現状はどうなっている?」

『防衛出動待機命令に伴い、急ピッチで防御陣地を構築していますが出来はまだ半分も達していません。各部隊は95%ほどですが第8施設大隊は70%ほど集っています』 

第24普通科連隊長兼えびの駐屯地司令の北國1等陸佐が手元の資料を読み上げていく。

「……やはり、重機か」

『えぇ。第8施設大隊の大部分は湧水町を通過しましたが、キャタピラがついている重機類は大型トラックに積んでいるため、山道かつ舗装されている道路も少ないので速度を落とし慎重に輸送しています。現在地は横川城跡付近にいます。そのためえびの駐屯地まであと90分以上はかかります』

第8施設大隊長の説明に続いて古間空将と三面海将も口を開く。

『空自は新田原の航空機や人員の避難は全て完了。弾薬類の輸送も終えましたが、航空燃料に関しては燃料給油車に積んで延岡市を通過しました。築城基地まではあと4時間かかります』

『海自の鹿屋基地も同上です。現在地は水俣市にいますので春日基地まであと5時間以上かかる見込みです』

「分かった。気を付けて運送してくれ』

『またF-2も出撃させ洋上阻止を行いたいところですが今のうちに周辺を飛んでいる航空機を呼び戻して休憩と給油、整備をさせたい』

「呼び戻して給油や空対艦誘導弾を装着するのにどれくらいかかる?」

『私が答えます。給油車で給油なら1機につき5分未満で行けますが、空対艦誘導弾は重く機体とのデータリンクなどもありますので時間がかかります。正規の手順をいくつか省けての時間短縮はやろうと思えばできますが、貴重な空対艦誘導弾が性能通りに発揮できなくなります』

第8航空団整備補給群司令の白根1等陸佐の説明に続けて副司令の茨目1等陸佐も口を開く。

『中途半端な対艦攻撃は意味がありません。向こうが全力で侵攻してくる以上、こちらも全力で迎え撃たなければなりませんが、航空阻止するには時間が足りなさすぎます。飛行体制が整うまで陸自の地対艦誘導弾で連合国軍の空母とレーダーピケット艦、防空艦を中心に狙い深災対と第16方面軍による攻撃を支援するのが現時点でのベターかと』

「なるほど……どれくらいの地対艦誘導弾を動かせるか計算してくれ」

その結果、健軍駐屯地から12式地対艦誘導弾を発射した場合、16両×6発で96発も発射できる。

湯布院駐屯地から88式を8両×6発と12式を8両×6発を発射した場合、96発の地対艦誘導弾が日向灘の連合国軍艦艇に殺到する。

つまり合計で192発の地対艦誘導弾が第一波として襲い掛かり、半数の連合国軍艦艇を屠ることができる。

上陸できる兵力を少し減らせるどころか、思ったよりも多くの地対艦誘導弾が放てることに自衛隊幹部たちは少し引いてしまう。

ただし問題点がいくつかあった。

まずこれほどの地対艦誘導弾を撃つとなると初めての事例であり精度がどうなるか分からないことだ。

防衛情報通信基盤の光ファイバーやXバンド防衛通信衛星(きらめき)準天頂衛星システム(みちびき)は奇跡的に確認されたのは数少ない朗報であるも、アメリカのGPSやEUのガリレオは見つからなかったため精度はかなり落ちてしまうだろう。

更に捜索標定レーダー装置や中継装置を沿岸部に進出しなければならずF-35Aに用いられるMADL(多機能先進データ・リンク)FCCS(火力戦闘指揮統制システム)とのデータリンクはぶっつけ本番になるのが懸念事項。

データリンク等はP-3Cを飛ばせば問題は解決するが、鹿屋基地からの避難を終えたばかりであり受け入れ先の春日基地も避難した機体で満杯に近い状況かつ、領空侵犯が切迫しておりスクランブル発進が優先されるため優先順位が低い。

次に健軍・湯布院駐屯地のグラウンドは野外炊飯や投光器、天幕などが狭しと展開しているため、地対艦誘導弾を配置するスペースが少ない。

車庫から引っ張り出して別の開けた場所にその土地の所有者の許可をとってから展開し発射可能状態にするには時間がかかってしまう。

が、とある厄介なものに気づいてしまった西部方面特科連隊長を務める城山1等陸佐が思わず声に出してしまう。

『ち、ちょっと待ってください。土地所有者は法務局で調べれば分かりますが、この時代だとどうやって調べるんですか……?』

『防衛出動が発令されれば第103条第2項、物質の収用が適用でき……ないな。現都道府県知事がいないから当てはめるならこの世界の都道府県知事が要請を出すしかない……!?』

『“事態に照らし緊急を要する場合は、防衛大臣又は政令で定める者”を適用するか……?』

『それだと横暴だとこの世界の住民たちから反感を買ってしまう恐れがあるぞ……』

幹部たちが画面越しで議論する中、関川陸将はゆっくりと息を吸い込んで吐き出した後に口を開く。

「その手間を省くために今のところは自衛隊基地敷地内のみに展開しましょう」

誰も反対することはなかったが関川陸将はタイムスリップ直後に近隣住民やマスコミがやってきて報道官が対応したとはいえ、彼らの空気感はピリピリしていたのを思い出していた。

直前でなければ説明会を開いて打ち解けていきたかったのが本音だ。

 

 

 一方でこんごうの艦内ではサイレンが鳴り響き一気に緊迫した空気となる。

「司令部より破壊措置命令を確認。対BM(弾道ミサイル)戦闘用意!」

NBC(核・生物・化学)防護システム、問題なく作動」

アメリカの早期監視衛星がないとはいえ、F-35Aと背振山分屯地に建つJ/FPS-3改のおかげで早めに弾道ミサイルを探知することができた。

また各護衛艦はNBC(核・生物・化学)兵器対策として与圧システムや甲板散水装置、高性能フィルターなどを備えている。

乗組員もNBC防護服に着替えて配置完了している。

「目標、報告より半分ほど数が減るも残りは大気圏外を飛行しているミッドコース段階に突入」

「最終落下地点は……でました。そのうち2つは駐屯地のある熊本市とえびの市の周辺に落下するもよう。熊本市の目標をα、えびの市目標をβとします」

特徴的な六角形のAN/SPY-1Dレーダから得られた情報をCIC内の電測員たちが報告する。

CICのディスプレイには2つの弾道ミサイルの光点が映し出される。

すでにお互いデータリンクで繋がっており、目標が割り振られαをこんごうが、βをちょうかいで対処することになる。

はるさめとさわぎりは弾道ミサイルを撃ち落とす能力はないが、連合国軍の航空機が襲来する可能性に備えている。

本来ならこれはあきづき型護衛艦のあきづきとすずつきの出番なのだが、メザシ係留で艦と艦に挟まれているので動かせない。

「艦長、対BM戦闘を始めます。いいですね?」

砲雷長がこんごう艦長の間瀬1等海佐へ許可を求める。

「うむ、やってくれ」

間瀬1等海佐が頷くと砲雷長が指示を出す。

「対BM戦闘、SM-3攻撃はじめ」

砲術長も復唱しスイッチを押すと“こんごう”と“ちょうかい”のVLSの蓋が開き、轟音とともに白煙をあげSM-3が解き放たれる。

本来なら1発の弾道ミサイルに対して確実性を高めるため2発のSM-3ブロック1Aを発射しなければならないが、補給が期待できない以上1発で我慢するしかなかった。

それでも、女神の盾が必ず撃ち落とせるだろうと誰もが疑っていない。

 

 掃海を一時中断し潜水艦娘と水中処分員を回収し掃海艇に乗り込ませてから退避している中、前方から護衛艦がSM-3を発射していた。

「おぉ、すっげぇー! まるでロケットみたいにびゅーんと飛んであっという間に見えなくなったぜ!」

並走している海防艦の佐渡が興奮気味に空を見上げる。

「駆逐艦なのになんでもできるんでちね」

伊58もその光景に見惚れていた。

「たしかに駆逐艦はすごいぞ。戦艦は恐竜だがそんな恐竜を倒せるターミネーターみたいなもんさ」

水中処分隊隊長の稲鯨3等海佐が某映画のセリフを引用する。

確かに大気圏外から飛来してくる音速越えの弾道ミサイルをミサイルで撃ち落とす芸当は第二次世界大戦の艦では逆立ちしてもできっこない芸当だ。

「弾着まで5秒前……3、2、1……マークインターセプト!」

「目標、大気圏外で全て撃墜しました」

電測員の報告でちょうかいのCIC内で歓声があがる。

「気を緩めないで。第2次波も来る可能性に備えておきなさい」

ちょうかい艦長の姫野1等海佐が一瞬緩んだ空気を気を引き締める。

とはいえ演習ではない実戦でなおかつGPSの精度も落ちているなか、弾道ミサイルをイージス艦が撃墜したのは史上初の快挙だろう。

姫野1等海佐はポーカーフェイスで装っているが内心ではかなり興奮し何度もガッツポーズをしていた。

 

 弾道ミサイルを全て撃墜したことに第16方面軍の総力をもってしても撃ち落とせなかったあれをいとも簡単に撃ち落としたことで横山中将たちのプライドが崩れかける。

部下曰くどうやらミサイルにはミサイルをぶつけたらしく、そんな芸当ができるとはやはり只者ではないと改めて認識された。

「だがこれで奴らのほうが実力が上となると、今後我々の発言力が低下してしまうぞ……」

「うむむ、それはまずいですな……」

「奴らより先に鬼畜米英どもを皆殺しして戦果を上げ我々が優位に立つしかあるまい」

「戦果を取られないよう、自衛隊の展開を妨害するとかも良さそうですな。例えば、名目をつけて阻害気球や阻害凧を自衛隊の基地に展開すれば、やつらの戦闘機は飛ばしにくくなります」

横山中将を含む第16方面軍幹部たちは自衛隊の足を引っ張ることで優位に立とうとしており、彼らはどうやろうかと様々な知略を巡らせながら防空指揮所を後にした。

計画がうまくいけば自衛隊を出し抜いて自分たちが活躍できる、そう信じていた。

(そういや第2総軍への説明がまだだったな……このタイミングで行かせるのもありだな。あいつらがいない隙に進めておこう)

 

 弾道ミサイル基地偵察のため燃料に余裕のなくなったF-35Aを着陸させてから、地上待機中のF-35Aが春日基地から4機離陸する。

奄美諸島までおよそ600㎞以上離れており、道中をアフターバーナーを焚けば15分前後で到達できるが燃料を激しく消費する手段なので巡航速度で向かう。

道中に吹上浜沖に展開している第5艦隊を偵察しつつ、弾道ミサイル基地があるであろう奄美大島、宝島、中之島を中心にAN/AAQ-40 EOTSを用いて空対地モードで索敵を行う。

その結果、艦隊の速度が上がり各空母からミサイルらしき発射体の装着や発艦作業が進められ、揚陸艦も兵士の動きや戦車の暖機運転もはっきりと分かった。

このままの速度で進めば遅くても1時間以内に上陸作戦が開始されるのは明白であった。

また島内には弾道ミサイル発射体だけでなく、簡易的な警戒レーダーや対空陣地には地対空ミサイルと思わしきものまで発見する。

配備されている地対空ミサイルの詳細を調べると、ナチスドイツが開発したHs117やヴァッサーマファル地対空ミサイルのデッドコピーらしきものと判明。

すぐにデータリンクで共有するとその情報をもって再度ブリーフィングが行われる。

『自衛隊法第84条に基づいてまずは従来通り領空侵犯の対処で無線通告をします。ただ1945年の技術では国際緊急周波数に対応していない可能性があり得るため、無線通告は深災対に肩代わりしてもらいたいがよろしいか?』

『分かった。やってみよう』

鵠提督が二つ返事で了承すると古間空将は頭を下げる。

『ありがとうございます。どの警告も従わず領空侵犯または連合国軍の航空機から攻撃を受けた場合、正当防衛によって自衛戦闘を行います』

『それとやはりここは基地も叩くべきです。弾道ミサイルを迎撃するSM-3の数には限りがあります。補給ができないためジリ貧になりますし、いざというときに……例えば弾道ミサイルの飽和攻撃の場合にも使えなかったら元の子もありません』

間瀬1等海佐の熱弁はごもっともであった。

こんごう型は1隻につき16発のSM-3を搭載している。

先ほど1発ずつ発射したので残り15発×2隻で30発となる。

あしがら及びはぐろは1隻につき8発あるので4隻合わせて46発のSM-3を保有している。

これらを打ち切ってしまえば最後の盾はPAC-3と中SAMしかない。

中SAMは弾道ミサイルに対応した能力向上型の予算案が出たばかりとはいえ、従来の中SAMでも第二次世界大戦レベルの弾道ミサイルなら問題ないらしい。

「君たちは弾道ミサイル基地を叩くべきかと思うかね?」

三面海将の問いに殆どの艦長が賛成に回るも、降伏派であった数名の艦長は消極的賛成を示す。

『自衛隊が内閣総理大臣や防衛大臣の指示無しで戦闘行為をすることは著しい違反ですが、丁寧な交渉したにも拘わらず無下にされ、あろうことか警告無しに弾道ミサイルを発射した事実がある以上、武力行使の新三要件を満たしており自衛権を行使できるかと』

武力行使の新三要件のうちの2つ、“日本の存立が脅かされ、国民の生命や自由、幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある”こと。

さらにそれを排除するためには“日本の存立をまっとうし、国民を守るために、武力行使のほかに適切な手段がないこと”とされている。

「……君たち意思は分かった。あとは姫野1等海佐の言う通り、これは重大な法律違反であることは一目瞭然。もちろん責任をとって辞表する。陸も空も同じ考えだ」

三面海将の覚悟と決意にこれ以上追及することはなかった。

 

 横山中将と幹部たちが健軍駐屯地へ戻り相談があると切り出してきた。

関川陸将たちは何を言うのか身構えていると第2総軍へ出向きを申し出る。

「我々は誉れ高き帝国陸軍である。前線で指揮をとるためいつ名誉の戦死をするか分からない。今のうちに行けば我々がいなくなった場合での引継ぎで混乱するよりもいいと思うが」

確かにごもっともだが、もう間もなく連合国軍が侵攻してくる。

指揮系統が高いのを向かわせるのは不安が残るが、自衛隊も戦闘をするとなるといつ殉職してもおかしくはない。

(タイムスリップしてからまだ半日すら経過していないが、これ以上先延ばしにするのは得策ではなさそうだな。

戻るまでの指揮は各副司令に任せてもいいだろう。それにこのタイミングで海将と空将、深災対の提督が広島市で集うのはかえって好都合だ)

するととある方から暗号化されたメールが届く。

ちらりと確認するとすこしトイレに行ってくると席を外し廊下を歩きトイレに入るとすでに1人いた。

彼は洗面台で手を洗っており、関川陸将はその後ろを通ろうとすると話しかけられる。

「Sのき章に描かれている動物は?」

「……トンビの羽」

「よろしい。今から言うことは私の独り言ですがSと第一空てい団、水機団から数名選抜して護衛しましょう。なにをしでかすかわかりません。もしかしたら口実に自衛隊の指揮官を亡き者にする可能性もありえなくはない。なぜなら私たちは旧日本軍にとって目の上のたんこぶに映っているかもしれません」

「なるほど……中東で邦人退避護衛をした経験があるSの護衛付きとはとても心強い。よろしい、さっそく行動に移してくれ」

「ありがとうございます。ではまた」

音もなく立ち去り関川陸将は冷や汗を浮かべつつもトイレを後にし何事もなかったかのように席に戻る。

(まったく……いつまで経っても彼と話すのは慣れない。首元にナイフが突きつけられ寿命も削られる気分だ)

その彼の名は特殊作戦群隊長の鷲ノ木1等陸佐。

パッと見どこにでもいそうな白髪交じり短髪の中年男性だが、体つきはガッチリとしており立ち姿もまっすぐで老いを感じさせない。

偶然か深災対も鷲ノ木1等陸佐と同じ考えのようで、腕利きの艦娘である秘書艦の吹雪、ニンジャの川内、陸軍のあきつ丸が帯同する。

 

 健軍から広島市までは距離にしておよそ230㎞ある。

MV-22(オスプレイ)なら30分ほどで到着できるが、エンジン排気熱で地面に影響が出やすい構造上の問題がある。

吉島飛行場(旧広島空港)の滑走路の状態がどうなっているか分からない以上、速度は遅くなるが回転翼機で向かったほうがいい。

多少なりとも自衛隊の力を誇示できるが、着陸する回転翼機の誘導員が向こうにはいない。

そのためラぺリング降下ができる誘導員も一緒に乗せていくことにした。

陸将とS、第16方面軍幹部はUH-2に、海将と深災対と佐世保鎮守府部隊幹部たちはSH-60Jに乗せた。

春日基地にはCH-47があるも過剰すぎるため、空将と第一空挺団は避難した新田原救難隊のUH-60JⅡに乗せて離陸した。

 




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